スタートアップやVCへの出資総額は100億円超。三菱地所のキーマンが語る不動産テックとは

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スタートアップやVCへの出資総額は100億円超。三菱地所のキーマンが語る不動産テックとは

はじめに

2019年3月4日に開催された、第6回PropTech Meetupのイベントレポート記事です。株式会社LIFULLの本社8階にあるセミナールームにて開催されました。主催は、PropTech JAPANというコミュニティです。このコミュニティは、国内の不動産テック(PropTech)領域や建設テック領域において、さらなるイノベーションを起こすことを目的に、活動しています。本日ご紹介する、PropTech Meetupも、その一環です。この日は、以下、4社のスタートアップが集まりました。

木村幹夫氏(株式会社トーラス/代表取締役)

トーラスの木村氏は、不動産登記簿を集約したビックデータを構築。これをAIで生かし、マーケティングの支援をしています。昨年(2018年)、米国のニューヨーク国連本部で木村氏が解説したのは、不動産テックと社会の持続的発展について。MIT(米国マサチューセッツ工科大学)のコンテストでファイナリストになった経歴の持ち主で、東京大学の協力研究員でもあります。

角 高広氏(株式会社すむたす/代表取締役)

角(すみ)氏は、不動産物件の買取再販ビジネスで注目度を高めている、『すむたす』を展開。『すむたす』は、仲介会社を経由せずに不動産物件の売買を成立させています。角氏は、株式会社Speee、イタンジ株式会社をへて独立。2018年1月、株式会社すむたす創業に至ります。テレビ東京のWBS(ワールドビジネスサテライト)に取材されるなど、メディア露出の機会が増加中。

三井將義氏(EQON株式会社/代表取締役)

三井氏は、不動産売買・賃貸を対象に、仲介エージェントを調べたり頼んだりできるプラットフォーム『EGENT(イージェント)』を2019年1月にローンチ。ユーザーとエージェントのミスマッチ解消を目指しています。東京23区で約130社・150名くらいのエージェントが『EGENT』に登録している状況。「大手不動産会社へも積極的に営業をしている」とのこと。

中村知良氏(Pit in株式会社/共同代表取締役)

「仕事の打ち合わせをするときに、最適な場所がなく、困った」ことが発端になっている『Pit in(ピットイン)』。このサービスを中村氏は、イタンジ創業者の伊藤嘉盛(よしもり)氏とともに、立ち上げました。渋谷・新橋エリアを中心に、利用できる拠点を増やす狙い。2019年5月現在、経営体制は、伊藤氏と中村氏による2名の「代表取締役」というカタチをとっています。

この日は、木村氏、角氏、三井氏、中村氏の4名によるパネルディスカッションも実施されました。モデレーターを務めたのは、PropTech JAPAN Founderである桜井駿氏(画像下)です。

パネルディスカッションが終わると、この日のイベントスポンサーの一人として、三菱地所の石井謙一郎氏(画像下)が紹介されました。この石井氏の登壇を第6回PropTech Meetupより、本記事で取り上げ、三菱地所の【不動産×IT】についても触れていきます。

三菱地所が考える、デジタルトランスフォーメーションとは

石井氏が三菱地所に入社したのは、2008年。以来、オフィスビル事業、物流事業、用地買収、テナントリーシングなどにたずさわり、ジェネラリストとしての素養を培ってきました。2年ほど前より、かかわるようになったのは新規事業開発です。三菱地所に籍を置きながら、広義での不動産テック、デジタルトランスフォーメーションに積極的な姿勢で取り組んでいます。

その取り組みが認められるかたちで、経済産業省が発表している『攻めのIT経営銘柄2019』に、三菱地所が選出されました。2019年4月25日の出来事です。

画像出典元:攻めのIT経営銘柄2019

テクノロジー活用の施策として、三菱地所が取り組んでいる具体例を1つ挙げると、立命館大学との提携が代表的です。三菱地所は、立命館大学と提携し、不動産×ロボティクスの親和性を高めています。

働き手の不足は、いろいろな産業で深刻な問題になっていますが、警備員や清掃員といった職種にも同じことが当てはまります。解決策の1つとして期待されているのが、清掃、警備、運搬などを人に代わって担当する、ロボットの存在です。これを工場、倉庫、マンションなどに導入することで、管理コストがまるごと削減できる時代になっています。

