「デジタル前提社会における地方と都市の関係性とは?」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(2)

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「デジタル前提社会における地方と都市の関係性とは?」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(2)

2022年6月27日(月)、ハウスコム株式会社は「HOUSECOM DX Conference」をオンラインで開催しました。2022年6月~2023年3月までの開催全4回シリーズでの開催となっており、第1回目の今回は、「Society & Life Style Transformation」がテーマ。セッションは3つあり、本記事ではその1つ「デジタル前提社会における地方と都市の関係性とは?」のレポートです。他のレポートは以下をご確認ください。

デジタル前提社会における地方と都市の関係性とは?

酒井真弓氏(以下、酒井氏):ノンフィクションライターの酒井です。本セッションでは、地方と都市部がどう変わっていくのかを、考えていきたいと思います。登壇者は一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下 斉氏、面白法人カヤック 代表取締役CEOの柳澤 大輔氏、ハウスコム株式会社 代表取締役社長執行役員の田村 穂氏です。

木下斉氏(以下、木下氏):僕はもともとデジタルが得意だったので、どこでも仕事はできると考えていました。そのため以前から僕も仲間も世界を旅しながら仕事をしていましたが、このコロナ禍で一気にそういった働き方は広がりましたよね。天変地異が起きないとこういう変化はなかったかもしれません。

柳澤大輔氏(以下、柳澤氏):カヤックは鎌倉に会社を置き、鎌倉に住むことを推奨しています。実際住宅手当も出していて、社員の半分以上は鎌倉に住んでいます。鎌倉で仕事をしていて感じるのは、サービスや事業が成長すると経済合理性のことを考えて結局東京に行ってしまう人も多いということ。東京一極集中の流れは止まらなさそうだなと思いました。僕らも街全体に関わらないといけないと思い、街づくりそのもののサービスも立ち上がっています。そんなお話が今日できればと思っています。

田村穂氏(以下、田村氏):コロナ禍以降、部屋探しも自分のライフスタイルに合わせて物件を探すというのが増えてきました。時代背景を反映していると思います。今日はライフスタイルの変化によってどういう会社がのびてきて、将来どういう風に変わっていくのかを教えてもらえると嬉しいです。


酒井氏:コロナ禍で地方と都市の関係はどう変化したと思いますか?

木下氏:コロナ禍はライフスタイルが変わるタイミングだったと思います。なんとなく通勤していた人たちも「本当にこの形態でいいの?」と考えるようになった。会社に毎日行かなくていいと気がついた人たちから、だんだん都心から離れた場所に住むようになりましたよね。いきなり遠くにいかなくても静岡とか、軽井沢とか。そういった場所でも自分達の生活ができると気がついた。コロナでステイホームが必要になった時に多くの人が自宅での仕事が向いていないと思ったはずです。それもそのはず都内の住まいのほとんどは、平日の昼間に家族が集結することを想定していないんです。子供も両親も家にいると、まず仕事をするスペースがない。特に(コロナ後も自宅作業ができる)クリエイティブな仕事を持つ人たちは、その不便さに気がついて、都会に見切りをつけて地方への移動を考えるタイミングになったと思います。

酒井氏:オンラインツールも多く活用されるようになりましたが、例えばZoomを経由してのミーティングだと仕事をしにくいとか不便な点は何かありましたか?

柳澤氏:オンラインでブレストしていると、やっぱり盛り上がらないんですよ。だからどうやったら盛り上がるかを考えました。そうすると、いわゆるブレストとは違った形ではありますが、やりようはあることもわかりました。オンラインも良さがあって、これはこれでおもしろいし、リアルはリアルでいいよねと。それぞれ違いがありますね。

木下氏:オンラインでやった方がいいものと、そうじゃないものがあると思います。今は揺り戻しの時期でしょう。何よりも頑なにオフラインにこだわっていた多くの企業がオンラインに振り切れたのはいいことです。特に経営者が高齢の場合はリアルに戻したがる傾向があり、会社側も柔軟性が問われるタイミングだと思います。

田村氏:経営者として心が痛い部分もあります(笑)。うちも部屋探しは全部リモートでできるかと思いやってみましたが、完全にはできなかったですね。お客さん自身もオンラインやリモートだけでは決めきれず、使い分けが難しかったです。あと、自分もリモート勤務をしていた時に思ったのですが、家だとやたらと会議の予定が多くなるんですよね。

