IoT×不動産のポイントは、付加価値を理解してもらえるかどうか。共感を得るためのアイデアを探る

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IoT×不動産のポイントは、付加価値を理解してもらえるかどうか。共感を得るためのアイデアを探る

スピーカーとモデレーターの紹介

パネルディスカッションのスピーカーは次の3名です。プロフィールは不動産テック協会のホームページを参考にしています。※本記事のトップ画像、左から順に紹介。

山本文和/株式会社otta 代表取締役

1977年生まれ。山口県出身。広島日本電気にて、半導体ロボットのエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。そこから、ソフトウェア会社へ転職。業務システムのプログラマー、SE、法人営業、アプリ開発ディレクターを経験しました。IoTシステム構築に必要な、組み込み機器、サーバー、クライアントサイドなどの開発に従事。その後、起業。開発・運営をしているサービスは、日本初の地域参加型IoT見守りサービス『otta(オッタ)』です。同時に、株式会社ottaを立ち上げました。起業の背景には、「自分の子どもを守りたい」という思いがありました。2014年の出来事です。

画像出典元:https://otta.co.jp/

山本氏は、2017年より、大手電力会社へ、自社システムをOEM提供。2019年現在は、「tepcotta(東京電力)」、「OTTADE!(関西電力)」「Qottaby(九州電力)」という、3つの見守りサービスを展開しています。

業天亮人/株式会社Strobo 代表取締役社長 CEO

1988年生まれ。静岡県出身。2011年、東京大学工学部在学中に、スマートリモコンのスタートアップである、株式会社Plutoを起業、代表取締役に就任しました。その4年後となる、2015年には、IoT活用のホームセキュリティ・ベンチャー企業である、株式会社Stroboを設立。同社は、“賃貸であっても、単身世帯であっても、手軽にはじめることができるホームセキュリティの普及”を目指しています。「窓を開け放して外出し妻に怒られた」ことがきっかけとなり、2016年12月に開発したのが、戸締まりチェックIoTグッズである、leafee mag(リーフィーマグ)です。初期費用0円&工事不要ではじめられるホームセキュリティとして、いまも、サービスを展開しています。

画像出典元:https://leafee.me/

業天氏には、2018年に、Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」に選出された経歴もあります。現在は、人感センサーを使った高齢者向けの見守りサービスを社会実験中。2019年11月より不動産テック協会の理事に就任しました。

滝沢潔/株式会社ライナフ・代表取締役、一般社団法人不動産テック協会・理事

1982年生まれ。神奈川県出身。東京学芸大学卒。不動産会社をへて、2007年に三井住友信託銀行へ入社した滝沢氏は、不動産関連業務に従事しました。その後、独立。2014年11月に不動産業界向けのシステム開発会社である、株式会社ライナフを立ち上げました。2015年2月に、スマートロック『NinjaLock(ニンジャロック)』をリリース。この商品が注目を浴び、NHK「おはよう日本」、日経MJ、日経新聞などの媒体に大きく取り上げられました。2019年4月に発表した、ニンジャロックシリーズの最新版『NinjaLockM(ニンジャロック・エム)』は、鍵の最大手メーカーと呼ばれる、美和ロック株式会社との共同研究開発品です。商品の信頼性を一段も二段も高め、大手不動産会社からの受注にこぎつけました。2019年11月20日には、サービス加入世帯数547万世帯、インターネット加入世帯数372万世帯という、ケーブルテレビ最大手のJ:COMとの提携も発表。

画像出典元:https://linough.com/

滝沢氏は、不動産業界の発展や変革に寄与するための活動にも余念がありません。触れておきたいのは、不動産テック協会や公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)での活動です。不動産テック協会では理事に就き、2019年4月には同協会のイベント幹事も務めました日管協では、契約フローワーキンググループに参加。当事者意識を持って、不動産業界全体の課題に取り組んでいます

和田真(司会役)/パレットクラウド株式会社

1983年生まれ。東京都出身。慶應大学卒。和田氏は、リクルートでキャリアをスタートさせ、SUUMO賃貸の広告営業にたずさわりました。紙媒体からWebサービスへ、扱う商材が切り替わるタイミングで、Webサービスや事業立ち上げの面白さに魅せられ、とりこに。グリー、リブセンスなどのITベンチャー企業を渡り歩きます。経験している職種は幅広く、営業、マーケティング、BizDevなどなど。

