2020年版「働きがいのある会社」ランキングで5位。不動産テックベンチャーが社員ファースト経営で注目を浴びる

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2020年版「働きがいのある会社」ランキングで5位。不動産テックベンチャーが社員ファースト経営で注目を浴びる

はじめに

世界の約60カ国で、働きがいについて調査や分析をしている専門機関に、Great Place to Work®(以下、GPTW)があります。GPTWは、「働きがいが一定の水準に達している」そう、認めることができた企業や組織を13年以上にわたり発表しています。

画像出典元:https://hatarakigai.info/

GPTWが認めるのは、“働きやすさ”と“やりがい”を備えた組織です。日本でいわれる、働き方改革の多くが、“働きやすさ”の改善に留まっていることを指摘しつつ、働きやすさとともに、“やりがい”に着目することも欠かせないとGPTWは主張しています。この調査の2020年版で5位(2年連続)となった不動産テックベンチャーが、本日、取り上げるiYell株式会社(以下、イエール)です。

画像出典元:https://iyell.co.jp/

イエールは、2020年2月5日に、第6回ホワイト企業大賞における、ホワイトベンチャー追求賞も受賞。ホワイト企業大賞は、社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業を表彰しています。デジタルオーディオや、AIBOの開発を手掛けた、元・ソニー役員の天外伺朗氏を企画委員長にすえ、18名以上の委員たちが選考している賞です。委員たちは、企業のありかたを見ています。ありかたとは、社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にするという道をその企業は歩んでいるかという点です。これは方向性の議論であり、委員たちはその審査をしています。イエールの表彰理由については、次のように明かされました。

ベンチャーキャピタルからの資金調達も行い、ベンチャー企業として事業を伸ばし続けることを目指すと同時に、創業以来、最も大切なのは社員であり、多様な人材がい続けられることであると強くコミットしている。一見相反しがちなこの2つを、窪田社長自身の深いコミットと、弛まぬ地道な活動を通じて実現しようとしている。まだ創業から3年半であり、本当に真価が問われるのはこれからかもしれないが、この姿をぜひ今後も追求し続け、ベンチャー企業においてもホワイト企業が実現しうることの実例を作っていってほしい(ホワイト企業大賞HPより抜粋)

働きやすさや、やりがいなどの“社員”に着目しているのは、GPTWとホワイト企業大賞だけではありません。その象徴的な存在として紹介したいのが、資本主義大国アメリカの経営者団体です。2019年8月20日付の日経新聞は、主要企業の経営者団体が発表した声明を次のように報じました。

 

画像出典元■www.nikkei.com/article/DGXMZO48745980Q9A820C1000000/

このニュースを配信したBloombergは、その記事タイトルに、株主中心主義を拒否という強い言葉を使っています。同じことを訴える人、企業、コミュニティ、団体は、日本だけでなく海外にも存在する時代です。時代は、着実に新しい価値観へと向かっています。その先頭集団に位置する一人が、イエールの代表取締役・窪田光洋氏(画像下)です。

窪田氏は、新卒で入社したSBIグループのモーゲージバンク(住宅ローンを専門に扱う金融機関)で、最年少役員を務めた人物です。そこでの経験から、住宅ローンにまつわる困りごとを解決すべく、イエールを起業しました。住宅ローンのすべてに精通していることから、“日本一住宅ローンに詳しい男”として紹介されることも珍しくありません。そんな窪田氏が、働きがいに着目する第三者組織から高い評価を受けている理由は何か。それは、イエールが掲げる社員ファーストの経営理念にあります。今回の企画は、不動産テック領域にとどまらず、組織経営という視点からも注目を浴びているベンチャー企業の経営者を取り上げる企画です。

社員ファーストの経営とは、一体どんなものか。ベンチャー企業の経営者という立場で実践している、窪田氏の経営理念を紹介します。本記事では、2019年8月29日に開催された不動産事業者向けセミナーより、窪田氏のプレゼンを一部、抜粋してレポートします。創業3年で100名を超える規模に成長しながら、いまも、離職率0%台の組織である、イエールの企業文化をご覧ください。

管理部門は、コストセンターではない

窪田:ベンチャーの業界では、よく、次のようなことがいわれます。

採用、教育、財務、管理、労務の人材は、一番、最後に増やすべきだ

窪田:それを私は覆しています。イエールでは、従業員が10名のころから、採用と教育にとても力を入れてきました。管理部門はコストセンターではなく、レバレッジをかける部門だと思っています。事業に投資をするよりも、人材への投資を優先すればするほど、会社に文化が形成されていくという考えかたです。そうするとことで、30名、50名、100名と人が増えていったとしても、組織が壊れることはないと思っています。(2019年8月29日時点で、)私たちは創業3年で従業員数は115名です。先日、数名の離職者が出たので、離職率は0.6%くらい。人材への投資を実践することで、人が辞めない組織になっています。まずは、力を入れている採用活動において、私たちがどんなことをしているか、お話しさせていただきます。

