民泊・無人店舗などへの応用も。物件活用を最大効率化する支援システム2018年最新事情

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民泊・無人店舗などへの応用も。物件活用を最大効率化する支援システム2018年最新事情

はじめに

不動産の運用には光熱費や修繕費、税金などの様々なランニングコストがついて回るもの。中でも「管理/活用」コストは、労働力が減少していく少子高齢化を迎える日本において、削減が求められる部分ではないでしょうか。

最近では、IoTをはじめとする最新テクノロジーを取り入れることによって、管理/活用業務の最適化を図ろうとする不動産会社も増えてきています。

物件活用のカギはテクノロジー活用にあり

日本に住んでいるとなかなか実感が湧きづらい部分もありますが、住宅に限らず「スマート化」の流れは一過性のブームでは終わりません。むしろ、海外に数年遅れて発売されたスマートスピーカーなどの登場によって、ようやくスタート地点に立ったところとも言えます。

アメリカに本社を置くIT企業、VMware(ヴイエムウェア)が11月13日に発表した「AI・IoTを活用した自動化サービスに関する日・英・独の比較調査」の結果を見ると、「今後、IoT(Internet of Things)が日本経済のけん引、経済成長に貢献すると思いますか」という質問に対し、調査対象者である国内の経営者・役員約500人のうち58.6%が「貢献する(必ず貢献する、貢献する)」と回答しており、IoTへの期待の高さが伺えます。

少子高齢化によって労働力の減少が続く日本では、テクノロジーの活用による業務の自動化やコスト削減は今後いっそう強く求められることになるでしょう。また既存業務を効率化するだけでなく、収集されたデータをマーケティングに利用できるかもしれませんし、データ自体が新規事業を立ち上げるきっかけになるかもしれません。

そんな期待が持たれているテクノロジーによる不動産管理/活用について、今回は「部屋の出入り」「監視カメラ活用」「決済」に絞り、様々な「管理」業務における課題を解決する最新テクノロジーを紹介します。今、自身が解決したい課題を思い浮かべながら読み進めていただけると幸いです。

「部屋の出入り」に関するテクノロジートレンド 

オフィスやマンションの入退室管理や、宿泊施設の予約管理にまつわる課題を解決する製品やサービスをご紹介します。

指紋認証をする女性

顔認証システム

部屋の出入りに利用者の顔を認識することで、鍵などが不要になるシステムです。セキュリティにとどまらない活用が見込まれます。

FaceStation2
バイオメトリクス(生体認証)やセキュリティ分野で評価の高い韓国企業、SupremaによるIP顔認識ターミナル。機器の前に立ち止まって顔を見せるだけで認証が完了します。荷物で両手が塞がっている場合も、鞄から鍵を取り出したり指紋を読み込ませたりする必要はありません。顔の凹凸を分析する3D技術を搭載しているため、写真や画像による偽造は不可能です。。

NeoFace KAOATO
NECソリューションイノベータが提供している、顔認証パッケージソフトウェアです。入退室管理だけでなく、既設の監視カメラとの連携によって特定の人物を追跡したり、不審者の来訪を捉えると同時に警備へ自動通知させたりといった、防犯システムとして優れた機能を備えています。7月末に提供された最新版からは、マスクやサングラスなどを装着した顔の検出が可能になりました。高いセキュリティーを維持しつつ、警備コストを削減することができます。

スマートロック

スマートロックは流行の「民泊」事業でも便利に活用されていますね。スマートフォンで鍵を解施錠することができるほか、スマートフォンを鞄やポケットにしまったままでも、扉に近づくだけで解錠することができます。扉が閉まればオートロックがかかります。扉に両面テープで貼るだけで導入できるものも多く、こうした手軽さも魅力の一つです。

Qrio Lock
スマートホーム事業のQrioが提供するスマートロック。扉に使われているサムターンやスマートフォンが対応していれば、両面テープで貼るだけで導入できます。シリーズ製品であるQrio KeyやQrio Hubと併せて使えば、家族が帰宅した際に通知を受け取ったり、外出先からQrio Lockを操作したりすることも可能です。

