徹底調査! 不動産業界の採用・人材育成現場を変貌させるHRTechの可能性

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徹底調査! 不動産業界の採用・人材育成現場を変貌させるHRTechの可能性

はじめに

少子高齢化による労働力不足が深刻化する今、人材の確保や育成はあらゆる企業にとってますます重要な課題となっています。不動産業界においても、特に全事業所の8割以上を占める小規模な事業所にとって「いかに良い人材を確保し、効率よく育成できるか」は、ある種至上命題と言っても良いかもしれません。

今回は、こうした課題をテクノロジーで解決する「HRTech」に注目。HRTechは、不動産テック(PropTech、Real Estate Tech等とも)やFintech(金融)のように、既存の業界に最新のテクノロジーを掛け合わせて新たな価値を生み出す「X-Tech(クロステック)」の中でも、特に活況な領域の1つですが、不動産業界でも活用できそうなサービスが次々に登場してきています。他業界での導入事例も交えて、詳しく見ていきましょう。

高齢化が進む中、若い人材が求められている

内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によると、2017年10月1日時点で、日本の総人口1憶2,671万人うち、27.7%にあたる3,515万人が65歳以上の高齢者。この「27.7%」という数字は、世界一の高齢化率となっています。今後も総人口が減少する中、高齢化率は上昇傾向が続くと推計されています。

また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、生産活動の中核を成す15~64歳の「生産年齢人口」は1995年の8,726万人をピークに減少傾向が続いており、2015年の国税調査では7,728万人(人口総数の60.8%)にまで減っています。このままいけば、2029年に7,000万人を割り(同58.0%)、2040年に6,000万(53.9%)人、2056年には5,000万人を割り込み(同51.6%)、2065年には4,529万人(同51.4%)にまで減少すると推計されています。

最近では65歳以降も元気に働き続ける人が増えてきているとはいえ、若者が減少し続けているのは事実です。この状況は、2014年時点で118万4,373人もの従業者を抱える不動産業界(2014年時点の従業者数。不動産流通センター「2019 不動産業統計集」より)でも無関係ではありません。

一方、労働者の高齢化という現状の中で、不動産業界ではどのような採用ニーズがあるのでしょうか。厚生労働省が発表している「平成27年転職者実態調査の概況」を見ると、採用活動の傾向として、全産業では事業所の規模が小さいほど、新規学卒者より転職者を優先して採用する傾向にあるようです。しかし、小規模な事業所が多いはずの不動産業界のみで見た場合、他業界に比べて新卒者を求める傾向にあるらしく、同調査の「今後3年間の採用予定」についての調査結果を見ると「不動産業,物品賃貸業」に分類される事業所の21.0%が「新規学卒者を優先して採用したい」と回答しており、「電気・ガス・熱供給・水道業」の24.6%に次いで2位となっています。

産業・事業所規模、今後3年間に転職者を採用する予定の有無、採用の希望別事業所割合
産業・事業所規模、今後3年間に転職者を採用する予定の有無、採用の希望別事業所割合
【出典】平成27年転職者実態調査の概況より:【URL】(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-h27-1-04.pdfより)

業界内での転職率が高い、といわれる不動産業界ですが、上述の通り、新規学卒者を対象にした採用活動も積極的に行なっているようです。

さて、このように新規学卒者の需要が高い不動産業界ですが、新規学卒者を採用した際、業界の構造や基礎知識はもちろん、ビジネスマナー等も教える必要があります。日々の業務に忙殺されがちな小さな事業所では、なかなかそこまで手が回らない場合も多いでしょう。

人材育成の重要さを認識していながらも、人手や資金力の不足から優秀な人材を確保できない……。今、こうしたジレンマを解決するHRTechサービスが注目を集めています。

人材採用・育成をサポートするテクノロジー

2019年4月24日、不動産業に携わるすべてのプレーヤー共通の指針として、国土交通省の社会資本整備審議会産業分科会不動産部会が四半世紀ぶりに「不動産業ビジョン2030」を策定したと報じられ、業界内で話題を呼びました。

その中でも、これからの業界の在り方として「信頼産業としての一層の進化」を目指すために、「不動産業に携わる者の資質向上・人材育成を一層推進するとともに、業務の適正化やトラブル防止に向けた体制を充実」させる必要がある、という記述があります。加えて、少子高齢化・人口減少下においても業界を発展させていくには、「継続的に不動産業の担い手を確保」することが重要だとも書かれており、その手段として教育体制の充実や業務効率化等の取組を推進することによって、不動産業従事者の満足度を高めつつ働く環境を整備していくことが求められる、とされています。「人」と「情報」が支える不動産業において、人材の確保や育成につながる施策を行うことの重要性が繰り返し説かれているのです。

