【レポート】リブセンス芳賀一生をクローズアップ!「住宅・不動産テクノロジー(TECH)フォーラム」

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【レポート】リブセンス芳賀一生をクローズアップ!「住宅・不動産テクノロジー(TECH)フォーラム」

6月11日(月)、21日(木)に、東京都渋谷区にある、シダックスカルチャーホールにて、不動産テックイベントが開催されました。題して、「住宅・不動産テクノロジー(TECH)フォーラム」です。

主催は、株式会社不動産経済研究所です。イベントには、28社が登壇、10社がブースを展示しました。今回より、当日の発表内容をいくつかピックアップして、イベントレポートを掲載します。イベントレポートの内容は、登壇した企業の講演です。講演で使われたスライドの内容は、1冊(1日分が)100ページほどの冊子にまとめられ、来場者に配布されました。第1弾となる今回の記事では、リブセンスの講演を紹介します。登壇者は、『IESHIL(イエシル)』『DOOR賃貸(ドア賃貸)』などの不動産テックサービスを統括している、芳賀一生(画像下)です。

今回の記事では、当日の発表内容を一挙に掲載します。じっくりとご覧ください。「はじめまして、リブセンスの芳賀一生(はが・いっせい)と申します。私は、履歴書の経歴欄に、「特技・転職」と書けるほど、新しい事業や仕事に興味のある人間です。

キャリアのスタートはエンジニアですが、ディップさんでは求人の営業、ヤフーさんではポータルの広告事業や企画、バリューコマースさんではアフィリエイトの広告領域、Amazonさんではホーム事業部という部署でキッチン用品の販促を担当していました。

リブセンスにジョインしたのは、2015年3月です。最近では、今年(2018年)の1月5日に、スターツコーポレーション株式会社様と、「株式会社フィルライフ(以下、フィルライフ)」というジョイントベンチャーを作りました。オフィスは、日本橋です。私は、リブセンスとフィルライフを兼務するかたちで、両社にかかわっています」「直近の出来事を紹介させていただきますと、『不動産テックの課題』という書籍への寄稿があります。土地総合研究所さんが出版された書籍です。不動産テックをもっと広めていきたい、という思いから発刊に参加させていただきました」

■1. リブセンスについて

「本日発表テーマは、次の4つです。

■1. リブセンスについて
■2. 不動産テックの流れと未来
■3. 不動産テックは消費者が牽引する
■4. 私たちが警戒すべき本当の未来

まず、リブセンスについてを簡単に紹介させてください。一時期、村上太一の名前が、メディアで大きく取り上げられました。早稲田大学のなかで起業し、大学1年生のときにビジネスコンテストで優勝。インキュベーション施設で、数名のスタッフからスタートしました。2006年の出来事です。

その後、リブセンスは2011年に東証マザーズ、2012年に東証一部へ上場をはたします。村上は、当時25歳です。この最年少上場記録はいまも破られていません。

リブセンスのオフィスは目黒がメインになっていまして、会社には非常に多くのエンジニアが在籍しています」

お客様へどこよりも透明化された不動産サービスを提供する

「リブセンスが提供しているサービスは、大きく2つあります。HR事業と不動産事業です。この会場にブースを設けている『IESHIL(イエシル)』を筆頭に、『DOOR賃貸(ドア賃貸)』や、最近リリースした『IESHIL CONNECT(イエシルコネクト)』というサービスが、不動産事業にあたります。

そのほかに、『SUMAVE(スマーブ)』という、不動産テック専門のニュースサイトもてがけているのが、リブセンスの不動産事業です」「私たちが、ミッションステートメントとして掲げているのは、「お客様へ、どこよりも透明化された不動産サービスを提供すること」です。実現のための一歩として、IESHIL(イエシル)の提供をはじめました。

立ち上げたのは、2015年8月です。通常の不動産メディアに比べると、少し特異なサービスになっていまして、1都3県の居住用マンションを部屋別に価格査定しています。査定にあたり、当社独自のプライシングエンジンを開発しました」

「査定しているマンションの数は約27万棟。それらを1部屋ごとに、価格査定している点が特徴です。イエシルでは、無料会員に登録していただくことで、査定された相場価格を閲覧できるようになっています。現在、登録会員の数は12万人ほどです。この数は、いまも増えています。

