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目指すは「2022年、全不動産のID化」

はじめに

2020年917日に、不動産テック協会が、データ流通部会の活動報告会を実施しました。ウェビナーには170名が参加申込。業界関係者の関心の高さがうかがえます。本記事では、当日の報告内容より、期待が高まる“不動産ID”への取り組み状況を紹介します。早速、不動産テック協会の代表理事である巻口成憲氏による報告をご覧ください。

巻口:不動産のデータは、不動産テック企業のさまざまな指標や分析結果をくっつけて使わないと意味がないと思っています。そこでキーワードになるのが不動産IDです。国が消極的な状況なので、不動産テック協会としては協会の活動として協会予算を使いながら実現に向け、取り組んでいます。もともとのきっかけは、ライナフの滝沢潔社長(不動産テック協会理事)が、Geolonia(ジオロニア)社に連絡をとったところからであると聞いています。そのへんの経緯を滝沢さん、お話しいただけますか。

滝沢:承知しました。きっかけは、住所の正規化にかんする、ジオロニアさんのプレスリリースを私が見たことでした。住所には、いろいろな表記がありますよね。“大字(おおあざ)”が入ったり入らなかったり、漢字の“三丁目”と数字の“3丁目”だったり、“2-1-3”だったり“2丁目13号”だったり。ジオロニア社は、そうした表記の揺れを直すものを一生懸命になって作っていて、さらに、「オープンソースとして公開します」みたいなことをされています。不動産業界全体のテクノロジー化を前に進めるとき、一つひとつの建物に、わかりやすいIDがあって、それを共通で国や民間が使えるというデジタル環境は欠かせません。前職で私が不動産事業者をしていたとき、役所の建築課に行って建築確認の資料を紙で申請し、窓口で待ち、資料をまた紙で受け取るということをしていました。社会全体を見渡すとIT化は進み、みんながスマホを持っている時代に。民間でも、住宅地図を作っている会社さんが不動産IDに取り組むチャンスはあったと思います。なかには、すでに、不動産IDに当たるものもあると思うんです。でも、そのサービスが会社の収益の源泉になっているため、なかなか、オープンデータとして扱うことが難しい。でも、それは民間の営利企業なら仕方がないなあと。この状況に希望の光をさしてくれたのがジオロニアさんです。彼らは、オープンソースというかたちで、「自分たちが作ったプログラムを公開します」ということをしている企業です。じゃあ、ジオロニアさんが何でご飯を食べているのかというと、実際のプログラムは公開しているが、それを手軽に、便利に使いたい人は、「使いやすいプログラムをAPIで有料公開しているのでそちらをご利用ください」ということをしていらっしゃいます。仕組みがブラックボックスに入っていない点が素晴らしい。その点は、一般社団法人不動産テック協会として、非常に組みやすい存在だったと思っています。不動産にIDをふるということをライナフがやったり、特定の不動産メディアさんがやったりすると、「あそこの不動産IDの取り組みにのると、自社の情報を全部もっていかれそう」という懸念が生じることもあります。競合他社がひしめく不動産業界において、その懸念を拭い去ることは、かなり難しいなと思っていました。しかし、個社の利益にこだわらない不動産テック協会という団体が積極的に仕組みを作ることができたら。仕組みのなかの構造を誰でも見ることができるように公開できれば、不動産IDの構築に何度も何度も失敗してきた“歴史”のなかで、はじめて成功するんじゃないかと期待しています。

巻口:「その必要性の声が不動産事業者から聞こえていない」と国土交通省はいっていますが、事業者のみなさんは困っています。物件管理、マイソクを作るとき、それぞれに物件名を入力しなければならない。でも、不動産IDがあれば、「API連携すれば建物名だけはかえってきますよ」みたいな環境を作ることができます。ぜひ、不動産業界のみなさまも声をあげていただければ幸いです。それは私たち不動産テック協会の要望でもあります。不動産事業者さまは、みなさん困っています。その困りごとを解消する仕組みを作って無料で公開することは、本来、国土交通省さんの領域ではないでしょうか。これは声を大にして申し上げたいことです。そのあたりをぜひ、不動産事業者の皆様にもご協力していただけると助かります。住所データにかんしては、かなり、精度が高まってきている段階です。滝沢さん、進捗のご説明をお願いできますか。

