水道管の老朽化問題をAIで解決? 事例を解説! 事業者の対策も

2024.03.11
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水道管の老朽化問題をAIで解決? 事例を解説! 事業者の対策も

水道の老朽化問題と法改正

日本は水道97.9%の普及率を達成しています。
高度成長期(1960~70年代)に水道管が整備され、普及率が急激に上昇しました。

【画像出典】厚生労働省 医薬・生活衛生局「最近の水道行政の動向について」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000203990.pdf

上の図のとおり、全国の水道管の多くは整備のピーク期から40年を超えている状況です。

水道管の耐用年数は、管の材質や使用状況、管路が埋まっている地盤などによって異なりますが厚生労働省は40 年を目安にしています。

経過年数とともに、水道管の事故率は高くなる傾向にあります。

【画像出典】厚生労働省「実使用年数に基づく更新基準の設定例」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/kousinkijyun_2.pdf

高度経済成長期に整備された水道管の更新が進まないため、管路の老朽化はますます上昇すると見込まれています。

【画像出典】厚生労働省 医薬・生活衛生局「最近の水道行政の動向について」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000203990.pdf

2015年度の管路更新率0.74%から単純に計算すると、全ての管路を更新するのに130年以上かかる計算です。

老朽化問題は住宅の水道管だけではありません。
例えば東京都では浄水場のから水を供給できる能力(施設能力)の約7割に相当する施設は、高度経済成長期に集中的に整備されたため、約50年経った現在機能維持のための補修や改良工事を行っています

加えて耐震化も進んでおらず、近年の地震による水道の被害状況が深刻化していること、水道事業に携わる職員数が減少し水道事業者のおよそ3分の1は給水原価が供給単価を上回っている(原価割れ)ことなどを踏まえ、2019年には水道法が改正されました。
改正水道法では、適切な資産管理の推進、官民連携の推進などの施策が盛り込まれています。

水道管の老朽化、事業者が取るべき対策とは

管理物件で水道管から水が漏れるといったトラブルが起きた場合には、直ちに修理業者に連絡を行いましょう。

寒冷地で水抜きをせずに数日家を空け水道管を凍結させたなど入居者に過失がある際には、入居者に費用を請求することがあります。しかし、基本的に経年劣化による破損などは業者がオーナーと相談し費用を負担します。

地方自治体も水道管を管理していますが、管理の範囲は地中に埋設している配水管です。
配水管は配水池から各家庭の近くまで配水をするための管で、給水管は配水管から各家庭の蛇口に給水します。

よって配水管から分かれた給水管~各蛇口、共同管はオーナーの所有物です。
経年劣化による給水管のトラブルは、オーナーや管理会社が負担することになるでしょう。

老朽化した水道管は濁水(赤水)や漏水・水圧低下を引き起こす恐れがあります。
昔は定番の材質であった鉄管・鉛管は国土交通省の「水道事業者等における更新実績を踏まえた実使用年数に基づく更新基準の設定例」によると、更新基準の初期設定値は40年です。
ポリエチレン管・硬質塩化ビニール管・コンクリート管なども40年が目安となっています。

水は生きていく上では欠かせないものの1つですので、管理会社としては早急な対応が求められます。対応が入居者にとって不十分であれば、オーナーの信頼を損ねてしまう可能性があります。

築年数が40年以上経過する建物を複数管理している場合、水道管トラブルにより自社の費用負担が増える可能性があります。あらかじめ以下の対策を講じることを検討しましょう。

  • 築年数が40年以上の物件をピックアップする
  • 水道管の老朽化や費用負担についてオーナーと話し合っておく
  • 水道管の修理を踏まえた管理費を設定する
  • 早急な対応ができ、修理費用が高くない水道管の修理業者を探す

2018年の水道法改正により、官民連携のAIを活用したプロジェクトが複数進行しています。

水道管×AIの事例

  • クボタがAI技術を活用し、福岡市の水道管路の老朽度を診断
  • 丸紅がAIで仙台市・足利市の水道老朽化を「見える化」

1.クボタがAI技術を活用し、福岡市の水道管路の老朽度を診断

株式会社クボタは2023年12月27日に、福岡市水道局から水道管路の老朽度診断・長期評価に関する業務を受注したことを発表しました。
2022年度に福岡市水道局は、民間企業と共同でAI 技術を活用した管路劣化予測の研究に取り組み、AIにより道路を掘削することなく劣化予測ができることを確認しました。

【画像出典】福岡市水道局計画部計画課「“世界トップの低い漏水率”に AI 技術が貢献!!」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/115084/1/231130_AIkanrorekkayosoku.pdf?20231206113451

期間は2023年12月1日から2024年2月29日までで、福岡市内の全配水管約4,000㎞が対象です。

2.丸紅がAIで仙台市の水道耐用を

丸紅株式会社は、2023年6月21日に仙台市水道局が公募した「水道管路アセットマネジメント検討業務委託」の受託者として契約を交わしました。

丸紅の子会社であるポルトガルの上下水道事業会社「AGS - Administração e Gestão de Sistemas de Salubridade, S.A.」の管路更新最適化サービス「infrawise(インフラワイズ)」を活用します。

「infrawise」は漏水調査対象エリアをメッシュ(100m×100mなど)で区切り各メッシュの漏水優先度を表示、更新管路の優先順位を測定して表示するなど老朽化の「見える化」を行います。



【画像出典】国土交通省「2023年度第4回水道分野における官民連携推進協議会 官民 連携に関する企業紹介資料」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001176433.pdf

栃木県足利市でも「infrawise」導入に先立ち、2023年8月から管路劣化予測診断の実証実験を実施しています。


【画像出典】足利市役所「AI解析技術を活用した管路劣化予測診断の実証実験を実施します」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/living/000021/000137/p005226.html

まとめ

全国の水道管老朽化問題で、官民連携のAIを活用したプロジェクトが複数進行しています。
管理業者としては、できるだけ早急に対応できるよう対策を講じておきましょう。

 

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
X:https://twitter.com/writertanaka19

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