「不動産テックEXPO」で見えてきた3つのトレンド

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「不動産テックEXPO」で見えてきた3つのトレンド

2022年12月5日〜7日に東京ビッグサイトで第7回ジャパンビルド-建築の先端技術展-が開催された。出展者は450社にのぼる大規模展示会の中で、不動産テックEXPOも同時開催されていた。SUMAVEでもこれまで多数取り上げてきた電子契約や、バーチャルステージング、スマートロックなどは定番化しており、展示ブースも大きなものが目立った。今回は筆者が見て回ってまだSUMAVEであまり取り上げられていないサービスを紹介していく。

ジャパンビルドの中にある不動産テックEXPOコーナー

不動産の賃貸・売買仲介の見える化・運営高度化

不動産の賃貸・売買仲介の運営を高度化する仕組みは、相変わらず活況だ。グラングの賃貸仲介業向けオールインワンシステムの「Grung core(https://grung.co.jp/)」は顧客管理、物件管理、売上管理・情報分析、マスタ機能の4つの機能を1つにまとめたサービスだ。情報を一見管理できるので、業務効率化が図りやすい。用途毎に複数のアプリケーションを利用している仲介業者もまだまだ多いが、トレンドはオールインワンで管理をしやすくしていく傾向がありそうだ。

一方でオールインワンになるほどコモディティ化されていない、いわばニッチな業務領域のデジタル化も進んでいる。例えば用地取得業務の見える化を行うのが、PASCOの「LMR」だ。用地取得業務に特化した業務支援システムで、バラバラに管理されていた物件情報を一見管理できる。ポイントは部署をまたいで共有することで、マンション事業部では小さい用地を、戸建て事業部で利用できるか検討が可能となること。これまで物件の間取りや一途などの図面情報や物件写真のほかに各物件の情報は個人の表計算ソフトや、部内のファイル管理などで管理されてきたことが多かった。これらをデジタル化し、全社で情報を共有することで新しいビジネスチャンスを見つけられる可能性がある。

PASCOは用地取得業務のDX戦略と銘打ち出展

1つの地図に情報をまとめることで新しい価値を生み出す

Grung core」や「LMR」は自社のデータを蓄積・見える化をすることで、運営を高度化していくものだが、情報を集積するプラットフォームも増えてきている。estieは、全国8万件以上、都心590%を網羅した日本最大級のオフィスビル情報プラットフォーム「estie pro」を提供している。オーナー・管理会社・元付仲介会社のオフィス空室情報と客付仲介会社を繋ぐサービスで、オフィス賃貸業務の効率化を目指している。

不動産業界もDXの波が来ており、会場ではSalesforce社やGENIEEなどMACRMのベンダーなども不動産業界に適応できるソリューションを展示していた。社内外におけるデータの見える化と運営の高度化を推進するサービス群が登場しており、企業側の使いこなし力がますます求められそうだ。

 

業界ならではの「面倒ごと」をデジタルで支援

不動産賃貸管理物件の空室期間に発生する費用や手間は、意外と多い。例えば、空室でも電気を通していなければ内覧があった場合、電気がつかない。そのため空室であっても電気を通しているケースが多い。これは地味にコストがかさむ。エネルギー事業のグランデータが提供する「Genesis賃貸」は、物件ごとの通電状況を管理画面で把握し、物件の通電・廃止をボタンで選ぶだけで手続きが可能。新規入居者の電気契約も即日提供できる。ウリは空室期間「電気料金0円」で、不動産管理会社の負担を軽減する。

売買仲介に特化した追客支援システムのHousmartの「PropoCloud」は、検討期間が長期化するエンドユーザーに対して自動的に継続接触し、反応をリアルタイムで追うことができる。不動産会社は顧客情報を入力するだけで、エンドユーザーにメールが自動で送られていく。反応があれば、その都度対応する。これまで営業が一人ひとり連絡をしていた追客を自動化することで、業務負荷の削減が期待できる。

JONの「シカクマップ」はGoogleマップ上から住所や地番で検索を行い、接道状況や筆界の確認を行った後、登記情報の取得までワンストップで行えるサービスだ。物件調査業務で「住所と地番の変換が出来ない」「ツールを併用しないといけない」といった苦労は実際に経験した人なら分かるだろう。在宅勤務で事務所備え付けの地図が使えない状況でもWEB上で土地形状の調査・用途地域の確認などが可能だ。

 

自社のDX推進により差別化

自社のDX推進で、新しい価値を提供する企業もあった。アスマップはアスベストの調査から除去解体までを行う会社だが、DX推進で24時間以内に報告書を提出する「デイラボ」という会社をグループ会社で持つ。通常なら検体郵送から報告書納品まで5営業日程度かかるアスベスト調査を、24時間以内に分析しメールで報告書が送られてくる。業務プロセスをDX化し、自動化・効率化を可能としたという。従来の業務をDX推進で通常よりもスピード感を持たせて、新たな付加価値を生み出す点で、DXのお手本のようなケースだろう。

不動産テックEXPOの隣ではスマートハウスEXPOが行われ、以前SUMAVEでも紹介したHOMETACTが大きくブース出展をしていた。別のフロアでは、建物OSなどでも紹介してきた建設DX展が行われていた。建設はリアルとバーチャルの連携が重要視されており、デジタルツインやドローン、遠隔操作などの展示が目立ち、不動産テックと比べると派手さはあった。新しいサービスやテクノロジーが多く登場しているが、大切なのは自社にとって何が必要かどうかを見極めて使いこなすかどうかだ。

取材・文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。
https://www.nplus-inc.co.jp/
https://twitter.com/nkmr

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