【不動産業界基礎用語】テレワークの一形態となった「ワーケーション」

- 仕事と休暇を一緒に行う「ワーケーション」
- 今後5年でワーケーションの市場規模は5倍に拡大予想
- 導入に対し国や自治体の後押しも期待される
新たな働き方としてのワーケーション
テレワークという働き方が浸透したと共に「ワーケーション」という言葉も広く使われるようになりました。ワーケーションとはその名の通り「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語です。不動産業界でも、不動産情報サービスのLIFULLが2023年までに対応施設を100箇所計画するというニュースがあったように、注目を集めています。今回はワーケーションについて改めて解説していきます。
【出典】国土交通省観光庁 【URL】https://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/
ワーケーションと同じく、仕事と休暇を一緒に行う言葉に「ブレジャー」がありますが、これはまったく別の考え方です。観光庁はワーケーションについては「テレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うことです。休暇主体と仕事主体の2つのパターンがあります」と定義し、ブレジャーについては「Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語。出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむことです」と定義しています。
(出典:観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/)
普段と違う場所で仕事と休暇のどちらも行うのがワーケーション。多様で柔軟な働き方が可能になったからこそ、生まれた言葉です。
ワーケーションの市場規模は5年後に3622億円
【出典】矢野経済研究所
【URL】https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2677
ワーケーションという言葉は知っているがまだ実際に取り入れたことがない、という人もいるかもしれませんが、ワーケーションの市場規模は拡大されることが予想されています。矢野経済研究所の調査によると国内のワーケーション市場規模は2020年度では699億円でしたが、5年後には3622億円に成長する可能性があるということです。
(出典:矢野経済研究所「ワーケーション市場に関する調査を実施(2020年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2677)
ワーケーションは、テレワークが一気に導入されたため注目されているキーワード。ですが、一時的なトレンドでは終わりそうにありません。前出の調査で矢野経済研究所はテレワークを導入した企業の多くはコロナ禍の収束後も「在宅勤務とオフィス勤務のハイブリッド型の働き方」を続けていくと分析しています。そのため、今後もオフィス以外の場所で働く中でワーケーションが広がっていくと予想されます。
この背景には企業だけではなく、国や自治体の後押しも影響しています。福島県いわき市ではIWAKIふるさと誘致センターといわき商工会議所によって、観光資源を活かしたワーケーションを提案しています。ゴルフ、サーフィン、温泉といった観光を柱に各施設を利用できる商品パッケージが誕生し2021年6月より販売を開始するということです。各施設では仕事をしながら滞在する環境も整っており、地域としてワーケーションの候補地としてアピールしていることがわかります。こういった動きは他の地域でもあり、ワーケーションの広がりを裏付けています。
ワーケーションがテレワークの一形態となり企業も推進しやすく
新しい働き方、そして休み方として厚生労働省は2021年3月にワーケーションもテレワークの一形態として位置づけました(*1)。つまり企業としてもテレワークを推進するためにも、ワーケーションを実施することができるように、設備や仕組みを整備していくことが求められています。すでにワーケーションをテレワークの一形態として取り入れている企業に株式会社JTB、日本航空株式会社、ユニリーバ・ジャパンなどがあります。その中でJTBはワーケーションの目的を「自立主体的な働き方の尊重、フレキシブルで生産性高く仕事を行うこと」としています。
また、従業員のメリットとしては「生産性の向上」、「心身のストレス反応の低減」、「ワークライフバランスの充実」を挙げており、企業にとってのメリットとして「有給休暇の取得率向上」、「従業員の帰属意識の向上」、「健康経営、業務効率向上」があるといいます(*2)。
テレワークを導入する際に課題として挙げられることの多いICT環境やセキュリティ対策への理解や整備のコストについてはワーケーションも同じくありますが、テレワークの導入を強く推奨している総務省は助成金や専門家による相談体制整備を強化しています。
また、同じくワーケーションを導入している三菱地所株式会社はワーケーションについて、生産性が向上した社員によってイノベーションが起きることが期待できるとし、社内に良い循環を生み出すための投資であると断言しています(*3)。不動産業界の中でも冒頭で紹介したLIFULLのように施設の設置などの動きの中で、遊休不動産の利活用が求められていきそうです。
出典*1:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
出典*2:JTB「ワーケーション」https://www.jtbbwt.com/business/service/solution/benefit/workation/
出典*3:三菱地所株式会社「ワーケーション導入のメリット」https://workxation.mec.co.jp/merit/