選ばれる不動産会社の条件 DX で変わる!?不動産会社とエージェントのあり方 |HOUSECOM DX Conference

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選ばれる不動産会社の条件 DX で変わる!?不動産会社とエージェントのあり方 |HOUSECOM DX Conference

SNSの影響はどこまであるかわからない

髙栁 裕司 氏(以下、高栁氏):進行を務めます、Freedraw 株式会社の高栁です。HOUSECOM DX Conferenceもついに最後のセッションです。大トリに相応しいメンバーが集まっていますね。

夏原 武 氏(以下、夏原氏):「正直不動産」原案者の夏原です。よろしくお願いします。

鈴木 誠 氏(以下、鈴木氏): 誠不動産株式会社の鈴木です。「住んだ後、楽しく幸せになる部屋を探す」これをテーマにしています。

田村 穂氏(以下、田村氏):ハウスコム株式会社の田村です。今日は楽しみにしています。「正直不動産」も読んでいます。読んでいて、誠さんのイメージでやはり見ていますね。こういう営業をしているんだって思いながら読んでいました。タイトルもインパクトがありますよね。

夏原氏:漫画の方は、次が17集になります。ドラマになったりもして、多くの人に見ていただくことができてよかったです。それと同時に、あそこに出てくる話が絵空事ではありませんよというのを伝えたいですね。タチが悪い人もいるし、一所懸命やってくれる人もいるし……そういう時に自分ならどうするかと思いながら読んでもらえたら嬉しいですね。

「正直不動産」原案者の夏原 武 氏

高栁氏:最近ではSNSでライフハック的に物件の値引きテクニックや、物件情報があって、部屋探しが変わってきているのかなと思いますがどうでしょうか?

鈴木氏:集客という点にしてはTikTokやYouTubeというSNSも増えてきているのかな。そういうお客さんって、どういう人たちなのかなと思っていたけど、属性もいいし家賃帯が高い人も多いんですよ。ただ、SNSってよくわからない部分も多くて……いいことしか載せなかったりもあるので。うちは紹介制なので駆使はしていません。紹介制ということもあり、14年間うちにはいいお客さんしか来ていないですね。うちに来るのはほかの不動産屋で変な対応されたり、嫌な思いをしたから友達に相談して、という人たちが多いです。最近は仲介のレベルが下がっていると感じることもあります。不動産屋に行って変なトラブルがあったという話がここ2、3年は多いですね。無理矢理申し込みさせられそうになったお客さんもいるし、ちょっと雑で高圧的な不動産が増えたという印象があります。

夏原氏:賃貸でも売買でもいいんですが、普通の人が不動産屋に行こうと思った時は、だいたいは大きな会社に行きます。駅前に看板が出ているとこに入っちゃうけど、そこで嫌な思いをする人も多いんですよ。ただ、難しいのは、お客さんの本気度を不動産屋も見ているということ。冷やかしみたいなのはできないんですよ。不動産屋からすると、「うちが専任でできるんですね」という話になってしまう。客も悪くて「仮申し込みしておいて」とか言うんです。それはできないことですよね。僕は、大手も中小も地場もチェーンも関係なく、結局は人と人だと思っています。自分とまず気が合うのかがすごく大事。

田村氏:いろんなテクノロジーが発達して、業務が改善されていくという背景はあるけど。人というのは最後まで変わらないですね。「ぜひ(鈴木)誠さんに頼みたい」とか最後は人になると思う。

高栁氏:一人の人に会って決めるのではなく、自分に合う人を見つける。でもそれってなかなか難しいですよね。

夏原氏:経験者に聞くしかないですよね。あの人と一緒にしてよかったとか。だから紹介というのはある意味正しい手順じゃないかな。

田村氏:SNSの発展はある程度影響していると思います。でもそれがお客さんにとってどこまで決定的な要因になるかはわからないですね。

DXを活用し、生まれる時間は何に注力すべきか

高柳氏:この流れから伺いたいのですが、いろんなテクノロジーを導入することで、効率化が進んで、お客様に向き合う時間ができると聞きます。その向きあう時間に何に注力すべきでしょうか。

鈴木氏:もっと不動産や、建物に対して知識をつけたりとかでしょうか。自分自身を磨くことに集中した方が、お客さんとの会話が楽しくなると思います。仕事の時間がDXの活用で効率化され、自分の時間が増えたなら、自分自身に投資したほうがすべてにおいて良い方向になると思います。

