賃貸マンションの家賃・管理費・修繕積立金の値上げ、AIなどDXで解決できる?最新事例を解説

2023.05.11
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賃貸マンションの家賃・管理費・修繕積立金の値上げ、AIなどDXで解決できる?最新事例を解説

賃貸の家賃・管理費・修繕積立金は全体的に値上がりの傾向に

賃貸マンション・アパートなどの家賃や管理費は、インフレや人手不足などの影響で値上げを行う物件が多くなっています。
アットホーム株式会社が調査した募集家賃の動向を見ていきましょう。

【画像出典】アットホーム株式会社「2022 年 5 月全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://athome-inc.jp/wp-content/themes/news/pdf/chintai-yachin-202205/chintai-yachin-202205.pdf

一部地域の30㎡以下の物件を除き、全体的に上昇傾向です。
コロナ禍でテレワークが増えた影響で、特に70㎡超・50~70㎡の広い部屋は人気があり家賃は急上昇しています。

<東京23区 マンション>

【画像出典】アットホーム株式会社「2022 年 5 月全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://athome-inc.jp/wp-content/themes/news/pdf/chintai-yachin-202205/chintai-yachin-202205.pdf

<東京都下 マンション>
神奈川県・千葉県・埼玉県など東京都近郊のエリアでもファミリータイプの広い部屋を中心に、家賃は上昇しています。
名古屋市・大阪市に加え、札幌市・仙台市・福岡市においてもマンション・アパートの家賃は全体的に上昇傾向です。ただし、アパートは単身世帯を中心に一部下がっている地域もあります。※アットホーム調べ

管理費も 2015年頃から徐々に値上げが進み、特に都心の新築分譲マンションでは2017年以降修繕積立金を含め大幅に上昇しています。

家賃・管理費・修繕積立金・・・なぜ値上げ?

家賃や管理費・修繕積立金は、なぜ値上がり傾向にあるのでしょうか?

家賃に関しては、昨年からのインフレの影響が大きいでしょう。ロシア・ウクライナ情勢やコロナ禍などの影響で2023年1月の消費者物価指数(生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数)は前年同月に比べ4.3%上昇しました。
【画像出典】総務省統計局「消費者物価指数 全国 2023年2月分」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

2月は政府の電気代などの支援策により、前年同月比は3.3%です。

管理費は清掃・管理の人手不足が原因の1つと言われています。企業の定年延長・再雇用の促進や拡大により「今の会社でそのまま働く」というシニア層が増え、管理人を務める高齢者の雇用が難しく なっています。

さらにコロナ禍で在宅時間が増え騒音トラブルなどが増加し、管理人の負担も大きくなった事から「人手不足に拍車がかかった」という報道もあります。

修繕積立金については、2011年に国土交通省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を発表し2021年に改訂されていますが10年間で平均額の目安が上昇しました。

 

【画像出典】国土交通省「『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』 新旧対照表」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001425185.pdf

近年築30年超といった高年齢のマンションが増えており、時間の経過とともに上昇する修繕積立金は金額が上がっています。

家賃などの値上げは、空室率上昇や入居者とのトラブルを引き起こす事も

家賃・管理費・修繕積立金など入居者の負担が重くなると、退去者が増え空室率が上昇してしまう恐れがあります。

またオーナーや管理会社が「家賃や管理費・修繕積立金を値上げしたい」と文書などで通知した結果、入居者とトラブルになる事例があります。特に地方都市では企業の賃上げが進んでいない状況でインフレが進み、食料だけではなく家賃も値上げされると生活は厳しさを増すでしょう。
借地借家 法第32条には「建物の借賃が、土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」と規定されています。

ただし借主と貸主で話がまとまらない場合には「増額を正当とする裁判が確定する」と増額後の家賃を請求できるようになります。

家賃増減のトラブル(地代借賃増減請求)は、まず調停を経てから訴訟を起こす「調停前置主義」であり問題解決が長引きやすくなっています。その分費用も高額になる傾向がありますので「トラブルを避けたい」という管理会社・オーナーは多いでしょう。

AI管理人などDXによって入居者の満足度が向上し、トラブル回避につながる事が期待できます。また、DXによって管理コストが削減し管理費をおさえられる可能性もあります。

