「メタバースがライフスタイルに与えるインパクト」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(3)

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「メタバースがライフスタイルに与えるインパクト」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(3)

2022年6月27日(月)、ハウスコム株式会社は「HOUSECOM DX Conference」をオンラインで開催しました。2022年6月~2023年3月までの開催全4回シリーズでの開催となっており、第1回目の今回は、「Society & Life Style Transformation」がテーマ。セッションは3つあり、本記事ではその1つ「メタバースがライフスタイルに与えるインパクト」のレポートです。他のレポートは以下をご確認ください。

技術力が追いつきメタバースが実現

田原彩香氏(以下、田原氏):本セッションは「メタバースがライフスタイルに与えるインパクト」です。登壇は一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長の長田新子氏、クラスター株式会社 代表取締役CEOの加藤直人氏、ハウスコム株式会社 代表取締役社長執行役員の田村穂氏、そして私ビジネスタレント協会代表の田原です。田村さんは、前の2セッションでも自己紹介をされているので、加藤さん、長田さん簡単にお願いできますか?

加藤直人氏(以下、加藤氏):引きこもりがこうじて、メタバースの場所をつくってしまった加藤です。国内トップクラスのメタバースオタクです。

長田新子氏(以下、長田氏):もともとはレッドブルという会社でリアルなイベントたくさん作っていました。その後2020年のコロナで、街から人がいなくなった時に、渋谷にもうひとつの街「バーチャル渋谷」をメタバースで作りました。

田原氏:メタバースという言葉は最近よく聞きますが、具体的にはなんなのでしょうか?

加藤氏:気が付いたらメタバースという言葉がバズっていましたね。Googleトレンドを見ると昨年2021年の夏頃から急激に伸びています。きっかけはマーク・ザッカーバーグがFacebookはメタバースを作る会社になると言ったからです。実はその前にも、2007年のSecond Lifeが流行った時期にもちょっと言葉はトレンドになっていました。

概念として出てきているのはもっと前で、1982年には『トロン』という映画でも描かれていました。『マトリックス』とか『サマーウォーズ』もメタバースですよね。コンピューターが出てきた時から、人間は土地から解き放たれた世界で生きるべきだ、という考えです。そして今、実装できる段階になり、VRを使ったサービスも出てきました。昨年3月に上場したロブロックスとかもありますね。ゲーム空間の中で友達とコミュニケーションができるようになりました。ゲームの中で会って、会話はボイスチャット。それが10代、20代には当たり前になっています。30代もそうですね。生活スタイルが変わってきていると思います。

田原氏:言葉や概念自体は結構昔からあったんですね。技術力もあってこれまでは流行らなかったということでしょうか。

加藤氏:今回は規模感が違いますよね。2007年に無くて、今あるのはスマートフォン。VRゴーグルの中身ってほとんどがスマホなんです。目の前にスマホを置いているのと一緒。それがベースになっているので、安価にVRデバイスを作れるようになったんです。ベースとなるプラットフォームや通信のインフラ、ネットに接続する人の人口も2007年と今では全然違いますね。

クラスター株式会社 代表取締役CEOの加藤直人氏がメタバースについて解説

田原氏:メタバースっていうとゲームの印象がありますが、それだけじゃないということでしょうか?

加藤氏:コンピューターの中に自分が入っちゃうというイデオロギーとしてのメタバースは1%にも満たないですね、まだ。ただ今存在する技術としては、ゲームがベースとなっています。メタバースで使われている3DCGの技術はゲームで発展しています。

長田氏:メタバース「バーチャル渋谷」はかなり短い期間で作られました。私は2007年にレッドブルに入っています。当時Second Lifeの中で企画されたイベントもありましたが、うまくいきませんでした。バーチャル渋谷を行っている「渋谷未来デザイン」という会社は、渋谷区がはじめて作った一般社団法人です。これからの都市のデザインをしていくという、未来に向けたプロジェクトを構想しています。その中の、創造文化都市事業で5Gを使ったプロジェクトとしてKDDIさんと立ち上げたのがバーチャル渋谷です。新しい街を作ったらどうかというところから生まれたチャレンジです。結果として100万人が体験したメタバースになりました。今はバーチャル渋谷の中だけでなく、リアルと連動したらどうかいう動きもはじまっています。

