物流倉庫DXプロジェクトに不動産会社が参入!コロナ禍でビジネスチャンス到来か

- 物流倉庫DXプロジェクトに三井不動産、三菱地所が参画
- 物流不動産とは?物流倉庫DXの事例も
- DXにより中小の不動産会社にとってもビジネスチャンスとなる可能性が
物流不動産とDXとは?
物流不動産とは、 ECやアパレル・小売など物流業務を行うための施設として第三者へ賃貸される、倉庫・物流センター等の建物を指します。
大手ECのAmazonのように自社で倉庫を持つ企業もありますが、不動産会社が倉庫・物流施設を建設し賃貸借契約を結び毎月一定の賃料を得るシステムも存在します。
近年物流不動産・倉庫のDX化が進んでおり、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術を導入した倉庫「スマートロジスティクス」により作業の効率化、物流業界の課題を解決する取り組みを行う企業が増えています。
物流業界では慢性的な人手不足、ECサイト普及に伴う小口配送の増加などの問題があります。スマートフォン・PCの普及によりオンラインで物品を購入する消費者が増え、小口配送が増加しているにも関わらず人手が不足しているという実態があります。
ピッキングの数え間違いといったヒューマンエラーや棚卸作業、過剰在庫、逆に在庫ロスなど倉庫の管理面も課題となっていますが、DXで解決できる可能性があります。
2022年7月1日には、倉庫産業DX事業に物流不動産を所有する不動産会社が参入するというニュースが話題となりました。
物流倉庫DX事業に不動産会社が参入
2022年7月1日に三井不動産、三菱地所など不動産会社と東京大学協創プラットフォーム開発を含む7社が、物流倉庫DXの実現に向けた共同事業に参画したことを公表しました。
三菱商事は、自社で進めてきた物流倉庫DX事業を新設の子会社である「Gaussy(ガウシー) 」に譲渡し、他6社はGaussyに出資しました。Gaussyは、三菱商事が2020年にサービス提供を開始した倉庫ロボットのサブスクリプションサービス「Roboware」、シェアリング倉庫サービス「WareX」を提供しています。
プレスリリースには以下のように記されています。
7社は、産学連携、業界横断でのパートナーシップを通じて、各社が有するデジタル技術、物流不動産の知見・ネットワーク、金融知見等を持ち寄ることで、単独では実現困難な倉庫産業の課題に対する解決策の共創をめざします。
三井不動産では、2012年に物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」を起ち上げており、今回の共同事業では「物流DX化を推進し、テナント企業の皆様の課題解決パートナーとして、多種多様なヒト・モノ・コトをつなげ、既存の枠にとらわれない価値づくりに挑戦してまいります。」とコメントを寄せています。
三菱地所も独自ブランドの物流施設「ロジクロス」の開発に取り組んでいます。
「施設づくりだけではなく、より一層お客様に満足頂けるサービスを提供し、また、パートナーの皆様と一丸となって物流業界が抱える課題解決に貢献してまいります。」とコメントしています。
プロジェクトは物流事業を展開する大手不動産会社が参画していますが、今回のプロジェクトを機に物流業界の問題が改善され、中小の不動産会社も物流不動産運営への参入障壁が低くなる可能性があります。
上記のプロジェクトを含めた物流DXの事例を見ていきましょう。
物流倉庫DXの事例4つ
- 7社共同プロジェクト Gaussyが提供する物流倉庫DXサービス
- 大和ハウスの「D’s SMART LOGISTICS(ディーズ スマート ロジスティクス)」
- 東急不動産のスマート物流
- 日立物流のスマートロジスティクス
7社共同プロジェクト「Gaussy」が提供する物流倉庫DXサービス
物流倉庫DXの実現に向けた7社の共同事業では、6社が三菱商事の「Gaussy」に出資しています。
Gaussyは、倉庫ロボットのサブスクリプションサービス「Roboware」やシェアリング倉庫サービス「WareX」を提供しています。
Robowareとは倉庫内の仕分け・ピッキング・運搬などを行う月額制倉庫ロボットサービスです。
【画像出典】三菱商事株式会社「Roboware」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://roboware.ai/
「購入」・「レンタル」・「購入とレンタル」を組み合わせたハイブリッドプランがあり、レンタルプランにはロボットの運用・保守にかかる費用も含まれています。
WareXは倉庫のオーナーと利用者を結ぶオンラインのサービスで、倉庫利用の希望者は全国の倉庫探しを無料で行うことができます。
【画像出典】三菱商事株式会社「WareX」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://warex.ai/service/feature/
契約の際には規約に同意、個別契約を結ぶことで全国の倉庫を利用する事が可能となります。
倉庫提供者との交渉や契約はWareXが対応し、契約後は期間内の保管料・作業量などをパレットの保管数・作業数に応じて支払います。
大和ハウスの「D’s SMART LOGISTICS(ディーズ スマート ロジスティクス)」