画像出典元:https://palette.cloud/

和田氏は、現職のパレットクラウド株式会社に2017年4月から在籍しています。1人目の営業担当者として入社。“賃貸入居者への継続的なサービス提供により、収益化を図るテナントマネジメント業を創出したい”と考えています。和田氏の目的は、賃貸管理業の地位向上と消費者の住環境改善です。2019年6月より、不動産テック協会の事務局長。

以上4名によるパネルディスカッションをレポートします。ご覧ください。

「ベンチャーのお前らが鍵を作っていいのか」必要だった実績とは


和田:今日は小規模なイベントです。スピーカーとオーディエンスの距離が近いですし、話の流れや「質問は手を挙げてから」などにとらわれず、気軽なフリートークっぽくやれればと思っています。よろしくお願いします。では、1つ目のテーマ、自社サービスを不動産業界へ導入するときに感じる、ハードルについてです。IoTに限らず、私たちベンチャーが提供しているサービスやプロダクトを不動産会社さんに受け入れてもらうためには、どんな点に気を付けたらよいか。ottoさんの場合は、どうやったら、市場に自分たちのプロダクトを浸透させられるか、のような視点になるかと思いますが、いかがでしょうか?


山本:当社は、あまり不動産会社さんとの付き合いがないですが、過去の事例として、「入居者向けのサービスとして都内のマンションに導入したい」というご相談を不動産会社さんから、いただいた経験があります。


滝沢:入居者向けの見守りサービス?


山本:「入居者のお子さんが、マンションのエントランスに帰って来たら通知する。というサービスの実証実験をやりたい」そんなご相談でした。“はじめての不動産会社さんとの仕事”だったわけですが、このときに痛感したことがあります。それは、既存業界になかった新しいサービスやプロダクトを自分たちが作った場合、相手に自分たちの価値を伝えることができないとまったくダメだ、ということです。


業天:不動産業界に、受け入れてもらえない、という意味ですか?

山本:いえ。これは、不動産業界に限った話ではありません。ほかの領域でも同じです。


和田:ほかに、受け入れてもらえない、という感覚に陥った業界や領域は?

山本:たとえば、行政です。受け入れてもらうための、最初の一歩が非常に大変、という印象を持っています。


和田:最初の一歩とは、新しい価値への理解、みたいな文脈ですかね。相手からすると、IoT商品の活用をイメージしにくいのでしょうか。滝沢さんにも聞いてみたいんですが、創業当時、スマートロックの活用を不動産業界の人にイメージしてもらう難しさは、ありましたか?


滝沢:イメージしてもらう難しさは、なかったです。スマートロックが日の目を見てからは、わりと、認知されるまでに時間がかかっていないと思っています。


和田:では、自分たちの(新しい)価値を受け入れてもらう難しさは、そんなに感じていない?


滝沢:今日のようなイベントに来場している、不動産会社の担当者さんは、スマートロックが世の中に出はじめた当初から、チラホラいてですね。


和田:アーリーアダプターというか、情報感度に優れた人のイメージですか?


滝沢:ええ。そうした人たちに、スマートロックという“新しい鍵”をイメージしてもらうことへの手ごたえみたいなものは、当初から実感することはできていたんです。


業天:逆はどうですか?


滝沢:逆?


業天:滝沢さんが、不動産業界の慣習というか、文化というか、価値観(を受け入れること)に戸惑った、みたいな出来事です。


滝沢:“私たちが感じた衝撃”という話でいうと、不動産業界の人たちは、私たち(ベンチャー)が思っている以上に、セキュリティへの信用を求めるというのがあります。これには、ハッとさせられました。鍵という存在は、そのものセキュリティの“かなめ”です。

かなめをベンチャーが作るの、大丈夫なの?