背景にあるのは、技術の進歩です。従来よりも安価で、高性能なロボットが開発されています。ロボットの活用が進む施設は“次世代型施設”とされ、それらのロボットを運用管理するモデル構築のため、三菱地所が繰り返しているのは、実証実験です。

2019年3月には、三菱地所の吉田社長と立命館の仲谷総長が“戦略的パートナーシップ協定”を締結。ロボティクスのノウハウや最新情報が、いま、三菱地所に集まっています。

画像出典元:https://inspiredlab.jp/

ほかにも、「一等地を顧客に使ってもらうべきだ」という理念で作られた、『Inspired.Lab(インスパイアードラボ)』も、三菱地所が考える、【不動産×テクノロジー】として見逃せません。

『Inspired.Lab』は、大手町駅から至近のインキュベーション施設です。大手町駅は、東京都千代田区にあります。東京地下鉄である『東京メトロ』の大手町駅は大手町に、東京都交通局である『都営地下鉄』の大手町駅は丸ノ内に位置した駅です。東京駅まで徒歩圏内にあり、大手町駅周辺には、大手銀行、商社、新聞社、メディアの業界団体などもあり、利便性が高く、日本経済の中枢ともいいかえられるエリアです。

そのような立地にある『Inspired.Lab』のコワーキングや会議室の扉には、指紋認証の技術が採用されています。打ち合わせスペースの隣の部屋に、3Dプリンターが導入された作業部屋が併設され、ブレストしたアイデアをすぐに、プロトタイプとしてアウトプットできる工夫も。

ロボティクスへの取り組みや、インキュベーション施設に最新テクノロジーを活用する姿勢から感じ取れるのは、「テクノロジーを活用して再発展するのだ」という意気込みです。この三菱地所の意気込みの“源泉”とも呼べる存在の一人に、石井謙一郎氏がいます。本記事の最後のテーマとして、イベント当日に石井氏より語られた、“不動産テックに本気で取り組む三菱地所の目指す世界観”を紹介します。※以下、敬称を省略します。

2020年が不動産業界のターニングポイントに

石井:数々の素晴らしいプレゼンテーション、ありがとうございました。私は、本日のPropTech Meetupのネットワーキングスポンサーを務めさせていただきます、三菱地所の石井謙一郎と申します。はじめまして。イベントの最後に恐縮ですが、少しだけ、私や、三菱地所のことを紹介させてください。

いま、私はインキュベーション施設で働いています。場所は、(東京都)大手町にある『Inspired.Lab』という施設の6階です。『Inspired.Lab』は、当社とSAPさんとで、一緒につくりました。興味をもってくださったかたは、ぜひ、遊びに来てください。

さて、三菱地所をご存じのかたが、この会場には多いと思いますが、簡単に当社のことを少しだけ説明させてください。

画像出典元:http://www.mec.co.jp/

石井:当社は、オフィス、マンション、ホテル、物流流施設などの、いろいろな不動産を作ったり売ったり貸したりしている会社です。大規模再開発をはじめ、おかげ様で、営業利益ベースで、2020年までは最高益を達成することができると見込んでいます。しかしながら、2020年は節目の一年になることが予想されます。

不動産事業の場合、土地の地込みから収益発生までに必要な時間は、一般に、5年から10年です。つまり、2025年以降の収益についても、おおよその目途を現時点で立てることができる、というわけです。2025年以降に新しい収益源を確保したいとなれば、不動産でいうと2019年現在で、土地を仕込んでおく必要があります。

そのくらいに、ロングタームの事業が、不動産事業です。何を申したいかといいますと、今後、不動産一本足で、劇的な成長を見込むことは難しいということです。全社横断の部署に身を置いていたこともあり、俯瞰した立場で自社の事業をみると、そのような事実が見えてきます。その節目として、2020年の一年が、不動産業界のターニングポイントになるでしょう。

業界の勢力図を塗り替えかねない存在

石井:オリンピックイヤーである2020年を1つの起点とし、「2020年以降、三菱地所が継続し、成長していくために、どうするか」という議論は、当社のなかでも重視されています。