木下氏:わかります。空いている時間に会議が詰め込まれたり。移動時間がないから、休憩する時間もなくなります(笑)。

コロナ禍で地域が変わったのではなく、企業が変わった


面白法人カヤック 代表取締役CEOの柳澤 大輔氏は、コロナ禍で地域よりも先に個人や企業が変わったと話します

柳澤氏:移住先の地域について考えると、移住者が増えた地域もその地域が何か大きな変化をしたわけじゃないんですよね。地域ではなく、企業が変わった。もちろんその前に個人が変化しています。個人は兼業や他拠点生活といった価値観を持つようになっていたけれども、それを以前は企業が許してくれなかった。そこにコロナの影響で、企業が強制的に変わったということでしょう。経済を追いかけても幸せになれない、という個人の気持ちとうまく重なった。住む場所が選べるようになって、地方に人口が初めて増えました。個々人が地方に豊かさがあると気がつき、企業が変わったことによって移住が叶うようになったというわけですね。

僕たちは移住スカウトサービスとして「SMOUT(スマウト)」というのをやっていて、今4年目くらいで約800もの自治体が利用してくれています。この数字はコロナ以降、圧倒的に増えていますが、移住を希望する人はどこに行きたいか事前に決めないで利用している人が多いですね。つまり圧倒的に勝っている地域があるというわけではありません。それでもやっぱり人気のある場所はありますね。なぜか島は人気です。ほかは新幹線でアクセスしやすい場所や、SNSなどでしっかり町の発信をしているところも人気です。デジタルの仕事をしている人たちは、そういう場所が選びやすいですね。まだどこかの地域が特別に強いとか大きな差があるわけじゃないけど、それもこれから出てくるとは思います。

木下氏:たしかに圧倒的にここの地域が強いっていうのはないんですよね。その中でも比較的選ばれやすい、というところは増えています。僕は北海道のえぞ財団というのをやっています。ここには若い経営者が集まっているんですよ。大切なのは街が情報発信をしているかですね。住むというイメージが訴求できている場所がやはり人気です。情報発信はすごく大事です。ローカルの会社や企業も同じで、トップがいい発信をしているところは、転職や就職希望者が必ず見てくれます。代表がよくわからないままSNSで失敗した投稿をしていると、やっぱり若い子は来ないですね。私が熊本県上天草市でやっているプロジェクトもあるんですが、そこの「シークルーズ」という企業も人が集まるんですよ。ぜひローカルで地域に貢献できるような仕事をしたいという人が集まってきます。現地で何か仕事がないかと調べたときに、企業の情報発信はきっかけになります。今までは、魅力的な企業があっても情報が分断されていました。

酒井氏:移住は人生がかかっているので、自分が住むイメージがつくかどうかすごく重要ですね。

柳澤氏:「地域おこし協力隊」が一番わかりやすい仕事です。まずはこれで地域に入っていくのが馴染みやすく、そこから課題をみつけて、就職したり、起業したり。人が増えると町にも仕事は増えます。さらに場所にとらわれずできるデジタルの仕事もありますよね。メタバースやバーチャルの中でも仕事ができていくようになるでしょう。そうすると地方に行きたいけど仕事がないという状況には数十年後はならないと思って、移住を含めたライフスタイルの設計をするのがいいですね。

木下氏:愛知県がひとつの例ですが、ここは中小企業は強いけど、女性が県外に出ていくケースが多いんですよ。やりたい仕事が町にないということでしょう。実際に愛知県にある企業の役員をみたら女性の割合が少ない。共働き前提でいたのに、先輩が活躍してないし、やりがいがないから町を離れるという人が多いんです。仕事があるかはもちろんですが、質も重要ですね。そこをフォーカスしている会社に人が集まります。

移住を考えている人は、まずはいろんな人と出会うのがいいんじゃないでしょうか。ネットのコラムを読むのもいいけれど、それよりいろんな人と会ってみるのがいい。オンラインで知り合いができたら実際に現地に行ってみて、どういうプロセスで移住したか聞くとリアリティーが生まれます。

田村氏:移住って重いじゃないですか。失敗ってできるんですか。

柳沢氏:そういう意味だと、まずは2拠点で行く人も多いですね。お試しという感じです。今いる場所にもう1箇所拠点として増やす方法です。移住候補地のコミュニティに毎月通って関係性を作ってから移住を決めるとかがいいですね。

木下氏:そういうケースは熱海にも多いですね。まずは週末だけ、とか。通いながら移住するかを決められるので、移住という言葉がライトになってきたと思います。また、昔は骨を埋めるイメージがありましたが、今では教育移住も増えていますね。子供の幼稚園や保育園の期間だけ移住したり、進学に合わせて場所を変えるという移住です。