滝沢:そういう反応は、かなりの数がありました。もう少し強めの肌感覚だと――。

ベンチャーのお前らが鍵を作っていいのか

滝沢:というニュアンスを相手から感じたことも、少なくありません。そういう反応に触れていくなかで、「自分たちが思っていたよりも、求められる安全への要求は、ずっと高い。これまで以上に、真摯に取り組まなければいけない」という気持ちを強くしていくわけです。それ以前が、生半可な気持ちだったわけではありませんが、利便性だけを追い求めてるようでは、「脇が甘い」ことを思い知らされました。これを業界の人たちから教わるというか。帰宅して玄関が開かなかったらヤバイわけですし、寝ている間にロックが外れ、「朝起きたら扉が開いてた」なんてことがあってもヤバイ。


和田:勝手に開いてしまったり、開けたいときに開かなかったりすると大変なわけですね。


滝沢:それが、セキュリティ面に取り組むということです。当初は、かなりの緊張感を強いられたことも、ありました。この話を「どうやって市場に自分たちのプロダクトを浸透させられるか」みたいな、和田さんの最初の質問へつなげると、私たちの場合は、ハードルを乗り越えるまでにだいぶ、時間がかかった気がします。


和田:“ベンチャーのお前らが鍵を作っていいのか”というハードルを乗り越えるまでの時間?


滝沢:そうですね。ゼネコンの人たちが、安心してライナフのスマートロックを採用できるようになるまで、自分が思い描いていた以上の実績を積み重ねました。これに時間がかかったんです。私たちの場合なら、「美和ロックさんと作りました」という実績です。これが、「鍵をベンチャーが作るの、大丈夫か」「ベンチャーのお前らが鍵を作っていいのか」の不安をぬぐったり、信用してもらえたりすることに、つながりしました。

不動産テックにおける“ファーストペンギン”の見つけかた

和田:いまの話は、ゼネコンの人たちからベンチャーが選ばれるポイント、みたいなテーマにも通じますね。ファーストペンギンの見つけかたというか。ビジネスの世界では、利益を求め、周囲から抜け出して自分だけが新しい価値に大金をかけるというのは、とてもリスキーです。これは、動物の世界でも同じで、よく、ペンギンの話にたとえられます。

和田:エサを求め、群れから抜け出して自分だけが新しい海に飛び込むというのは、ペンギンにとってリスキーです。でも、リスクをおかすことで新しいエサ場という先行者利益をつかむことが、できるかもしれない。このことから、勇気を持って最初の一歩を踏み出す存在をビジネスで、“ファーストペンギン”と呼ぶことがあります。

和田:さっき山本さんから、「受け入れてもらうための最初の一歩が非常に大変」という話がありましたけど、滝沢さんの場合はどうだったんでしょうか?


滝沢:ライナフという新しい価値を応援してくれたり、協力してくれたりする、最初の相手(企業)の見つけかた、ですか?


和田:そうです。一社一社、地道にあたる感じですか?


滝沢:はい。うちの場合は未上場企業なので、出資をともなう業務提携というか。株式を持ってもらうことで、株価でペイしますよというスタンスです。たとえば、三菱地所さんや東急不動産さんに株主として入ってもらい、ライナフの株式を持ってもらいながら、「新しいプロダクトやビジネスモデルにもチャレンジさせてください」という関係性です。それらがうまくいって、うちが上場したら、投資益で還元させていただくというか。

ソフトバンクにとってのアリババのような存在に、ライナフがなったらスゴイですよね


滝沢:そういう話で、“ファーストペンギン”という株主になってもらった感じですかね。


和田:業天さんのところは、どうですか。「受け入れてもらうための最初の一歩が非常に大変」というハードル話で、自社のホームセキュリティをどうやってセールスしていますか?

業天:うちだと、売りかたは大きくわけて2通りあります。Amazonなどのウェブを介してユーザーに直接、売るというもの。もう1つは、不動産企業さんとの提携で売っていくパターンです。去年、管理会社さんとの取り組みに注力していたんですが、結論から正直にいうと、「そこはハードルだらけだった」と感じています(笑)。


和田:ハードルだらけ?


