VR技術の上位版? MR技術で実物大の建物を出現させる

- MR技術とはVRやARの上位版で、仮想世界と現実世界を融合させる技術のこと
- 建設予定地にマンション完成イメージを原寸大で映し出す"ホログラフィック・マンションビューアー"
- マンション購入検討者や、デベロッパー含む不動産会社側にもメリットをもたらす可能性
MR(Mixed Reality)とは
VR(Virtual Reality)は仮想現実、AR(Augmented Reality)は拡張現実を意味しますが、「複合現実」を作り出すMR(Mixed Reality)という最新技術が様々な分野で導入されています。それぞれの技術の概要は以下の通りです。
- VR:デジタル上に人工的な仮想世界を作り、映された景色を現実世界のように体感させる技術
- AR:見えている風景(現実世界)に、デジタル上の情報(仮想現実)を重ねて見せる技術
- MR:ARとは逆で、デジタル空間(仮想世界)に、現実世界の情報を反映し、融合させる技術
少々複雑ですが、MRは仮想世界を現実世界に重ね合わせて体験できる技術で、VRやARの上位版と言えます。
VRの代表例は、ソニーが2016年10月に発売開始した"PlayStation VR"、ARの代表例は、2016年7月にリリースされたスマートフォンアプリ"ポケモンGO"があげられるでしょう。不動産業界では、VRを活用した内見や、ARを活用した家具配置シミュレーションなどの場面で活用されており、これらの技術が徐々に広がりを見せています。
MRの代表例 "Microsoft HoloLens"
MRの技術を使った代表的な商品は、日本マイクロソフトが2017年1月に提供開始した「Microsoft HoloLens(以下:ホロレンズ)」というHMD(ヘッドマウントディスプレイ)です。
PlayStation VR発売時、頭に装着するゴーグル型のHMDが話題になりました。ここでのHMDは、コンピュータによって用意されたゲーム映像(仮想世界)がまるで現実であるかのように体験できるVR向けHMDです。
ホロレンズの見た目はVRで良く使われるHMDと似ていますが、映し出される映像は閉ざされた仮想世界だけではありません。ホロレンズでは今見えている景色(現実世界)に、デジタルの仮想世界が映し出されます。"ホログラフ"と呼ばれる3DCGや動画などの映像情報を、現実世界へ重ね合わせるように表示できる点が従来のVR向けHMDと大きく異なります。
また、「ウィンドウズホログラフィック」というホログラフィック技術が用いられており、表示させた仮想ホログラムを、実際に"触る感覚"で操作をすることができます。
ホロレンズ越しに、マンションの完成イメージが更地に映し出される?
ホロレンズは不動産業界でも活用されています。野村不動産、プライムクロス、マイクロソフト社パートナー企業のネクストスケープ、この3社が共同開発したのが「ホログラフィック・マンションビューアー」という新サービス。2017年5月に発表されたこのサービスには以下の2つの機能があります。
- リアルサイトビューアー
マンション建設予定の敷地をホロレンズを付けて眺めると、更地に建物の完成イメージを原寸大で見れる機能。各階の窓の大きさや、建物の高さまで視覚的に確認できます。 - ホログラフィック外観ビューアー
マンションの外観模型をホロレンズ越しに"ホログラム表示"する機能。場所を選ばずに完成イメージを360度から確認できます。
2017年7月から販売が開始された「プラウドシティ越中島」が、新築マンション販売で「ホログラフィック・マンションビューアー」を導入した日本初(株式会社ネクストスケープ調べ)の事例になります。
ホログラフィック・マンションビューアーで広がる可能性
マンションを購入する際、日照、騒音、匂いの問題など更地の建設予定地を見ただけでは分からない事が沢山あります。この「リアルサイトビューアー」機能を使えば、まだ建っていないマンションの高さと周囲にある建物の高さを比較できるので、お客様が購入を検討している部屋の日当たりについても詳細なイメージを得る事ができます。また、隣接する商業施設に、カラオケ店や、焼肉屋・やきとり屋など煙が多く発生する飲食店があるようなケースも、夜にマンション建設予定地を訪れ、騒音や匂いの問題などをお客様自身が確認し、購入する部屋の階層を検討することも可能となるでしょう。
「ホログラフィック外観ビューアー」機能は、どこでもマンションの外観模型を再現できるので、場所を選ばずに不動産営業マンは販売促進が可能になります。
建築に携わる作業者や設計者にとっても、建設前にマンションの完成イメージを見れることは作業効率を高める要素になるでしょう。紙の設計図など2Dデータを使う場合よりも作業スピードが早くなることが考えられます。さらに建造物データとして配管、表面の加工まで多くのデータをホログラムに組み込めるようになれば、平面図よりもはるかに多くの情報をまとめて管理ができるようになるかもしれません。
現在ホロレンズは、開発者向けの「Development Edition」が33万3800 円、法人向けの「Commercial Suite」が 55万5800 円と少々高めですが、10分の1程の価格でコンシューマー版の発売も予定されています。写真や動画では伝えられない臨場感を伝えられる点や、デベロッパー含む不動産会社サイドにも役立つ事も多い点もあるため、活用場面がさらに拡大していくことも予想されます。