【不動産業界基礎用語】不動産業界における“ホールセール”、“リテール”の違いは?

- 不動産業界における「ホールセール」は法人向け、「リテール」は個人向けの意味となり、通常の英語とは使い方が違う。
- 野村不動産はホールセールとリテール事業を統合する動きもある。
- シニア世代特化型のリテール事業も開始された。
英語の意味と、業界ごとの使われ方に違いあり
ホールセールとリテールという言葉は不動産に限らずよく使われます。英語ではホールセールは「卸売り」、リテールは「小売り」を意味していますが、業界ごとに使われ方が若干異なるので注意が必要です。
例えば、銀行業務だと「ホールセール」は大企業への融資を中心とした大口の金融業務で、「リテール」は個人や中小企業を対象とした小口の金融業務を意味します。スーパーなどの小売業界における「リテール」は文字通り小売りを意味し、ホールセールも卸売りを意味します。
では、不動産業界ではこの「ホールセール」と「リテール」はどのように使われているのでしょうか?
不動産業での「ホールセール」と「リテール」の意味
不動産の取引では、個人が不動産を売買する場合と、オフィスビルなどを法人が買い上げたりする場合があります。
不動産業における「ホールセール」と「リテール」は、この取引先の違いを表現しています。
「ホールセール」は法人向けのコンサルティングや仲介事業を意味し、オフィスビルや商業ビルなどの物件売買や収益不動産の活用などを指します。最近では、企業におけるCRE(Corporate Real Estate)分野の戦略見直しが多く行われており、注目を集めています。
一方の「リテール」は個人顧客の不動産の売却や購入、それに関わるコンサルティングを指しています。
不動産業務の多くは売りたい、貸したいというニーズと、買いたい、借りたいというニーズをマッチングさせることに関連します。この対象が法人であれば「ホールセール」に、個人であれば「リテール」になるということです。
野村不動産では、ホールセールとリテールを1社にまとめる動き
野村不動産ホールディングス株式会社は、2021年4月1日から、仲介・CRE部門で新会社「野村不動産ソリューションズ株式会社」を発足させ、ホールセール事業(法人仲介業)とリテール事業(住宅流通事業・新築受託販売事業・保険代理店事業等)を1社体制で行うことを発表しています。
これまで同グループにおける仲介・CRE部門の法人仲介事業は野村不動産が行い、住宅流通事業、投資用・事業用不動産流通事業、新築受託販売事業等を野村不動産アーバンネットが行ってきました。この2社を1社体制にするというもので、野村不動産アーバンネットの商号は野村不動産ソリューションズ株式会社に変更になります。
2社間の人材・ノウハウを集約することで、多様化する顧客のニーズに対応できる総合不動産仲介会社を目指すといいます。
三井不動産リアルティはリテール事業にシニア世代特化型も用意
同じく不動産仲介事業を手掛ける三井不動産リアルティは、2021年1月7日からシニア世代の住まいに関する悩みを総合的にサポートする新サービス「シニアデザイン」を開始しました。同社では2019年度に不動産を売却した個人客のうち、60歳以上の割合が50%を占めているそうです。
三井のリハウスが行っている、シニアデザイン。リテールの新しい事業。【出典】https://www.rehouse.co.jp/seniordesign/
シニアデザインはサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの紹介・入居までのサポート、住宅購入時の高齢者向けローンやリバースモーゲージなどの金融サポートの紹介なども行います。社会のトレンドに合わせて、不動産におけるホールセールもリテールも変化し続けていることの証明でもあります。
不動産の「ホールセール」と「リテール」は、このように取引や契約の対象が法人か個人かによって使い分けられています。ただ、その事業内容は社会の動きに合わせて変化しており、具体的な部分は各社各様であることを知っておくとよいでしょう。