賃貸住宅の空室率推移から分かる市場の「二極化」とは?マンションの差別化を図る最新のサービスを紹介

- コロナ禍で低迷していた賃貸マンションの空室率が回復、成約件数も増加傾向にある
- 床面積が狭い単身向けの部屋は需要が低迷する一方で、ファミリータイプの広い部屋が人気に
- マンションの差別化を図る最新事例としては、IoTやアプリの活用などDXが増えている
賃貸マンションの空室率が回復傾向に
2020~2021年にかけて新型コロナウイルス感染症の影響で、賃貸マンションの成約件数は減少し空室率は増加しました。
【画像出典】分析: 株式会社タス「賃貸住宅市場レポート首都圏版関西圏・中京圏・福岡県版2022年1月」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://ferret-one.akamaized.net/files/61edf7824bce0c7ca25aed4f/%E9%A6%96%E9%83%BD%E5%9C%8F%E7%89%88_%E9%96%A2%E8%A5%BF%E5%9C%8F%E3%83%BB%E4%B8%AD%E4%BA%AC%E5%9C%8F%E3%83%BB%E7%A6%8F%E5%B2%A1%E7%9C%8C%E7%89%88_2022%E5%B9%B41%E6%9C%88.pdf?utime=1642985346
【画像出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・不動産総合研究所「不動産市場動向データ集」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/02/202301-5.pdf
しかし2021年後半には空室率は以前より低下し、2022年には成約件数が増加傾向にあります。
新築分譲マンションの価格が高騰し、マンションを購入できない人々が賃貸マンションに流入しているという報道があります。
【画像出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・不動産総合研究所「不動産市場動向データ集」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/02/202301-5.pdf
首都圏を始め、インフレの影響もあり家賃の平均額は上昇しています。
特にファミリータイプの広めの部屋は人気があります。コロナ禍でテレワークに移行し、今後もそのままテレワークを続行する企業 が多いという事情が推測されます。
さらに、都心の高級賃貸を取り扱う不 動産会社の空室率が過去最低というニュースもあります。
一方でシングル向けの部屋は需要が低迷しており、賃貸住宅市場は「二極化」が進んでいる状況と言えます。
ただし、インフレが進む中で「家賃をおさえたい」「今のマンションに住み続ける」という人も多いです。
今後の動向に注意していきましょう。
賃貸マンションの需要が回復し「二極化」が進む中で、競合物件に差をつけるためには一体どうすれば良いのでしょうか?
賃貸マンション・アパートの差別化戦略とは
賃貸マンション・アパートの差別化戦略4つをお伝えしていきます。
- 入居条件を緩和して差別化
- 需要やトレンドを意識する
- 共用部で差別化
- IoT・スマートロックなどのDX
1.入居条件を緩和して差別化
賃貸物件で楽器演奏を許可する、ペット可能の物件にする、外国人入居者を受け入れるなど条件を緩和することで差別化が期待できます。
ただし、ペット可にすると鳴き声がする・共用部が汚れるといったデメリットが生じるかもしれません。楽器は騒音問題に発展する、現在の入居者が外国人の入居に反対する可能性もあります。
現在入居者がいる場合には、条件緩和に理解を得る必要があるでしょう。
2.需要やトレンドを意識する
テレワークの普及により、ファミリータイプの広めの部屋は需要が高い傾向にあります。
1DKや2Kなどコンパクトタイプの部屋を単身向けにアピールする、ファミリータイプの部屋は家賃設定を高めにするなど需要やトレンドを意識してみてはいかがでしょうか。
3.共用部で差別化
テレワークの普及により、共用部にワーキングスペースを設けるマンションが増えています。
ほとんどの利用者がPCで作業するため、コンセントの設置や個室スペ-スは欠かせません。
特に1Kなどシングル向けで床面積が小さめの部屋では需要が高い傾向にあります。