本来、「HR(Human Resources):人事・人材」とテクノロジーを掛け合わせた「HRTech」がカバーする範囲は、求人・採用業務から給与計算や勤怠管理のような労務管理に至るまで広範にわたりますが、今回は「採用」や「人材育成」をサポートしてくれるようなサービスを中心に見ていきましょう。

インタビューメーカー

現職が忙しくてなかなか時間が取れない応募者等とも、PCやスマートフォン、タブレットを使っていつでもどこでも面接できる「ウェブ面接」が特徴的な、ブルーエージェンシーによる採用管理システム。面接に関する時間や場所の制約を取り払い、応募者数と面接実施率を大幅に向上させ、劇的な採用効率アップを実現するサービスです。
ウェブ面接のほかにも、事前に面接可能な日程を登録しておけば、応募者が面接可能な日を予約するだけで日程調整が完了する「自動スケジュール調整」機能や、応募者の採用段階がひと目で分かる「ステータス管理」機能等を備えています。
1000社を超える導入企業に実施したアンケートから、面接数300%向上、面接人員コスト50%削減、面接設置工数100%削減という結果が明らかになっており、不動産業界でもレオパレス21や東急リバブル、投資用不動産の売買や仲介等を行うリッチロードで導入されています。
ウェブ面接は時間や距離の成約に縛られないだけでなく、面接の模様を録画した映像を面接担当者だけでなく、社内で共有することで、採用後のミスマッチ等が起こりづらくなるという効果も期待できます。また事業所の規模が小さい場合、専任の採用担当者がいないので、交代で面接官役を担当する場合も多いでしょう。その場合、お互いに面接動画を見せ合うことで、社内全体の面接スキルや質を均一化し、向上させることができそうです。

インタビューメーカーサイト
インタビューメーカーサイト【出典】インタビューメーカーサイトより:【URL】http://interview-maker.jp/

Schoo

参加型の生放送授業と、4,600を超える授業動画で、仕事に活きる知識やスキル、考え方を学ぶことができる、Schooが展開する動画学習サービス。インターネット経由でPCやスマートフォンアプリを利用して学習できる、いわゆる「eラーニング(e-Learning)」システムです。
上記の個人向けサービスで展開されている生放送授業は、どちらかというとITやWeb業界のトレンドを取り扱ったものが多いようですが、企業の社員研修や人材育成に特化した法人向けサービスも提供されています。
新入社員や中堅社員などの階層別、営業職や事務職などの職種別に豊富な動画教材が用意されているため、学習者それぞれに最適な研修プログラム作成することができます。また、プログラムにはスマートフォン等で撮影した動画も組み込めるため、例えば不動産仲介営業担当者向けのプログラムを組みたいのなら、既存の営業向け授業動画に加えて、補足として不動産仲介営業ならではのポイントを盛り込んだ短めの動画を撮影して、セットにしておくといった使い方ができるのではないでしょうか。
法人向けサービスの導入企業数は600社、一般向けサービスの会員数は30万人を突破する、今注目のHRTechサービスです。

Schooサイト
 Schooサイト【出典】Schooサイトより:【URL】https://schoo.jp/

SAKU-SAKU Testing

累計導入社数1300社(2018年10月利用実績)・導入継続率98%(2018年5月時点)を誇る、クラウドを使ったWEBテスティングプラットフォームです。イー・コミュニケーションズが手掛けています。こちらもeラーニングサービス。
コンプライアンスやビジネスマナー、コミュニケーションなど、あらかじめ用意された全50ジャンルの汎用教材を自由に組み合わせて利用できるほか、独自の学習コンテンツを作成することも可能です。パワーポイントや動画、スライドや音声、テキストなど多様な形式を使って、独自の学習コンテンツを作成することができます。中でもベーシックなドリル型教材は、専任担当者がいなくともExcelで簡単に作成することが可能。
PCやタブレット、スマホだけでなく、いわゆる「ガラケー」と呼ばれる携帯電話にも対応しており、学習者はすきま時間を利用して繰り返し学習することができる仕組みです。
賃貸不動産の管理運営や仲介斡旋業等を行うハウスメイトパートナーズでは、個人情報保護等のコンプライアンス教育に活用されています。

SAKU-SAKU Testingサイト
SAKU-SAKU Testingサイト【出典】SAKU-SAKU Testingサイトより:【URL】http://www.e-coms.co.jp/service/saku-saku-testing/

資格スクエア

サイトビジットが手掛ける、資格試験対策に特化したオンライン学習サービスです。同サービスでは宅建士講座を展開しているため、ご紹介します。
また、同社は2018年10月9日、AIスタートアップのGAUSSと共に平成28年度までの過去問を学習させて作成した予想問題「未来問」を開発したことを発表。同月17日には宅建士合格を目指すお笑いコンビ「2700」のツネさんがこれに挑戦し、注目を集めました。
不動産業界でのキャリアアップを目指して、宅建士の資格取得を目指す方は少なくないでしょう。合格率約15~18%の難関試験を突破するには、過去問の分析や対策は必須事項。日々の業務をこなしながら合格を目指すなら、こうしたサービスを活用して効率的に学習を進めるのも有効な一手かもしれませんね。

