建物の設計が変わるかも「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム (WPT)」の世界

- 充電をワイヤレスで行う取り組みが本格化してきている
- ワイヤレス給電は「近接接合型」と「空間伝送型」があり、近接接合型はスマートフォンなどでなじまれつつある
- ワイヤレス給電が普及すると電源配線が不要になりこれまでにないサービスや建物の設計が可能になる
無線LANのようにケーブルレスで充電できる技術で生活はどう変わるのか?
インターネットは有線から無線が主流になり、多くの人はスマートフォン1つでアクセスをしています。しかし、そのスマートフォンの充電はどうしているかというと、まだまだ有線ということがほとんどです。
空間伝送型WPTシステムは、電波を活用した遠距離のワイヤレス充電・給電システム。有線での接続が不要なので、幅広い用途で利用が期待されています。例えば10m以上先のスマートフォンやIoTデバイスに無線で給電できるようになります。充電ケーブルや電池交換が不要の時代がやってきそうです。
ワイヤレス給電は「近接接合型」と「空間伝送型」の2種類
ワイヤレス給電は、ケーブルを用いず離れた場所にある機器を充電できる技術で、電力の伝送距離が数mmから1m程度の「近接接合型」と10m以上離れた機器に充電できる「空間伝送型」の2種類に分けられます。
前者の「近接接合型」はスマートフォンの無線給電に使われる「Qi」などがすでにあります。Qiは電磁誘導方式を使った無線の給電方式です。このほか、EV(電気自動車)向けにEVと道路の間で電力を伝送するタイプのものも開発が進められています。
後者の「空間伝送型」は2021年度内に国内で解禁となるもの で、マイクロ波の振動を電波に載せて給電する方式です。
ワイヤレス給電で何が変わっていくのか?
「大手ゼネコンがこぞって開発・導入を推進する「建物OS」とは何か」でも紹介している通り、ビル管理では、空調コストを抑えるために温度や湿度などを検知するIoTセンサーをオフィス内に設置するケースがあります。このIoTセンサー動かす課題の1つが電源配線コストでした。ワイヤレス給電になれば、IoTセンサーの配線コストを気にせず設置できます。
また、海外では中国のシャオミが数メートル先のスマホに給電できる技術を発表しています。「Mi Air Charge Technology」はこれまでスマホの充電で使われてきているQiとは異なり近距離ワイヤレス充電技術。スマホから微弱なビーコン信号を送電機側に発信し、スマホの位置を特定、そこに目がけて給電するというものです。
【出典】Xiaomi【URL】https://www.mi.com/global/discover/article?id=1653
調理家電や住宅設備、浴室洗面など家庭面、また会議室などで利用するオフィス機器なども有線でないことで、利便性は増すといわれています。
かつてインターネットも有線LANが当たり前のころ「無線LANは普及しない」と言われることもありました。しかし現在は無線LAN中心の世界に。充電もこれまでの有線から無線に取って代わることで、オフィスや住まいなどの不動産のデザインや設計面で大きく変化が起きるかもしれません。例えば、これまで電気施設が設置できなかった場所で電気を使うなんてことも可能になるかもしれませんし、健康管理や見守りのセンサーを家や施設にメンテナンスフリーでつけることができるかもしれません。
【出典】ブロードバンドワイヤレスフォーラム(BWF)ワイヤレス電力伝送WG(WPT-WG)【URL】https://www.soumu.go.jp/main_content/000611759.pdf