ホテルより低価格、民泊より高品質。遊休不動産を活用した新たなサービスとは?

2019.10.29
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ホテルより低価格、民泊より高品質。遊休不動産を活用した新たなサービスとは?

【画像出典】Sonder:https://www.sonder.com/

はじめに

2008年に民泊の仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」が設立されてから、世界でシェアを広げている民泊ビジネス。空き家など遊休不動産の活用の手段としても期待され、世界各国で様々なサービスが展開されています。
そんな中、これまでの遊休不動産を活用した民泊サービスとは異なり、ホテルより低価格で民泊より高品質な宿泊サービスを提供している「Sonder(ソンダー)」が、2019年7月に2.2億ドルの資金調達を発表しました。

今回は事業規模を拡大するSonderのビジネスモデルを中心に、遊休不動産を活用した新たな宿泊サービスについてご紹介します。

増加する宿泊需要と日本の宿泊サービス

日本において、宿泊サービスは大きく二つに分類することができます。

一つは、「宿泊者を迎え入れることを前提として作られた施設」で宿泊サービスを提供している、ホテルや旅館です。ホテルや旅館の場合、「宿泊者に快適な宿泊体験を提供すること」が目的であるため、施設だけでなく接客や食事なども含めたサービスを提供します。
一方、本来は自身が利用するための自宅や別荘などを、利用しない期間に宿泊場所として他人に提供するのが、いわゆる「民泊」です。こちらの場合はあくまで「場所のみを提供すること」がその主な目的となる宿泊サービスです。

みずほ総合研究所の調査によると、2012年から2017年にかけて訪日外国人数は836万人から2869万人へ約3.4倍増加しています。一方で客室数は三大都市圏・地方部ともに増加しておらず(地方部においてはむしろ減少している)、宿泊需要に対し、宿泊施設の供給が追いついていない状況です。この差は2020年東京オリンピックの開催を前に、さらに加速すると予想されています。

みずほ総合研究所「増加する インバウンドと 民泊市場の 拡大」より訪日外国人客数の推移と目標値、宿泊数・客室数の変化訪日外国人客数の推移と目標値、宿泊数・客室数の変化 【出典】みずほ総合研究所「増加する インバウンドと 民泊市場の 拡大」より【URL】https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/working_papers/pdf/report20190215.pdf

このような訪日外国人客数の急増に対し、ホテルの客室増が望まれていますが、莫大な費用がかかるため容易に実現はできません。そこで、先に述べたように、借り手のつかない不動産や、急増する空き家などの遊休不動産を活用する「民泊」が注目を集めています。帝国データバンクの調べによると、国内のホテル業の市場規模は約4兆9012億円。従来のホテルや旅館に加え、新たな形の宿泊サービスの登場は、増加する宿泊需要に伴い、更に大きな市場を生み出す可能性があるといえます。

快適な宿泊体験を実現するSonderのビジネスモデル

日本では民泊と呼ばれている遊休不動産を宿泊場所として提供するサービスは、海外では一般的に「バケーションレンタル」呼ばれ、別荘の貸し出しだけでなく、ホームステイなども含め、いわゆる「民泊」より広い範囲を含みます。海外では、先に述べたように「場所の提供」を主な目的とする民泊だけでなく、様々な宿泊需要に応える「ホテル以外の宿泊サービス」が登場しています。今回ご紹介する「Sonder」もその一つです。

カナダのモントリオールの学生だったフランシス・デビットソンとルーカス・ペランが2012年に始めた同サービスは、二人が休暇中に観光客向けに部屋の又貸しを行い、収益化したことから始まりました。次第に同級生の部屋など近隣のアパートにも拡大し、2019年現在では約8500軒の物件を提供するサービスにまで成長しました。

民泊の仲介サイトであるAirbnbが、あくまで貸し手と借り手をマッチングするマーケットプレイスであるのに対し、Sonderは自社が遊休不動産を借り上げ、自社の宿泊施設として提供しています。
Airbnbの場合は、物件によってそのクオリティは異なりますが、Sonderは一定のクオリティの宿泊サービスを、宿泊場所だけでなく様々な顧客サービスを含めて提供しているのが特徴です。

Airbnbには約600万件以上の物件が登録されていますが、貸し手によって物件の管理やアメニティが異なり、サービスクオリティが一律化されていません。公開情報も貸し手に委ねられているため、掲載されている部屋の写真と実際の部屋の様子が異なるなどのケースも発生します。

Sonderは物件を直接管理し、アメニティや清掃サービスなど、ホテルと同等のサービスを提供することで、宿泊体験の向上を実現しています。世界20都市で約8500軒ある物件は、いずれもブティックホテルのように気の利いた調度品や内装が施され、コンシェルジュサービスも提供するなど、ホテルのような宿泊が可能です。

