【X-Tech】小売・物流×テクノロジー「リテールテック(Retail Tech)」から学ぶ

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【X-Tech】小売・物流×テクノロジー「リテールテック(Retail Tech)」から学ぶ

はじめに

不動産テックをはじめ、既存の業務にテクノロジーを応用することで課題解決を図ろうとする動きは「X-Tech(エックステック)」と呼ばれ、様々な業界で関心を集めています。SUMAVEではそうした他業界のX-Techについて取り上げ、不動産業界(不動産テック)に活かせる知見やノウハウ、影響を与えそうなトレンドなどについて紹介していきたいと思います。

今回取り上げる「RetailTech(リテールテック=小売テック)」もそんなX-Techのひとつ。近年、「モノ消費」から「コト消費」へとパラダイムシフトが起こるなか、消費の最前線にいる小売業界の危機感は高まっており、課題解決の方法としてRetailTechに関心が集まっています。同じく消費者に向き合う不動産業界にとっても、学びがある業界です。

RetailTechの現状について見ていき、不動産業界/不動産テックに起こりうる変化について、考えてみたいと思います。

接客・顧客対応

近年は、業界を問わず働き手の不足という大きな問題を抱えています。とくに小売業や不動産業はスタッフが接客する場面も多く、一人ひとりにこまやかな対応が求められます。また、「コト消費」時代において、接客時の顧客体験は大変重要なもの。そのため、接客・顧客対応は効率的かつ効果的な手法が求められています。

アドパック「バーチャルプロショッパーソリューション」

近年、注目を集めている「VTuber」(ブイチューバー)。ネット流行語大賞2018において得票数1位の金賞にも輝き、地方自治体や飲料メーカーが公式キャラを公開するなど、急速に注目を集めています。

VTuberとは「Virtual YouTuber」の略称で、YouTuberとして活動する3DCGキャラクターのこと。モーションキャプチャー技術により、演技者の動きや表情を忠実に再現しており、あたかも人間が動いているかのような表現力豊かな反応が人気を呼んでいます。

そんなVTuberを“店員”として採用したのが、アドパックの「バーチャルプロショッパーソリューション」。販売スキルを持つバーチャルプロショッパーと呼ばれるキャラクターが店頭画面やスマホアプリの中から商品の価値をユーザーに伝えてくれるサービスです。プロショッパーとユーザーが互いにコミュニケーションを取りながら買い物ができるなど、これまでにない体験ができるのも魅力。リアル店舗や無人店舗、イベント会場での接客はもちろん、ライブ配信による商品プロモーションなど、幅広い活躍が期待できるテクノロジーです。

バーチャルプロショッパーソリューション

「バーチャルプロショッパーソリューション」【出典】プレスリリースより:https://www.atpress.ne.jp/news/170765

賃貸を利用することが多い若年層にとって、こうしたバーチャルキャラクターとのコミュニケーションは当たり前になりつつあります。不動産店舗に同様のソリューションを導入すれば働き手不足の軽減はもちろん、検討度合いが浅く営業マンに相談するのはちょっと腰が引ける、というような見込み客にも有効にアプローチができそうです。

OKI「AI対応エンジン『Ladadie』」

小売や不動産などtoC(消費者向け)ビジネスの特徴のひとつに、コールセンターを活用した顧客対応があります。お客様の悩みを解決するために細やかなケアが必要なので、長い時間をかけてテレオペレーターという特殊なスキルを教育しなければなりません。

しかし、コールセンターには要望だけでなくクレームが寄せられることもしばしば。日夜クレームを受け続けることでスタッフが疲弊し、スキルを上げる前に離職するケースが多いのも実情です。このような、オペレーターの育成コスト削減と離職を防ぐ技術として注目されているのがOKIの「AI対話エンジン『Ladadie』(ラダディ)」。顧客対応に特化したAI技術です。

Ladadieを導入した企業では、電話を受けて問い合わせ内容を把握し、担当部署に引き継ぐまでをAIが担当する「半自動化」を実現しています。また、チャットの問い合わせ内容が「よくある質問」だった場合は、AIが定型文で解決するケースもあるそう。顧客対応の「完全自動化」に向けて進化を続けているようです。AI対話エンジンLadadie

「AI対話エンジンLadadie」【出典】プレスリリースより:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000120.000017036.html