選ばれる地域に必要なのは受け入れ態勢

柳澤氏:そういう意味だと、選ばれる地域に必要なのは発信の次に受け入れ体制ですね。住民文化です。会社には組織文化があるように、町にも住民文化があります。移住者が参加できるオープンな状態になっているか、行政が移住者をコミュニティに入れるところまでサポートできるかなどの受け入れ態勢ですね。移住者を受け入れて、街づくりに参加させられる余白を作る。週2回しか町に来られなくても、街づくりに関われるなら愛着はわきます。いまだに出身を気にしたり、この土地で家を買って初めて地域にコミットできるような場所もまだ残っていますよね。でもそうではないところじゃないと伸びない。ある程度町もオープンにならないとだめですね。住民文化をそこまで育てた地域はまだないけど、できたら人気になると思います。

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下 斉氏は流動性の高い地域が生き残ると話します

木下氏:地域のお祭りが外の人にとって出入り自由かっていうのもポイントになりますよね。実は福岡って10年以上住む人って人口の3割を切っているんです。だから長く住む人たちばかりじゃなくても回るようにできている。ほかにも北海道ではこの半世紀で街の消滅が懸念される場所がたくさんあります。なので、家を買わないと住民じゃないとか言っていられないんですよね(笑)。若い人でもいい人がいたら町長になれるとか、流動性に対して積極的になっている地域も増えています。そうなるとお試しでの移住もしやすいですね。

酒井氏:私も東京弁を喋り出したら、地元を捨てたのかとか言われたけど(笑)、そういう時代じゃないですね。

木下氏:ルーツに対してリスペクトしていく。昔は東京から地方へ移住すると、都落ちとかも言われていたけど、そんなことももうなくてフェアにコミュニケーションが取れます。それはすごい変化だと思いますね。

田村氏:自治体での動きについて伺いましたが、民間との境はどうなりますか? 民間はどう関われるのでしょうか?

木下氏:生活スタイルという点では地元企業の変化が大事です。地方で仕事をしようと移住してきた人が、現地でオフィス環境がアップデートされてないことに驚いたり。こういうところにサテライトオフィスとかができると、現代的なオフィスにはじめて地方の人が触れることになります。せっかく移り住んできた人が力を持っていても、地元の準備ができていなかったらもったいないですよ。来てくれた人の力を地域がフルで使えるようにしたらいいですね。

柳澤氏:(行政と民間の)垣根がどんどんなくなっていて、混ざり合って一緒にやることが増えています。連携が必要だし、連携している地域が盛り上がっています。それには行政だけでなく、キーマンである民間の人が必要だし、実際に存在しています。そこに街づくりのリーダーシップを取れる人。この三者が連携していると町は動き出す。経済が右肩上がりのときはいいけど、今は各自が勝手にやってもうまく行くわけじゃないですからね。

木下氏:キーとなる人が繋がっていれば、チームで球を回し合えます。

本物を提供することがビジネスチャンスにつながる

酒井氏:都市と地方の関係が変わるなかで、ビジネスチャンスに変えるにはどうしたらいいのでしょうか? 成功事例などありますか。

木下氏:今年は観光が戻ってきます。2018年まで、成長率が高い分野は観光と言われていましたよね。コロナ禍で落ち込んでしまったけれど、それが跳ね上がってきます。みんな本物を見たいし、行きたいという思いが出てきているので、そこに向き合うのが大事です。田舎だから安いものしか売れないという時代も終わり、本物の経験を提供していく流れができています。ここに向き合っている産業は実際に伸びていますね。ホテルや旅館は苦しいと言うけれど、個室型で高品質の宿は伸びているケースもある。ヨーロッパでもシャンパーニュは過去最高額の売上を更新しているんですよ。日本でもこういうケースが出てくると思っていて、楽しみにしています。

柳澤氏:ビジネスはデジタルが主戦場になってくると思います。だから東京か地方かなど場所を問われないんですよ。今までは産業が集積しているエリアが有利でした。また、東京に刺激が集まることへの優位性もありました。でも、飲み会やイベントが減った時に東京に情報が集まることがなくなってきたんですよね。そうなるとどこに住みたいか、だけの問題になります。自分の好きな街に住むことが重要です。

酒井氏:楽しいっていうのが重要ですね。地方移住の入り口としてのワーケーションについてはどう思いますか?

木下氏:個別にホテルなどの企業が対応していくのはいいんですが、自治体をあげてとなると、どうかなという気持ちはあります。ワーケーション中の労災や経費も含め税務署もまだわかっていないことが多いですよね。クリエイティブな人たちはもともとワーケーションみたいなことやっていました。でもそうじゃない人たちは、どうでしょう。

柳澤氏:僕自身がずっとやってきたから肯定的です。でもワーケーションする側からしたら、ワーケーションをしやすい地域かどうかを見ているわけでは無い。なぜならネット環境があればどこでもできることだから。何か施設を作るなどのワーケーション市場を作れば盛り上がるのか、とかそういうのは違うと思います。

田村氏:とても学びが多いです。ありがとうございました。

 

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