「相続登記」義務化によって何が変わるのか? 不動産管理組合にとって朗報

- 政府が所有者不明土地問題を解決するため関連法の改正案を決めた
- 不明土地は2016年の段階で九州の面積を上回る規模
- 歯止めを効かせるため、早ければ2023年からの施行を目指す
任意だった相続登記を義務化する背景にある、巨大化する不明土地問題
2021年3月5日、政府は閣議で所有者不明土地問題を解決するため民法などの関連法の改正案を決めました。日本の所有者不明の土地は、2016年の段階で九州の面積を上回る約410万ヘクタールに上るという研究会発表もあります。今回の改正案は、土地の相続や所有者の住所を変更した際の登記申請を義務化し、違反した場合は過料を科すというもの。管理が難しい土地は国庫へ返納できる制度も新設して、持ち主が不明な土地の管理を強化します。
所有者不明土地問題研究会 最終報告概要より【出典】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai1/siryou1-2.pdf
「所有者不明土地」の原因のうち約7割が「相続登記未了」、残りの約3割が「住所変更登記未了」です。本改正案は登記を促すためのものといえ、これまで任意だった相続と住所変更の登記申請を義務化します。相続は土地の取得を知ってから3年以内、住所変更は2年以内に申請が必要で、違反すると相続は10万円以下、住所変更は5万円以下の過料を設けます。
また、相続人のうち一人が単独で申請できるよう制度を新設し、手続きが簡素化されます。
さらに相続土地国庫帰属法案も新たに提出し、相続した土地の管理が難しい場合、一定の条件を満たせば土地を国庫に返納できる仕組みを導入します。
複数の人が所有する土地や、建物の一部の所有者が分からない場合も、改修や売却ができる制度もつくります。政府は今国会で関連法案を成立させ、公布後2年以内(2023年度)の施行を目指します。
なぜ相続登記がなされないのか? 不動産管理組合には朗報?
相続登記未了がなぜこれほど多いのでしょうか? 任意ということはもちろんですが、親の家の不動産価値が乏しい場合、子どもが親と別居していて自分の家が別にある場合、相続に関心がない場合などさまざまな理由があると言われています。
今回の義務化により、日本国民はこの課題に向き合う必要があります。これから相続を考えている人も、親の相続を受ける子ども側も、これは同様です。
また個人間の問題だけではありません。これまで不動産の管理組合などでは、住戸の区分所有者が不明による以下の課題が起きていました。
1. 管理上の問題や管理費などの滞納が発生しても対応の求め先がない
2. 総会の議決権を行使してもらえない
今回の改正で、相続不動産の登記が進めば管理組合を運営する側にとってはこうした問題 の軽減につながるのではないでしょうか。