一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長の長田新子氏がバーチャル渋谷について解説

田原氏:リアル以上の渋谷が再現されているようですよね。これはメタバースだからできることでしょうか。

加藤氏:バーチャル渋谷は10年後の渋谷というコンセプトです。現実の渋谷のいいところって歴史やカルチャーが集積されているところですよね。メタバースにはまだ歴史がない。その中で渋谷がバーチャルに来る意味はなにかと考えると、その歴史やカルチャーをうまく取り入れられることだと思うんです。時空を超えられることをコンセプトに取り入れています。そして、メタバースのいいところは多くのクリエイターが参画できるところでしょう。

長田氏:ジェンダーや年齢、国籍を超えた交流ができる。それって普通の生活だとなかなかできないですよね。そういうのがいいなって思っています。

田原氏:メタバースの中では、どういう自分になりたいかとか選べるんですよね。

加藤氏:ちなみに僕のアバターは鳥の姿をしています。人型である必要すらないんですよ。自由に自分達で空間を作りながら生活している人たちのコミュニティが出来上がっています。

クリエイターが集まっていることもあるし、年齢とか性別に依存しないコミュニティですね。仲良くなったら10代と50代だったとか、会ったことない人同士で付き合ったりとかもありますね。リアルだとバイアスがかかるというか、心のバリアもあって仲良くなれないという人たちがいるけど、メタバースはそれに依存しないのが特徴です。

田原氏:心の拠り所になりそうですよね。

加藤氏:ボリュームゾーンはやっぱり10,20代の1人の人ですね。リアルでは友達いなくて、という人もメタバースではたくさんの人と交流ができます。

メタバースを活用し不動産の価値を高めていく

田村穂氏(以下、田村氏):不動産はどうしてもリアルなものなんですが、相性が良さそうという直感もあります。企業側が寄り添うならどういう方法がありますか?

加藤氏:不動産といったら、コラボという形でランドマークを作ったりするのがフェーズ1ですね。丸の内のビルを作るとかのイメージです。リアルの不動産の価値を高めるためにバーチャルを活用する方法です。でもこれはどこまでいっても、リアルのサポートとしてのバーチャルなので、フェーズ2にバーチャル空間内の価値を高めるというのがあります。リアルの価値高めるためにメタバースを活用してもらうのもいいけど、やっぱりフェーズ2もやってもらいたいですね。

田村氏:この業界ってリアルの価値を上げるのが大切なんです。これはいいですね。話をきいて、メタバースの中でいろいろ作っていきたいと思いました。人の動きとかはリアルを超える可能性がありますね。

ハウスコム株式会社 代表取締役社長執行役員の田村穂氏はメタバースと不動産の親和性を確認

加藤氏:その通りで、参加者は国すらも超えるんです。実際にやったアニメのイベントでは日本人よりもスペイン圏の人が多く参加してくれました。『鬼滅の刃』のコラボや、『ポケモン』のテーマパークのイベントをした時は海外の人も大勢来る。リアルの土地の価値ってそこにどれだけ行きたいかだと思うんです。バーチャルだと国境も越えられるから、最強のインバウンドじゃないですか。

長田氏:バーチャル渋谷のような空間は、今大阪にもあるんです。渋谷と大阪がすぐつながることができる。

加藤氏:バーチャル大阪では『M-1グランプリ』の裏番組として配信をやらせてもらいました。そこに芸人さんがアバターで入ってきて、そのときは数万人が同時接続をしてくれました。日本国内で考えると、東京ドームでも最大5.5万人ですか。それがバーチャルで作れる。このバーチャルの価値をどう高めて行こうか、というのはリアルの価値を高めてきた不動産の人にセンスがあるはずなんです。

田原氏:バーチャルで価値が上がって、比例するようにリアルでも価値が上がるという現象もありそうですね。観光業が盛んでない場所がやるとか、いろいろな可能性がありそうです。

長田氏:渋谷でも(コロナで)人がいない時期に、バーチャル渋谷のようなチャレンジをしました。どこの場所もアイコニックな象徴を作っていく必要はあるけど、柔軟にチャレンジできるのがおもしろさですね。熱量高い人が引っ張ってくれないと、なかなかできないという点はありますが。

メタバースの中でカルチャーやコミュニティが成長する

田原氏:バーチャル渋谷で起きた行動が、リアルに反映されるという取り組みなどはありますか?