アンケートでは清掃・取り次ぎのAI・ロボット活用に肯定的な入居者が多数派

スタイルアクト株式会社では、マンションの入居者2147人に対して清掃・受付・相談などの管理業務にAI・ロボット活用をする事に対する委任の意向を聞きました。

清掃やサービスの取り次ぎでは、DI(AI・ロボットに「任せていい」「どちらかというと任せていい」の回答割合から「任せたくない」「どちらかというと任せたくない」を差し引いた数値)が60台を越えAI・ロボットに肯定的な入居者が多いことが分かりました。
一方で、相談業務は「日常管理に関する相談」「リフォームなどの相談」「理事会運営に関する相談」の3項目全てで2020年度調査と比べて人間への業務委任意向が高くなっています。

相談業務はケースバイケースで臨機応変な対応が必要な事例もありますので、対人間を希望する入居者が多いと推測されます。
※出典:スタイルアクト株式会社「住まいサーフィン調査・ランキング AI・ロボットによるマンション管理 2021」よりhttps://www.sumai-surfin.com/bigdata-analysis/enquete-result/kanrigaisya/ai-robot-2021/

AI管理人など管理・清掃のDX化事例3つ

AI技術を駆使した自動清掃ロボットの販売、AI管理人を導入したマンションの事例をお伝えしていきます。

1.高精度なAIを搭載した自動清掃ロボットが登場

2022年10月にロボットバンク株式会社はマンションやビルなどの自動清掃・掃除ができるロボットを発売しました。

清掃ロボット「PIKA-Robot T1」は掃除・水洗いを始めモップ掛け・集塵などの機能があります。
高精度なAIが搭載されていますので、自立走行しながら人や障害物を正確に認識して床面を自動洗浄できます。
掃除ロボットは初期投資が必要ですが、長期的に見るとコストを削減できる事例もあります。清掃スタッフが不足している場合にも有効な手法と言えるでしょう。

2.神戸のマンションにAI管理人サービスを導入

和田興産株式会社と株式会社日本ネットワークサービスは、分譲マンション「ワコーレシティKOBE湊川公園」に、AI(人工知能)を搭載したマンション専用アプリと共用部のタッチ式端末を組み合わせたサービス「にほサポ」を導入しました。

【画像出典】和田興産株式会社・株式会社日本ネットワークサービス「神戸市エリア初AI(人工知能)×通信連携の非対面サポートを実装 『ワコーレシティ KOBE 湊川公園』」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://newscast.jp/attachments/Vkri0Xy1sPR7ntVhHEQj.pdf

導入の背景は、マンション管理業界の管理人不足の深刻化と入居者ニーズの多様化と記載されています。
共用設備・ルール・各種申請などに関する問い合わせや規約・細則・議事録等の照会、共用施設の予約・管理会社への折り返し受付や伝言連絡などを提供予定です。有人管理員と組み合わせ24時間365日の対応を目指しています。

「ワコーレシティKOBE湊川公園」は2020年10月に168戸を販売開始しましたが、約1年で売り切れる人気物件となりました。

同マンションは地下鉄・湊川公園駅から徒歩3分の好立地というメリットもありますが、アプリやタブレット端末で24時間AI管理人に対応可能という利便性や安心感も大きいのではないでしょうか。

3.入居者からの問い合わせにAI4カ国語で対応

日鉄興和不動産株式会社と株式会社日鉄コミュニティは、マンションの管理業務の一部にAIを活用した管理サービスを提供する「リビオAIスマート管理」を共同開発しました。2021年2月には、今後日鉄コミュニティが管理するマンション・日鉄興和不動産が分譲するマンションなどにリビオAIスマート管理を導入することを発表しました。

「リビオAIスマート管理」はマンション入居者からの問い合わせに対してAIを活用し回答ができるサービスです。

共用設備・ルールなどの問い合わせ、駐車場・駐輪場の申し込み申請などの各種申請の問い合わせや書面の取り寄せ、入居者へのお知らせ配信などが可能です。

スマートフォンのアプリやタブレットを用いて日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語で音声対話ができます。
ワコーレシティKOBE湊川公園と同様に、有人管理員と組み合わせたサービスです。

まとめ

家賃などの値上がりは管理会社・入居者にネガティブな影響を引き起こす事が予測されます。清掃ロボットやAI管理人など、DXでコスト削減・入居者の満足度向上を目指していきましょう。

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

 

 

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