夏原氏:結局、人間と人間のやりとりなわけだから、その相手にどれくらい深みがあるかとかそういうのを感じますよね。DXの活用で時間があいたなら、自分磨きをして、宅建士の資格もってない人は勉強しないと(笑)。建築に興味を持って普段から勉強や情報収集をしていたり、業法以外の法律……都市整備法とかそういう知識を持つだけでもプラスだと思います。この人に任せておけばと思われるような、知識量や教養ですね。そこを目指すことに空いた時間を使えばいいんじゃないでしょうか。誠さんの本を読んで勉強したらいいんじゃないですかね(笑)。

高栁氏:契約がゴールじゃない、住んだ後がスタートだと誠さんはよくおっしゃっていますね。

鈴木氏:昔は数字しか追ってない不動産屋だったんですよ。その時は申し込みを取ったらゴールだと思っていました。キャンセルがあっても別にいい、と思っていたので3分の1くらいはキャンセルになっていたんじゃないでしょうか。その頃は仕事も楽しくなかったですね。でもお客さんにとっては、住んでからがスタートだと気がついてからは、申し込みや契約がスタートラインだと思うようになりました。ゴールは正直ないですよね。契約が続いている限りはゴールじゃない、ゴールを作らないというのが大事です。こう考えることで不動産の仕事自体が楽しくなると思っています。

田村氏:その通りです(笑)。

高栁氏:ハウスコムさんでは、DXを進めている中でどんな人のあり方を描いていますか?

田村氏:入居者か大家さんどっちの立場なのかはっきりした方がいい。私たちは入居者さん側とはっきり立ち位置を示すのもひとつだと思います。

ハウスコム株式会社の田村 穂氏

夏原氏:今のお話の通りで、どっちの立ち位置なのか明確な人は助かりますよね。曖昧なことばかり言う人が困るし、お客さんの生活を守ってくれる人がいい。でも自分の都合がいいからと、午前中に連絡してくる不動産屋も多いんですよ。そういう時でもお客さんに合わせて連絡してくれる人だと信頼できるかな。誰のための仕事じゃなくて、生活を一緒に探して、一緒に住むような気持ちで日々を送ってくれるような営業マンなら信頼していいんじゃないかと思います。言わなくてもお客さんにはわかりますよね。せっついてくるとか、物件をどんどん見せてくるとか……そういうのはちょっと困るわけで。誰目線かというのはすごく大事だし、ハウスコムさんがそこを目指しているのは素晴らしいことだと思います。

田村氏:入居者側に立って、というところを目指していきたいです。

顧客に選ばれるのは透明化されている不動産会社

高栁氏:次は「顧客に選ばれる不動産会社の変化」というテーマでお聞きしたいです。

夏原氏:基本は透明化されている会社がいいですね。会社ですから、公開できない部分もあるけど、成約率の高さであるとか、成約後のクレームとかその内容というのは僕はデータベース化していいと思っているんですよね。お客さんは素人ですから、誤解することもあると思うんですよ。まず仲介会社と管理会社がごちゃごちゃになっている場合も多いですよね。仲介会社の業務も透明化してほしいし、契約の流れも教えてほしいんですよ。オンライン上で、バーチャルに契約のテストもできるとおもしろいですよね。仮に借りるならこうなりますよ、と、ゲーム的に試せるのもいいんじゃないでしょうか。不動産屋のDXって余裕がなくて遊びがないんですよ。だから楽しくないので、ゲームみたいなものがあってもいいんじゃないかなと思います。

鈴木氏:今は内見も鍵だけ開けてもらって、自分で行って確認するケースも増えていますが、それだと見えない部分もあります。物件のいいところってお客さんも自分で気が付くのですが、プロの仕事って悪いところを見つけてあげることだと思うんですよ。導線とか、近隣とか、共有部分が汚れているとかですね。すぐ決めようとするんじゃなくて、ちゃんと伝えてあげる人がいいと思います。ちゃんとダメなものはダメと伝えられる営業マンがいる会社は信頼されていますよ。住んだあと楽しく幸せになれる部屋を探すっていうのが僕のテーマなので、住んだ後の生活を伝えられる不動産屋であることも大切だと思っています。家だけでなく、街の情報も教えられると、入居前に楽しい生活がイメージできますよね。そういうのを伝えられる営業マンがいいですね。

誠不動産株式会社の鈴木 誠 氏

高栁氏:今の不動産会社のありかたは、店舗があって、営業マンがいて、ポータルサイトに掲載してという形です。これは変わっていくと思われますか?