滝沢:了解です。不動産IDを具体的にどうやって作っていくのかというロードマップを口頭で簡単に説明します。いま、スライドに映っている、Geolonia住所データがそれです。全国の町名レベルと書いてありますが、つまり、「東京都千代田区神田須田町2丁目」までがベースとなるデータです。ここに、「おおあざ」が入ったり入らなかったりする“ゆらぎ”があります。そのマスターデータをオープン化したのが、ジオロニア社の取り組みです。日本初で、なかなか、すごい取り組みです。ですが、今日の本題はここから。不動産テック協会が目指しているところは、人が目で見て、この住所で、この建物名だというのがわかる場合は、同じIDを返してくれるというプログラムを作ろうとしています。私たちライナフのオフィスの住所になりますが、東京都千代田区神田須田町2-1-1ザ・パークレックス神田須田町という住所と建物名があります。これが、「東京都千代田区神田須田町2丁目」までしか書いてなくても、物件が、「ザ・パークレックス神田須田町」であれば同じIDが返ってくるというプログラムです。物件名がなくても、住所が正確なら同じIDが返ってきます。いろんな住所表記の欠け、ゆらぎなどを1つのプログラムが吸収して、「それって、この不動産のIDですよね」という情報を返してくれるサービスです。

巻口:当面は、“建物名があるものにはIDがふられる”ってところを目指しています。建物名がないような戸建ては少し先になりそうですが、マンション、アパートにIDがふられれば、不動産事業者の皆様には大きなメリットになると考えています。この取り組みは進捗があり次第、不動産テック協会の部会活動で報告させていただきます。「不動産IDのような、情報が連携していく世界観は、協会活動として絶対に成し遂げないといけない」そんな意気込みです。協会という第三者団体でないとなし得ない世界観なので、信頼できる団体として、そこに取り組んでいきます。

巻口:ほかに、みなさんにとっては、おなじみのシステムとしてレインズがあります。レインズはレインズで、いまも非常に使われているシステムです。そこで出されるデータも、分析できるようにしていってもらいたい。“電子的な方法による収集は不可”であったり、“レインズデータの二次利用は不可”であったりという規約の改善についても、要望として出しています。私たちとしては、ぜひ、APIを作っていただきたいと思っています。

巻口:不動産総合データベースについては、復活させていただきたい。お金をかけて作ったものですし。仲介や管理の事業者さんが、そのシステムを使うことができれば、官公庁に出向くことなくさまざまな情報を見ることができるはずです。そのデータベースはあるので、「復活してください」という要望です。これから立ち上がるサービスについては、私たちがぶつかった“壁”が解消されるようにしていきたい。不動産事業者さんの業務効率化、売上アップに、もっともっと寄与するようなデジタル環境で事業を展開できるという世界観を目指します。いま、私たちが取り組んでいることは、そのベースのベースです。そんな思いを持って取り組んでいるのが、不動産テック協会の情報流通部会です。本日のウェビナーにご参加いただいているみなさんにも、ぜひ、私たちの思いにご賛同いただき、さらには後押しをお願いしたいところです。

滝沢:1点、補足があります。不動産IDのロードマップのところで、「マンションやアパートの物件名だけなの? それって不完全じゃ? 」そう感じた人がいらっしゃるんじゃないかなと思っています。ロードマップには続きがありまして、住所がつけられていない土地や更地、1つの住所に複数の家が建ててあるなど。そうしたことも、ゆくゆくはカバーします。ジオロニアさんは緯度と経度を使ったサービスを作っている会社なので、緯度と経度を使いながら、更地を含めた、流通するすべての不動産にIDを付与するところを最終的に目指しています。そのロードマップにたいして、「こうしたらうまくいきそう」という目途も立っている状況です。そこまでたどりつくのは、これから一年後くらい。まずは、半年後には集合住宅のID化を実現します。さらに先ということになると、まだ手探りです。登記簿情報と、どう結びつけるか。地番はどうするか。住所と地番がまったく一致していないのが日本の現状なので、そこをどうやって前進させるか。このテーマは、さらにプラス一年をかけて頑張りたいと思っています。ここまでが、不動産IDの付与実現へ向け、いま、一生懸命にやっている私の意気込みとスケジュールです。

巻口:少なくとも、不動産テック協会の会員企業様が無料で使えるオープンデータとしてご用意したいなと、私たちは考えています。ひろく、できるだけ多くの企業様に使っていただきたいのですが、協会会員さまのメリットにもなり得るので、不動産テック協会の非会員さまには“一定額の有料”みたいなことも検討しています。できるだけ高額にならないよう、広く使えるようなデータベースを目指している次第です。ぜひ、活動にご理解ご協力いただけますと幸いです。もし、国土交通省のかたと会話するような機会があれば、「不動産IDを作ってください」「不動産総合データベースの取り組みを進めてください」というようなお声を直接届けていただけるとうれしく思います。今後の進捗も部会活動でご報告しますので、引き続き、ご協力をよろしくお願いいたします。

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