2026年以降、京都市に空き家税が導入予定!空き家対策特別措置法の改正も決定し、対策強化へ

2023.06.21
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2026年以降、京都市に空き家税が導入予定!空き家対策特別措置法の改正も決定し、対策強化へ

京都市で2026年以降に導入予定の「空き家税」とは

2023年3月、京都市会は「京都市持続可能なまちづくりを支える税財源の在り方に関する検討委員会」で提言されていた「京都市非居住住宅利活用促進税条例」を審議し原案を可決しました。

条例の原案可決により、京都市では全国で初めて空き家や別荘など居住者のない住宅(非居住住宅)に対して、従来の固定資産税とは別に課税することを決定しました。

なぜ非居住住宅に税金が導入されることになったのでしょうか?
京都市では、若年・子育て層が近隣都市に流出することが問題視されています。

京都府南部の30代の転出は都市圏と比べて多い傾向にある。
【画像出典】京都市役所 非居住住宅利活用促進税について「(周知リーフレット)空き家・別荘などの非居住住宅への新税導入を進めています」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000296/296672/PRbill.pdf

東京都・大阪府とは人口に差があり、京都府南部の30代の転出は都市圏と比べて多い傾向にあります。

京都市のリーフレットには「空き家・別荘・セカンドハウスなど居住者のない非居住住宅は、防犯・防災など生活環境に多くの問題を生じさせる」「このままにしておくと空き家の数は大幅に増加していくと見込まれる」などの指摘があります。

非居住住宅に課税し、税金を負担してもらうことで利活用の検討や住宅供給の促進・子育て世代を中心とした居住の促進・空き家の発生抑制などを図ります。
税収は空き家の活用支援などに充てる予定です。

京都市の「空き家税」の概要

<納税義務者>
市街化区域内にある非居住住宅の所有者

※非居住住宅とは空き家のほか別荘・セカンドハウスなど「生活の本拠を置いている人(居住者)がいない住宅」を指します。

<免税点>
固定資産税評価額(家屋)が20万円以内(制度導入から5年間は100万円)には課税されません。
<課税免除・減免>
一部の非居住住宅については税負担が免除されます。
① 事業のために使っている/1年以内に使うことを予定しているもの
② ①のほか賃貸・売却を予定しているもの(免除は募集開始から1年)
③ 居住者の転勤や介護施設への入所などにより一時的に居住していないものなど
<課税開始>
具体的な時期は未定ですが、2026年以降を予定しています。

税額は①と②を合計し、算出します。
①家屋価値割:固定資産評価額(家屋)×税率0.7%
②立地床面積割:敷地の土地に係る1平方メートル当たり固定資産評価額×家屋床面積×税率※

※立地床面積割の税率は、固定資産税評価額によって異なります。

家屋価値割の課税標準税率
立地床面積割700万円未満0.15
700万円以上900万円未満0.3
900万円以上0.6

空き家に税金が課されるのは全国で初めてです。

静岡県熱海市では「別荘等所有税」を導入していますが、家屋を所有しているおり熱海市に住民登録や市県民税申告の無い所有者などが対象です。

2023年3月には空き家対策特別措置法の改正案が閣議決定

2023年3月3日には「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が、閣議決定されました。

2016年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」を改正し、特定空家の除却等の促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前から空家等の有効活用や適切な管理を確保し、空き家対策を総合的に強化することが目的です。
空き家は少子高齢化に伴う人口減少の影響で年々増加し続けています。

1998年には空き家は182万戸であったが、2018年には1.9倍の349万戸に増え、2030年には470万戸に上る予定で今後も増加する見込み
【画像出典】政府広報オンライン「年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは?」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html

1998年には空き家は182万戸でしたが、2018年には1.9倍の349万戸に増えました。国土交通省の公表資料では、2030年には470万戸に上る予定で今後も増加する見込みです。

改正案には空き家所有者に対して現行の適切な管理の努力義務に加え、国・自治体の施策に協力する努力義務を追加、空き家の活用拡大(空家等の管理の確保・特定空家の除却等)の促進などが盛り込まれています。

