店舗DXのメリット・事例とは?不動産業界を含む4つのケースを紹介

- 店舗DXにはバーチャル店舗やオンライン・アバター接客、顧客の体験向上を目指すOMOなどがある
- 不動産会社ではバーチャル店舗の事例が
- セルフレジシステムにより買い忘れが減少、客単価がアップした企業も
店舗型ビジネスにおけるDX「店舗DX」は、小売業を中心に様々な試みが行われています。店舗DXでは業務の効率化やコスト削減だけではなく、「顧客の体験向上マーケティング(OMO)」も重要となります。
不動産業界でもバーチャル店舗・バーチャル公園の公開といった店舗DXが行われており注目を集めています。
店舗DXのメリット・デメリットやマーケティング戦略、売り上げが増加した事例や作業効率が上がった事例を知り、DX化のヒントにしていきましょう。
店舗DXとは?顧客と事業者にとってのメリット・デメリット
店舗DXと言えば、セルフレジやキャッシュレス決済などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
もちろん上記の事例も店舗のDX化ですが、店舗DXは顧客の利便性向上を目指すツールの導入だけではありません。
「OMO」と呼ばれる顧客の体験向上マーケティングにより、店舗の売り上げ上昇が期待できます。
例えばアメリカのIT企業Amazonが展開する店舗「Amazon Go」はクレジットカード情報を登録した専用アプリを活用し、QRコードを入場ゲートにかざして入店、商品を手に取りゲートをくぐるとアカウント情報と商品情報が紐づき後払いとして請求されます。
顧客にとっては利便性の向上に加え、「合理化された新しい買い物体験ができる」というメリットが生まれます。
後に紹介するイオンリテールの「レジゴー」ではスマートフォンを利用したセルフレジの導入により、客単価が15~20%上昇しました。
店舗DXは顧客側にとって主に以下のような導入事例があります。
顧客にとっての店舗DX
- セルフレジ
- キャッシュレス決済
- AIチャットボット
- オンライン・アバター接客
- 3D・バーチャル店舗
- 実際の店舗をオンライン上で公開し店舗を見て回れる体験ができる
※「Online Merges with Offline(OMO)」オンラインとオフラインを融合した顧客体験の向上を目的とするマーケティング戦略
セルフレジやキャッシュレス決済、AIチャットボットは顧客にとって利便性が向上するというメリットがあり、3D・バーチャル店舗は体験向上というメリットに繋がります。
一方で事業者にとっては「導入コストがかかる」というデメリットがあります。ただ業務の効率化・人員コストの削減が期待できるため試験的に導入する企業が多いです。
事業者側にとっての店舗DXは以下の通りです。
事業者側のDX
- 「Online to Offline(O2O・オンライン トゥ オフライン)」オンラインの情報拡散により店舗(オフライン)に客を呼び込む仕組み
- 過去の顧客データの活用
- AIによる需要予測・在庫管理
O2Oは低コストでの導入が可能であるため、多くの企業がTwitterの企業アカウントによる情報発信やInstagramでのブランディング、LINEによるクーポン配信などを実施しています。
アプリと実店舗を連携した店舗DXの事例もあります。
店舗DXの事例4つ
- ニトリの「ニトリアプリ」は実店舗と連携、バーチャルショールームも
- オンライン不動産会社Kantのバーチャル店舗
- 三井不動産のバーチャル店舗と公園
- イオンの「レジゴー」
1.ニトリの「ニトリアプリ」は実店舗と連携、バーチャルショールームも
家具・インテリア用品小売りの株式会社ニトリでは、2014年頃から「ニトリアプリ」を導入しており店舗検索や商品の検索、画像検索、ARメジャーを用いたサイズ検索ができます。店舗でニトリアプリを起ち上げると店内マップ、在庫・納期確認などができ、アプリ会員証としてポイントカード機能も付いています。
店内で商品を持ち歩かず商品バーコードをスキャンし、アプリで購入が可能です。
【画像出典】ニトリ バーチャルショールーム【URL】https://www.nitori.co.jp/recruit/newgraduate/business/dx/
また実際の店舗のコーディネートルームを3D撮影したものをネット上で公開することで、360度見渡しながら、店舗にいるように買い物体験ができるバーチャルショールームや、セルフレジの導入を行っています。
2019年に改装されたニトリ新座店ではEC誘導ポップやデジタルカタログの導入、3Dシミュレーター接客などの取り組みが行われました。
2021年2月には自動梱包機を倉庫に導入する「物流DX」にも取り組んでいます。商品を専用の段ボール箱に入れると自動的に梱包される機械によって、梱包作業の生産性が10%向上しました。
社内では経 費精算・管理クラウドの導入で業務時間削減を見込んでいます。
2.オンライン不動産会社Kantのバーチャル店舗
不動産賃貸・仲介・売買をオンラインで展開する不動産会社Kantは、店舗を持たない不動産会社として2018年に設立されました。
2021年6~7月にオンライン会議サービス(Remo)を利用し、バーチャル店舗を開店、部屋探し相談会を実施しました。
【画像出典】Kantホームページ【URL】https://www.online.kant711.jp/book-online
その後毎週水曜日にバーチャル店舗を一般開放し、事前予約不要で部屋探しを行う人の相談を受け付けています。バーチャル店舗では、引っ越しの方角などをアドバイスする風水占いといったユニークなイベントも開催されています。
オンライン内見も可能で契約手続きもすべてネット上で対応しています。
3. 三井不動産のバーチャル店舗と公園
2021年6~12月には三井不動産もNTTコミュニケーションズと共同で、実際に名古屋にある8店舗をカメラで撮影した映像で再現したバーチャル店舗を実験的に公開しました。
【画像出典】 Hisaya Digital Park【URL】https://hisayadigitalpark.jp/
名古屋の実在する公園をCGのVRでバーチャル空間に再現し、そこに実在する8店舗を360°パノラマ撮影で再現しバーチャル店舗として配置。実店舗とバーチャル店舗の連携をすることで、来店者のデータを分析し今後のDX戦略に活かす予定です。
4.イオンリテールの「レジゴー」
2020年3月に関東圏のイオン・イオンスタイルで導入された「レジゴー」は2022年1月時点全国で導入店舗が100以上に伸び ています。
レジゴーは、店内にある専用スマートフォンや専用アプリをダウンロードした自身のスマートフォンに欲しい商品のバーコードをスキャンしながら買い物カゴに入れていき、最後に精算機にデータを送信することでレジに並ばずに会計が出来るシステムです。
レジゴーは購入した商品一覧を表示できるため、客の買い忘れが少なくなり客単価が15~20%上昇したという話があります。
客にとってレジ待ちの時間が無くなる、新しい買い物体験が出来るというメリットがあります。
店舗DXが秘める可能性
店舗DXは顧客にとって利便性向上や新しい体験が出来るというメリットがあり、事業者側にとっては業務の効率化や人員コスト削減などのメリットが期待できます。
さらに「顧客の新しい体験」は新規顧客の開拓に繋がる可能性があります。
イオンリテールのレジゴーのように予想外の効果(売り上げ上昇)が生まれることもあり、店舗DXには未知の可能性が秘められているといえるでしょう。
不動産業界でも既に店舗DXを展開する企業があり、今後の動向に注目が集まっています。
この記事を参考にDXのマーケティング戦略や事例を知り、今後のDX化のヒントにしていきましょう。