スタートアップ企業とは?日本の不動産会社の事例3つを解説

- スタートアップ企業とは新しいビジネスモデルで短期間に急成長を目指す企業
- ベンチャー企業との違いは、新しいビジネスモデルであること、資金調達方法、出口戦略
- 不動産業界のスタートアップ企業は、不動産テックと密接な関係にある
スタートアップ企業とは
スタートアップ企業はもともと「起ち上げられたばかりの会社」という意味でアメリカのシリコンバレーで主にGAFA(Google、Apple、facebook、Amazon)を指す単語として使われていました。
※Facebook社は現在Meta社に社名変更
現在は新たなビジネスモデルで短期間に急成長を目指す企業を指し、社会貢献を意識した事業を展開する会社が多いです。
例えばフリマアプリ「メルカリ 」もかつてはスタートアップ企業でしたが、2021年9月には月間利用者数が2,000万人を超える事業となりました。
スタートアップ企業の創出により、新たなビジネスモデルの構築、国内外に与える社会的なインパクト、社会貢献、そして経済効果が見込まれます。
スタートアップの創業・成長促進のために経済産業省では 支援人材のネットワーク構築、起業応援の税制・融資制度の整備などの取り組みを実施しており、2022年6月には「経済産業省スタートアップ支援策一覧 」という冊子が刊行されました。69の支援策が紹介されており、Webでも閲覧できます。
各地方自治体でも補助金・助成金制度を設けています。
ただし2018年の日本における開業数が約13万社であることに対し、スタートアップ企業は約1,800社となっています。
【画像出典】財務省広報誌ファイナンス「スタートアップ企業の活性化」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202004/202004m.pdf
経済産業省の公表資料 でも日本のユニコーン企業数がアメリカや中国・インドと差がある事が指摘されています。※ユニコーン企業:企業価値10億ドル超の非上場企業
【画像出典】経済産業省経済産業政策局「事務局説明資料 スタートアップについて」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/004_03_00.pdf
スタートアップ企業の特徴、ベンチャー企業との違いは?
スタートアップ企業と似た組織としてベンチャー企業があります。
「venture」とは「冒険的な企て、投機的」という意味で、起業や既存の事業改革な ど新しい取り組みを指します。
スタートアップ企業とベンチャー企業にはどのような違いがあるのでしょうか?
スタートアップ企業の特徴として、まずビジネスモデルや商品・サービスなどがこれまでにないものであり「社会に大きな変革をもたらす」という点が挙げられます。
例えば経済産業省が主催したスタートアップ企業を表彰する「日本スタートアップ大賞2022」では、世界初のスペースデブリ(宇宙ごみ)除去という課題解決を目指す、株式会社アストロスケールホールディングスが内閣総理大臣賞に選ばれました。
他には AIによるスマートフォン向けニュース配信アプリを展開するスマートニュース株式会社、花のサブスクリプションサービスを運営するユーザーライク株式会社などが受賞しています。
ベンチャーは既存のビジネスモデルを基に事業を展開する企業という違いがあります。
また、スタートアップ企業の事業計画は、創業初期に新規事業のために大きな費用を投資し一時的に赤字を計上した後で収益化する「Jカーブ」を描くという特徴があります。
【画像出典】公正取引委員会「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/nov/201127pressrelease_2.pdf
既存のビジネスモデルを事業とするベンチャー企業・中小企業では、右図のように従業員・商品などを段階的に増やすことにより緩やかに成長していきます。
そして、ベンチャー企業は主に金融機関からの融資で資金調達を行うのに対して、スタートアップ企業は投資家から資金を募ることが多いです。
スタートアップ企業は成長が早いため、短期間で EXIT(投資家が株式を売却して利益を得て資金を回収する)を達成しM&AやIPO(株式公開)を行う出口戦略となっています。
不動産業界のスタートアップ企業の事例3つ
AIやビッグデータ、3Dプリンターなど技術の進化により、不動産テックとスタートアップ企業は密接な関係にあります。
今回は3Dプリンターハウス、AI査定サービスを展開する企業に加え「エージェントから家探しを」という新しいビジネスモデルのスタートアップ企業を紹介していきます。
- 3Dプリンターハウス:セレンディクス株式会社
- エージェントで家探し:株式会社TERASS
- AIでイノベーションを:エステートテクノロジーズ株式会社
1.3Dプリンターハウス:セレンディクス株式会社
セレンディクス株式会社は3D プリンター住宅の開発企業で2022年3月に日本 で初めてとなる3Dプリンターハウス「Sphere (スフィア)」を施工しました。
「Sphere (スフィア)」は着工からわずか23時間12分で施工され、価格が300万円と低価格・短期間で建設できる住宅として注目を集めています。
8月には消費者向けに 販売を開始する予定です。現在は慶應義塾大学と共同開発で49㎡の一般向け住宅を開発しており、2023年春に一般販売を目指しています。
2.エージェントで家探し:株式会社TERASS
株式会社TERASSは、2019年に創立した経験と実績のあるエージェントと共に不動産売買を行うという次世代型不動産エージェントファームです。
購入又は売却する物件を中心に取引をするという従来の考えを覆し、自身に合ったエージェントを見つけ、相談しながら取引のプランを考えるという革新的な事業内容となっています。
不動産エージェントとつながる家探しサイト「Terass Offer」を運営しています。
エージェントには 取引に関することだけではなく住宅ローンや相続・贈与対策、リノベーションや住み替えなど様々な相談が可能です。
3.AIでイノベーションを:エステートテクノロジーズ株式会社
エステートテクノロジーズ株式会社は、AI査定・不動産ビッグデータ解析などにより個人・法人向けに不動産仲介を展開する会社です。
個人向けには「Dr.Assetシリーズ」として、不動産AI査定サービスや約10万棟のマンション価格相場やリスク情報などをまとめてチェックできるサービスを提供しています。
法人向けには、顧客の志向に合わせて物件・推定相場価格を表示する不動産追客ロボットサービス、AI技術を用いて独自のアルゴリズムで不動産ビッグデータを解析する不動産価格査定エンジンなどがあります。
不動産テック業界のスタートアップ企業として要注目と言えるでしょう。
まとめ
スタートアップ企業の概要・特徴とベンチャー企業の違い、不動産業界のスタートアップ企業3つを解説してきました。
スタートアップ企業の大きな特徴として「新しい事業でイノベーションを起こす」ことが挙げられます。経済産業省や地方自治体は社会的なインパクトや経済効果を期待し、様々な施策でスタートアップ企業を支援しています。
上記のスタートアップ企業が不動産業界にイノベーションを起こし、現在では斬新に思える事業が「当たり前」になる時代がやってくるかもしれません。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19