SonderサイトよりSonderのアメニティSonderのアメニティ 【URL】https://www.sonder.com/

またSonderは、宿泊先の周辺に飲食店が少なく苦労したという創業者のデビットソン自身の経験から、周辺環境も含め快適な宿泊体験ができるよう考慮されているといいます。具体的には、候補物件の周辺エリアの飲食店や生活サービスの都市データに基づき、一定の基準を満たした立地の物件のみを採用しています。

Sonderの日本参入の可能性

まだ日本には上陸していないSonderですが、ニューヨークやローマ、ロンドンなど、世界の主要都市に進出していることから日本での展開も予想されますが、いくつか課題も考えられます。
先に述べたように、日本においてはホテルや旅館と民泊に大きく二分される宿泊サービスですが、Sonderがどちらに区分されるのか、または新たな区分が必要となるのか、検討が必要でしょう。

平成30年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により民泊事業を行いやすくなったと言われていますが、日本で民泊を展開する場合、旅館業の許可か特区民泊の認定(※)、あるいは住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出が必要です。

これらの民泊規制に対し、民泊の仲介を行うAirbnbと異なり、不動産のオーナーから直接借り上げ、ユーザーへ提供するSonderは、不動産のオーナーと協力して一つ一つクリアする必要があります。民泊新法に関しては年間180日の営業日数の上限があるため、遊休不動産をこだわりの空間に作り上げ、長期活用することを得意とするSonderにとっては、回収が難しく参入が難しいといえます。

また都市計画法に基づき住居専用地域として指定されている地域では、そもそも旅館業の取得ができず、住居専用地域以外だったとしても保健所の立入検査や、トラブル防止の為、周辺の住民や小中学校等への説明など、各種手続きや調整に手間がかかることも課題です。

一方で空き家など遊休不動産を抱える自治体が特区民泊を取り入れている場合、2泊3日以上と一回の宿泊に対する日数の制限はあるものの、営業日数自体の上限がないため展開しやすいと考えられます。ただ現在は特区民泊を取り入れている自治体が少なく、スケールしづらい環境です。

しかしインバウンド需要や空き家問題などを前に、多様な宿泊サービス実現のための規制緩和が進めば、Sonderの日本への本格参入が実現するかもしれません。

※特区民泊/国家戦略特別区域法に基づき、国家戦略特別区域において都道府県知事の認定を受けた民泊事業に、旅館業法を適用しない制度。

多様化する宿泊サービス

遊休不動産を活用してホテルのようなクオリティの宿泊サービスを提供している企業は、Sonder以外にも登場しています。

WhyHotel

2016年にワシントンD.C.で創業した「WhyHotel」は、建築から1〜2年しか経っていない高級アパートの空き部屋を宿泊場所として一時的に貸す「ポップアップホテル事業」を行なっています。新築高級アパートの稼働率は50%程度のものも多く、入居者も一定の所得がある層に限られることもあり、新しい入居者が決まるまで8〜14カ月もの時間を費やす場合もあります。WhyHotelは、そのような新しい入居者が決まるまでの間の空室の貸し出しを請け負っています。
さらにWhyHotelでは高級ホテルに勝るとも劣らないアメニティに加えて、各部屋にAmazon Alexa対応の音響アシスタントデバイスを設置しています。Alexaを通じてサービスオーダーをすれば、24時間応対可能なコンシェルジェに繋がります。このように新築高級アパートというハード面だけではなく、テクノロジーを導入したソフト面の対応も、サービス成長の一端を担っています。

WhyHotelサイトトップページWhyHotelサイト【URL】https://whyhotel.com/

おわりに

このように、増加する宿泊需要に対して、従来のホテル、民泊のマッチングプラットフォームに加え、ご紹介したような新たな形の宿泊サービスが登場しています。

日本でも大京やレオパレス21といったマンション・アパート大手に加え、京王電鉄、楽天、JTBなどが民泊ビジネスに参入することを表明しました。
不動産会社は豊富な物件のアセットを保有していますし、鉄道会社や旅行会社は交通や観光など本業で培ったサービス面のノウハウを保有しています。これらの資産と民泊が連携することで民泊市場がさらに拡大し、これまで提供しきれなかった個々のユーザーニーズに応えられるようになるでしょう。

不動産の長期的な運用期間のなかでは、借り手がつかない遊休期間も発生します。遊休期間をいかに活用するか、そこに新たなビジネスチャンスが存在します。
宿泊需要は遊休不動産の活用手段の一つとして大きな可能性を秘めているといえます。日本においても、法制度などの現実的な課題を解決し、多様なビジネスが実現する土壌が整うことで、新たな市場が創出されることが期待されます。
 

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