マンション販売の「置きかえられない体験価値」を不動産テックが最大化するために【前編】

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マンション販売の「置きかえられない体験価値」を不動産テックが最大化するために【前編】

はじめに 

12月4日に、不動産テック企業である株式会社スタイルポートがウェビナーを主催しました。イベントタイトルは、『最前線の販売リーダーたちが語る~DX時代のマンション販売はどう変わるべきか』です。このウェビナーには、三菱地所レジデンス、日鉄興和不動産、伊藤忠ハウジングの3社が集まりました。スピーカーは、マンション販売の最前線で不動産テックを活用する6名です。当日の進行役をスタイルポートの代表である間所暁彦氏(画像下)が務めました。

今回ご紹介する不動産会社ウェビナーは、テクノロジー活用、IT・オンライン化を不動産実業者が語ります。実務者の目線で不動産テックやテクノロジーが語られるウェビナーは貴重です。ぜひ、参考にしていただければと思います。早速ご覧ください。

スピーカーとモデレーター紹介

間所:DX時代のマンション販売はどう変わるべきか、と題しまして、三菱地所レジデンスさん、日鉄興和不動産、伊藤忠ハウジングさんにお集まりいただきました。ウェビナーの後半ではパネルディスカッションも予定しています。本日のイベント主催は、オンラインマンションギャラリー『ROOV』を提供している、スタイルポートと、不動産・物流に特化したベンチャーキャピタルのマーキュリア・ビズテックを運営している、株式会社マーキュリアインベストメントさんです。どうぞ、よろしくお願いいたします。


間所:さて、スタイルポートとしては今回で5回目のウェビナーとなりました。以前、ウェビナーを開催したときに参加していただいたのは、MAツールのKASIKAを提供しているココリブさんや、ベルフェイスさんでした。おかげ様でウェビナー参加者が多くなってきました。興味をもってくださるかたたちに毎回『ROOV』の話をすると飽きてしまうのではかないかと考え、本日はマンション販売の最前線で活躍されている、不動産実務者のみなさんをお迎えしてみました。


間所:今回扱うテーマは、視野を広げて、ウィズコロナをへて変わっていく世界、行動様式、価値観などです。それを踏まえ、マンションの販売のありかたが、「こんなふうに変化していくのではないか」という点を語っていただければと思います。お越しいただいているスピーカーは、先進的な取り組みをしているデベロッパーの3社です。そこから、さらに、現場で活動しているリーダーたちにお越しいただきました。コロナ以前よりDXに取り組む3社から、“生の声”をお聞きしていきましょう。それが、一番、みなさんのお役に立つのではないかという、私たちスタイルポートなりの思いです。そんな思いから、本日のウェビナーを企画させていただきました。大変、ご好評をいただきまして、宣伝をしていないにもかかわらず、すでに258名にご参加いただいています。有意義な時間になりましたら幸いです。では、スピーカーのご紹介をさせていただきます。本当は一言ずつ、ご本人から言葉をいただきたかったんですが、たぶん、本日は時間が足りないと思いますので、私から代理で失礼させていただきます。


間所:三菱地所レジデンスの業務企画部・販売企画室企画グループ長、兼、経営企画部のDX推進室DX推進グループの夏井桂さんです(画像上)。夏井さんは、販売の最前線から販売企画までを長く経験されています。この業界では生き字引的な存在です。マンション販売の領域では屈指のデジタル通でもいらっしゃいますので、DXの最新情報を夏井さんに聞くと、だいたい教えていただけます。今日は、私も夏井さんのお話しを聞くのがとても楽しみです。


間所:三菱地所レジデンスさんから、もうひとかた、お越しいただいています。第二販売部・都心コアユニット販売第3グループの石毛瞳さんです(写真上)。開発から販売まで幅広くご経験されています。最近ですと、都心物件の販売所長を歴任されています。特筆すべきは、直近に担当された、平均15,000万円台の物件である、サ・レジデンス四谷です。倍率は平均8.9倍、最高35倍に達しました。これを即日完売に導かれた手腕の持ち主です。石毛さんは、三菱地所レジデンスさんの若手のエースでいらっしゃいます。オンライン施策やMAツールの活用にも大変詳しく、DXに精通されています。


間所:続いて、日鉄興和不動産の企画本部経営企画部の和田浩明さんです(画像上)。和田さんも、分譲や賃貸の用地仕入れ、商品企画、販売企画、現場管理等を担当されています。現在の担当は、コーポレートベンチャーキャピタルの運用、社内のオープンイノベーションの推進です。業界随一の論客ともお聞きしています。さらに、私たちが入手した情報によりますと和田さんは本日、自家用車の納車日を延期されてのご参加とのことで、すみません。本当に、ありがとうございます。ちなみに、自己紹介スライドの滝は、どこですか?