オフィスマーケットについて言及すれば、懸念されているのは供給過剰です。すでに、IT活用やベンチャー企業の躍進、新しい価値観などによって、交通の便がよい一等地にオフィスを構えることなく、自宅で仕事ができる時代がやってきています。

少子高齢化が進むなかで、2030年の住宅市場は、住宅の着工戸数がいまの4割減になるという予測も。ネガティブな要素が多い業界で現状に甘んじていると、維持どころか、衰退の道をたどることになりかねません。さらに、勢力図の色を塗り替えかねないプレーヤーの動向にも、注目が浴びせられる毎日です。たとえば、代表的な存在として『WeWork』が挙げられます。創業から現在(2019年)まで10年に満たないスタートアップですが、『WeWork』の時価総額は、すでに、当社と三井不動産さんをあわせたくらいの規模感です。インド発のベンチャー『OYO』の日本上陸も、大変に話題をさらいました。

石井:さらに、不動産テック先進国である米国に目を向けると、『Zillow』『Redfin』『Compass』などの米国不動産テック(PropTech)企業の攻勢も見逃せません。米国の不動産業界にいまある、業界勢力図を塗り替えるような勢いです。こうしたトレンドから読み取れる動向の1つが、ソフトウェアがハードウェアを飲み込むような時代の流れです。

その流れの勢いが激しい業界として、私は、自動車業界の名前を挙げたいと思います。新車が売れない時代において、トヨタの社長は、セス(毎年米国のロサンゼルスで開催される、世界的な家電見本市、イベント)で、次のようなコメントを残しました。

私たちは自動車を作る会社から、世界中の人々の“移動”にかかわる、あらゆるサービスを提供する、サービス提供会社にモデルチェンジする

石井:また、トヨタの副社長である、友山氏は次のように語りました。

何台の自動車を売ったか、ではなく、何人の顧客を喜ばせたかをKPI指標にすべきだ

石井:これらのコメントから見て取れるのは、プロダクトアウトから、マーケットインの会社にシフトチェンジしようと、変革に本気で取り組む大手企業の姿勢です。この姿勢は、私たち不動産業界の人間が見習うべきものだと感じますし、個人的に、自動車業界を“不動産業界の先輩業界”だと思って、その動向を見守っています。

求められる価値観「何人の入居者をハッピーにしたか」

石井:そうしたトレンドを見ていると、一介の社員である私がいうのは、おこがましいことではありますが、三菱地所も不動産を作るモノづくり会社から、一皮むける必要性を感じずにはいられません。

自動車のように、不動産というハードもコモディティ化しているのではと。当社がオフィスを作ろうが、違う不動産会社がオフィスを作ろうが、入居するお客様にとってはあまりかわらないのではと。何万坪のオフィスを供給したか、何千戸のマンションを供給したかではなく、何人の入居者をハッピーにしたか。こうした、カスタマーセントリック(顧客中心主義のようなニュアンス)な考え方に、シフトチェンジしていく必要があるのではないかと、危機感を抱いています。

そして、シフトチェンジのキーワードは、テクノロジーです。三菱地所という会社をテクノロジーでモデルチェンジし、デジタルトランスフォーメーションを成し遂げるための一助になりたいと考えています。そのために、全社を横断し、テクノロジー活用を推進するための専属組織を立ち上げました。名前を“DX推進室”といいます。

石井:この組織の立ち上げから参画し、いまに至るまで、私はかかわり続ける一人です。これまで、アクセル全開で取り組みを続けてきましたが、このたび、DX推進室は、経営企画部からスピンアウトし、“DX推進部”に昇格することが決まりました。

そうはいってもですね、私たち自身は、テクノロジーを持っている会社ではありません。専門的な研究開発部門もございません。なので、今後は、いろいろな人の知恵を借りながら、会社変革をできればと思っています。その一環として、三菱地所は、国内外のスタートアップやVCへの出資もしています。その出資総額は先日、100億円を超えました。

石井:この会場に集まるみなさんは、「不動産業界の再発展を自らの手で」そうした心意気のあるかたばかりです。今後も、みなさんと一緒になって、私たちは不動産テック、PropTechを盛り上げていけたらなと思っています。ご清聴いただき、ありがとうございました。

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