不動産業界の顧客対応という点では、物件管理会社の相談窓口への活用などが期待できそうです。エアコン故障や水道トラブルなどの問い合わせをAIが受けて、しかるべきサービス業者などへ自動的につなぐことができれば、管理会社のスタッフもより効率的に働くことができるでしょう。

また、Ladadieの「オペレーター支援」機能を使うと、オペレーターのPCモニターに問い合わせへの適切な回答内容や、対応のアドバイスが表示されます。顧客対応に慣れていない新人オペレーターにAIが実践的な新人指導をする……。新時代の到来を感じますね。

外国人需要の取り込み

2018年に閣議決定した「改正出入国管理法案」によって、今後外国人労働者の受け入れを拡大することが予想されます。それは同時に、さまざまな国の人が日本に移住してくることを指します。そのため、これからは移住者の住居サポートも不動産業界の大きな事業となる可能性が高く、言語の壁を超えることが課題となります。

一方、インバウンドの取り込みの強化を掲げる小売業でも外国人向けのサービスを強化したいニーズは強く、様々なRetailTechが展開されています。

多言語ソリューション「WOVN.io」

スマホが普及し、ネットが身近な今、ホームページの多言語対応も外国人需要を獲得するために必須の技術といえるでしょう。しかし、様々な国の言語への対応は、一筋縄にはいきません。

多言語ソリューションを掲げる「WOVN.io」は、企業サイトの多言語化にともなうシステム開発やサイト運用を手軽にしたサービス。任意のページを指定すると、WOVN.ioが自動で翻訳。翻訳データは自身のサイトに1行のソースコードを加えるだけで簡単に組み込むことができます。WOVN.io上でソースコードを編集することも可能なほか、サイト更新も自動で反映されるため、多言語対応の作業が大幅に軽減されます。アプリを多言語化する「WOVN.app」も開発中。

アパレルブランドやショッピングセンターなど1万社以上で採用されています。運営者自らサイトやアプリの翻訳ができ、大きな開発費をかけずに多言語言語対応機能を追加できるなど、大幅なコストカットと使いやすさを実現します。

不動産業界において、今後の物件あまりの時代に入居条件が緩和される動きが本格化すれば、多言語対応の導入が業界のスタンダードとなるかもしれません。より多様な国の移住者に物件を紹介できる可能性も出てきますね。

WOVN.io ホームページのキャプチャ

「WOVN.io」【出典】ホームページより:https://wovn.io/ja

住宅の宅配問題

ネットショッピングやネットスーパーの利用率が上がっている昨今、小売業界ではネット事業へ注力する企業が増えています。その一方で、商品の受け取りトラブルや、配送業者の人手不足、過酷な労働状況など、物流業界にはいまだ大きな課題が残っています。宅配の受け取り問題は不動産業界も他人事ではなく、入居者の利便性向上のために解決すべき課題として、近年関心を集めています。

この分野では、いかにユーザーの都合に合わせて柔軟な配達を実現できるかが鍵となっています。

富士機械製造「Quist」

宅配の受け取り問題を解決する方法の1つとして宅配ボックスがあります。富士機械製造では荷物の受け取りニーズに対応するために、利用者の受け取りがラクになる宅配ボックス「Quist」を開発しました。利用者がネットでの商品注文と同時に職場や駅、公共施設など、自分が立ち寄りやすい場所に設置されたQuistを指定すると、指定したQuistに商品が配達される仕組み。自分の都合の良い場所を指定できるので、都合に合わせて商品を受け取り家に帰るだけです。仕事や育児、家事に忙しい人々の強い味方になってくれそうです。

Quistホームページのキャプチャ

「Quist」【出典】ホームページより:https://quist.jp/office/

不動産業界でも宅配ボックスの導入は付加価値として注目されていますが、設置場所やコスト、利用者が偏ってしまうなどの問題ですべての住戸に導入するのは難しい場合もあります。そんな物件では柔軟な配達指定が可能な「Quist」をオプションサービスとして提案する、という活用法も考えられるでしょう。

まとめ

不動産業界と同じtoC(消費者向け)ビジネスを展開する小売業界の「RetailTech」について見てきました。同じような課題を抱えている部分もあり、そうした点では他業界のソリューションだったとしても応用できる可能性がありそうですよね。

他業界のソリューションを自社が対象としている業界に最適化して持ち込み、新たなサービスとして展開するのは有望な勝ち筋と言えるでしょう。今後もSUMAVEでは不動産業界で活用できそうな他業界の技術進歩や知見なども取り上げて紹介してまいります。

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