また、イエシルコネクトでは、アジア航測様と事業提携をしました。ご提供しているのは、災害リスクなどの住環境データが見られる、不動産業界のかた向けサービスです。これを私たちは、無料で提供しています。現在、1,000アカウントくらいをご登録していただいている状況です」

特徴的な、リブセンスの横断部署

「リブセンスという会社の体制も、少しお話させてください。私たちが所属する、不動産ユニットには、大別すると次の2つのグループがあります。

  • ビジネス推進グループ
  • プロダクト企画グループ

それぞれ、20名くらいのスタッフが在籍しています。ビジネス推進グループは、営業やオペレーションの業務が主になっています。プロダクト企画グループは、ディレクター、デザイナー、エンジニアなど、作り手が主のグループです。

リブセンスの特徴の1つに、「横断部署」があります。たとえば、テクノロジカルマーケティング部です。いわゆる、データサイエンティストで、データ解析に特化しています。この部署とリレーションをとり、ビジネスパートナーや大学教授にご相談しながら、イエシルの査定エンジンを開発したという経緯です。とても、いろいろなことに挑戦しながら現在にたどり着いた状況ですね」

大京穴吹不動産×IESHIL

「不動産ユニットには、長く、不動産業界を経験したスタッフがいたり、IT企業の広告営業で活躍していたスタッフがいたりします。さまざまなバックボーンを持った人間が集まっている点は、私たちの強みです。

たとえば、フィルライフには、ビシっとネクタイをしめ、スーツ姿の人がいる一方で、私のようにポロシャツ、ジーンズ姿の人もいます。前者の多くは、スターツ様から出向されているかたがたで、後者はリブセンスから出向しているメンバーです。はたから見ると、少し変わった組織として映ることでしょう。でも、私はすごく重要なことだと思っています。

IT企業に偏った組織構成で事業を進めてしまうと、不動産業界の実務がわかりません。「実務がわからない人間だけでは構築できない」ことを、私は、あるとき痛感しました。

何がいいたいかというと、不動産業界で実務に精通したスタッフと、テクノロジーに強いスタッフが融合しているのが、リブセンスの強みなのではないかということです。その強みを生かした、象徴的な取り組みが、大京穴吹様との事例です」

画像引用元:大京グループのニュースリリースより

「リブセンスが持っているAIの査定エンジンを使い、大京穴吹様のダイレクトメールなどに、「AI推定価格」を記載します。「自分の部屋の相場価格は、これくらいの価格なのか」という情報を売り主様やオーナー様に向けて、イエシルがご提供させていただいた事例です。

自分の物件の相場価格を知った売り主様は、大京穴吹様の不動産仲介にて商談する、という新しい流れを創出することを目指しています。PMでもありながら、AIの査定エンジンをミックスさせた、新たな施策です。「AIなどのテクノロジーは、不動産会社様の実際の現場で、どうやって使えるか」など、目線を現場のかたと同じ高さに揃え、意見交換を重ねながら、リブセンスは事業を進めています」

■2. 米国に学ぶ、最新不動産テックの流れ

「ここまでリブセンスの現状をご紹介してきましたが、次は、不動産テック全体の流れと未来についてをご紹介したいと思います。

画像の情報出典元は、ベインキャピタルというグローバルなファンドです。この図は、米国の不動産テック動向についての縮図ですが、非常に示唆に富んでいます。

まず、「不動産テック1.0」で登場したのが補完型のサービスです。次に、「不動産テック2.0」で競合型のサービスが登場します。今後についていわれているのが、「不動産テック3.0」である、合成型のサービスの隆盛です。

補完型とは、不動産会社さんにとって、何かプラスになるようなサポートをする会社さんを指しています。送客や、SUUMOさんやLIFULLさんなどのサービスですね。

そのあとに何が出てきたかというと、競合型の不動産テックサービスです。ここでは、WeWorkさんやAirbnbさんが代表的でしょう。REDFIN(レッドフィン)という企業は、2017年にIPOを成功させている不動産テック企業で、自社で仲介もしています。

その先である、「不動産テック3.0」では、プラットフォーマー、IoT、ビッグデータなどの合成型が中心になるだろうと目されています。これが、米国不動産テックの動向です」

「日本はどうかというと、次の3つが挙げられます」

「最初に予想されるのは、メディアの統廃合です。ITリテラシの高い不動産会社さんの出現により、産業構造の変革さえ、起こり得ると思っています。1つずつ、解説していきます」