夏原氏:基本はそんなに変わらないと思います。SNSで集客して、店舗を持たないという営業もあるとは思いますけど、主流にはならないんじゃないでしょうか。ネットだけの会社となると、逃げ足も早く、何かあったときに責任を取ってくれないんじゃないかという不安もあります。いろんなところに入り口を作りたいというのはわかるんですが、そこから入ったって最終的には人と人が向き合うというアナログな部分はなくならいと思うんですね。不動産屋の中には、鍵をお客さんに預けて内見をさせて、終わったら返しておいてくださいというとこも多いんですよ。これは最低ですね。DXを使って時間ができるなら、その時間はアナログをよくするために使うべきだと思います。入り口は増えたとしても、人と人が向き合うという最終形態は変わらないんじゃないかと思います。

鈴木氏:アナログをよくするためのDXという言葉が刺さりました。たしかに不動産業は店舗を構えなくてもできるんだけど、僕はお店を持っています。理由はお客さんに安心してもらいたいという気持ちだけですね。もしかすると20代の人にはもう関係ないかもしれないけど、同じ物件なら店舗ある不動産屋を選ぶと思うんですよ。店舗があって、朝礼をやって……となると昭和ですけど(笑)。僕は顔を合わせて、今日もがんばるぞってスタートするのが人間味もあっていいんじゃないかと思いますね。

高栁氏:店舗のあり方というのは、お客様への安心感ということですね。

進行はFreedraw 株式会社の髙栁 裕司 氏(左)

田村氏:地域にどこまで根ざしているのかというのが非常に大事だと思っています。DXカンファレンスをずっとやってきて、最後がこのお二人というのが感慨深いですね。最終的に行き着くのはヒューマライズだと思うんですよ。ちょっと夏原さんにお聞きしたいんですが、漫画の中で押すだけじゃない、引く営業をうまく描くじゃないですか。それが正直不動産ということでしょうか。

夏原氏:もちろん物語の展開上必要だったというのもあるわけですけど、不動産屋の悪い意味での営業スタイルは押してばっかりなんですよ。お客さんのことを考えると押すよりも引く必要性も出てくるんです。あと駆け引きもありますね。押したり、引いたり……一旦「ちょっと考えましょう」と言ってリセットをかけてあげるとお客さんの決断力も高まる、そういう狙いもあります。

よりよい業界を目指すために、解決すべき課題

高栁氏:もっと業界が進んでいくために、変わったらいいと思う課題ってどんなところがありますか?

夏原氏:いろんなところで話しているんですが、まずは営業マンが全員宅地建物取引士になるべきだと思っています。営業マンのステータスが上がらないと不動産業界のうさんくささがいつまでもついてくると思います。そして、宅建士は法曹資格ですから、違反したときは業務停止とかしっかりしてほしいですね。少し話を戻すんですけど、地域性というところでひとつ。これから不動産を借りる人は、環境を考える人が絶対増えると思います。今までは利便性が重視されていたとしても、どんな人が多く暮らしている街なのか、とか選ぶ側は環境も同時に考えないと長く住むことができないですよね。だからこそ、営業マンは広い知見が必要です。

田村氏:地域に根ざすという文脈は、誠さんが言うように住んだあとにどんなライフスタイルを描くかということです。これからの不動産会社さんって住んだ後まで見せてあげられないといけないと思いました。

高栁氏:街のことを知っていくと、提案も変わっていくんでしょうか。

夏原氏:本当の意味での街づくりができるのは不動産屋だと思っています。不動産屋も行政に掛け合うなりして、変えていく努力をしてほしいと思っています。

高柳氏:そのためにはいろんなデータを活かしながら、連携していくといい業界が作れていくのかなと思いました。

田村氏:どこまで正直に我々は生きていけばいいんでしょうか(笑)。これからの、目指すべきあるべき姿はどうなんでしょうか。

夏原氏:ゴールがないと思っている営業マンを増やして、いかにお客さんの人生に関わっているのかという意識を持つことで自然とよくなると思います。

鈴木氏:夏原さんがおっしゃる通りです。住んだ後が大切だと考えられる方が、仕事をする側も楽しいと思います。

田村氏:なるほど、わかりました。

高柳氏:ありがとうございました。

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