マンションの防犯カメラ、需要が増加!法律的には大丈夫?設置率や設置場所も解説

- マンションの防犯カメラ設置率は、分譲マンションが80%超・賃貸用マンションは35%超といわれている
- 防犯カメラを設置することで、犯罪が起きた際に役に立つ、家賃が相場より高めでも入居が決まる可能性がある
- 防犯カメラの映像データをクラウドに保存すると、スマートフォンやタブレットでも録画映像を確認できる。DXはスモールスタートで
マンションの防犯カメラは女性の単身世帯を中心に人気があり、賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング2022 この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まるランキング」の7位です。
約20年ぶりに犯罪が増加したこともあり、今後ますます需要は高まるでしょう。
ただし、防犯カメラで録画した本人と判別できる映像は個人情報に該当するため個人情報保護法に基づき管理しなければいけません。
今回はマンションの防犯カメラの需要の高まり、防犯カメラを設置するメリット・デメリット、個人情報保護のガイドラインやカメラの設置場所、選び方をお伝えしていきます。
マンションの防犯カメラ、設置率が増加!単身世帯に人気
マンションの防犯カメラ設置率 は、分譲マンションが80%超・賃貸用マンションは35%超といわれています。
国土交通省の「マンション総合調査」において、管理組合に防犯対策の実施状況を尋ねたところ「防犯カメラを設置した」が72.1%と最も多く、次いで「住戸の錠の交換を行った」
14.7%という結果です。
【画像出典】国土交通省「マンション総合調査結果 管理組合向け調査の結果」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.mlit.go.jp/common/001081457.pdf
大和ライフネクスト株式会社マンションみらい価値研究所が2021年に発表したレポートによると、同社が管理する物件の管理組合で開催された総会のうち、防犯カメラに関する議案で「防犯カメラの更新・増設」については75%に上りました。
【画像出典】大和ライフネクスト株式会社マンションみらい価値研究所「レポート 管理組合の防犯対策について」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.daiwalifenext.co.jp/miraikachiken/report/210331_report_01
さらに、犯罪の増加により防犯カメラの需要はますます高まると見込まれます。
警察庁の「2022年の犯罪情勢」によると刑法犯認知件数の総数が約20年ぶりに増え、中でも街頭犯罪と自転車盗、傷害及び暴行が増加中です。
実際に、賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング2022 この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まるランキング」において、防犯カメラは単身世帯の7位でした。
マンションに防犯カメラを設置するメリット・デメリット
上記のように防犯カメラは需要が高く単身世帯に人気がありますので、マンションに設置するとやや高めの家賃設定でも入居者が決まる可能性があります。
東京都には「東京防犯優良賃貸住宅認定制度」があり、防犯カメラの設置など一定の防犯基準をクリアした建物は防犯性の高い賃貸住宅として認定・登録されロゴマークやプレートを掲げることが可能です。
認定されると特に女性の単身世帯をターゲットにしたマンションでは、需要が高くなるでしょう。
ちなみに、不同意(強制)性交等の性犯罪の発生場所は27%が中高層住宅です。
【画像出典】警視庁「痴漢等の性犯罪被害防止対策」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/koramu2/koramu8.html
警視庁の防犯パンフレットによると、「エレベーターに乗ったところ、続いて乗ってきた
犯人に後ろから抱きつかれた」「窓を開けたまま寝たところ、窓から犯人に侵入された」などの事例があります。
防犯カメラを設置することで、犯罪がマンション内で起きた際にカメラに証拠映像が保存でき、迅速な犯人特定や逮捕に役立つでしょう。
また、防犯カメラの存在は犯罪の抑止効果も期待できます。
デメリットは費用がかかる点です。
防犯カメラにはドーム型・ボックス型・バレット型・全方位型・PTZ型などの種類がありますが設置された場所によっては「犯罪が起きた現場が死角になっており映っていない」「データ保存の容量が小さく記録が残っていない」というケースも想定されます。
さらにプライバシーへの配慮も必要です。
知っておきたい防犯カメラと個人情報保護法
防犯カメラに記録された個人の画像は、個人情報保護法で「個人情報」とされ保護の対象となっています。
【画像出典】個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a2-1
防犯カメラに関しては総務省・経済産業省が「カメラ画像利活用ガイドブック」を作成・公開しており、地方自治体でも基本方針 ・ガイドラインを定めています。
条例を定めている自治体もあり、場合によっては届け出も必要です。
総務省・経済産業省の「カメラ画像利活用ガイドブック」の一部を見てみましょう。
- 生活者のプライバシー侵害のリスク分析を適切に実施し、低減等のリスク対応を行う
- カメラ画像利活用の目的の正当性、実施方法、生活者のプライバシーへの影響、適切な安全管理対策等について、生活者へ説明する
- カメラ画像を取得していることを生活者に一目瞭然とする
- カメラ画像から生成又は抽出等したデータ(個人情報でない)を第三者へ提供する場合、当該第三者との間で、データの利用条件や内容について定めた契約を締結する
- カメラ画像から生成又は抽出等したデータに対して合理的な安全管理対策及びセキュリティ対策を講じる
- 「保有個人データ※」に該当する場合は、生活者からの開示等の請求等に対応する必要がある
※保有個人データとは、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの以外のもの
防犯カメラをマンションに設置する際には、事前に入居者に許可を取り「防犯カメラ設置中」と書いたステッカーを貼るなど、カメラを設置していることが分かるものを掲示しましょう。東京都では、補助金の交付を受けて防犯カメラを設置した場合はステッカーが利用できます。
また、地方自治体の多くはホームページで防犯カメラのガイドラインを公開していますので、マンションの所在地を管轄する地方自治体のホームページをチェックしてみましょう。
マンションの防犯カメラの設置場所、選び方
マンション内の防犯カメラは、以下の場所に設置されることが多いです。
- エレベーター
- エントランス
- 駐輪場・駐車場
- 通用口
駐輪場・駐車場では、自転車の盗難や当て逃げなどのトラブルが起こる恐れがありますので防犯カメラの設置は効果的といえるでしょう。
エレベーターは女性への性犯罪の抑止効果が期待でき、エントランス・通用口は外部の不審者の侵入対策となるかもしれません。
エントランスやエレベーターなど屋内に設置する防犯カメラはドーム型が人気で、駐輪場・駐車場ではボックス型やバレット型がポピュラーです。
「どこに取り付けたら効果的なのか」を検討してから「まずはエレベーターから」などスモールスタートで実施していきましょう。
まずは防犯カメラから。スモールスタートで技術活用
防犯カメラを設置することで需要が高まり、高めの家賃設定でも入居の申し込みが来るかもしれません。
最近の防犯カメラはクラウドにデータを保存することができ、スマートフォンやPCなどでチェックも可能です。
AI技術を利用した顔認識や、不審者を検知したら音で威嚇するなどの高機能な製品も多くあり、オフィスの入退室管理に利用されるものなど、技術面で進化が続いています。個人情報の取り扱いに気をつけながら、まずは防犯カメラの設置を検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19