大和ハウスでは戸建・賃貸住宅等の企画・設計・施工・販売等の他に物流施設事業を展開していますが、環境に配慮したスマートな物流施設「D’s SMART LOGISTICS(ディーズ スマート ロジスティクス)」を運営しています。
省エネ設備、太陽光発電装置設置などの他に、物流施設にある様々な設備をICT(情報通信技術)活用により一元管理し、データをタブレット・パソコンで表示することで見える化ができる「スマートマネジメントシステム」も備えています。
【画像出典】大和ハウス工業株式会社「ディーズ スマート ロジスティクス」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.daiwahouse.co.jp/business/logistics/smart/index.html#management
データの一元管理を行う事で、人件費のコスト削減や従業員の負担軽減、スムーズな倉庫管理に繋がる可能性があります。
東急不動産のスマート物流
東急不動産では、2017年に物流効率化という社会ニーズに応える事を目的に物流施設開発事業に参入しました。
木調インテリアで働く人がくつろげる、セキュリティ対策万全の都市型物流施設や、休憩時に利用できる健康遊具を備えた広場・自然音で安らげる音響空間などがある物流施設など斬新な物流施設運営に取り組んでいます。
さらに、NTT東日本・PALと連携しデジタル化による倉庫管理やドローン・AGV(無人搬送車)の自動運転・遠隔操作、カメラ映像やセンサーなどによる業務の見える化等で「未来の物流施設」をめざしています。
【画像出典】東急不動産株式会社「物流施設」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.tokyu-land.co.jp/infrastructure/logistics/
日立物流のスマートロジスティクス
日立物流では、グループ各社に加え様々な企業や研究機関と協力し、スマートロジスティクスとして施設内に最新の技術を取り入れています。
例えば無人搬送車が保管棚を自動で搬送するピッキングシステムは、入出庫作業の省力化、省人化を見込む事が出来ます。
【画像出典】株式会社日立物流「スマートロジスティクスのテクノロジー」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.hitachi-transportsystem.com/jp/solution/smartlogistics/
物流センター管理システムのログやセンサーデータから作業者の動きや活動を分析するツールもあります。ツールを活用することで、個人別・時間別に生産性の把握と無駄の可視化が可能となります。
【画像出典】株式会社日立物流「スマートロジスティクスのテクノロジー」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.hitachi-transportsystem.com/jp/solution/smartlogistics/
他にも自動倉庫や自動仕分け機、シミュレーションを行い倉庫配置案・倉庫設計値の組み合わせの中から、最適なプランを提案するシステムなど最新技術を駆使した物流施設支援を展開しています。
物流倉庫DXは不動産業界にとってもビジネスチャンス?
不動産会社には賃貸物件運営・管理、オフィスビル・物流施設運営、企画・開発など様々な事業がありますが、物流施設を購入し賃料を得る物流不動産事業は、今後さらなる飛躍が予測されます。
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会が発表した「2021 年度 物流コスト調査報告書」 によると、全業種の売上高における物流コスト比率の推移は以下の通りです。
【画像出典】公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「2021年度 物流コスト調査報告書【概要版】」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www1.logistics.or.jp/Portals/0/resources/Cost/
新型コロナの影響もあり近年はコストが増え、物流業界にとっては「追い風」と言える状態です。急激な上昇の要因としては、近年続いている労働力不足などによるトラック運賃の値上げや荷役費の値上げなどが背景にあると報告書に記載されています。
物流倉庫DXにより不動産会社は物流ビジネスに参入しやすくなり、業務拡大・業績上昇に繋がる可能性があります。
まとめ
政府の物流施策の指針を示し、関係省庁が連携して総合的・一体的な物流施策の推進を図る「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」では、物流デジタル化の強力な推進策として手続書面の電子化の徹底やデジタル化を前提とした規制緩和や手続の特例の検討が記されています。
DX化が進む物流業界は不動産業者にとってもDXのヒントになると同時に新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。この記事を参考に今後の動向を注視していきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
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