3Dプリンターハウスが本格化、日本でも動き始める

- 3Dプリンターによる家づくりは海外で実用化が進む
- 日本企業も参入を本格化しはじめている
- 小さな家づくりからはじめるスタートップ企業も登場
「3Dプリンターハウス」の実用化進む
3Dプリンターは3DCADや3DCGなどの設計データをもとにして、現実のものをつくりだせる機械のことです。最初は部品や模型など、小さなものをつくることが主流でしたが、年々進化して、現在は家のような巨大なものまでできるようになってきました。
2018年、米国のスタートアップ企業「ICON」が3Dプリンター製の家のプロトタイプを発表しました。これは発展途上国で活用することを目的に考えられたプロトタイプです。同社の3Dホームプリンター「Vulcan」で作られています。
この1年後の2019年には、大型3Dプリンターの企業「エーピス・コー」が旋回クレーンタイプの運搬式3Dプリンターで本格的な2階建ての建物を建設しました。
同社の取り組みは、以下のYouTubeで確認できます。
2021年になると、3Dプリンターの住宅建設はより実用化が進み、ニューヨークで3Dプリンター住宅が発売され、オランダでは3Dプリンター製の賃貸住宅がはじまっています。3Dプリンターによる家は、もはや現実のものとなったのです。
日本でも3Dプリンターによる家づくり、参入の動き
日本企業も参入の動きはあります。繊維大手のクラボウは2021年5月にセメント系材料を用いた建設用3Dプリンターで立体造形物の制作を行うことを発表。3Dプリンターはフランスのスタートアップ企業XtreeE(エクストリー)社製を用い、外構材(門塀)などを制作していくとのことです。
同社は住宅購入者の趣味・嗜好が多様化し、こだわりや個性を住宅の外装デザインで表現するニーズが高まっていることなどをあげ、多様化するニーズに応えられるものとして3Dプリント事業へ参入。同時に建設業界における人手不足問題の課題解決の一つとして、この事業を捉えています。
同社は9月に建設用3Dプリンティング事業で竹中工務店と共同研究契約も締結しています。今後の展開として、実際の建築物の施工に3Dプリンターの導入を図り2022年度には建設用3Dプリンターによる実際の建築物の施工を目指すとしています。
日本企業の参入はこのような大手企業だけではありません。兵庫県のスタートアップ企業のセレンディクス(旧社名・セレンディクスパートナーズ)は、2022年に3Dプリンターで建てた格安物件を開始する予定です。同社はコスト面で30坪300万円の価格帯の実現を目指します。工期も24時間で建てられることを目標としています。
家をもっと手軽なものへ
3Dプリンターによる家づくりは通常の建物を建てる時よりも、一般的に時間がかからないことが強みです。また、自由度の高いデザインが可能になること、そして材料の無駄が出にくいことなどがあげられています。昨今のカーボンニュートラル社会への目標という点でも注目を集めています。
中でもサステナブル目線での取り組みで知られているのは、イタリアの「TECLA」プロジェクトです。建てられた建物の材料は、その土地にある「土」。つまりテクノロジーを生かして地産地消を家づくりで実現させようという取り組み。建材の輸送などで二酸化炭素排出量が多くでており、同プロジェクトは地元の天然素材を使うことで廃棄物と温室効果ガスの排出を削減することを狙いとしています。
家のイメージを一新してくれそうな3Dプリンターによる家づくり。手軽に購入できる価格帯も魅力ですが、サステナブル目線でも不動産業界をテクノロジーが変えていく一例として注目していきたいところです。