和田:よくご存じで笑。こちらこそ、よろしくお願いいたします。滝は、鹿児島です。日本のナイアガラみたいなところです。


間所:ありがとうございます。日鉄興和不動産さんからも、もうひとかたお越しいただいています。


間所:日鉄興和不動産住宅事業本部・販売推進部の冨田雄也さんです(画像上)。冨田さんは、マンションの商品企画、開発、販売業務のご担当ののち、自社販売体制を構築されました。日鉄興和不動産さんは、自社では販売されず、販売代理を活用されるイメージでした。そこに冨田さんがテコ入れされました。現場チーフもされ、いまは、社内の販売DXプロジェクトチームのメンバーとして、DXを推進中です。


間所:3
社目です。伊藤忠ハウジングの倉津崇宏さんです(画像上)。倉津さんは、販売グループと兼任で、販売企画室の販売企画課プロダクトマネージャーもされています。入社14年で、新築分譲マンションの販売に特化されている人物です。もっとも、現場に近い話をお聞きできるのではないかと考えています。DXの難しさ、活用のポイントを現場目線でお聞かせいただければ幸いです。なお、伊藤忠ハウジングからは、数人、お越しいただいているのですが、時間の都合で代表者として倉津さんのみのご紹介とさせてください。恐れ入ります。

間所:ご紹介が長くなってしまってすみません。申し遅れました、私は、スタイルポートの代表をしている間所(まどころ)と申します。出身は愛知、キャリアのスタートはゼネコンです。名古屋の矢作建設というゼネコンで、不動産の開発に10年、たずさわりました。グループ会社でマンション開発をさらに5年。おもに、用地担当をしていました。2011年に起業。マンションの設計、仲介、受託受益権の媒介をへて、2016年から現在の『ROOV』を開発しています。苦節6年。でも今年は、いままでない歴史的な1年になったかと思います。それは、みなさんも同じですよね。簡単に、今年の半年間というか、2020年をコロナとマンション販売の視点で振り返ってみたいと思います。

マンション販売とコロナ


間所:3
月くらいから、新型コロナの感染拡大を受けて、モデルルールの来場者が急減していきました。4月は緊急事態宣言、自粛要請などでギャラリーが閉鎖していきます。緊急事態措置が解除されたのは、525日。ギャラリーも再開されていきます。客足は、なかなか戻らず。そこから8月に到来したのが、感染拡大の“第二波”でした。ギャラリーは、少しずつ、様子を見ながら、密状態にならないよう、工夫されながらお客さんを入れていくように。そうして、商談を進めてきました。お客さんの動向はどうかというと、住宅購入を検討する人は多かったですね。その状況は、どのデベロッパーも同じ。そこでのテーマは、住宅やマンションを買いたい人に、どういう販売機会を提供すればよいかです。コロナ禍において、顧客との接点をどうやって持つかという点が、大きなテーマになっていきます。その状況のまま、11月に三度、感染拡大の“波”が到来。第三波が到来しているいま、年末から年明けの2021年に向かおうとしています。コロナに振り回された一年でしたね。これは、不動産に限った話ではありませんが。


間所:ギャラリー閉鎖中から、オンライン接客を導入検討開始して、様子見をし、いまは、多くのデベロッパーさんが、実践・導入しているタイミングだと思います。もう少し細かく見ると、緊急事態措置が明け、ギャラリー来場が再開されたとともに、大別して2つ。モデルルームとオンラインを併用されている会社さんと、「なかなか、現場の人が使ってくれない」ってことで、(オンライン施策が)一次しのぎのような、限定的な使いかたになり、しりつぼみのようにモデルルームのみになっている会社さんにわかれていると、聞いています。緊急事態措置、外出自粛が明けたいま(20201211日時点)、そうした規制や要請は、今後も断続的につづくのでしょう。8月にデベロッパーさん事情をお聞きして回ったら、みな、口をそろえたかのように、こういいました。