滝沢:詳しく聞かせてください(笑)。

業天:私たちは、『leafee』という、ホームセキュリティを普及させたい企業なんです。その手段として、『leafee for 賃貸』というパッケージ商品があります。手前味噌なことをいうようですが、管理会社の経営者の皆さんからは、とても好評なんです。それもあって、「やっていることは間違っていない」と自信を持って、私たちは一生懸命になってプロダクトを作っています。いまでこそ、そのようなモチベーションで取り組んでいる事業ですが、当初はハードルだらけで心が折れてしまいそうでした。

業天:『leafee for 賃貸』は管理会社の現場に導入させる(スタッフに使ってもらう)ことが、当初、すごく大変でした。セキュリティの機能とは別に、『leafee for 賃貸』のアプリには、管理会社と入居者が連絡を取りあえたり、管理会社さんから入居者へ、お知らせを打てたりする機能があります。この機能は、不動産管理会社さんが目指す、「電話や紙による、現場のアナログな作業をデジタル化しよう」「業務フローを効率化し、生産性を改善していこう」という世界観にマッチするんです。マッチするんですが、実際に変えようと、取り組みはじめたら非常に大変でした。不動産会社さんにサービスを導入するベンチャーは、もしかしたら、全員が感じるハードルなのかもしれないですが――。


和田:すごい共感します。


滝沢:和田さんがいる、パレットクラウドさんも、まさに、そこですよね?


和田:そうですね。賃貸入居者への継続的なサービス提供により、収益化を図るテナントマネジメント業を創出したい、というのが私の思いです。ちょっと語ってもよいですか(笑)。

和田:私たちパレットクラウドは、入居者向けにアプリを提供しています。入居者さんと管理会社さんのコミュニケーションをうながすツールです。これを管理会社さんへ提案すると、まさに業天さんがいう通りで、なかなか大変です。


業天:やはり、そうですか(笑)

和田:何度も提案していく過程でハッキリしたことなんですが、意外と管理会社さんは、入居者さんとのコミュケーションを取りたがらない。かりに、不動産会社の経営層に、私たちのような入居者向けアプリのメリットを感じてもらえたとしても、管理会社の現場スタッフからの共感を得られないことは多いです。なんだったら――。

入居者から、日中に電話をかけてきてほしくない


和田:そう考えているケースも。「パレットクラウドが専用のコールセンターのアウトソーシングをしますよ」と提案をしても、

アプリを導入することで、(対応する)手間が、増えるじゃないですか、これ


和田:なんて指摘が入ります。すべてがすべて、ではないですし、難しさを表現するために、あえて極端な例を紹介しましたが、理解を得るのは大変ですよね。


業天:ホントそれ、そうですよね(笑)。


滝沢:そういう指摘は、どうやって乗り越えているんですか?

御社の、このアプリを入れたら、入居者からクレームがバンバン来るんじゃないの

「電球切れたかたら交換して」「あれが壊れたから直して」とかの連絡が増えちゃうじゃん


滝沢:みたいな意見への対応というか。

和田:「入居者からのクレームが増える」みたいな話は、いただくご意見の全体のうちの、3分の2くらい。感覚的には、ほぼ、必ず突っ込まれるというものです。入居者にとって、「気軽に問い合わせることができるインターフェイスが、1つ増える」というのは事実なので、管理会社さんからの指摘を否定することはしません。


滝沢:否定をせずに?


和田:そこは受け止めます。


滝沢:受け止めて乗り越える?


和田:乗り越えるのではなく、“そこが価値だ”と思ってもらうための努力に徹します。


滝沢:なるほど。

和田:あとは、入居者からのマネタイズのポイントが増える、という視点もあります。入居者と管理会社さんのコミュニケーションは従来、インターフェイスが3つほどしかないんです。

  • ポスティングのチラシ
  • 現地の物件への張り紙
  • 契約者の携帯電話に直接電話する


和田:このインターフェイスの数が、パレットクラウド(入居者向け)のアプリを管理会社さんが導入することによって4つになります。


滝沢:3つから、1つ増えるわけですね。


和田:それだけではありません。従来の3つのインターフェイスに比べ、アプリは圧倒的に、入居者さんとつながることができる。これは強力な接点なんです。


滝沢:その接点が価値なわけですか。


和田:おっしゃる通りです。強力な接点を生かすことで、入居者さんとのタッチポイントをアクティブにし続けられる、と考えるわけです。気軽に情報をやり取りすれば、たとえば、何か、付帯的な売りかたをするときもアプローチが自然になりますよね。入居者さん向け特典として、マネタイズにつなげるアイデアもありそうです。いずれにしても、入居者(お客さん)との接点がないと、そういうセールス自体ができないわけじゃないですか。この価値訴求に専念することで、入居者アプリの価値をご理解いただけるように努めるのみです。