採用活動時に応募者の中から素早く優秀な人材を見抜き、自社に定着させることができる不動産会社は、同業他社が多く転職率が高い不動産業界では競合に差をつけることができるはずです。しかし、小規模な事業所では人事部や専任の採用担当者がいない場合がほとんどでしょう。HRTechを活用すれば、コストや手間、時間をカットして募集から採用までをスピーディーに行なえるだけでなく、従業員と応募者双方のミスマッチを小さくして、定着率の向上を図ることができそうです。

また、人材育成においてもHRTechを活用すれば、新規学卒者のみならず、転職者、既存の従業員にも学習機会を提供することが可能です。eラーニングは場所を選ばずに自分のタイミングで学習できる一方で、一人で自発的に学習しなくてはならないため、「継続しづらい」というデメリットが指摘されることもありますが、最近はSchooやSAKU-SAKU Testingのように、教育担当者のニーズや利用者のアクセス状況・学習時間、要望等を分析し、サービスに反映することで学習効果を高め、繰り返し取り組みたくなるような仕組みづくりをしているサービスも多数存在します。これらを活用することは、スキルアップを望む従業員の満足度向上にもつながりますし、何より組織全体の能力を底上げすることができるでしょう。テクノロジーの力を借りることで質の高い採用活動・人材育成が行える環境が整いつつあります。

資格スクエアサイト
資格スクエアサイト【出典】資格スクエアサイトより:【URL】https://www.shikaku-square.com/

トップ営業マンの技術をそのまま体験? 育成現場はどう変わる

2019年2月7日に「HRTechクラウド市場の実態と展望 2018年度版」を発刊したミック経済研究所によると、2018年度のHRTechクラウド市場は大手ベンダーと新サービスの参入を受けて、前年度比139.7%の250.8億円に達し、本格的な成長期へ移行しているそうです。また、労働人口が減少する中で、採用や人材確保、人材活用・育成ソリューションが一層重要度を増し、大きく成長を続けているとの分析も発表されています。2023年度には1,000億円以上の市場規模になるとも予測されており、不動産会社にも導入が進んでいくと考えられます。

最新サービスの中には、「HEKIRA」のようにVR技術を使って会社の人材が持つスキルそのものを資産化するという驚きのアプローチも。これは、営業や接客、人事、フィットネスなど、口頭や書面では伝えづらい分野の技術や能力について、社内でトップクラスの実力を持つ従業員の動作をVR動画として撮影・編集することで、専用のヘッドマウントディスプレイを被ればいつでも好きな時にベテラン技術者の動作や思考を疑似体験できる、VR学習コンテンツを作成するというものです。

奥行きのある三次元的な「体感」ができるため、高い学習効果を持つVR教育は世界各国の企業研修の場でも採用されはじめています。例えば、世界最大のスーパーマーケットチェーン・Walmart(ウォルマート)では、混雑時の対処法など、通常では再現しづらい状況をVRで体験させる研修を行っており、受講者の知識定着率を従来の講義よりも10%高い、75%に引き上げることに成功したそうです。また、ケンタッキーフライドチキンで知られるKFCコーポレーションでは、フライドチキンの揚げ方などをVRで体験する研修を導入し、実際のキッチンでは25分かかるトレーニングが10分で完了するようになったといいます。(HEKIRAサイトより)

日本ではまだVRは広く普及している技術とはいい難いかもしれませんが、VRやMRは「体験を共有できるメディア」として、こうした利用法も期待されてきます。不動産業界でも、新入社員が入社3日後には敏腕営業マンのスキルを完璧に再現してみせる……という光景が見られるようになるのかもしれません。

まとめ

「不動産業ビジョン2030」にも記されている通り、不動産業は人と情報が支える産業です。今回はそのうち「人」について見てきたわけですが、数に頼る働き方が通用しなくなっていく未来が予期されている以上、会社や業界を維持・発展させていくには、やはりこれまでとは違った働き方を考えていく必要がありますし、従業員一人ひとりに求められるものはますます大きくならざるを得ません。

こうした状況の中においては、既存の不動産業務を効率化する類の不動産テックサービスを導入するのも、もちろん働き方を見直すきっかけになるでしょう。しかしそれだけでなく、時には汎用的な「採用」や「人材育成」、そしてそれらを最適化する技術に目を向けてみると、思いがけず自社を大きく成長させる種が見つかるかもしれません。

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