「2030年の暮らしはどう変わる?」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(1)

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「2030年の暮らしはどう変わる?」 ハウスコム「HOUSECOM DX Conference」レポート(1)

2022年6月27日(月)、ハウスコム株式会社は「HOUSECOM DX Conference」をオンラインで開催しました。
2022年6月~2023年3月までの期間で全4回シリーズでの開催となっており、第1回目の今回は、「Society & Life Style Transformation」がテーマ。IT批評家 尾原 和啓氏、シェアリングエコノミー協会代表理事の石山アンジュ氏らをゲストに迎えて、デジタル社会におけるライフスタイルの変化とビジネスチャンスについて議論しました。セッションは3つあり、本記事はその1つ「2030年の暮らしはどう変わる?-暮らしの変化と新しいビジネスチャンス-」のレポートです。

2030年の暮らしはどう変わる?-暮らしの変化と新しいビジネスチャンス-

セッションには左から尾原和啓氏がオンライン、藤本あゆみ氏、石山アンジュ氏、田村穂氏がリアルで参加。

藤本あゆみ氏(以下、藤本氏):本日は「2030年の暮らしはどう変わる?」というテーマで、社会がどう変化するのか、どんな兆しがあるのか。みなさんと話してみたいと思っています。私は一般社団法人at Will Work 代表理事、Plug and Play Japan株式会社 執行役員CMO、一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事の藤本です。よろしくお願いいたします。本セッションは、IT批評家の尾原和啓氏、一般社団法人シェアリングエコノミー協会 代表理事兼事務局長の石山 アンジュ氏、そしてハウスコム株式会社の代表取締役社長執行役員の田村 穂氏の4名で進めていきます。まずは簡単に自己紹介からお願いします。

尾原和啓氏(以下、尾原氏):シンガポールからアクセスさせてもらっています。僕自身はこれまでインターネットのプラットフォームを立ち上げて、人の自由を増やすことをやってきました。

石山アンジュ氏(以下、石山氏):私は新卒でリクルートに入りましたが、資本家と労働者という関係に疑問を持っており、現在は大分県で社会実験しながら暮らしています。

田村 穂氏(以下、田村氏):我々は不動産という堅い仕事をやっています。そんな業界から、これから5年先、10年先どう変わっていくのかを見てみたい。今日、それを垣間見られるのではないかと楽しみにしています。

最初の友達と出会うのは近所の砂場からマインクラフトへ

藤本氏: 2030年の暮らしというテーマですが、そこで切っても切れないのがテクノロジーだと思います。これからの暮らしを支えていくテクノロジーってどんなものでしょうか?

尾原氏:この20年、僕たちの生活を変えたのはスマートフォン。次の20年はとなると、メタバースとか、バーチャルファーストに変わっていく。今はその転換期といえそうです。

藤本氏:メタバースは盛り上がっていますね。もっと進化しますか?


尾原和啓氏は人の価値観から将来を見通す考え方を話します

尾原氏:今のメタバースは、VRとすこし近い世界観。遊びたい人が遊ぶといったレベルですが、2030年になるとスマホのようにみんなが意識しないでメタバースを使っている状態になるのでは? ただ、技術は20年のスパンで見ると、どういったものが生まれるかはおおよそ分かりますが、それがどのくらいで成熟するのかというのは分かりづらい。

むしろ人の価値観から見ていったほうが将来は見通しやすい。2010年以降に生まれたアルファ世代にとって、初めての友達の出会いの場は近所の砂場ではなくマインクラフト。ある意味、見た目など関係なく、好きな場所でコミュニケーションを重ねて友達となるから本質的とも言えます。そしてシェアリングエコノミーを当たり前と思う人が社会の中心となっていく。車とか家とかを、借りたり貸したりすることで豊かな生活を目指す人がメインになっていきます。

