転出届をオンラインで提出!引っ越しワンストップサービスとは?業界のDX事例も
- 引っ越しワンストップサービスとは、「引っ越しポータル」を通じて地方自治体・民間事業者などで必要となる手続きを一括でできるようにするもの
- 2023年2月6日からは全ての市区町村で、マイナポータルを通じた転出届の提出と、転入予定市区町村への来庁予定の連絡が可能に
- 引っ越し業界でも、AIを活用した自動見積りアプリの開発、オンラインで見積りと予約ができるサービスの提供などDXが進んでいる
転出届がオンラインで提出できる!引っ越しワンストップサービスとは
引っ越しをする際には、地方自治体もしくは銀行・保険会社などの民間事業者に申請し住所の変更手続きを行わなくてはいけません。
例えば市町村に転入・転出届を出す、保険会社や銀行に住所変更届を出す、勤務先で所定の届出書に住所変更を記載するなどの手続きが必要です。
引っ越しは、物件探しや荷物の梱包・荷ほどきなどやるべきことが多いため「引っ越し手続きは面倒」と感じる方は多いのではないでしょうか。
このような手続きの負担や手続きの漏れといった課題を解決するためにデジタル庁が推進している政策が「引っ越しワンストップサービス(引っ越し手続オンラインサービス)」です。
引っ越しワンストップサービスとは、民間事業者が運営する「引っ越しポータル」を利用することで、地方自治体・民間事業者などで必要となる手続きを一括でできるものです。
【画像出典】内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「引越しワンストップサービス実現に向けた方策のとりまとめ」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/hikkoshi_doc1.pdf
2020年11月からは民間企業8社で引っ越しワンストップサービス実サービス検証が実地され(検証は既に終了)、2021年7月からは18の地方自治体が検討会・現地検証に参加しました。
2021年9月にデジタル庁が創設され、デジタル庁が「引っ越し手続オンラインサービス」として施策を引き継いでいます。
2023年2月6日からは全ての市区町村で、マイナポータルを通じた転出届の提出と、転入予定市区町村への来庁予定の連絡(転入予約)が可能となりました 。
今後は民間の引っ越しポータルサイトでも水道・電気・ガスなどの手続きや、転出届の提出・来庁予定の連絡を実現できるように、デジタル庁のホームページで引っ越しポータルサイト事業者向けにマイナポータルと連携するための仕様書を提供中です。
官公庁の施策だけではなく、民間企業でも引っ越しのDX化が進行しています。
引っ越し業界×DX、3つの事例を紹介!
- アート引越センター株式会社:AIが自動で見積もりをするアプリを開発
- アップル引っ越しセンター:Web見積り・引っ越し予約システム「ラクニコス」
- Shyft:世界の引っ越し会社の業務をDX化するサービスを展開
1.アート引越センター株式会社:AIが自動で見積もりをするアプリを開発
アート引越センター株式会社は2023年9月27日、DXの一環として「引っ越しAI見積りアプリ」(名称仮)の開発に着手したことを発表しました。
同社は、部屋の中をスマートフォンで撮影するだけでAI が自動で見積りを算出するアプリを株式会社アイスリーデザインと共同で開発しています。
【画像出典】アート引越センター株式会社 報道関係者向けプレスリリース「アート引越センター、ぐるっと室内を撮影するだけAI が自動見積りをする新アプリ 開発着手」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.the0123.com/company/pdf/release/20230927_ai.pdf
アート引越センター株式会社の報道関係者向けの資料によると、「アプリで部屋を撮影すると、データを基に 3D モデルが自動で生成され物量積算 AIエンジンによって自動で見積り金額が算出される仕組み」です。
アプリを利用することで、数分で見積り金額の算出が可能となる予定です。
アプリを使用したサービスの開始は 2024 年 2 月を予定しています。
これまで引っ越しの見積りをする際に、同社では営業担当者が見積りの対応をしていました が、アプリのリリースで営業担当者の負担軽減や省人化が見込めます。
ユーザーにとっても見積りの金額がすぐに分かる、見積り依頼のハードルが低くなるといったメリットがあります。
2.アップル引っ越しセンター:Web見積り・引っ越し予約システム「ラクニコス」
株式会社アップル(屋号:アップル引越センター)は、2016年11月にWeb見積り・引っ越し予約システム「ラクニコス」をリリースしました。
ラクニコスはWebで必要事項を入力すると、その場で料金が表示され予約もできるというシステムです。2021年のコロナ禍には利用者数が約7 倍に急増しました。
2020年2月に同社は2017年に運用を開始した「オリジナル引越しERP(統合基幹業務システム)」をバージョンアップしました。
バージョンアップによりお客様アンケートの自動入力・集計とBIツールを開発・実装が実現し、引っ越しに関するさまざまなデータが蓄積され、集計・分析をリアルタイムで行うことが可能となりました。
引っ越し業界は人手不足が課題の1つですが、株式会社アップルではITを利用し自動化・効率化を図っています。
3.Shyft:世界の引っ越し会社の業務をDX化するサービスを展開
Shyftは2016年に世界最大の引っ越し会社「Wheaton and Bekins Van Line」に勤めていたアレックス・アルパート氏が設立した企業です。
同社は2016年に顧客が動画を撮影することで、アルゴリズムにより荷物の体積や重さを認識できるアプリケーションを開発し、SaaSプロダクトとして世界中の引っ越し会社に販売を開始します。
引っ越し会社へのソフトウェア販売だけではなく、販売で築いたネットワークを活用し企業がオークションで入札できるマーケットプレイスも運営しています。
2018年には、83か国と1000超の地域で11言語をカバーする世界最大の引っ越し会社のネットワークを形成しました。
Shyftの純収益は、2021年の300万ドルから2022年には1300万ドルへ330%成長しました。2023年には130%増の3000万ドルになるという予測です。
慢性的な人手不足と言われている引っ越し業界 ですが、ユーザー向けのサービスだけではなく引っ越し業者向けのサービスでもDX化が進んでいます。
まとめ
デジタル庁の施策「引っ越しワンストップサービス(引っ越し手続オンラインサービス)」と、引っ越し業界のDXについてお伝えしてきました。
賃貸業界と関連が深い引っ越し業界では人手不足という課題を抱えていますが、AIアプリや見積りと予約のオンライン化などにより省人化・業務効率化を図っている企業もあります。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
X:https://twitter.com/writertanaka19