「社員からの紹介」に力をいれる

窪田:力を入れていることの1つに、リファラル採用があります。これは、社員からの紹介のことです。一般に、一人を採用するのに、100万円くらいの採用コストがかかります。これが、リファラル採用だと0円です。基本的にはコストがかかりません。重要なのはここからで、社員からの紹介の場合、価値観のフィットする人材である場合が多いのです。結果的に、採用率が高くなります。私たちの場合、通常の採用で100名の応募があれば採用に至るのは1名程度という実績です。これが、リファラルだと2人に1人は採用されます。結果的に、従業員の約70名がリファラル入社です。それ以外の40名が、採用メディアやエージェントを経由して入社しています。価値観が一致した人材に当社に来ていただいているので、ものすごい、絞りに絞っての入社です。絞るときの秘訣ですが、経営理念です。これを私は、すごく大事なことだと考えています。経営理念は会社ごとに違ってよいはずです。その内容は、会社によってバラバラだと思います。大事なのは、社員が共感できる経営理念を作り、社員に浸透させることです。

窪田:私たちは、創業時に全社員で経営理念を決めました。決めるために創業当初にやったは、ミッション、バリューなどを“決める”合宿です。決めたあとは“メンテナンスをする”合宿をしています。そのときから3年たったいまも2か月に1度は合宿をやって、「本当に、私たちはこれでいいのか」と、経営理念をつねに全社員で考えています。これを浸透させることも大事です。そのためのグッズを半年に1つくらい増やしています。たとえば、創業のストーリーをまとめた30枚くらいの本などです。中途入社の人は、創業時のことを知りませんから、それを読んでもらうことで創業の思いを自分のなかに取り込んでもらいたいと考えています。特別なことではないかもしれませんが、経営理念を決め、再設定し、浸透に努めることは、すごく重要だと思います。

採用時に気を付けている4つのこと

窪田:採用時には、4つのことに気を付けています。まず、採用基準です。当社では、バリューの一致度合いが採否の決め手になります。能力は見ません。これは、価値観の話です。私たちは、何をするかよりも誰とするかを大切にしています。そこで定義したのが、誰と一緒に働きたいかというポイントです。定義の数は18あります。これに当てはまっている人と働きたい、という思いですね。私たちの採用エントリーサイトには、9の質問があり、たとえば、仕事中に笑っている人を見ると、「不真面目な人だなあ」と思うかなどです。こうした9の質問があり、回答が満点でなければ応募することができないようになっています。やり直しはできるので、実際にどのくらいの効果があるかはわかりませんが(笑)。そうとわかっていても、「満点じゃないと、エントリーのボタンを押せません」という私たちの意思表示ですね。そのくらいに、価値観が一致するかという点を大事にしています。私は、私たちとの価値観とは違う人がイエールで働いても、その人は幸せにはならないと考えています。応募者の能力を見ないのは、そのためです。徹底して、能力ではなく、価値観の一致度合いを見るというのが、採用の基準です。

窪田:2つ目の、社長が面接で見極める、という点については、その採用基準を徹底するためのものです。最終面接で私がやるわけですが、価値観の一致を見極めるために、場合によっては最終面接を2回やります。1回の最長時間だと4時間の面接をしたことも。ここを徹底するこが重要だと思っています。3つ目の同期入社については、同期の絆を作ることが目的です。たとえば、直近の予定(2019年8月時点)だと、9月5名入社、10月0名、11月4名入社という具合に、あえて、入社月を固めています。これは、同期の仲間を作るためです。入社研修は1か月くらいやりますが、ここで同期の絆ができます。新卒入社では味わうことができない、新しい“同期感”です(笑)。なかよくランチに出かける姿を見る機会は多いので、こういう取り組みも離職が少ない理由ではないかと考えています。4つ目の、リファラル採用しやすい仕組みについてですが、イエールでは、ピザパーティーを定期的に開催しています。これは、転職を考えている人や、応募にはまだ早いかなと感じている社員の知り合いなどに、イエールのことを知ってもらう機会です。次は、入社後に工夫している点についてお話しします。