1、情報取得先の変化とメディア統廃合

「グルメサイトを例に挙げます。これまでのグルメサイトは『ぐるなび』『ホットペッパーグルメ』が強い時代でした。しかし、現在は、『食べログ』『Retty』が主流です。

CtoCの物販なら、従来主流とされていた、『ヤフオク!』『楽オク』が、現在は若年層を中心に、『メルカリ』へと代替されています。

認知度の高いブランド、メディアが、ある日、突然に力を失う時代です。グルメサイトであれば、おおよそ、5年周期で変革するとされています。「同じことが、不動産テック領域でも起こり得る」というのが私の予想です。つまり、不動産情報取得サイトでも、「優位な立場の入れ替わり」が起こるのではかいかと、考えています」

2、ITリテラシの高い不動産業者の誕生

「ITリテラシの高い不動産業者さんが誕生することによって、新たな競合となることも予想されます。米国の場合はREDFIN(レッドフィン)が強力ですが、似たような存在が日本国内で現れるかもしれません」

3、産業構造の本格的な変化

「Uber Eats(ウーバーイーツ)による出前革命をご存知でしょうか。いま、Uber(ウーバー)という会社が、宅配員をクラウドで抱え、日本国内のさまざまな外食企業と提携しています。

宅配員を確保したUberが、外食企業に求めるのは、料理の提供だけ。これまで、ピザーラなど大手チェーンしかなかった宅配ピザも、現在は、個人経営のお店で提供しているピザが、Uber Eatsによって宅配されています。都内を中心に、いま、非常に流行っているサービスです。

宅配ピザや出前の産業構造を抜本的に変えてしまうUber Eatsのようなサービスが、今後は、不動産業界でも出現するであろうと考えています。

不動産テックの未来を語るときに、忘れてはならない要素が、もう1つあります。それは、消費者の存在です」

■3. 不動産テックは消費者が牽引する

「不動産業界の営業マンを、消費者の6割が、「信頼できない」と回答する調査があります(出典:iYell株式会社による調査「不動産会社の営業スタッフに対する男性消費者の印象」より)。この不信感を払拭するための解決策として注目を浴びているのが、営業マンごとのレイティング*です。

米国の不動産テック企業『Zillow』には、エージェントファインダーという機能があります。エージェントごとにレイティングされているため、安心して担当者を選ぶことができるのです」

「これまでの不動産業界では、営業マンから得る情報が主な情報源でした。しかし、現代ではクチコミを主な情報源とするユーザーが増えています。「信頼できる情報」への認識の変化が、すでに起こっているのではないでしょうか」

*ここでいうレイティングとは、さまざまな基準で、営業マンを「ランク付け」「数値化」することを指しています。ランクや数値によって、営業マンの信用度を測るような仕組みです。
「日本の不動産業界は、AIの活用が遅れている業界とされています。技術投資については、米国の10分の1である、という指摘も。

今後は、「ビッグデータを使ってAIが算出した情報=透明性の高い情報=信頼できる情報」という図式が支持される時代の到来も考えられます。「定量評価がしっかりされていて、数値の見える化ができているから安心」という消費者の増加です。そうした消費者の動向が、今後の不動産テックを「あるべき姿」へ向かって、引っ張っていくのかもしれません。

あるべき姿が浮き彫りになると、それまで光の当たらなかった部分の輪郭が、はっきりしてきます。見えてくるのはリスクです。それは、私たちが警戒すべき本当の未来です」

■4. 私たちが警戒すべき本当の未来

「グローバル不動産透明度で、日本は19位。市場ファンダメンタルズだと41位という報告があります。大きな要因として挙げられているのは、取引価格の開示です。

スコアの上位国や地域では、土地建物登記に際して、取引価格の開示を義務付けています。この点が、日本の減点材料として大きいのです。そのため、今後は取引価格を公開したほうがいいと、私は思っています」「不動産という、日本の国土を扱うサービスは、「made in Japan」で、しっかりとサービスを作り上げたいものです。そのためには、国内のデータを活用し、業界を構築することが重要だと考えています。

警戒すべき本当の未来とは、ITの強い外資に、日本の不動産業界が負けてしまう未来です。これまで、それほど光の当たらなかった部分ですが、予見できるリスクにほかなりません。勝つためには、国内の不動産業界を先進諸国に負けない業界へと進化させる必要があるのではないでしょうか」

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