Z世代が期待するユーザー体験とは?- 心をつかむコミュニケーションのポイント|HOUSECOM DX Conference

  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
Z世代が期待するユーザー体験とは?- 心をつかむコミュニケーションのポイント|HOUSECOM DX Conference

Z世代の中ではオンラインとオフラインの関係性が逆転している

島袋氏:進行の島袋孝一です。僕はJ.フロントリテイリング株式会社のデジタル推進部でデジタル活用推進を担当しています。今回は「Z世代が期待するユーザー体験と心をつかむコミュニケーションのポイント」というテーマで皆さんにお話を聞きます。まずは自己紹介をお願いします。

牛江氏:M-YOU株式会社代代表の牛江桃子です。私はSNSの中でも特にYouTubeやTikTok、ライブ配信に力を入れていて、そのライブ配信の中で販売を行うライブコマースを得意としています。運営しているアパレルブランドの販売もライブコマースを活用しています。

片石氏:株式会社yutoriの片石貴展です。アパレル事業を行っている会社で複数のブランドを運営しています。

田村氏:ハウスコム代表取引法の田村穂と申します。これからの未来を考えると、Z世代には興味があるので今日のセッションも楽しみにしています。

島袋氏:最前線のお話がいろいろ聞けると思います。まず、牛江さん……ももちさんとお呼びする方がみなさんも言い慣れていますかね。ももちさんはライブコマースに力を入れているということで、昔のテレビショッピングみたいなイメージもありますがどうでしょうか。

牛江氏:テレビショッピングは出来上がった商品を説明するものですが、私は製品が出来上がるまでの過程もライブ配信しています。アパレルや青汁、コスメなどさまざまな商品をプロデュースしたり製作したりしていますが、どれもユーザーの希望を直接ライブ配信中に吸い上げて、商品に生かしています。アパレルアイテムであれば丈や色を「どっちがいい?」と直接ユーザーに聞いて、それを商品に反映させるんです。ユーザーの不安点を聞いていくことで、出来上がったものはその不安が解消されているというメリットがあるし、過程を見せていくことで愛着が湧くんですよ。青汁のパッケージや商品名、カラコンのパッケージもすべてそうです。ライブ配信で過程を見せながら、ライブコマースで販売しています。

島袋氏:見えない場所に市場があるという不思議な印象ですね。片石さんはいかがですか?

片石氏:僕らの場合は商品販売の時にライブ配信を各ブランドでしていますが、オンラインでの販売は通常のECサイトです。また、リアル店舗もあります。

島袋氏:僕らの時代は服を買うならお店に行くのが当たり前でしたが、Z世代は通販も普通ですよね。リアル店舗を持つのは理由がありますか?

片石氏:オンラインで売れる洋服は限られていると思います。商品を見るときもインスタの小窓で見るんですよね。デザイン性にこだわっても、画面で伝わらないところがあるなと思っていて、オンラインだけにするとスケールが小さくなっていくと思っています。ただ、オンラインとオフラインの両方を見ていると、リアルで店舗に来る人は目的を持っている人だなという印象がありますね。

島袋氏:僕はもともとPARCOにいましたが、当時のPARCOは生活者がまだ知らないものに出会ってもらう場所と言っていました。それが今は知らないものに出会う場所がオンラインになっているということですね。

片石氏:そうだと思います。賑(にぎ)わっていると新規でも入りたくなるけれど、基本的には目的を持ってお店を訪れている人が多い。

購買活動の際は2次流通における価値を無意識に考える

島袋氏:そういう違いがある中で、Z世代の期待する体験の特性は見えてきますか? 僕の仮説ではスマホファーストなのかなと考えていますが。

牛江氏:スマホファーストではあると思いますが、実際に売り上げを見ていると実店舗が上がってきています。ポップアップストアを行うと、ライブ配信を見ている人たちが来てくれるんです。SNSのファンが来店することでより濃いファンにつながっていくという感覚です。SNSと店舗をうまく組み合わせていきたいと思っています。

片石氏:Z世代の人たちは損をしたくない、という気持ちが強いと思います。例えば、今は買ったものをメルカリで売るという行動は習慣づいています。2次流通の価格が低いのか、高いのかというのを若い子が無意識に考えているんでしょうね。資産性を意識しながら購買活動しているとも言えます。安いから買うんじゃなくて、みんなが価値があると思っているから買う、という感覚です。

島袋氏:コスト感は今までも重要視されていましたが、自家消費して終わりでした。それがリセールバリューまで頭の中で計算しながら買い物しているということですね。

牛江氏:ライブコマースでもそれは現れています。ライブコマースではみんなが買っているのがわかるし、みんながいいと思っているから買う。自然に背中が押されて購入につながっていきます。

田村氏:ほかの行動ではどうですか?

