「物流2024年問題」の解決にも寄与、設備で人気の宅配ボックス最新動向
- 物流業界の「2024年問題」: 2024年4月から適用される自動車運転業務の時間外労働の上限規制により、輸送能力不足と配送サービスの影響が懸念されている。
- 宅配サービスの再配達問題: 再配達率の高さがドライバーの負担となっており、政府は「置き配」サービスへのポイント付与を緊急対策として発表。
- 宅配ボックスの普及: コロナウイルス感染症の影響もあり、宅配ボックスやオープン型宅配便ロッカーの利用が増加し、利用者からの評価も高い。
- 未来展望: 技術革新による宅配ボックスの進化が、物流業界の配送効率化や環境問題解決に貢献し、AIやドローン配送との連携が期待される。
物流業界の「2024年問題」とはなにか? 何が起きるのか?
働き方改革関連法2024年4月から自動車の運転業務の年間時間外労働について上限が960時間に制限される。自動車運転業務が指すのは、主に物流業界の「トラックドライバー」だ。労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、これまでのようにモノが運べなくなる可能性が懸念されている。これが物流の「2024年問題」だ。
長時間労働ができなくなるため、これまでのドライバーと同じ数では同じ量の業務がこなせなくなる。しかし、現状ドライバーの有効求人倍率は2023年2月時点で2.3倍となっており、非常に高い。慢性的な人手不足だ。
人手不足のなかで特に一般消費者と接点があるのが宅配業者だろう。彼らはネットショッピングなどで購入したものをすぐに届けてくれる。宅配業者もドライバーであり、今後は当日、翌日配達の宅配サービスなどが受け取れなくなったり、新鮮なものが手に入りづらくなったりするかもしれない。
彼ら宅配業者にとって負担となるのが再配達である。国土交通省によると、2023年4月の宅配便再配達率は11.4%。再配達のために同じ家に何度も行くことはドライバーの時間外労働にもつながり、負担増だ。そこで昨年10月には、政府が荷物の再配達を減らすために「置き配」にポイントを付与する緊急対策を発表したりもしている。「置き配」とは、あらかじめ指定した場所(玄関前、置き配バッグ、宅配ボックス、車庫、物置など)に荷物を届けてもらうサービスを指す。「置き配」を普及させることで、少しでもドライバーの負担を減らそうというわけだ。
ただ、戸建てなどと比べてマンションなどの場合、入口がオートロックになっていることも多く、不在時には場所の指定に悩むこともある。こうした中、注目を集めているのが「宅配ボックス」だ。
宅配ボックスのニーズが高まりつづけている
郵便受けや宅配ボックスを提供するナスタの「置き配に関する実態調査」によると、2023年の「置き配」利用率は67%となり、コロナ前と比べて2.5倍に増加しているという。宅配ボックスの設置率は40.5%で、住居形態別の設置率は「戸建住宅」31.1%、「マンション」62.0%、「アパート」23.3%となっている。
宅配ボックスの設置率【出典】https://www.value-press.com/pressrelease/329303
同調査では、置き配サービスを利用してよかったと思う人は93.7%と高く、サービスは利用者からも受け入れられていることがうかがえる。
実際、賃貸住宅の設備としても宅配ボックスの需要は高い。全国賃貸住宅新聞が毎年行う賃貸住宅の人気設備に関するアンケート調査により作成した、単身者向け物件の「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングで、宅配ボックスは10年以上連続でトップ10入りしている。
宅配ボックスは当初は外付け鍵付きのものが多かったが、最近では玄関脇に取り付け居室から取り出せるようなものもある。日本宅配システムの「戸別宅配ボックス」は玄関扉をあけることなく非対面で受け取ることができるため、防犯面からも注目を集めている。
スマートフォンと連携し、荷物が届くとお知らせが届く宅配ボックスもある。また家だけではなく、街でもオープン型と呼ばれる宅配便ロッカーが普及しつつある。「PUDO」はPackcity Japan(パックシティジャパン)が運営するオープン型宅配便ロッカー。駅、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、駐車場、公共施設などに設置されており、24時間都合のよいタイミングで宅急便の「受け取る」「送る」が可能になる。AmazonもAmazon ロッカーを展開中だ。これらの宅配便ロッカーであれば、自宅に宅配ボックスがまだなくても、近くのロッカーで荷物を受け取ることが可能となる。
国や自治体も後押しする「宅配ボックス」は2024年問題の解決策の一つ
国土交通省は1月31日にマンションの管理組合が規約の作成時に参考となるよう定めた「標準管理規約」の改正案を公表した。宅配ボックスの設置に関しても、出席者の「過半数」の賛成があれば可能だと示した。これまでの規約では宅配ボックスの設置における決議について示されていなかったのだ。
すでに先んじて荷物の再配達を減らすため、都市部の自治体は宅配ボックスの設置拡大に動いている。東京都江東区や埼玉県川口市は2024年の新築マンションへの設置を義務づける。江東区は3階建て以上の新築マンション(住戸数10戸以上)を対象に宅配ボックスの設置を義務づける改正条例を1月に施行した。川口市も4月から新築で1戸あたり40平方メートル未満で15戸以上のワンルームマンションを対象に義務づける。
ユーザーのニーズの高まり、そして2024年問題への対策で注目が集まる「宅配ボックス」は今後も進化が続くだろう。宅配ボックスの技術革新は、宅配業者の負担軽減はもちろんのこと、賃貸不動産市場の競争力強化、さらには持続可能な社会の実現に向けて、重要な役割を果たす。