中小企業のDXは低予算のICT導入から!成功事例や補助金制度も

- 日本の全企業の99.7%は中小企業。しかし設備投資額自体が少ないため、ICT導入の実施割合も低い
- 中小企業はICT・IoT機器・クラウドサービス導入など「スモールスタート」でDXを
- IT導入補助金や地方自治体のDX推進・IT導入補助金制度などを活用しよう
DXが進まない!中小企業が抱える課題とは
日本の全企業の99.7%は中小企業であり、中小企業の付加価値は全体の約53%に及びます。
一方で、日本の中小企業はDX化が進まないという課題があります。
財務省が公表している「法人企業統計調査(2021年度)」の結果によると、中小企業は大企業と比較すると資本力が乏しいため、設備投資額が低いという実態があります。
【画像出典】財務省「年次別法人企業統計調査(2021年度)設備投資の推移」よりデータ抽出・グラフ作成
【URL】https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/PDF/chusho/99Hakusyo_zentai.pdf
「DXを進めたいけど資金が無い」という中小企業は多いのではないでしょうか。
株式会社商工組合中央金庫の「中小企業のIT導入・活用状況に関する調査 2021年1月 」によると、IT導入の実施割合は資本金が多い企業が高い状況です。
【画像出典】株式会社商工組合中央金庫「中小企業のIT導入・活用状況に関する調査
[2021年1月調査]」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.shokochukin.co.jp/report/research/pdf/other202101.pdf
業種別で見ると、不動産業・物品賃貸業は49.4%と4番目に低い数値です。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」によると、DXが実現できない場合「2025年から2030年にかけて、1年で最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と記されています。
【画像出典】総務省「2021年版情報通信白書」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1200000.pdf
そして上記の2021年版情報通信白書によると、実際にクラウドサービスの利用・テレワークを導入している企業は労働生産性が高い傾向にあります。
企業にとって、労働生産性の向上と損失回避にDXは欠かせない存在となっています。
中小企業がDXに成功するためのポイントとして「スモールスタート」があります。初期のDXに対する投資額を低く設定し、徐々にDX化を進めていくという戦略です。
補助金や助成金を活用する事で、さらにコストをおさえることができます。
中小企業のDXは補助金・支援制度の活用を
DX・IT(ICT)導入は国が推進している事もあり、補助金や助成制度が充実しています。
例えばIT導入補助金制度は中小企業・小規模事業者を対象としたITツールを導入する経費の一部を補助する制度で、要件を満たした場合には補助金が支給されます。
多くの地方自治体でもIT導 入・DX支援の 補助金制度を実施しています。
総務省のICT政策では「ICT地域活性化サポートデスク」を設置し、企業・団体からの問い合わせに対応しています。
さらに「ICT地域活性化ポータル」を通じた情報の提供、ICT地域活性化大賞の実施、地域情報化アドバイザー派遣制度などでICT導入を支援しています。
中小企業のDX成功事例3つ
1. 久野金属工業:「IoT GO」で工程を見える化
2. SUNRISE株式会社:クラウドサービスの導入できめ細やかな営業が可能に
3. もりやま園株式会社:果樹に特化したクラウドアプリケーションを導入
1.久野金属工業:「IoT GO」で工程を見える化
自動車部品を中心にプレス部品製品開発・プレス加工・溶接組立・機械加工などを展開する久野金属工業では、受注の増加に伴い設備投資の増加だけではなくDXによる業務改善が必要と考えました。
今まで手作業で生産設備・製造マシンの稼働状況を収集していましたが、IoTを用いて自動取得しPCやスマートフォンなどからモニタリングできる「IoT GO」を株式会社マイクロリンクと共同で開発しました。
IoT GOを導入した結果、装置の稼働をカウントし、工程のサイクルタイムをリアルタイムに「見える化」ができるようになりました。稼動モニタリング、稼働率、稼働時間、 停止時間測定、製造ビッグデータの構築も実現しました。
【画像出典】公益財団法人科学技術交流財団「地域産業デジタル化支援事業ビジネスモデル構築 先進事例集 2022年3月」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.astf.or.jp/post/dx_jirei
「IoTGO」は2018年から商用サービスとしてリリースされ、久野金属工業以外での製造現場でも活用されています。
「IoTGO」により現状がリアルタイムに把握・生産性を数字で容易に比較できるようになったことから業務のスピードアップが加速し、稼働率15%以上向上、大幅な残業時間の短縮が実現できました。さらに株式会社マイクロリンクは、 製造現場だけでなく全業務を可視化する「IoTGODX」を開発、様々な企業に導入されています。
2.SUNRISE株式会社:クラウドサービスの導入できめ細やかな営業が可能に
長野県で新築住宅の設計・施工やリフォーム・リノベーション事業、不動産買取・販売・仲介などを展開するSUNRISE株式会社は、顧客管理クラウドサービスの導入によってタイムリーで正確な情報共有を実現しました。
創業当初は従業員数が少なかったことから、アンケートを顧客別にクリアファイルに入れ、各営業担当に追客を任せていました。
Excelへの転記を実施しましたが、データの抜け漏れやExcel関数のズレによる集計結果の相違が発生しました。
結果として管理者と営業担当者での情報共有に時間がかかり提案時に具体的なプランの説明が出来ない、正確な売上予測を予想しづらい状況でした。
代表取締役の田中氏はクラウドサービス大手Salesforceのパートナー企業である株式会社atsumel の提供する「Sales Cloud導入支援」「Pardot導入支援」を導入 しました。
クラウドサービス導入により、顧客がモデルハウス来場後・イベント実施後に個々の情報を登録することで希望条件や改善点などを正確に把握することが可能となりました。
今後は顧客にとって、ベストな提案を実施すること、レポート機能を活用したタイムリーに営業活動状況を確認することを目指しています。
また、Sales Cloudに蓄積した情報から過去のWebサイトの訪問履歴やメールの開封状況が分かるPardotを活用することで、1人ひとりのお客様に合わせたメールを送信できるようになりました。
3.もりやま園株式会社:果樹に特化したクラウドアプリケーションを導入
もりやま園株式会社は青森県弘前市で100年以上続くりんご園です。
大規模な果樹園経営では作業の可視化が必須で日本では難しいと言われていましたが、もりやま園は「Agrion果樹」という果樹に特化したクラウドアプリケーションを導入し運営・管理を行っています。
【画像出典】農林水産省「農業新技術取組事例 青森県もりやま園」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/jirei/PDF/2019jirei_body_Part69.pdf
「Agrion果樹」導入により、生産工程が可視化されたことから栽培管理ごとの作業時間・管理作業の進捗状況の把握が可能となり作業員の能力に応じた作業方法の構築や効率的な指示ができるようになりました。
総合的には労働生産性の向上、経営内容の正確な把握が実現しました。
まとめ
中小企業がDXを進める方法、補助金制度、中小企業のDX成功事例をお伝えしてきました。
「DXを進めたい」という中小企業は、低価格のICT機器やクラウドサービス導入という「スモールスタート」から始めてみてはいかがでしょうか。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19