能登半島地震で注目集める「即席住宅」とは何か?
- 能登半島地震による被害から仮設住宅の準備が進む
- すぐに用意ができない状態の中で、インスタントハウスなどのすぐに設置できる仮住まいが注目を集めている
- 新しい「住」の在り方を考えてみる
令和6年能登半島地震の被災地である能登町町立鵜川小学校に小さな家ができあがった。LIFULL(ライフル)とグループ会社のLIFULL Architectが提供した「インスタントハウス」だ。同製品は災害時にも簡単に組み立てられるシェルター。LIFULL Architectの代表でもある名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究を元にLIFULLと名古屋工業大学大学院による産学連携協定で開発した新しい構築物だ。2011年3月に起きた東日本大震災での被災地支援をきっかけに誕生した。
被災地に設置されたインスタントハウス 【出典】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000423.000033058.html
インスタントハウスはシンプルな工法で1棟あたり最短1時間での設置が可能なだけでなく、断熱性や耐久性に優れ、さらに耐震性、耐風性をあわせもつ。
今回設置されたのは、パージ型と呼ばれるものと、バレル型と呼ばれる2種類。パージ型は膨らませる、吹き付ける、分割する、組み立てるというシンプルな工法で「施工~移設~組み立て」までの一連作業が3日間、現地での作業時間は1~2時間で完成するという。5~10名が談話したりカーペットを敷いて寝転がったりできる。
バレル型はコンパクトで軽量、組み立てが簡単。スキマスペースに約1時間で設置できる。断熱材の壁に囲まれており、内部では1~2名が横になれる。
同社では平常時は能登の自然を感じられる宿泊用として、そして今回のような地震や風水害時の避難用として役立てられる備えない防災として今後も展開していきたい考えだ。
仮設住宅の着工計画は進むが、その間の状態を「即席住宅」がカバーする
石川県は能登半島地震で家を失った人のための仮設住宅について、1月25日に輪島市で320戸を追加で着工すると発表した。県はこれまで76戸と発表していたが、大幅に追加することになった。輪島市以外もあわせると1月末までに960戸が着工される予定だが、仮設住宅の申し込みは輪島市だけでも4140件あるという。なお、石川県は1月23日に3月末までに仮設住宅や公営住宅など約1万3000戸を提供する計画も発表している。
大手ハウスメーカーも災害対策本部を立ち上げ、住宅オーナーの安否確認や被災状況の調査・把握などの対応を進めている。ただ主要な道路が多くの箇所で被害を受けて寸断されており、たどり着けない箇所もある。
大手ハウスメーカーもオーナー向けの情報発信を行う。画面はセキスイハイムのオーナーサポートページ【出典】https://www.sekisuiheim-owner.jp/contact_info/
こうした中で仮設住宅のなかでも、とりわけ簡単に設置できるサービスに注目が集まっている。冒頭のインスタントハウスもその一つだ。自宅が全壊し、中能登町で避難をしている女性に聞くと「体育館にテントを張っているが、寒さは防げない」と嘆きインスタントハウスの存在を伝えると、これなら寒さも少し和らぎそうと話した。
こうした取り組みはインスタントハウスだけではない。ほかにも、建物としての完成品をトラックに載せることで運べる住宅「ムービングハウス」も珠洲市や輪島市に提供されている。こちらも東日本大震災をきっかけに開発されたという。住宅内部は約30平方メートルで風呂やトイレ暖房設備も完備しているのでインスタントハウスより性能は高い。
ムービングハウス 【出典】https://movinghouse.or.jp/movinghouse/
今後仮設住宅への移行が進むまでの間、避難所での生活で少しでも暖かくほっとできる空間を作り上げようと各社の取り組みが進んでいる。インスタントハウスや、ムービングハウスのようにこれまでのプレハブや既存住宅の借上などとは異なる特徴を持った「即席住宅」が生まれ、それが実際に活用されている。そしてそれが多くの人々の救いになっていることにも目を向けてみると、これまでのような大量生産とは違う「新しい「住」」の在り方も見えてくるかもしれない。
取材・文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。
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