また、Qrioは別途オフィスやレンタルスペース向けに「カギカン」というスマートロックシステムも提供しています。こちらを使えばスマートロックのレンタルと運用サポートを受けられるほか、合鍵の管理や入退室の一元管理を行うことができるようになります。中・小規模のオフィスなどでの導入を考えている場合は、こちらの利用を考えてみても良いかも知れませんね。

Akerun
IoT関連機器の研究開発を行うPhotosynthが手掛けるスマートロックと、入退室管理システムです。Qrio同様、こちらも扉に貼り付けるだけで設置できます。スマートフォンでの解施錠だけでなく、SuicaやPASMOなどのNFC対応ICカードでの解施錠にも対応しています。オフィス向けに提供されている「Akerun入退室管理システム」を使えば、合鍵の発行や入退室履歴の閲覧のほか、メールやチャットツールとのAPI連携によって自動で出社・退社時刻を記録することも可能です。カード運用であれば、カードリーダーにカードをかざした時間が自動で出社・退社時刻として記録されるので、労務管理の工数を大幅に削減することもできます。

クラウド予約管理システム

流行りの「民泊」をはじめとする宿泊施設にとって予約管理は重要な業務です。人手不足を背景に業務効率化が求められる中、宿泊施設向けの予約管理システムが注目されています。

陣屋コネクト
老舗旅館「陣屋」が開発したクラウド型旅館・ホテル管理システム。旅館経営者自らが開発したことが話題となり、今年は優れたサービスを表彰する「第2回日本サービス大賞」で総務大臣賞を受賞しました。

宿泊施設の予約情報・顧客情報・経営情報を一元管理し、手間のかかっていた業務を自動化・迅速化・効率化できます。何か一つの問題を解決するというよりは、予約管理や接客、清掃・設備管理や従業員の勤怠管理、経営状況の管理に至るまで、宿泊施設の経営を包括的にサポートすることで利益率を改善し、収益の増大を目指すためのシステムです。

「監視カメラ活用」に関するテクノロジートレンド 

カメラやセンサーから様々なデータを計測・収集し、分析を行なうモニタリング技術は、昨今ブームの兆しを見せている「無人化」を支える基盤技術の一つです。最新事例を見ていきましょう。

監視カメラ

無人店舗

言わずと知れた、店員不在の店舗です。さまざまなシステムを組み合わせて実現されています。

モノタロウAIストア powered by OPTiM
4月2日、工業用間接資材の通信販売大手として知られるMonotaROが、AI・IoT・ビッグデータのプラットフォームを展開するオプティムと共同でオープンした無人店舗です。専用のスマートフォンアプリを使って入店し、端末のカメラで商品バーコードを読み取るだけで購入・決済を行なうことができます。

AI Storeの流れの図解 【出典】オプティムのプレスリリース:https://www.optim.co.jp/news-detail/34888

同店舗はモノタロウ初の実店舗であると同時に、日本で初めて大学(佐賀大学)構内で運営される無人店舗。アプリや店舗内のカメラ映像、入退店ゲート機器の情報を店舗管理支援サービス「Smart Retail Management」と連携させることで、実店舗に店員がいない場合もカメラやゲート、各種センサーを制御しています。カメラやゲートから収集したデータを基にAIが集客分析・防犯検知などを行なうことで、無人店舗の運営にあたり発生するさまざまな問題に対処できるのです。

監視カメラ・センサー活用ソリューション

現在はさまざまな場所に設置されている監視カメラ。これを監視目的だけでなく、他の用途にも応用することで、さまざまな効果が期待されています。

セキュアカメラクラウドサービス
防犯に加え、店舗改善やマーケティングにも活用できる、NTTPCコミュニケーションズのクラウド型ネットワークカメラサービスです。複数拠点に設置したネットワークカメラから送られてくる高精細な画像と音声をローカルとクラウドに記録し、それを本社や本部で同時に確認・検索・閲覧することができます。さらに、来店人数を把握する“人数カウント”や来店者の店内の動きを分析できる“動線密度分析”など、画像解析に役立つ機能を利用することができます。POSデータ(売上データ)やカメラの映像と組み合わせることで、より詳細な行動分析が可能に。店舗や工場、オフィスなどの防犯対策としてだけでなく、マーケティングや現場教育を含めた店舗改善など、多様な用途に活用できます。

