SDGsとDX・society5.0との関係とは?今更聞けない言葉の意味と不動産業界の事例を解説
- DXの推進はSDGsの達成に必要不可欠である
- 企業にとってSDGsへの取り組みはイメージの向上や事業・会社の長期的な存続に繋がる
- 不動産業界でもDX×SDGsの事例・取り組みがある
DXとSDGsの関係とは?今さら聞けない用語解説
DXとは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された「ICT(情報通信技術)の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」という定義が基になっています。
2018年に経済産業省が公表した「DX推奨ガイドライン」では「DX」を以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
「DX」 は「デジタルに関する変革」として様々な使い方をされていますが、企業にとっては「AI・ビックデータ・ICT(情報通信技術)・IoT(モノのインターネット)などを活用して業務を変革させる又は新しいビジネスモデルを創出する」ことと言えるでしょう。
ここでDXに関する用語も知っておきましょう。
- AI:人工知能。不動産業界ではAIを活用した「AI査定」「AI接客」などがある
- ビックデータ:データベースソフトウェアが把握し、蓄積し、運用し、分析できる能力を超えたサイズのデータ (総務省 情報通信白書より)
- ビッグデータを基にAIが物件を提案する、AI査定が行われる
- ICT:情報通信技術。通信技術を活用したコミュニケーション。メール・チャット・チャットボット・SNSなど。IT(情報技術)と同じ意味で使われることもある。
- IoT:モノのインターネット。モノがインターネットと繋がる技術。スマート家電・スマートスピーカー・自動運転など
SDGsとは?
SDGs(持続可能な開発目標)とは 2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」を指します。
2001年に国連で策定された「ミレニアム開発目標」が前身となっていますが、ミレニアム開発目標は開発途上国を対象とした目標であるのに対し、SDGsは先進国も含めた全ての国が取り組むべき目標とされています。
SDGsは「誰一人取り残さない」という理念のもと、17のゴールと169のターゲットから構成されています。
【画像出典】外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf
SDGsの特徴として、政府による取り組みだけでは達成が困難であり企業や地方自治体・大学や公的研究機関・市民社会そして全ての人々の行動が求められている点が挙げられます。
TV番組や広告で「SDGs」について盛んに取り上げられていますが、私達一人ひとりの行動・生活様式がSDGs達成に繋がることが理由です。
企業とSDGs・DX・Society 5.0の関係
経済産業省では2019年に「SDGs経営ガイド」として企業にとってのSDGsや投資家にとってのSDGsなどについて取りまとめSDGsを推進しています。
「SDGs経営ガイド」には、SDGsの目標を達成するためには世界で年間5~7兆ドルの資金が必要となるものの、達成された際には「2030年までに年間12兆ドルの新たな市場機会が生まれうるとも言われている」と記載されています。
なお、DXも経済産業省の「DXレポート」によると現状の企業におけるDX化の課題を克服できない場合、「DXが実現できないのみでなく2025年以降、最大1年間で12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性」があると指摘されています。
SDGsの目標には「教育」「成長・雇用」「イノベーション」など、DXが目指すものと共通しているものがあります。DXはSDGs達成に向けて、大きな役割を担っている存在と言えるでしょう。
そして内閣府が 提唱する目指すべき未来社会「Society 5.0」は「人間中心の社会であり、仮想空間と現実空間を融合させたシステムで経済発展と社会的課題の解決を両立させる」ものであり、IoT・ロボット・AI・ビッグデータなどの技術が欠かせません。SDGsの達成に向けて提案されたコンセプト です。
Society 5.0は主にDXにより課題を解決し、新たな価値を創出する持続可能な都市・地域を推進しSDGs達成を目指します。
企業にとってDX・SDGsへの取り組みはコストがかかりますが、実践しない場合には企業が長期的に持続することが難しいと言えます。
さらにDX・SDGsに取り組むことでSociety 5.0の「経済発展と社会的課題の解決を両立させる」ことが実現できる可能性が高くなり、企業の長期的な発展・業績アップやイメージの向上を見込むことができます。
DXとSDGsは共に企業として長期的に取り組むべき課題と言えるでしょう。
不動産会社の事例DX×SDGs事例3つ
不動産業界では、既に多くの企業がDX×SDGsへの取り組みを公表しています。
1. 株式会社アセットコミュニケーションズ:賃貸住宅のゴミ出し問題の解決
2. 置き配でCO2排出削減を目指す:株式会社ライナフ
3. イタンジ株式会社×オレンジリボンプロジェクト
1.株式会社アセットコミュニケーションズ:賃貸住宅のゴミ出し問題の解決
株式会社アセットコミュニケーションズは管理会社向けのアプリやクラウドサービス、ネットショップの開発・運用事業を展開しています。
ごみ分別案内無償WEBアプリ「ごみっとくん」は管理会社・オーナーの抱えるごみ置き場問題改善のために開発されました。「どのごみか分からない」という入居者にAIチャットボットがゴミの種類を案内するサービスなどを提供しています。
【画像出典】株式会社アセットコミュニケーションズ「感染症対策ごみ分別アプリ ごみっと君」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://teikijunkai.com/service/gommit/
ごみっとくんは1都3県を対象に10言語に対応しています。
ゴミが適切に分類・廃棄されることにより、SDGsの「6.水・衛生」「11.持続可能な都市」「14.海洋資源」「15.海上資源」の目標達成が期待できます。
2.置き配でCO2排出削減を目指す:株式会社ライナフ
管理会社向けシステム・アプリの開発・運営事業を展開する株式会社ライナフでは、配送会社と連携しオートロック物件向けの置き配サービスを行っています。
宅配ロッカーや宅配ボックスの設置にはコストと手間がかかりますが、既存のオートロックにデバイスを後付けするだけでオートロックマンションを置き配対応にすることが可能です。
置き配サービスの導入で、入居者の満足度向上に加え再配達の防止によるCO2の排出削減を目指します。
CO2の排出削減は、SDGsにおける「7.エネルギー」「12.持続可能な消費と生産」「13.気候変動」を達成できる可能性があります。
3.イタンジ株式会社×オレンジリボンプロジェクト
不動産賃貸業者向けのサービスの開発・運営を行うIT企業イタンジ株式会社では、自社が提供する不動産業者間サイト「ITANDI BB」を通じてオレンジリボン運動を支援しています。
【画像出典】イタンジ株式会社「ITANDI BBオレンジリボン運動」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://lp.itandibb.com/orangeribbon/
オレンジリボン運動 とは、子ども虐待防止のマークとしてオレンジリボンを広めることで
子どもの虐待をなくすことを目的とした市民運動です。
認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークが2006年からオレンジリボンの窓口となっており、幅広く活動を行っています。
イタンジBBのオレンジリボン運動ページ内には「不動産会社の皆様は、「近隣住民からの目撃情報」「家賃の滞納」「ごみ屋敷に該当する極端な不衛生」などの子ども虐待のサインに気づける可能性があります」と記載されています。
イタンジBBが月間400万PV以上閲覧されるメディアであることを活かし、虐待に気づくためのチェックリストや児童相談所虐待対応ダイヤル189を掲載し、オレンジリボン運動の普及・啓発活動を担っています。
子供の虐待防止は「3.保健」「10.不平等」「11.持続可能な都市」の目標達成に繋がる可能性があります。
まとめ
DXとSDGs、society5.0の意味と関係、不動産会社のDX×SDGs事例3つをお伝えしてきました。
SDGs達成のためにDXやsociety5.0は必要であり、企業にとってはイメージ向上や会社の長期的な存続に繋がる可能性があります。
この記事でDX・SDGs・society5.0について知り、今後に活かしていきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19