片石氏:購買活動に限らず、ほかの行動でも同じだと思います。キャリアとかもそうですね。昔はやりたいことや得意なことがあって、それで有名になるという流れがあったと思いますが、今はまず有名になってから何かやろうという人も増えている。

牛江氏:私はアルバイトとかもがむしゃらにやっていた世代ですが、今はもっと楽に稼げる手法も増えています。高校生が何かでバズってアフィリエイトで稼いでいるというのもよくあることで、自分の体験や経験を次のキャリアに生かしたいという考えもないと思います。

片石氏:今までは何かを媒介して社会とつながっていたけれど、今はみんな直接社会とつながっているという感覚ですね。クラスの隣の席の子が急に有名になって一気にメインストリームに乗るのを見てしまっているし、有名になる方法も段階を踏んでいく昔とは違います。

プライベートの感覚を持ちながら働くことに憧れるZ世代

島袋氏:ではZ世代中心の会社の働き方についてはいかがでしょうか。

田村氏:気になりますね。企業は文化だと思っているので、世代と文化をどうやって整理するんでしょうか。うちでは従業員の43%くらいが20代で、管理職の人たちがいわゆるY世代やX世代です。みんなコミュニケーションを取るのに頑張っていますね。

片石氏:(株式会社yutoriは)150人くらいいる従業員の中で、本社で勤務しているのは50人~60人です。そのうちのほとんどが20代で、Z世代だけで運営しているブランドもあります。基本的には若い子たちがボトムアップで提案できるような環境を作っていますね。

牛江氏:私はZ世代のマーケティング集団の運営もしています。そこでリアルの女子高生や女子大生の声を聞くと、公私ともに充実させたいという思いがあるとわかりました。例えば、SNSを使った仕事や、自分で組んだコーディネイトセーリングの写真を撮るのも仕事にしたいとか・・・。楽しみながらプライベートっぽい活動をすることでお金になる、というものに価値を感じているようです。なので、私の会社でもプライベートも充実できるような働き方を考えています。実際にインスタ撮影のために業務中にカフェに行ってきていいよ、という時間も作っています。

片石氏:仕事と遊びの境界線って今はすごく曖昧ですね。これはもちろんビジネスモデルにもよりますが、TikTok見ることもリサーチだし、仕事と遊びが溶け合っていると思います。

ユーザーを定義づけするために必要なのは言葉でなく感覚

島袋氏:次は「界隈の解釈と自社のビジョン」というテーマでお話を伺おうと思います。界隈と言っても、今は言葉の受け取り方も違うんじゃないでしょうか。僕らはインサイトとかお客さんの興味のあるものを界隈と言っていますがどうでしょうか。

片石氏:言葉としてはよくわかってないです(笑)。言葉にすると断定されるのかなと思っていて、僕らは日頃から写真でコミュニケーションを取っています。なぜ界隈を意識するかというと、お客さんのコミュニティーを意識したいからですよね。お客さんをどうやって多面的に定義づけできるかが大事なので、言葉じゃなくPinterestとかでいいんじゃないかと思っています。こういう感じだよね、というのを画像で共有し合っています。

牛江氏:私はもともと「ももち」という個人の活動があったので、しっかりペルソナを組んでいます。まずは私にハマる層をターゲットにして、そこから拡散するという考え方です。私のファンの層はもともと年代が低かったので、そこを上げていくことから始めました。具体的には25歳付近の消費することに価値を感じる世代で、外見的にも黒よりは白、ショートよりはロング、濃いメークよりは薄いメークと女性のイメージを作り上げています。個性派かモテ派かというと、モテ派の人たちですね。

島袋氏:僕らの世代で言うと、赤文字系ですね。今はもう赤文字系、青文字系とも言わなくなったと思いますが、雑誌は見ますか?

片石氏:昔の雑誌のアーカイブは参考のために見ますが、最新の雑誌は見ないですね。

牛江氏:私は読みあさります。トレンド命というビジネスなので、リアルにファンの人が何が欲しいかを吸い上げるのと、誌面で何が取り上げられているのかは確認したいと思っています。雑誌って見るまでにラグはありますが、Z世代はモデルさんたちが着ているものや持っているものに憧れているので、押さえておいた方がいいと思います。

Z世代が自主的に参加したくなる環境作りを

島袋氏:次のテーマは「心をつかむコミュニケーション」です。Z世代の人たちのくすぐりポイントはなんでしょうか。

牛江氏:やっぱり韓国がトレンドですね。中でも韓国で放送されているアイドルのオーディション番組がはやっているので、私も参考にして推し活してもらえるブランド作りを目指しています。オーディション番組で一般人がアイドルになる過程に視聴者が愛着を持つように、ブランドの過程を見せていくことで応援してもらえるように。ライブ配信でも。「白と黒どっちがいい?」といったコメントしやすい投げかけをして、見ている人が参加しやすい雰囲気作りは心がけています。