長田氏:それはやりたいと思っていることのひとつです。行政サービスもバーチャルでもっとできる可能性があります。街同士の連携もしたいですね。リアルでの動きがコロナで出来ていなかったので、これからできるといいなという感じです。

田原氏:お買い物とかも実際にできるんでしょうか?

加藤氏:機能としてはすでにあります。デジタルアイテムが買えるだけじゃなく、Tシャツを買ったらアバターにも反映され、リアルにも届くという機能もあります。まだできてないのは、お店が自分達で登録して自由に販売するという機能ですね。今はイベント単位でのショッピング機能になっています。イベントの中で投げ銭を行うというものはすでにあります。日清がスポンサーのイベントではライブ中に連動して焼きそばのUFOが飛び交っていました(笑)。

田原氏:著作権とかはどうなるんでしょうか?

加藤氏:いまのところ、インターネットの著作権などの法律と同じです。チェック体制はアルゴリズムで検出という感じです。

長田氏:アバターは分身で自分自身なんです。私が感動した経験がひとつあるのですが、イベントはどうしても初めてメタバースに参加する人が多い機会ですよね。初めて入った人はどうしたらいいのかわからない。そんな時にボランティアで誘導してくれる人が自発的に現れたんです。それに私は感動しました。メタバースの中でイベントに行く人をボランティアで支援するという動きです。

加藤氏:クリエイターのみなさんがアバターを作って、自分自身が矢印になって道筋を誘導したりしていましたね。

長田氏:テーブルに座っている人が、こっちですよと道を教えてくれて、お疲れ様と声をかけていました。

加藤氏:バーチャルならではの仕事もできますね。アバターを作って売るという第一次産業はもうありますが、そのあとのサービスとしてのバーチャルの仕事。バーチャル飲み屋とか自分達で作って集まって楽しんでいる人たちがいるのですが、ここで働くスタッフにお金発生するとかも想像できます。

田原氏:リテラシーが高くないとできないのかと思っていましたが、話を聞いていると初心者もできそうですね。

加藤氏:VRのゴーグルはシニアの方にも相性がいいと思います。スマホって難しいと思っていても、VRのゴーグルってパスワードを入力したらあとは身振りや音声だけで操作できるんですよ。身体的に外に出かけるのが大変だという人もこれがあれば街に出かけられます。

田原氏:最初だけちゃんとわかっていれば、あとは年齢関係なく楽しむだけですね。

長田氏:機器も進化して軽くなるから、より身近になると思います。

加藤氏:メタバースのムーブメントは目指す理想像からすると、まだまだ黎明期です。このタイミングがファーストムーバー。何が正解なのかわからないけど、カルチャーとして動き始めているから、ぜひこれからビジネスのディスカッションができればと思っています。

長田氏:私は一般社団法人メタバースジャパンでの活動も行なっています。業界同士を繋いで、コミュニティや個人が活躍できる社会をつくりたいと思っています。

田村氏:非常におもしろい話でした。もともと不動産とメタバースの相性はいいのかなと思っていたけど、ターゲットも同じですね。この世界観は不動産も取り入れていかないとと思いました。これからいろんなディスカッションを一緒にさせてもらいたいです。

自社だけでなく不動産業界の変革に寄与していきたい

イベントを終えてハウスコム 田村穂氏に感想を聞きました。

「ハウスコムが、このようなイベントを主催する理由は私たちがターゲットにしているお客様にとって興味があることだから。こうした取り組みを通じて、私、そしてハウスコムがいかに新しいことに取り組んでいこうとしているかという姿勢を、社内外で見せていきたい。最先端にいる方々に不動産に近しい話題・課題を語っていただくことで、古い体質の不動産業界そのものの変革に寄与できたらとも思っている。その点ではとてもチャレンジングな取り組みだと考えています」

記者の目
ハウスコムというと、不動産業界の中では古くからある存在で、ある意味最先端というイメージを持たない人も多いのでは? ただ、ここ数年はDXを推進し、このようなイベントを行うなど変革が進んでいる。歴史ある不動産企業が自ら率先して変化をしていこうという姿は、これからの不動産業界が大きく変わる兆しともいえるかもしれない。

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