事業ではなく、文化形成に社長の時間をあてる

窪田:ポイントは、社長である私というリソースをどう配分するのかです。事業への配分は週に2日くらいで、残りを文化に費やしています。社員とランチをしたり、採用関連で講演をしにでかけたりです。そうした時間の使いかたに重きを置いています。文化や価値観を重視すると公言しているベンチャーなので、その社長自身が、ちゃんと文化に重きを置いた行動をとれているか、という部分も大事だと思います。事業は任せ、相手から報告を受け、報告への指示だしをする程度です。基本的に私は、社員面談、ランチ、評価の面接、そうしたことを通じて生まれる文化形成に集中します。そこに自分の時間を使うことが、非常に重要かなと思います。

事業幹部と横並びで存在する7名の文化幹部

窪田:文化に重きを置く組織では、その構成を工夫することも重要です。私たちは、事業におけるマネージメント層の上位に、2種類の幹部を置いています。事業幹部と文化幹部です。文化幹部は、社員の投票で選ばれるiYellists7(イエリスト・セブン)という7名が務めます。iYellists7は、役員だからなれるわけではないし、仕事ができるからなれるわけでもありません。2つの幹部は組織上、並列の関係です。事業を推進する事業幹部と、文化を推進する文化幹部が、お互いにけん制しあうことが大事だと考えています。たとえば、社員が24時まで働いていたら、それは会社が“事業”に傾倒している危険信号です。そんなときが、もし、あればですが、文化幹部が事業幹部にいうでしょう。

イエールは、事業に傾倒しているのでは

会社主催のパーティに家族や子供を招く理由

窪田:制度面にも工夫をこらしています。たとえば、福利厚生の充実です。社員に、「働きやすい職場だ」と感じてもらうために、毎月、福利厚生を1つ増やしています。社員同士の仲がよくなったほうが、働きやすいでしょうから、部活動のような取り組みはどんどん入れています。同じ目的で実施しているのが社員旅行です。ほかに、イエールパーティという制度もあります。自分の子供、配偶者を会社のイベントに招くんです。なぜなら、家族に応援してもらえると、その人はすごく働きやすくなるんです。奥さんと2人の子供がいるなら、その3人とも呼びますし、そうすることで社員の働きやすさを支えることができたらと、考えています。実際に、社員からいわれたことがありました。

家族から、「よい会社だね」っていってもらえて、働きやすくなりました

窪田:内閣府が11月に“家族の日”を設定していることから、イエールでは、11月にホームカミング制度を設けています。遠方に住む親御さんに会う機会って、東京で働いていると、そんなに多くありませんよね。そこで、「交通費を一部、会社が負担するので、11月は親に会いに行くことを推奨しよう」という制度です。

親に会いに行ってきました。親が喜んでくれて。「そんな福利厚生があるなんて、よい会社だね」っていわれました

窪田:そんな風に、社員は楽しそうに話してくれるんです。休み明けのオフィスが盛り上がります。働きがいという文脈なら、異動希望制度があります。私たちの会社には、会社都合の人事異動がほぼ、ありません。これは、社員は半年に一度、自分が異動したい部署に手を挙げることができる制度です。すでに、20名くらいが異動しています。人は、やりたいことをやるときが一番、パフォーマンスが高まります。つまり、会社としてのパフォーマンスが最大化される瞬間とは、全社員がやりたいことをやれている瞬間です。挙げるときりがありませんが、こうした社員の働きやすさ・働きがいに配慮した制度、福利厚生の数は60を超えています。

女性社員が自分の夫をリファラルする

窪田:文化形成に力を注ぐ、その根底にある考えは、社員ファーストです社員がハッピーになれば、社員の向こう側にいるお客様がハッピーになり、お客様がハッピーになれば、利益が生まれ、結果的に株主もハッピーになる。この循環が、これからの地球においてサステナブルな経営だと考えています。この話をすると思い起こされるエピソードがいくつもあるんですが(笑)、たとえば、夏季休暇の最終日に、ある社員からこんな連絡をもらったことがあります。

はやく、明日にならないかなと思っています。イエール社に来てから考えかたが変わりました。休みの最終日に、はやく明日にならないかなって思うようになったんです。仲間に会いたいなと

窪田:女性社員からは、こういわれたこともあります。

自分の旦那をリファラル採用したいので、旦那を紹介させてもらえませんか

窪田:お会いすると素晴らしいかただったので、面接などをへて入社していただいたのですが、自分の家族に入社をすすめたくなるような会社って、私はすごくうれしいなと思って、いまでも忘れられません。こういうことがあるたびに、次のように感じるんです。

そういう体験をする社員がもっと日本で増えるとうれしいな

社員ファーストの経営が、どんどん、世界に広まるとよいな

そのとき、社員ファーストの会社として、見本になれる会社でありたいな

窪田:これは私の夢ですが、その夢の実現を目指して、私はイエールという会社を経営しています。

 

 

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