藤本氏:テクノロジーを使う人の価値観もアップデートされていきますよね。アルファ世代が社会の中核になる時、いろいろなことが変わりそうです。

石山氏:テクノロジーを通じて、人が、よりつながりを感じるのか、孤独を感じるのかは気になります。プラットフォームの選択肢が複数ある中、自分で選んで使うときにどういう意識を持つのか。個人的には今のままでは孤独を感じるのではと思ってしまう。今のプラットフォームが個人的なものだから。昔は、インターネットでつながって人類ひとつになれるという希望がありましたが、今やフェイクが当たり前に。インターネット内の秩序がない中、サバイブしていかないといけない。

尾原氏:まず、つながる=ひとつになるではない。それぞれの多様性を楽しむという考えや設計が大切なのでは? 「DX進化論」という本で書きましたが、今までは足りないモノがたくさんあったけど、先進国でみると足りないモノはなくなってきている。だから一人ひとりの幸福にインターネットが貢献できるのでは、という理想を僕は持っています。ただ、石山さんの話すように情報を悪用するケースが増加傾向です。すべての人が情報の取捨選択ができるわけではないので、そこは課題でしょうね。

日本の「縁側」のようなコミュニティをどう設計できるか?

藤本氏:インターネットというテクノロジーが社会や暮らしに様々な影響を与えています。

尾原氏:不動産の話になるかもしれませんが、日本の「縁側」みたいなものをどうやって設計できるか? つまり、私的な場所にふらっと他人が入り込める場所をどうやって設計できるか。これはリアルでもオンラインでも大事かもしれません。

藤本氏:住まいに関してもテクノロジーがもたらした思想や体験の変化があると思います。

田村氏:ちょっと前まで不動産を探す時、お客様のニーズは「私」でした。それが「(私と)あなた」になり、今は「私たち」。一人称から二人称、そして三人称の部屋探しになってきた印象があります。同じような人たちが集まっていて、コミュニケーションをする。ピザを一緒に焼いたり、交流したり。そういうことを求める人が増えています。住まいと仕事場っていう関係だけじゃない。自分はいろんなコミュニティに居るという価値観を大事にしようとしている人が増えていると思います。

石山氏:今、私が行っている社会実験は「拡張家族」というものです。先ほどの縁側を広げていくような考えで、より多様な人たちが同じ場所に暮らすということで、ゆるく繋がるようなことを行っています。ただ課題も感じていて、拡張家族ではなく通常のシェアハウスの場合、仲良くなる人とは仲良くなるが、そうじゃない人とは分断されやすい。若い人は価値観の合わない人をスワイプして消そうという考えがある。だから、価値観の違いから何かトラブルがあったときに対話を諦めない、自己変容をできるのか、ということを約束して拡張家族のコミュニティに入ってもらうようにしています。拡張家族で人との関係、繋がりの修行をする。それが多様性を受け入れられる素地になるのではないかと思っています。

承認欲求は満たせても、所属欲求は満たせていないのが現在

藤本氏:多様性の中で、自分は受け入れられて当たり前。でも自分は(他者を)受け入れているのか? ということがあると思います。私たちは何をアップデートしなくちゃいけないのでしょうか?

石山氏:デジタル空間もそうですが、リアルでも地震や戦争が起き、先が見通せないのでまずは自分を守るので精一杯。こうした状況が人との線を引く背景になっていると思っています。デジタルは簡単に繋がったり切れたりするので、この中で影響される価値観はより個人に走ることになる気がしていて。日本は宗教観を持っている人が少ないですよね、宗教観があれば「すでに繋がっている」という気持ちを持てるのですが。

尾原氏: 僕たちの価値観を形成しているものはモバイルとSNS以上に、都市開発の副作用が大きい。ここ30年で起きた僕らの価値観の変化は何かというと、隣近所の人を知らなくなったこと。これって人間が生まれてから初めてのことなんです。狩猟民族の時は隣近所の人がいなければ生きられなかった。農耕民族の時もそう。集団になったおかげで他の動物より優位に立てていました。今までは生まれた場所が、居場所を提供してくれていて、次に大学や会社が居場所を与えてくれていた。これが無くなったんですね。SNSで承認欲求は満たされるようになったけど、所属場所が欠乏しているのがこの10年です。所属欲求が満たされない状態が続いている。だからこれからは居場所を作ってくれるテクノロジーが求められる。今まではインターネットは点で存在していましたが、これからはメタバースの中で生きていくことも可能になりました。メタバースが所属欲求を満たす、拡張家族や村になってくる。