滝沢:クレーム来るけど、セールスはしやすくなりますよと。なるほど。


和田:そうしたセールスは、これまでに不動産会社さんが経験していない仕事で、かつ、そのための専用のスタッフをアサインしてもらう必要もあります。片手間で、できることではないですから。

和田:そこでのセールスは職人芸というか、少なくとも、従来の管理会社さんが経験したことがない領域です。同時に、いままでの業務フローに、どうやって新しいオペレーションを組み込むか。そういう話でもあります。なので、経営層だけでなく、現場スタッフの合意がキチンをとれている状況である、ということも肝心です。


業天:わかります、激しく同意しますね。サービスの導入目的が抽象化されたままだと――、つまり、決裁者と現場担当者の目線があってないと、その会社でサービスの効果が生まれないですよね。社長は、「これ入れると業務を効率化することができるから長期的に考えてもいい」となる。他方で、現場スタッフからすると、「これまでのやりかたを変えるのは大変。業務が効率化されて新しい仕事が増えるだけなら、自分たちの負担だけがふくらむ。それは困る」となります。ここは、サービス導入をするにあたって難しさを感じるポイントで、避けて通ることができません。

「熱量を持った人を探す」「リーシング部と話を進める」共感を得るための具体例を紹介


和田:次の質問です。組みやすかった企業や、「こういう不動産会社さんには、自社サービスを理解してもらいやすかった、導入がスムーズだった」みたいなテーマでいきたいと思います。山本さんは、不動産会社に限定せず、純粋に仕事しやすかった相手ということで。


山本:組みやすい、仕事をしやすかった相手ですか。


和田:行政とか?


山本:いや、行政は、どこも一筋縄ではいかないです(笑)。


滝沢:そのわりに、たくさん組んでません?


山本:お詳しい(笑)。はい。行政とやったプロジェクトは10くらいあります。


滝沢:でも、組みにくい?


山本:というよりも、ottaが導入されるときのポイントが見えてきてですね。


和田:どんなポイントなんですか?

山本:先方に、熱量を持った人がいらっしゃるときです。これが一番ですかね。たとえば、最初にottaを導入してくださった自治体のケースでは、区議長さんの熱量がものすごかった。その人のバイタリティやマインドが、そのほかの全員へ伝播するというか、浸透していくというか。そういう人がいらっしゃるときは受け入れてもらいやすいですね。

業天:熱量を持った人がいるときは、導入後の失敗もないのですか?


山本:いえ、失敗することもあります。


業天:どんなときですか?


山本:その人のバイタリティやマインドといったエネルギーが、組織や会社全体に行き届かないときです。


和田:あー。その人が、独りで空回りしていることもあると。


山本:その通りです。特徴として、組織や会社のなかで、熱量や温度感にバラつきがあると、失敗しがちです。


滝沢:熱量が120%の人、70%の人、35%の人、4%の人とか、バラバラなことはありますもんね。


山本:あとは、同じくらいの熱量を持った人が集まっていても、向きが違うときも難しい。


業天:決裁者と現場担当者の考えかたが違う、とかですよね。


山本:そうです、そうです。


和田:滝沢さんはどうですか? 

滝沢:賃料が高いところだと、受け入れてもらえやすいですね。うちのスマートロックは取引先に費用対効果で見られるので、安い賃料の物件をたくさん扱う管理会社さんだと、そこから効率化されたときの効果が薄まります。

滝沢:スマートロックは、一定額の費用が発生する商品です。新しい業務フローが増えて、鍵の対応もしてって考えたとき、その物件の家賃が3万、4万だと、アドオンされるスマートロックの費用から生まれる効果が、割に合いません。この、「割に合わない」というような“損する感覚”は、家賃があがっていくにつれて薄まります。費用対効果を実感しやすくなるわけです。三井不動産さんや三菱地所さんが、家賃の高い物件に、ライナフのスマートロックを導入してくれている背景には、その考えかたがあります。


和田:ペイする、ということですよね。


滝沢:その通りです。


和田:業天さんのプロダクトだと、ある程度、賃料の高い物件だと、すでにセキュリティを導入していることが多いんですかね。高い家賃の物件のほうが『leafee』を提案できない、みたいなハードルはありますか?