リノベーションで共用部に防音室を設置するマンションもあります。「楽器可の物件にしたいけど現状では難しい」というパターンにも対応できます。
4.IoT・スマートロックなどのDX
スマートフォンと連携したスマートロックでドアを開閉、アプリで共用部の予約状況を知るなどIoTを活用したマンションも増えています。
住民にとってはセキュリティを向上できる、利便性が高くなるなどのメリットがあります。
警察庁の「2022年の犯罪情勢」によると、コロナ禍の行動制限が緩和された影響で20年ぶりに刑法犯罪が増えています。
セキュリティの向上は物件の差別化として効果が高いと推測されます。
マンションを付帯サービスで差別化!3つの最新事例
賃貸・分譲マンションを付帯サービスで差別化する事例が増えています。住民の予防医療やマンション専用アプリなど、最新事例を紹介していきます。
- 住民の予防医療をサポート!「新健康管理システム」実装のマンション
- 家賃の支払いでポイントが貯まるサービスを提供
- 居住者向けのアプリ・共用部アプリで利便性向上へ
1.住民の予防医療をサポート!「新健康管理システム」実装のマンション
京阪電鉄不動産株式会社・ミサワホーム株式会社・関西医科大学・コガソフトウェア株式会社の4社は提携により、最新の健康科学で健康寿命を支える「ウェルネス・サポートシステム」を開発しました。
【画像出典】PRTIMES「日常生活を送りながら、予防医療をサポートする新健康管理システム(ウェルネス・サポートシステム)を日本で初めて社会実装したマンションが竣工」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000011776.html
2023年2月に竣工した「ファインレジデンス枚方香里園町」に日本で初めて「ウェルネス・サポートシステム」を導入しています。
ウェルネス・サポートシステムとは、マンションにあるウェルネス・ラウンジに設置された健康測定機器や全ての部屋に装備されているウェアラブルデバイスを通じて日常のバイタルデータなどを測定し、住民の健康管理を支援するシステムです。
ウェルネス・ラウンジに常駐するウェルネス・コンシェルジュが、カウンセリングなどで入居者の健康管理をサポートします。健康レポートに基づいた健康指導、プログラムも館内で開催します。医療や介護サービスと提携も行っています。
2.家賃の支払いでポイントが貯まるサービスを提供
株式会社西武リアルティソリューションズは、賃貸マンション「emilive(エミリブ)」シリーズの家賃の支払いで、西武グループの会員サービスのポイントが貯まるサービスを2023年4月から開始しました。
家賃支払額の0.5%相当のポイントが付与され、貯まったポイントは加盟店で1ポイント=1円として利用できます。西武グループのさまざまな施設・サービスでポイントが使えます。
例えば月の家賃10万円の場合、年間6,000ポイントが貯まります。
ポイントを貯めて買い物・サービスに活用する「ポイ活」好きな人には嬉しい特典と言えるでしょう。
3.居住者向けのアプリ・共用部アプリで利便性向上へ
積水化学工業株式会社が2023年2月に竣工した「ハイムスイート西千葉」は、居住者向けの専用アプリ「NiSUMU」と共用施設向けアプリ「Plus SUITE コンシェルジュ」を提供しています。2つのアプリは連携可能で、「NiSUMU」から共用スペースやシェア用品の予約が可能です。
「ハイムスイート西千葉」には、共用部にキッチン付きのラウンジ・個室タイプのワークブース・防音室があります。アプリを入れたタブレット、エントランスのデジタルサイネージにより共用施設の予約状況などが確認できます。
さらに共用スペースの入り口には、予約システムと連携したスマートロックを設置し、自宅の鍵や交通系ICカードなどでの解錠が可能です。
ハイムスイート西千葉は既に完売しています。
最新のIoTを活用した成功事例と言えるでしょう。
まとめ
賃貸マンションはファミリータイプの広い部屋は人気があり、床面積が狭い部屋は需要が低い「二極化」が進んでいます。
スマートロック・IoTの活用などDXは他社との差別化に有効な方法の1つと言えます。この記事を参考にマンションの差別化戦略について知り、今後に生かしていきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19