(完全に以前のようには)戻ることはないだろう

 

戻ったとしても相当、先だろう


間所:8
月時点では、こうもおっしゃっていました。

まずは、来店アポのハードルが高い


間所:そこで、オンライン接客を活用するわけですが、聞こえてくる声は次のようなものです。

相手の表情が見えないなかで、物件の説明が思うようにできない


間所:みなさん、お客さんとの対話の機会が持てない。次のような声もありますよね。

オンラインだと対話を通じたカウンセリングが十分にできない


間所:ギャラリーやモデルルーム以外の顧客接点をどうやって増やすか。オンラインで物件の説明が思うようにできないというのは、いままで使っていた紙、リアルな仕掛けが使えないから。そこで、デジタルプレゼンツールを活用して、マンション販売の説明全体のスピードを底上げしようという動きも見られます。ヒアリングの抜け漏れについては、顧客の閲覧行動、ネットのPVなどを可視化。MAツールを使うなどが有効なうち手となりました。新しい取り組みや人の動きが増えることで、浮かび上がってきた新たな課題が、販売チームのマネジメントです。その状況下で、デスクワークなどの自分の業務がリモート環境になっていきます。販売チームのマネジメントの難易度がけっこう高まるという問題点は、多くの会社さんで顕在化しました。そこで取り組んだのは、説明ツールを一元化したり、ロープレを事前にしっかり準備したりといった、細かいフォローです。ほかに、トップ営業マンの行動を可視化して、それを展開するなども。全体としては、2020年のマンション販売を振り返ると、そんな感じに整理できるかと思います。実際に今日、お越しいただいている3社さんは、どうだったか、みたいな話に移っていきたいと思います。まずは、長年、この業界にいらして、販売企画の立場から酸いも甘いも経験されている、三菱地所レジデンスさんの夏井さん、お願いいたします。ちょっと、この一年、半年間を振り返って、会社の方針、社員、お客様の意識の変化みたいなことを総括的に教えていただければと思います。

「モデルにお客さんを呼べない」事業継続の危機から一転、「思いのほか、お客さん、モデルにいらしている」から思うこと


夏井:みなさま、お忙しいところ、ご参加いただきましてありがとうございます。また、本日は、このような機会をお与えくださりありがとうございます。三菱地所レジデンスの夏井と申します。この半年、一年間というところなんですが、やっぱり、緊急事態宣言が出て、モデル(ルーム)にお客さんを呼べないというのは事業継続上の危機というか。それくらいの大きなインパクトがありました。もともと、コロナ以前より、オンライン接客の実証実験やVRコンテンツの運用を全店でトライしていた経緯はありました。

将来に向けて、いろいろトライアルしていこう


夏井:そう話していたものが急に2段階くらい緊急度が高まり、事業継続上の重要案件として求められる状況に。全店でやらないと。という話です。そのための対応にバタバタと追われていたのが、この半年、一年だったかなと思います。


間所:緊急事態措置が解除されたあとはいかがでしたか?


夏井:6
月以降は、徐々に、集客が再開されました。これは、マンション販売にたずさわる皆さんも実感されていると思いますが、

思いのほか、お客さん、モデル(ルーム)にいらしている


夏井:どこも集客は順調でした。コロナの非常事態宣言下で集客を止めていた時期も、反響だけは絶好調で。そんな物件が私たちの場合は多かったです。ほかの会社さんも同じように好調だったと聞いています。実は、この夏秋から、非常に、お客様の住宅購入にたいする意欲の高さを実感しています。たくさんのお客様がいらしてくれて、来場予約は3か月先まで埋まる状況です。そんななかで、感染対策はしっかりやらないといけません。以前のように、ギュウギュウ詰めのギャラリーとはいかない。以前のHARUMI FLAGのように、いっきに集客するというのは難しい状況があります。となると、集客数を制限せざるを得えない。そのなかでテーマになるのが、集客せずに、どうやってお客様に商品を理解してもらい、納得してもらうかでした。そのために、どんどん情報開示を進めていかないと。わかりやすくするための仕組みにも次々、取り組む必要があります。動画コンテンツや、間所さんのところのVR活用にも、積極的な姿勢で取り組むようになりました。つまり、力を注いでいるのは、お客様の理解促進をサポートすることです。いまでは、ほぼほぼ、モデル(ルーム)にご来場いただかなくても、ある程度は物件の理解が進んだ状態に導くことができています。いま、各社が積極的な姿勢で取り組んでいるのは、いかにギャラリーに来てもらい、少ない接客時間で、効率よく、お客さんにご納得いただきながら、マンションを買ってもらうかという点だと思います。