今回の改正では、「特定空き家」だけではなく「管理不全空き家」に対しても、「行政による指導の勧告・固定資産税の住宅用地等の特例の解除が可能」になると記載されている。【画像出典】自由民主党ニュース「空き家対策のさらなる強化へ『空家対策特別措置法改正案』」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.jimin.jp/news/information/205436.html

今回の改正では、「特定空き家」だけではなく「管理不全空き家」に対しても、「行政による指導の勧告・固定資産税の住宅用地等の特例の解除が可能」になると記載されています。

現行の法律でも、「特定空き家」に指定されると固定資産税における住宅用地等の特例が適用されません。

特定空き家・管理不全空き家は、固定資産税の住宅用地等の特例が適用されない

「空き家は固定資産税が6倍になる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

現行の特定空き家対策特別措置法では、周囲に悪影響を及ぼす「特定空き家」に認定されると自治体から所有者に適切に管理をするように助言や指導が行われます。改善が見られない場合は勧告や命令を行い、所有者が命令に従わなければ最大50万円以下の過料に処されることがあります。

加えて特定空き家は下図の固定資産税における「住宅用地の特例措置」が適用されません。

【画像出典】東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)住宅用地の特例措置」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html#ko_02_02

改正案では現行の「特定空き家」に加え「管理不全空き家」においても固定資産税の住宅用地の特例は適用対象外となります。

「管理不全空き家」とは、適切な管理がされておらず特定空き家になる恐れのある空き家です。現状の試算では「管理不全空き家」は全国で50万戸に上る見込みで、所有者に適切な管理を促す予定です。

空き家対策は何をすれば良い?

空き家対策としては、解体して土地活用・リフォーム・リノベーション後に貸し出すなどの方法があります。

ただし空き家の数は年々増加しており、国土交通省や自治体の空き家バンクを利用するオーナーも増えています。

さらに、2024年からは相続登記が義務化となる予定です。国土交通省の空き家所有者実態調査によると、空き家の取得経緯は相続が54.6%ですので今後ますます増加する見込みです。
空き室対策の一環としてDXやIT化が推進されています。
国土交通省の「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業 」では、多くの自治体が官民連携でDXに取り組んでいます。
具体的な「空き家×DX」の事例を見ていきましょう。

空き家×DXの事例

  1. 岡山県笠岡市:VR空き家内覧
  2. 官民連携で空き家の物件調査から利活用・解体までワンストップで支援

1.岡山県笠岡市:VR空き家内覧

岡山県笠岡市では「空き家バンク」に力をいれていましたが、コロナ禍で県をまたいだ移動が困難になり県外からの内覧希望者を断らざるを得ない事態に陥りました。
株式会社スペースリーの提供する空間データ活用プラットフォーム「スペースリー」を利用してVR空き家内覧をスタートしました。

VR導入で成約件数は年間約50件を維持し、岡山県内トップを争う成約率です。VR内覧の他にもInstagramを運用しビッグデータで生活者のニーズを把握し、フォロワー増加やリーチ拡大を図っています。

2.官民連携で空き家の物件調査から利活用・解体までワンストップで支援

2022年11月に宮城県色麻町は、FANTAS technology株式会社・株式会社クラッソーネと、「空き家等の利活用の及び除却の推進に関する協定」を締結しました。

FANTAS technologyとクラッソーネは、これまでにも空き家問題解決に公民連携で取り組んでおり、2021年度・2022年度の国土交通省「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に2年連続で採択されました。

今回FANTAS technologyは空き家の所有者に対し、現地調査を実施し活用方法や資産価値、利活用で生じるリフォーム費用を算出したレポートを作成・提供します。

空き家の所有者のうち利活用希望者に対して、空き家物件プラットフォーム「FANTAS repro」を通じた売却や活用を支援します。

クラッソーネは色麻町内の空き家の所有者に対して、解体の概算参考価格を提示する「解体費用シミュレーター」を紹介などの取り組みを実施します。

三者で協定することにより、空き家の物件調査から利活用・解体までをワンストップで支援が可能になります。

京都市の空き家税導入や空き家対策特別措置法の改正でますます注目される空き家問題。DX・IT化による試みを今後も見守っていきましょう。

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

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