Moptar
人体に安全な赤外光レーザーを使って人の導線を正確に取得し、店舗レイアウトの改善や従業員の業務効率化に活用できる行動分析ツールで、データベースマーケティング事業を手掛けるスプリームシステムが開発、販売しています。3Dセンサーを使って不審者を検知したり、「顧客がどの商品棚の商品に手を伸ばしたか」「商品を手に取った後、棚へ戻した割合」といったデータを分析することができます。

また、従来使用しているビーコンやカメラと連携させたり、ビーコン側にユーザーの個人情報を持たせることで個人の導線を特定することも可能です。

「決済・入出金管理」におけるテクノロジートレンド

前段で無人店舗の事例を取り上げましたが、有人店舗でも決済の自動化・無人化サービスを取り入れる店は増えてきています。インバウンドの集客も見込めそうな、決済にまつわる最新テクノロジーを見ていきましょう。

スマートフォンで支払いが完了した画面とスマホを操作する指

賃貸管理業務における入出金管理

紙ベースでのやり取りが多い不動産業務にクラウドや自動化を導入することで、管理業務にかかるコストや業務ミスを削減しようとする動きが起こっています。

・いえらぶCLOUD:
いえらぶGROUPが提供する、不動産管理に特化した業務支援サービス。物件や顧客の情報管理から入出金管理まで、不動産管理に関わる多様な業務をサポートするシステムで、約12,000社の不動産会社に利用されています。賃貸管理においても、入金・出金の登録をするだけで、月次収支報告書と年間収支報告書が自動で作成できるサービスを利用することが可能です。さらに更新契約書や更新清算書、解約申込書や退去時精算書も自動で発行することができます。紙の書類を逐一郵送する場合に比べて手間も時間も節約できますし、家主や入居者、業者との対応履歴を残せることから、リスク管理や信頼性獲得にもつながります。

QRコード決済

最近、話題になりがちな「キャッシュレス」の代表的な仕組みですね。日本は海外に比べて導入が遅れていると言われていますが、徐々にサービスも増えてきています。

LINE Pay
国内では群を抜いた普及率を誇るSNSアプリ「LINE」を使い、加盟店での買い物や友だちへの送金を行うことができるサービスです。あらかじめ銀行口座やコンビニでLINE Payアカウントにチャージしておけば、現金を持ち歩く必要がなくなるのです。

中でも注目されている機能が「コード決済」。スマートフォンに表示したコード(バーコードやQRコード)を店舗側に読み取ってもらうか、店舗側が提示するコードを利用者が読み取ることで決済処理が完了します。QRコード決済は中国で爆発的に普及した決済方法で、日本での普及がインバウンドの集客にもつながると言われています。圧倒的な数のユーザーに支持されるLINEの同サービスが、キャッシュレス化が進みにくい「現金主義国家」である日本の状況を変えるのではないか、と期待されているのです。

ちなみに横浜市は自治体で初めて、納税手段としてLINE Payを導入しました。LINE Payはキャッシュバックキャンペーンなども行なっているので(2018年12 月現在)、賃貸物件などでは家賃支払いをLINE Payで対応することにより、若い住人から歓迎されそうです。今後の広がりが期待されています。

まとめ

今回は、個人で導入できるサービスから実証実験段階の技術まで「管理」にまつわる先進技術を広く見てきました。不動産業界は他業界に比べてアナログな部分が多いと言われますが、つまりそれだけテクノロジーの導入余地が大きいということです。

こうして時折、テクノロジー事情をチェックしていれば、業界で一歩先を行く人材になれるかもしれません。

テクノロジーの進化は日進月歩。日頃から、テクノロジーの中に自身の業務を最適化するヒントがないか、探す癖をつけてみるのはいかがでしょうか。

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