業天:そうだと思うじゃないですか(笑)。これが、意外に違うケースが多いんですよ。


和田:どういうケースですか?


業天:物件が地方にあるケースです。都内とは、比べものにならないくらいに、オートロックの物件がそもそも少ないんです。スマートロックと比較した場合の話ですが、賃料帯による導入障壁は、それほど感じません。


和田:受け入れられやすいケースを挙げると?


業天:“社長が二代目の管理会社さん”には、受け入れられやすい傾向にあります。


和田:二代目??


業天:はい(笑)。


和田:ちなみに、年齢層でいうと、どのくらいのかたが多いものですか?

業天:40代、50代前半くらいの人たちが多いです。前提として、私たちがお取引する管理会社さんは、管理戸数の数が、数千から一万戸くらいの管理会社さんです。この規模感の会社の社長は二代目であることが多く、ITへの抵抗感がほとんどありません。自身でiPadを使い、新しいモノ好きである人がほとんど。

業天:あとは、会社を親族から引き継いで、「時代にあわせて、新しいことをしていきたい」という気持ちの二代目社長にも、私たちは受け入れられやすいです。彼らが持っているアセットの多くは、施設物件や新築物件で、かつ、オートロックがついていません。セキュリティ面の向上を図る目的で『leafee』が選ばれる、というケースは多いですね。


和田:業界では老舗といえるような、不動産テックベンチャーさんと一緒になって、私は、不動産会社さんたちと勉強会をしているんです。どんな勉強会かっていうと、テック系サービスの活用や不動産会社さんの悩みを参加者全員で共有しあう勉強会です。そんなイベントを毎月やっています。そこで、よくある悩みと質問があって、業天さんの話を聞いていたら、そのことを思い出しました。ちょっと、話してもいいですか?


業天:どうぞ、どうぞ。


和田:不動産会社さんあるあるで、「自分たちも不動産テックに取り組みたい」という管理会社の担当者さんは、よく、次のようなことで悩んでいます。

我々の会社でITサービスや不動産テックを取り入れるってなったときに、社内からの理解が得られにくいんです


和田:担当者さんの質問は、「このとき、どうやって自社でサービス導入を進めればよいでしょうか」というものです。誰に判断をあおげばいいのか、とか。こういう悩みや相談はよくあるんです。業天さん、何かアイデアありませんか?


業天:パッと浮かぶ話がありますが、当社の事例でよいでしょうか。


和田:はい、是非。

業天:『leafee』に取り組みたいけど、社内の理解を得られずに困っていた管理会社さんの話です。山本さんの“熱量を持った人”の話にも近いモノがあるんですが、私たちの場合、導入ポイントの1つに、不動産会社内のどの部署と話を進めるか、があります。だいたい、私たちのサービスを管理会社さんへ提案すると、管理会社の管理部の人に、ご対応いただくんですが、それよりは、リーシング部と話を進めたほうがうまくいきます。つまり、物件の価値向上、マーケティング施策として『leafee』に取り組もう、という話です。


和田:「コストを下げましょう」という話ではなく、「トップラインをあげにいきましょう」という話をするわけですか?


業天:そうです。会社の売上を伸ばす施策として導入を検討してもらえるため、話が前向きになる印象です。こうなると、話の推進力が増すというか、ギアが変わって物事の進みが速くなります。


和田:提案の仕方、提案先を変えるわけですか。


業天:はい。管理会社さんのなかでも、空室改善や賃料アップなどを担う部隊、そうした担当者の集まる部署の人に相談をすると、話が進んだケースはありました。

「もうかる」と「ブランド創造力」という天秤


和田:最後のテーマです。「ぶっちゃけ、IoT製品を導入して不動産会社さんは、もうけることができるか」滝沢さん、ズバリお願いします(笑)。

滝沢:それが、なかなかできなくて、スマートロックが普及しないのかなあと反省しています。もうかるところまでビジネスモデルをブラッシュアップしないと、スマートロックなどの不動産テックサービスは普及しないなと、つくづく思いますね。なので、いま、頑張っているところです(笑)。


和田:業天さん、『leafee』はもうかりますか?