石山氏:より多面的な承認欲求とかをセルフカスタマイズしていく時代になると思います。昔は大きなブランドや企業に所属していると安心だったけれども、今はそうじゃない。国も企業も守ってくれない。じゃあどうしようという時に、住むところ、働き方においても、多面的に常に複数の選択肢を持つ必要がでてくるのではと思いました。

尾原氏:さきほど話に出た三人称の部屋探しって、これに共通する概念だと思います。

住まいはみんなで作っていくもの

藤本氏:所属する場所を探すのは大変ですが、複数持てるのはいいですね。とはいえ、住まいはたくさん持てません・・・これは変わってきますか?

田村氏:今まで多くの人はスペックで部屋探しをしてきました。今は自分の生活を考えて部屋探しをしている印象です。パートナーとどうやって過ごそうとか。自分がどこに所属しているのか、という集団欲求をどう満たそうかという視点で、住まいとか場所をみなさん探しています。

藤本氏:質問も来ています。リアルとバーチャルにいる時間が逆転するような関係は社会にどう影響すると思いますか? 住まいを提供する側として取り組んでいることはありますか?


田村穂氏は不動産も世代ごとにサービスを変えていく必要があると話します

田村氏:Z世代とか、世代を分けて取り組む必要があると思っています。部屋探しは一時的なものではない。店ごとに"ライフスタイルデザイナー"の宣言をしようとか、いろんな取り組みをしています。

尾原氏:このコロナで副業が当たり前になってきた。そうすると1箇所に依存して勝たなきゃいけないという時代から、ポートフォリオの中で、ここで稼いで、副業は自分らしくとか、変わってきました。これから住まいも、一箇所で生活を済ませるのではなく、ポートフォリオの中で作っていくようになると思っています。部屋が2軒あれば、片方を貸してそのお金をもう一軒の家賃にあてることもできる。

石山氏:シェアという選択肢があることで、金銭的な面でも比較的誰でも他拠点生活ができるようになっていくとは思います。とはいえ、例えばメタバースの世界のルールと大分県の田舎のおばあちゃんたちとのルールって全然違うように、それぞれのリテラシーが求められる。ポートフォリオを増やすときに生き方を修行していかなきゃいけない。消費者的な感覚だけでなく、個人の中でいかに形成していくかが求められると思います。

藤本氏:統一ルールがないので、自分が各所に適応していく中で、大変な部分や変化も楽しめたりするとよいかもしれませんね。

田村氏:これからの不動産業界、部屋探し。どう変化していくのかを聞いてみたいです。

石山氏:最初から余白を作ってもらえることを不動産業界に求めたいです。私は空き家バンクで大分の古い家を借りてDIYをして、自分で暮らしを作っているという感覚があります。東京の賃貸は、画鋲を刺すこともためらわれる。最初から余白を提供してもらえるかが、自分の家だと思える感覚を高めるために大事だと思います。

尾原氏:不動産選びで今までは失敗させないことが重要視されてきた。いかに「安心安全」かが求められてきた。これからは失敗してもいい、それを楽しもうという形でもいいのではないかと思います。昭和初期の頃の海外旅行は、失敗が怖いからツアーで観光名所を回ったわけです。それが今は個人旅行でむしろ失敗を楽しむことがあって、その体験をシェアするようになった。住まいも同じようで、みんなで作っていくもの。場所は住む人によって作られていくものですから、みんなで住まいの形をどのように育み合うか? それを楽しめる環境づくりが大事だと思います。

田村氏:皆さんの話を聞きながら、これから業界が変わっていくという未来が少し見えてきました。ありがとうございました。

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