「曲がる太陽光パネル」が再生エネルギー業界にもたらすパラダイムシフト

- 東京都が全国初となる住宅における太陽光パネル設置義務づけ
- 太陽光パネルというと平面のイメージがあるが、曲がる太陽パネルが登場している
- これによる再生エネルギー業界に大きなインパクトを与えることになる
東京都で全国初となる新築戸建て住宅などに太陽光パネルの設置を義務づけ
2022年12月、東京都で全国初となる新築戸建て住宅などに太陽光パネルの設置を義務づける条例が成立しました。設置を義務付けられるのは施主ではなく住宅メーカーで、都民はパネルを設置しない住宅を選ぶことも可能です。義務付け対象は、都内供給実績が年間で延べ床面積2万平方メートル以上となる大手住宅メーカー。約50社程度となる見込み。
対象となるのは、延べ床面積が2000平方メートル未満の新築の中小建築物で、既存のものは対象外となります(屋根の面積が20平方メートル未満の狭小住宅も対象外)。平面の太陽光パネルでは狭小住宅で設置してもあまり意味がないからでしょう。
都によると、義務化による温室効果ガスの直接削減効果は、2030年までの6年間で10万トンを見込んでいて、都の削減目標である2639万トンの0.4%ほどにあたるといいます。
東京都環境局の太陽光ポータルでは、制度の概要などがわかる。【URL】https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/solar_portal/index.html
「曲がる太陽光パネル」ペロブスカイト太陽電池の登場
太陽光パネルというと多くの人は平面のイメージを持つでしょう。しかし、そこに大きな変化が起きました。それがペロブスカイト型太陽電池です。同電池は柔軟性を持つことから「曲がる太陽光パネル(太陽電池)」とも呼ばれ、従来の硬質なシリコンベースの太陽電池とは一線を画す存在です。その柔軟性と軽量性は、太陽電池を取り付ける場所や形状に制限があった従来の課題を克服し、新たな応用の可能性を広げています。
ペロブスカイト太陽電池の魅力は何と言ってもその高いエネルギー変換効率と製造コストの低さです。従来のシリコンベースの太陽電池と比較して、製造プロセスが簡易であり、それが大幅なコストダウンにつながります。その一方で、エネルギー変換効率は一部の製品で20%以上に達し、これは一部のシリコンベースの太陽電池と同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することを意味します。
この二つの特性は、再生可能エネルギーの導入を考える際の大きなハードルであったコストと効率の問題を同時に解決する可能性を示しています。そして、これらの特性が評価され、積水化学工業などの企業がこの新型太陽電池の製品化に成功し、市場における地位を確立しつつあります。
再生エネルギー業界におけるペロブスカイト太陽電池の影響
再生エネルギー業界におけるペロブスカイト太陽電池の出現は、既存の太陽電池製品との競争を激化させる一方で、新たな市場の開拓をもたらしています。大量生産体制を確立し、高品質なペロブスカイト太陽電池を市場に提供することで、業界の勢力図も変わってくるでしょう。
また、ペロブスカイト太陽電池の特性を活かした新たな商品開発も進んでいます。その一例として、従来の太陽電池では考えられなかった曲面への取り付けや、建築材料としての利用などがあります。これにより、建築やデザインの自由度が増し、さまざまな応用分野での新しいビジネスチャンスが生まれています。
ペロブスカイト太陽電池と不動産業界と街作り
ペロブスカイト太陽電池の特性は、不動産業界や建築業界にも大きな影響を与えています。その軽量性と柔軟性は、新たな建築デザインの可能性を広げるとともに、建物自体をエネルギー発電の一部にすることを可能にしています。特に、大阪の「うめきた」エリアでは、新築ビルの設計段階からペロブスカイト太陽電池の導入が計画されており、ビル全体がエネルギーを生み出す「エネルギープラスビル」の実現に向けた一歩となっています。
さらに、ペロブスカイト太陽電池の利用は、持続可能な街作りにも寄与しています。公共施設や街路灯、公園設備などに太陽電池を組み込むことで、地域全体のエネルギー自給率の向上やCO2排出量の削減が期待できます。これは自給自足のエネルギーシステムを持つエコシティの形成を促進し、地球温暖化対策にも寄与するとともに、エネルギーコストの削減にもつながります。
まとめ
再生エネルギー業界におけるペロブスカイト太陽電池の台頭は、太陽電池技術だけでなく、広範な産業に大きな影響を与えています。この「曲がる太陽電池」が広がることで、私たちの生活や社会全体が、より持続可能で、よりエネルギー効率の高いものへと変わっていくことでしょう。未来のエネルギーランドスケープを形成するための、その革新的な取り組みから目が離せません。