間所:ありがとうございました。つづけて、日鉄興和不動産の和田さん。マンション以外にも、不動産ビジネス全般の視点で、この半年、一年を振り返ってもらえればと思います。


和田:この半年、一年の現場の変化については、当社の冨田から語ってもらおうかと思っています。私からは、いまの夏井さんがおっしゃった、「みんなモデル(ルーム)に来てます」というセリフで思い出したことを。今日のスピーカーにはいませんが、三井さんのパークタワー勝どきです。


和田:パークタワー勝どきのモデル(ルーム)オープンが緊急事態宣言で延期になって、事前にネットでパークタワー勝どきの価格表、パンフなどのすべてが公開されたんですよ。にもかかわらず、モデル(ルーム)が開いたとき、みんな、ワーッと殺到しました。モデルルームを見に行ったんです。タワー(マンション)だけに期待値が高いのかもしれませんが、モデル(ルーム)の価値みたいなことをお客さんはいろいろと考え、感じたのかもしれないし、いずれにせよ、私たちも(モデルルームの価値を)考えないといけないなと、そう感じたことを思い出しました。 中編につづく。

不動産テックが秘める、2つの方向性

画像出典元:https://www.31sumai.com/mfr/X1972/

和田氏は、「モデル(ルーム)の価値みたいなことをお客さんはいろいろと考え、感じたのかもしれないし、いずれにせよ、私たちも(モデルルームの価値を)考えないといけない」と話しました。似たような発言をしたスピーカーが、このウェビナーにもう一人いました(詳細は次週以降に)。三菱地所レジデンス・石毛瞳氏です。

お客さんは、モデルルームに何を求めているんですかね(石毛氏)

この答えは、リアルの価値が何であるかを表します。いいかえるなら、リアルの”強み”です。

不動産テックが語られるとき、多くは、「それらの価値や強みをデジタル技術によって、いかに、オンライン化させるか」が焦点になります。その前提にあるのは、「or」です。リアルをオンラインで代替する議論です。「不動産取引をオンラインで完結させる」という話題にも、前提として、「or」の方向性があります。簡便さを望むユーザーを必ず満足させることができるし、社会的なインパクトもあります。世間一般でいわれるような、業務効率や生産性の向上にも大きく貢献します。そのメリットを頭では理解しているつもりなのですが、同時に、脳裏をよぎるものがあります。リアルで価値を生み出している人やサービスの存在です。議論の前提が代替のみで、「or」の方向性に視点が固定しているとき、リアルの価値や強みが、一切ないものとして扱われているような錯覚に陥ります。あるモノがないモノとして扱われるなら、そこに違和感を覚えます。なぜ、お客さんはモデルルームへ行くのか。お客さんはモデルルームに何を求めているのか。モデルルームという“リアル”に価値があり、価値を体験したいからです。それをオンライン上で再現できる技術は素晴らしい。価値をお客さんに提供することができるチャネルが2つに増えたことを意味するからです。それは単純な足し算ですが、ほかにも、違った可能性を掛け算で見つけることができます。たとえば、リアルの価値や強みを不動産テック(テクノロジー)が最大化する方向性です。前提になるのは、「and」の考えかたです。代替ではなく付け加えるというニュアンスで、不動産業界の可能性を探りたい。

それは、従来のような、「添え物」「付加価値」「付属品」としての、「and」ではありません。

十分に戦える武器、魅力的な新しい選択肢が1つ増えるという意味合いです。「and」の考えかたは、私たちが向かいたい方角であり、決して目的地ではありません。不動産業界のデジタルトランスフォーメーションにおいて、「and」は通過点です。通過点ですが、リアルとオンラインのどちらにも価値があり、強みがあり、特徴があり、それらと向き合うことを前提にします。この前提から不動産テックや業界のオンライン化を探りたい。夏井氏や和田氏、石毛氏の発言を通じて、SUMAVEはそんなことを考えました。

次週、不動産テックウェビナー『最前線の販売リーダーたちが語る~DX時代のマンション販売はどう変わるべきか』の続きをお楽しみに。※続きはコチラ

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