賃貸不動産、SNS集客のメリット・デメリット、注意点とは?YouTube・TikTok・Instagramの成功事例も

- SNSは無料で不特定多数のユーザーに情報を拡散でき、賃貸物件の紹介に活用される事例が多い
- 炎上リスクがあり、広告は「景品表示法」「宅建業法」を遵守する必要がある
- 各SNSの利用者層をおさえて効率的な集客を目指そう
SNSとは?
SNSとは「ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)」の略で、登録したユーザーがオンラインで交流できるサービスを指します。
SNSは若年層を中心に急速に普及し、国や地方自治体が LINEやTwitterを活用し情報を発信する機会も多くなっています。
東京都では、2023年4月現在でLINE・Twitter・Instagram・TikTokなど8つの公式SNSが存在します。
【画像出典】東京都庁「東京都公式SNS」 よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/koho/tosei/index.html
SNSは特に10~20代の若年層にとってコミュニケーションツールとして、利用率が高い傾向にあります。
【画像出典】消費者庁新未来創造戦略本部「SNSを活用した消費生活相談の実証事業」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.caa.go.jp/policies/future/project_004/assets/future_cms201_220425_01.pdf
TwitterやInstagram・TikTokなど、主要なSNSのユーザー年齢層を詳しく見ていきましょう。
若年層を中心にInstagram とTwitterは人気が高く、YouTubeは全年代で閲覧者数が多い
総務省情報通信政策研究所「2021年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」における年代別の主なソーシャルメディア系サービス・アプリなどの利用率を見ていきましょう。
【画像出典】総務省情報通信政策研究所「2021年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000831290.pdf
全ての年代で最も多く利用されているものは「LINE」、次いで「YouTube」です。LINEはSNSというよりも、Eメールのように個人間の連絡やコミュニケーションに利用している方が多いのではないでしょうか。
3位は「Instagram」で10代と20代は7割超です。「Twitter」も10代と20代が多いですが、30代になるとInstagram よりTwitterを利用する人がやや多いです。本名で利用する「Facebook」は30~40代がコア層となっています。
次に、ソーシャルメディア系サービス・アプリなどの利用率と「書き込む・投稿する」と回答した人の割合を比較してみましょう。
【画像出典】総務省情報通信政策研究所「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000831290.pdf
YouTubeは閲覧する人が多く、InstagramとTwitterは他のSNSに比べて書き込む人の割合が多いという特徴があります。
Instagramは写真、Twitterは140文字以内を気軽に投稿できることが理由と推測されます。
InstagramとTwitterは利用者数に加え、一般ユーザーの投稿が多い「レッドオーシャン(競争が激しい市場)」と言えるでしょう。
不動産業界とSNS
不動産業界でSNSを活用する事例として、物件紹介が数多く挙げられます。
特に写真を投稿するInstagramでは物件の写真もアップしやすく「#賃貸物件」のハッシュタグで検索すると2023年4月時点で15万件の投稿がありました。数多くの賃貸物件の部屋写真が掲載されています。
物件の動画は、InstagramのライブやTikTok・YouTubeなどで配信できます。
管理会社は入居者だけではなく、仲介会社やオーナーなどBtoBのコミュニケーションも多いですがSNSは話題や繋がりを広げられるチャンスと言えるでしょう。
例えば取引先のSNSアカウントをチェックして話題作りに利用する、同業他社の情報収集をして差別化を図るといった活用方法もあります。
不動産業界でSNS活用・集客をするメリット・デメリット、注意点
SNS活用・集客のメリットは、無料で不特定多数のユーザーに情報を発信できる点です。
入居者募集で広告を出すとコストがかかりますが、SNSであれば無料で掲載が可能です。一方で、他の投稿に埋もれてしまい拡散されないというデメリットもあります。
また、ポータルサイトや情報誌とは違い「引っ越ししようと思っているけど、まだ自分から情報収集していない」という潜在的な顧客にもアプローチできる可能性があります。
物件の内部の写真を掲載し、ビジュアルで訴求できる点も大きなメリットと言えるでしょう。
ダイレクトメール(DM)でユーザーと個別にコミュニケーションをとりやすく、問い合わせにも対応しやすいという魅力もあります。
一方で、SNSに不慣れな社員が運用すると炎上のリスクが生じてしまいます。過去に不動産業界では仲介会社の社員が「芸能人夫婦を接客し、賃貸物件を紹介した」と私用のアカウントで投稿し炎上した事件があります。
炎上リスクは、SNSは運用・マーケティングに詳しい業者に委託するという方法で回避できる可能性が高くなるでしょう。
ただし、不動産業界で広告などを投稿する際には景品表示法・宅地建物取引業法を遵守しなくてはいけません。
SNS投稿時には「景品表示法」「宅建業法」に注意を
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、すべての業種の商品やサービスなどに対して一般消費者の利益を確保するために、①過大な景品類の提供を禁止(第4条)し、②不当な表示を禁止(優良誤認・有利誤認)(第5条)しています。
優良誤認とは「実際のよりも著しく優良であると示す」「事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの」です。例えば実際は築年数25年の物件を15年と偽るといった事例が挙げられます。
「二重価格表示」も禁止されており、類示した条件の他社物件を比較対照価格に用いて表示すると違反になる可能性があります。
景品表示法に違反すると、「指導」「措置命令(+課徴金)」などの対象になる恐れがあります。
宅地建物取引業法(宅建業法)は宅地建物取引業の適正な運営と消費者の利益保護を目的としており、① 誇大広告等の禁止(第32条)② 広告の開始時期の制限(第33条)③ 取引態様の明示(第34条)の3つで不動産広告を規制しています。
宅建業法は国土交通省の管轄で、「指示」「業務停止」「免許取り消し」になる可能性があります。業務停止以上は公表され、「国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト」で誰でも閲覧が可能となります。
SNSには限らず、誤解を招く広告には注意しましょう。
SNS集客の成功事例
- 入居審査通過をアピール「リアハウス」
- 総再生回数250万以上「RoomPa」
1.入居審査通過をアピール「リアハウス」
東京都渋谷区代々木にある株式会社リアリースエージェントでは、TikTokで「代々木のリアハウス」というアカウントでフォロワーが1万2千人に上ります。(2023年4月21日時点)
プロフィールには「入居審査が通らない…諦めないで下さい」という文章があり、入居審査に通りにくい人をターゲットにしています。
東京都内を中心に賃貸物件の部屋内部や「同じマンション気まずいランキング」などユニークな動画も公開されています。特に「同じマンション気まずいランキング2位」の動画は約25,000の「いいね」が付いています。
2.総再生回数250万以上「RoomPa」
RoomPaは、部屋の提案が受けられる不動産仲介サービスを提供しています。
YouTube ではチャンネル登録者数8.9万人、Instagramのフォロワーは3万人 (ともに2023年4月25日時点)とSNS集客に強い会社です。
YouTubeの「内見オタクが厳選した一人暮らしの物件7選をご紹介!!」という動画は総再生回数250万以上です。動画では女性が靴箱やキッチン・洗面台・居間・収納など部屋探しで気になる場所を紹介しています。
SNSのターゲット層を把握して活用・集客を
SNSを活用・集客するにあたって、各サービスの利用者層をおさえておきましょう。
例えばInstagramは比較的女性のユーザー数が多く、TikTokは10代・20代の利用者が多数を占めています。大学生向けの物件はTikTokを利用することで、集客力が高まるかもしれません。
全ての年代にアプローチしたい場合にはYouTube、女性専用物件を紹介したい際にはInstagramなどターゲット層に応じてSNSを使い分けていきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19