島袋氏:ももちさんはライブ配信の場で実際にZ世代の意識やニーズを把握しているということですね。片石さんはいかがでしょうか。

片石氏:僕たちがアプローチしたいお客さんが目指すような人が社内にたくさんいるので、その子たちの意識を重要視しています。社内でコンペを行ったとしたら、かぶった企画を採用します。かぶるという事は、その世代にニーズがあると分かります。

島袋氏:ユーザーインタビューや顧客インタビューという手法もありますが、田村さん行っていることはありますか。

田村氏:やっていますね。実際にそのインタビュー結果は経営まで上がってきます。最近びっくりしたのは、部屋探しをした人に3カ月後にインタビューをすると、お店や担当者のことを覚えていないという人が多かったんですよ。

島袋氏:車のディーラーもそうかもしれませんね。昔は何店舗もはしごしていたけど、今はネットで確認して、店舗ではハンコを押すだけというイメージもあります。

田村氏:そうですね。そのため、そこのスタッフのクオリティーを上げていくのではなく、人間が介在しなければいけないところにもっとフォーカスしていこうという動きになっています。

島袋氏:ユーザーとのエンゲージメントをどう高めていくかも重要になりますね。

片石氏:Instagramの中で伸びる服とそうでない服があるんですよ。ロゴや定番のものは伸びる。アパレルは流動性も強いのでそのロゴをお客さんが発信したときに周りからいいねと言われる環境を作ってあげたいです。

島袋氏:UGC(User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ))ですね。ブランド論になりますが、ユーザー自身が生成するコンテンツで、これが自走していく環境を作るのは理想的だと思います。

田村氏:ユーザーが自分で参加していく流れを作るということですか?

片石氏:そうですね。キャンペーンなどでユーザーに促すブランドも多いと思いますが、そうではなく瞬発的に投稿してもらいたいです。

島袋氏:Z世代の特性や関わり方などいろいろな話が出ましたが、最後に社内でZ世代とうまくやっていくポイントはありますか。

片石氏:これはZ世代だからというか、普遍的な世代の話かもしれませんが、同じ世代の子たちをプロジェクトに複数アサインして競わせるのがいいと思っています。同世代の意識は必ずあるので、負けたくないという思いで切磋琢磨(せっさたくま)してくれます。30代は「俺は俺だしな」と悟ったような人も出てくるけれど、20代は普遍的に競争したい、負けたくないという気持ちを持っていると思います。

田村氏:競争が嫌いな子もいますか?

片石氏:うちは平和主義でとがっている子はいないし、ブランドはチームで作るのでみんな協調性も高い。でもそういう子でも負けたくないという気持ちを持っていると思います。Z世代特有の点でいうと、出世欲はなくても、影響力は欲しいという気持ちですね。

牛江氏:影響力という点だとフォロワーの数で自分で持てる自信が変わってくる子は多いと思います。そういう子たちが欲しいものを作るには、リアルな声を聞くのが1番だと思っています。

田村氏:ももちさんは一貫していますね。うちでもZ世代に対して、どうコミュニケーションを取っていいのかわからない管理職もたくさんいるので参考になりました。本日はありがとうございました。

関連リンク
Z世代が重視する価値や体験は何か?-新たな価値観との交差点-(前編)
Z世代が重視する価値や体験は何か?-新たな価値観との交差点-(後編)

  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
PR

こちらの記事もオススメです

不動産家主必見のセッション続々「ハウスコム25周年 家主様感謝イベント」レポート(前編)
不動産家主必見のセッション続々「ハウスコム25周年 家主様感謝イベント」レポート(前編)
2023.09.13 イベントレポート
選ばれる不動産会社の条件 DX で変わる!?不動産会社とエージェントのあり方 |HOUSECOM DX Conference
選ばれる不動産会社の条件 DX で変わる!?不動産会社とエージェントのあり方 |HOUSECOM DX Conference
2023.04.24 イベントレポート
日本の不動産業界は DX でどう変わるのか? 変えるべき「業界」「企業」「顧客体験」の 3 要素 |HOUSECOM DX Conference
日本の不動産業界は DX でどう変わるのか? 変えるべき「業界」「企業」「顧客体験」の 3 要素 |HOUSECOM DX Conference
2023.04.19 イベントレポート
「不動産テックEXPO」で見えてきた3つのトレンド
「不動産テックEXPO」で見えてきた3つのトレンド
2023.01.26 イベントレポート
【不動産テック協会】Carstay、リビン・テクノロジーズ、GOGENの代表がプレゼン
【不動産テック協会】Carstay、リビン・テクノロジーズ、GOGENの代表がプレゼン
2023.01.17 イベントレポート
投資家が考える選ばれる会社の条件|HOUSECOM DX Conference
投資家が考える選ばれる会社の条件|HOUSECOM DX Conference
2022.12.21 イベントレポート

記事広告掲載について

スマーブでは、不動産テックに関する記事広告をお申込みいただく企業様を募集しております。どうぞお気軽にお申込みください。