業天:もうかりますね。断言してみました(笑)。

業天:管理会社さんには、家賃や管理費というかたちで、もうけてもらっています。前年ベースの話ですが、『leafee』というオートロックで家賃アップができているので、私たちのようなライトなホームセキュリティが生み出す付加価値を実感しています。このままいけば、空室率を改善していくことも、できるんじゃないかなと。


和田:山本さんはどうですか。御社のプロダクトだと、マネタイズはBtoBではなく、BtoC?


山本:はい。うちは完全にBtoCですね。保護者さんが気に入ったら課金するシステムです。


滝沢:保護者の課金率ってどのくらいなんですか?


山本:いま、42%くらいですね(2019年10月時点)。


滝沢:42%という数字は、どう、とらえたらよいものなんですか?


山本:その町の42%のお子さんが、見守りサービスに加入しているということです。


滝沢:町の子供の約半分が利用しているサービスということですか。すごいなあ。


山本:そうと考えると、うちのサービスは、課金してでも使いたいサービスとして、保護者の皆さんから支持を得られているのではないかと思っています。私がIoT製品で重要だと思っているのは、価値提供をどうするかという点です。ottaの価値として実感している1つに、チェックポイントの機能があります。子供の行動を可視化できる機能です。リアルタイムに位置がわかるGPSとは違い、ottaのサービスは位置の履歴を通知します。低価格で、電池のもちがよく、携帯性に優れ、位置情報の精度が高いという点も特徴です。


和田:その特徴が、価値なわけですね。


山本:ほかにも、どのくらいの見守り人(びと)が、その町にいるかを可視化することもできます。このデータは、見守り活動に熱心な地域であるという事実を客観的に伝えてくれます。この客観性は、“安心な地域”というブランドを生み出すことにつながるんです。


和田:ottaを導入している地域に住みたいと、なるわけですね。


山本:小さなお子さんを持つ親御さんに、そう思ってもらえるように頑張っています。物件というより、選ばれる町としてのブランド化に寄与できるんじゃないか、という考えです。その町に住みたいから、その町にある物件を探すことになり、その町の物件に詳しい不動産会社さんが物件を紹介するというのは、自然な流れですよね。そうした価値に共感してくれる不動産会社さんがいらっしゃって、一緒になって積極的にPRをしてもらえると、不動産会社さんにとっては、他社との差別化にもつながるように感じています。つまり、ottaというIoT製品は、町全体の価値を高める、付加価値を生み出すツールであるという考えですね。

滝沢:少し突っ込んだことをお聞きしたいんですが、単純に、もうかるもうからないって話だと、どんなイメージなんですか?

山本:その点でいうと、子供にとって安心安全というブランドが町の価値を少しずつ高め、その地域の不動産取引が活性化されることで不動産会社さんの収益につながる。という感じですかね。


山本:繰り返しになりますが、IoT製品の肝心な点は、付加価値の提供にあると思っています。見守り活動に積極的な自治体は町がきれいです。人のつながりが広くて、お祭りが頻繁にあるなど、人に、「ここに住みたい」と感じさせるんでよね。


滝沢:町内活動とかもちゃんとやっていそう。


山本:きっちり、楽しまれているイメージですよね。


滝沢:町づくり規模の話ですね。

和田:データの利活用という文脈だと、ottaのBtoB向けのアイデアもありそうですが、山本さんどうです?

山本:いま、使えそうだなと思っている1つが、通学路データです。見守り人の配置は必須なので、私たちとしては通学路に人が立っていてほしいわけです。人がいることが、犯罪抑止になりますから。たとえば、塾のチラシを配る人がいるじゃないですか。校門の前にいて、子供の出待ちじゃないですけど。塾側の効率を考えると、校門前でチラシを配るより、自分たちの塾の近くに住む子供が通る道で配ることのほうが、よいわけなんです。そこで10分間、配るだけでリーチ率が違ってきます。そうしたデータ活用と見守り人の両立は、できるはずです。


和田:見守りのために集めていたデータが、マーケティングのデータとして使えるかもしれないと。


山本:ただし、安易なデータビジネスは考えていません。私たちにとって重要なことは、見守り活動です。新たなBtoBビジネスを展開するにしても、地域の見守り活動に参加してもらうことは絶対条件ですね。

 

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