「オンライン調停」で専門家にチャット。導入した不動産会社のマインドにふれる

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「オンライン調停」で専門家にチャット。導入した不動産会社のマインドにふれる

はじめに

2020年1023日に株式会社ライナフが不動産テックウェビナーを開催しました。テーマは『交渉から調停まで「オンライン調停」のすべて』です。当日は、オンライン調停を導入した不動産会社・ハウスコム株式会社の執行役員営業部長である、尾﨑雅哉氏(画像下)がサービス導入の背景を解説しました。本記事では、当日に実際されたウェビナーを取り上げます。

ハウスコムは、不動産業界のなかでも、リアルとデジタルの融合した社会を強く意識している不動産会社です。それは、リテールや店舗を持つ業態を中心に、いま、着目されているデジタルトランスフォーメーションへの取り組みでもあります。業界の先駆者が持つ肌感に、本記事でふれていただければ幸いです。

前年同月比が7倍になった不動産テック


尾崎:はじめまして、ハウスコムの尾崎と申します。よろしくお願いいたします。簡単に当社のことを紹介させてください。私たちは、賃貸をメインでやっている不動産会社です。年間、約75,000から8万件くらいを仲介しています。私が所属しているのは、第5営業部です。不動産売買やグローバルなど、領域が多岐にわたる部署です。私たちの部署は、新商品の開発も担当しています。たとえば、オンライン内見です。当社では、20156月からオンライン内見に取り組んでいます。その翌月にリリースしたのは、家主様の向けのスマートシステムです。このなかに新たなサービスを組み込みたいと考えていました。そんなときに、ミドルマン株式会社の三澤社長(画像下)から声をかけていただきました。それが、今日ご紹介するオンライン調停でした。


尾崎:三澤社長と会話をして、結構、早い段階で、オンライン調停の導入を決めました。私は、ハウスコムに声をかけてもらって、本当によかったなと感謝しています。こういった場で話もできますし、世の中から求められているサービスであるとも実感する次第です。その考えの背景には、当社の不動産テックへの考えかたがあります。


尾崎:冒頭にもいいましたが、当社が取り組んできたオンライン内見なら、20194月の実施件数を“1”と考えると、20205月は数が約7倍です。IT重説を含めた数でも、業界TOP水準の件数をこなしてきました。これは、不動産テックへの着手が早かったことが功を奏しているという認識です。こうしたオンラインサービスの需要は高まっています。コロナの影響はありますが、いまの社会に起きている変化は、一時的なものではありません。世の中がオンラインへ移行していることは、数値上でも感じることができました。


尾崎:それ以外の不動産テックについても、当社ではすでにいくつか取り組んでいます。その体験が従業員にあったものですから、現場としてもITや不動産テックに、まったく抵抗がありません。この状況は、オンライン調停を導入するときもプラスに働きました。

よいものがあれば、どんどん入れていこう


尾崎:それが大事なマインドの1つです。ほかに、不動産テックが求められる背景として、高齢化社会の現状も関係していると考えています。


尾崎:国勢調査では、日本は4人に1人が65歳以上の高齢化社会になるとされています。すでになっているわけですが、若い家主様世代を見ると、30代のインターネット環境は97.9%が、「利用している」という状況です。重要なのはここからで、とくに、誤解があるのが高齢者のかたの利用状況についてです。「高齢者はインターネットを使わない」と考えている人がいますが、まったく、そんなことはありません。総務省のデータを見ると、60代では76.6%の人が利用している状況です。さらに、50代では93%の人がインターネットにつながる環境にいます。10年たつと、その人たちが60代になりますから、60代の利用率は、ほとんど、100%に近い状況です。次も総務省のデータです。


尾崎:年代別に、ネットにつながる端末として何を使っているかの状況を確認しました。文字が小さくて、すみません。見えづらいと思いますが、スライドで着目したいのは、60代におけるスマホ端末の利用率です。54.8%が、インターネット接続の端末としてスマホを使っています。


尾崎:スマホの個人保有率の推移を年代別で見ると、60代の44.6%がスマホを保有していることがわかっています。44.6%と聞き、「2人に1人だろ」と思われるかたが多いかもしれませんが、その状況をご夫婦とするなら、お2人に1台です。つまり、一家に一台は必ず、スマホを持っていることになります。それらの状況をふまえ、次のように整理しています。


尾崎:まず、「家主様のチャット環境は、完全に整っている」というのが、私たちが調査した感想です。その実感があったため、チャットで専門家に相談ができる、オンライン調停の話を三澤社長からいただいたとき、「需要がある」と即断できました。やる意味もあると。間違いなく、今後は、そうした社会が到来するという考えです。家主様だけでなく、入居者様も同じような状況におかれているはずです。つまりは、オンライン需要の増加です。家主様も入居者様も、みなさんがオンラインへの抵抗感を持たなくなっていくだろうと。そうしたサービスは、いま、当たり前になってきました。高齢化社会だけでなく、在宅勤務が増えたことで、どこでもビジネスができるデジタル環境になっています。それは、自分が持つ物件の近くではなく、遠くに住みながら、オンライン環境を生かしてオーナー業をできるということを意味しています。そういうこともあるので、人によっては、「オンラインで済めばオンラインが一番よい」のだと考えています。


