持続的な企業経営にESGとDXが必要な理由とは?不動産業界の事例も

2022.11.15
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持続的な企業経営にESGとDXが必要な理由とは?不動産業界の事例も

ESG経営とは?ESG投資との関係も

ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を重視する経営を指します。


【画像出典】鳥取県「ESG経営の推進」を参考に筆者作成【URL】https://www.pref.tottori.lg.jp/299458.htm

環境(Environment)とは気候変動問題や環境破壊問題への対応、脱炭酸社会に向けた取り組みなどを指し、社会(Social)は労働者の人権問題・労働環境の改善、ダイバーシティ(多様性)への配慮、地域社会への貢献などが挙げられます。

企業統治( Governance)は社会取締役・社外監査役による経営の監視・管理、適切な情報開示・株主の利益の最大化を図り運営する仕組み(コーポレートガバナンス)などを意味します。

なおESG投資は環境・社会・企業統治を意識し投資先の企業を決定するもので、様々な手法があります。
現在はファンドマネジャー(投資家に代わって資産運用をする人)が財務分析に加え、環境・社会・企業統治の要素を考慮した「インテグレーション」という方法が主流となっていま す。

ESG経営を実行する事で、ESG投資家にとって投資先の企業として選ばれる可能性が高くなるでしょう。

ESGはSDGs(持続可能な開発目標)の達成、CSR(企業の社会的責任)やDX(デジタルによる変革)とも密接な関係があります。

SDGs・CSR・DX…なぜ企業にとって重要?今更きけない用語を知っておこう

ESGに加えSDGs・CSR・DXなどの用語を「聞いたことはあるけど深く理解していない」と言う方は多いのではないでしょうか。

  • SDGs:2015年の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる(目標1)、持続可能な消費生産形態を確保する(目標12)など17のゴール がある。
  • DX (デジタルトランスフォーメーション):AI・IoT・5Gなどの最新技術やIT・デジタル化により事業やプロセス・企業文化・ビジネスモデルを変革し企業の優位性を確立する。
  • CSR (Corporate Social Responsibility):企業の社会的責任。
    企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方(厚生労働省ホームページより

SDGsは「誰一人取り残さない」ことを誓った国際目標で 、SDGsとESG経営(投資)、DXは重なりあっている部分があります。

例えばSDGsの目標の中にある「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる(気候変動)」「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する(エネルギー)」 はESGのE(環境)と密接に関わってきます。

そしてESG経営を進め、企業としての経営目標を達成するためにはDXが重要なポイントとなります。

例えばIT重説は遠隔地への移動を回避でき車を使わないためCO2排出の削減に繋がります。また、電子契約の普及・重要事項説明書の電子化によりペーパーレス化と紙ごみの減少が実現でき環境負荷の軽減が期待できます。

そしてクラウドサービスやITツール導入によるDXで、今まで手入力していた物件情報を自動連携するなど業務効率化が可能となります。結果、労働時間が短縮され無駄な残業がなくなるなど労働環境改善ができることがあります。

企業にとっては人件費削減に繋がり、従業員にとっても余暇を楽しむ余裕が生まれるのではないでしょうか。

企業がESG経営・DXをするメリット

企業がESG経営やDXを進めるためにはコストがかかりますが、企業価値の向上やイメージアップ、持続的な企業経営につながるというメリットがあります。

国土交通省ではESGを資産運用に組み込む「責任投資原則」を不動産投資に適用するものとして「責任不動産投資(RPI)」を推進しています。

国連環境計画・金融イニシアティブ不動産ワーキンググループでは、責任不動産投資の対象の考え方をわかりやすくするために「10か条の責任不動産投資戦略」として省エネルギー・環境保護・歩行に適した都市整備などを掲げています。

環境保護には再生可能エネルギー導入、都市整備にはスマートシティなどDXが足がかりになるのではないでしょうか。

政府が企業にSDGsへの取り組みやESG経営を推進していく中で、これからあらゆる企業にESG経営やSDGsへの取り組みが求められます。そしてDXは、ESG経営・SDGs達成に向けて有効な方法と言えるでしょう。

不動産業界のESG×DX事例3つ

1. スマートシティ竹芝
2. トーセイ株式会社
3. 株式会社AZoom

1.スマートシティ竹芝

2019年7月から東急不動産株式会社とソフトバンク株式会社が共同で構築する都市型スマートシティのモデルケースが「スマートシティ竹芝」です。

2020年5月にソフトバンク株式会社と東急不動産株式会社は、オフィスタワー「東京ポートシティ竹芝」を竣工しました。

東京ポートシティ竹芝はスマートビルとして店舗内カメラの映像から共用部の出入り人数・店舗の席の混雑度を推定し、数値化したものをオフィスワーカー向けアプリ・ビル内のサイネージ等に表示させる取り組み などを実施しています。

2021年10月には環境へ の負荷が少なく狭い路地も通行できるグリーンスローモビリティ(時速 20 ㎞未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス)を活用した実証実験を行いました。エリアの東西方向における移動手段・移動効率が低いという、地域の交通課題の解決を目指したESGの「社会(Social)」に該当するプロジェクトです。

スマートシティ竹芝は先端技術を活用したサービスなどを実装することで、回遊性の向上や混雑の緩和、防災の強化などを実現し竹芝と周辺地区の課題を解決することを目指しています。

東京都では、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し都民が質の高い生活を送ることができる「スマート東京 」の実現を目指しており、スマートシティ竹芝は先行実施エリア となっています。


【画像出典】ソフトバンク株式会社・東急不動産株式会社「スマートシティ竹芝」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://smartcitytakeshiba.com/

東急不動産株式会社・ソフトバンク株式会社だけではなく、東京都が取り組むESG×DX事例として要注目です。

2.トーセイ株式会社

トーセイ株式会社は、不動産再生、開発、賃貸、ファンド・コンサルティング、ホテル、管理の6事業をグループで展開しています。

2019年にESG方針・行動指針を制定し、サステナビリティ(持続性)に配慮したESG経営に取り組んでいます。

「トーセイグループ2021ESGレポート 」によると太陽光発電や省エネ・IoTなど最新設備を導入したネットゼロエネルギーハウス(ZEH)開発、社内のITインフラを整備し会議資料や決裁書のペーパーレス化、節水トイレや人感センサー照明など省エネ・省資源を図っています。
ホームページで財務情報やESG経営への取り組みなども公開し、SDGs達成・東日本大震災支援活動など社会貢献活動にも積極的に参画しています。

3.株式会社AZoom

株式会社AZoomは遊休不動産(企業の活動に使用されていない不動産)を活用するためのITサービスを展開しています。

例えば日本最大級の月極駐車場検索サイトの運営、マンションやビルなどの壁面を広告として利用して欲しいオーナーと利用したい業者を繋ぐ屋外広告専門サイトの運営などを展開しています。

レンタルスペースに管理システム・スマートロックなどを用いることで無人で効率的に運営するサービスも展開しており、遊休不動産を駐車場・レンタルスペース・屋外広告として活用する提案を積極的に行っています。

株式会社AZoomは遊休不動産を活用することで、新たに建築物を作るための木材資料の調達(森林伐採)・建築に伴うCO2排出などを回避し環境負荷を低減させていくなどESG経営を推進しています。

また、創業時から電子契約書の導入やFAXの電子化によるペーパーレス化、テレワークの推進などDX化を図っています。

上記のようにESG経営・SDGsへの取り組みをDXにより推進し、積極的に公表していくことで本来の事業に加え企業価値が向上し持続的な経営に繋がっていくでしょう。

 

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。

ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

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