尾崎:さらに、先ほど申し上げたインターネット環境が整う現状と、高齢者世代のスマホ保有率の高まりを考えると、退去にかかわるすべてをリアルな対応だけで処理し続けていくことは難しいと感じています。だからといって、すべてがデジタルに切り替わるというのも難しい。私たちは、「デジタル社会のなかにリアルな接点がある」という考えです。ハウスコムは、リアルな店舗を186持っていますが(2020124日時点)、その店舗は今後、スマホ、パソコン、タブレット端末などのデバイスと同じような”存在”や”選択肢”になっていくと考えています。間違いなく不動産業界も、そうなるでしょう。デジタルだけではなく、リアルだけでもない。それらが一体となった世界観です。加えて、当社には次のような思いもあります。

尾崎:国民生活センターによると、毎年1万件以上の敷金トラブル相談があります。これは当社にとっても無関係な問題ではありません。当然、家主様、入居者様、当社の社員の負担になるものです。管理会社様も、わざわざ調停の場に行く必要がなくなりますし、シェアハウスや外国人入居者が増えることで難しい判断はどんどん増えるはずです。これは、「住まいを通して人を幸せにする」というミッションを掲げている当社にとって、撲滅したい問題です。そんな思いもあって、オンライン調停を導入したという背景もあります。

導入のポイントは、「店舗の負担が減る」を明確にすること


尾崎:オンライン調停では、オンラインで専門家に相談することができますが、当初は、「そんなことができるなんて知らなかった」と驚きました。私自身、理解を深めるまでに時間がかかりました。私が会社の代表や社員に、オンライン調停をうまく説明できない状態でした。これを乗り越えたあとは、実際に、全店舗の店長に理解してもらうことが大変でした。店舗の店長が、家主様からから質問を受けたときに説明できないと困ります。そこで、一度に10から15店舗の店長を全国から集めて、毎朝、オンライン研修をやりました。研修でのポイントは、オンライン調停を導入すれば店舗の負担が減るということを明確に伝える点です。これを繰り返しました。オンライン調停を使って、紛争になる前に関係者が納得すれば、裁判になることを防ぐことができます。平日に裁判所に行かなくてよくなるわけです。裁判になったら、その準備は大変です。オンライン調停では、家主様だけではなく入居者様も相談していただけます。合意形成がとりやすいです。不動産会社の社員が間に入って、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしなくて済みます。当社にはリフォーム部門もありますが、その担当者にも、オンライン調停の説明をしっかりと聞いてもらいました。「オンライン調停なら、トラブルになる前にチャットで相談ができるよ」と。それを家主様に伝えてほしいとも伝えて。家主様向けに実施したオンライン説明の回数は、1か月で8回です。その場で、「不明点はありますか」と質疑応答の時間も設けました。結果的に、オンライン調停は家主様よりご好評です。

チャットで相談をして解決するなら、わざわざ、平日に裁判所に行かないで済む

 

裁判になると遠方に行かざるを得ないから助かる


尾崎:そうした声を聞くことができました。その家主様向けセミナーには、店長たちも参加しました。彼らも家主様の声を自分の耳で直接、聞くことができ、需要があることを理解できたはずです。そうして、オンライン調停にかかわる人たちの喜ぶ反応に触れるたびに、オンライン調停の可能性を感じます。最近の退去トラブルだと、当社のカスタマーセンターで多いのが、退去立ち合いをし、サインをかわしたあとに、「やっぱり納得がいかない」というケースです。「敷金を全額、返してください」と。つまり、納得できないということなんだと思います。そうなる前に、本当に納得いかないってとき、「専門家にちょっと聞いてみましょう」ってコミュニケーションをとりやすくなります。これが増えることで、紛争になる前のフェーズで納得できる人を増やせるんじゃないだろうかと考えています。それは、いつしか使命感に変わっていきました。


尾崎:もめたくて、もめている人はいないと思います。ある程度、正しい判断をしてもらえる場があると、納得できると思うんです。今後は、世の中にオンライン調停のような不動産テックが広がっていくでしょう。まだ知名度は低いですが、はじめたからには、三澤社長と一緒になって、いまよりも、使いやすいサービスにしていきたいです。当社だけがよくなればよいとは思いません。オンライン調停が世の中に普及すれば、家主様、入居者様、仲介会社様、管理会社様など、多くの関係者の困りごとが解決されるはずです。

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