三井不動産の『WORKSTYLING』に学ぶ、働き方改革サービス

- 三井不動産はシェアオフィス『WORKSTYLING』を展開
- 『WORKSTYLING』は、働き方を改革してくれるサービス
- 不動産会社は、日本人の働き方を改革するサービスを提案できる
近年、国として力を入れている「働き方改革」を受けて、労働環境の改善や仕事の生産性の向上に着手しようとする経営者、担当者は多いのではないでしょうか。
しかし、労働環境改善の課題例としては「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい労働環境の整備」などが挙げられ、いずれも、日本が長い間にわたり抱えてきた課題です。
この難しい課題に三井不動産がひとつの解決策を提案しています。シェアオフィス『WORKSTYLING』サービスです。
法人向けの多拠点型シェアオフィス
2017年4月より、大手不動産会社の三井不動産は、『WORKSTYLING』という法人向けの多拠点型シェアオフィスサービスを開始しました。このサービスは、働き方改革への取り組みとして始まったサービスです。
現在利用可能なシェアオフィスは既に20拠点もあります。首都圏でアクセスのよい15拠点と、その他の地方都市にある5拠点です。三井不動産の法人営業統括二部ワークスタイリンググループ出原氏に、『WORKSTYLING』が開設された経緯について伺いました。
出原氏「きっかけは、私たちのお客様に、働き方改革への関心が高いお客様が多かったことです。そこで弊社は、三井不動産のビルテナントとして入居されている企業様へ向け、ワークプレイスという場を提供し、法人向け多拠点型シェアオフィス『WORKSTYLING』プロジェクトを立ち上げました。」
出原氏は「働き方改革への関心が高いお客様が多かった」と話してくれましたが、多くのビジネスパーソンが関心を寄せる働き方改革とは、どんなものなのでしょうか。
働き方改革とは何か
働き方改革とは、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置づけられている政府肝いりの政策です。2016年9月には、安倍総理が議長を務める「働き方改革実現会議」が新設されました。2017年3月に行われた、その定例会議のなかから、不動産業界に関係がありそうな4つの改革実行計画を取り上げます。
- 賃金引き上げと労働生産性向上
- 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
- 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
それらの計画を実行するにあたり、社内制度を整えるのは時間がかかります。改革を任されている担当者は、すぐに新しい取り組みをできず、もどかしさを募らせることでしょう。そこでおすすめなのが、『WORKSTYLING』のような、社外サービスを利用するやり方です。
三井不動産の独自審査を通過する必要はありますが、『WORKSTYLING』は三井不動産のテナント以外の企業も利用できます。次は、『WORKSTYLING』の特徴から、4つの改革実行計画に対してどのような解決策を提案できるのかを探っていきます。
『WORKSTYLING』の4つの特徴
サービスの特徴を知るために、三井不動産が訴求している特徴を箇条書きにしてみました。
【特徴1】 法人対象の契約システム
- 契約対象が法人限定で、三井不動産による審査を実施
- 審査に通った法人の社員はすべての拠点を10分単位のタイムシェアで利用が可能
- 法人毎の総利用時間を月次で集計し請求する、従量課金システムの採用
- 専用のWEBアプリにより、利用者の入退館履歴や利用状況を一元管理し、社員の勤怠管理を簡易化
【特徴2】法人向けの高いセキュリティ
- 審査に通った法人の社員のみが利用することでセキュリティを向上
- 受付にはコンシェルジュが常駐し、セキュリティを確保
- Wi-Fi回線における暗号化など通信セキュリティについても配慮
【特徴3】 ユーザーエクスペリエンスの追求
- 個室、会議室、オープンスペースなど多彩なスペースを用意、交流やインプットの機会を創出
- 最新のテレビ会議システムを全拠点に設置、時間と場所を自由に行き来できる会議の実現
- 専用WEBアプリは全拠点の個室、会議室の検索、予約に対応し、利用者へのレコメンド機能や予約状況の確認、カレンダー共用機能も搭載
【特徴4】 全国に広がる拠点
- サービス開始時点で、全国に20拠点を開設
- 契約法人の利用登録者はすべての拠点を自由に利用可能
特徴3と4は、改革実行計画の「柔軟な働き方がしやすい労働環境の整備」という課題に対して、ひとつの解決策になりそうです。
利用者の声が裏付ける『WORKSTYLING』の効果
サービスの利用者に話を聞いてみると、以下のような声が実際に集まりました。
「移動時間が削減できた」
「いつもと違った環境で仕事をすることで新しい気づきやアイデアが生まれた」
しかし、アンテナの感度が鋭い読者はこう思うかもしれません。
「コワーキングスペースや他のシェアオフィスと何が違うの?」
セキュリティの高さとイノベーションを喚起する仕組みで差別化
『WORKSTYLING』のサービスで、もっともこだわっている点は、「三井不動産独自の審査と有人対応による高いセキュリティ」「オープンイノベーションを促すような契約企業限定のイベントやセミナーの開催」です。
個人情報を扱う機会の多い不動産会社にとって、情報漏えいの危機は、いつ自分たちの身に起こってもおかしくありません。しかし、『WORKSTYLING』なら、その心配はなさそうです。打ち合わせで外出しても、外出先の近くにあるシェアオフィス拠点で仕事ができるので、帰社する移動時間を省くこともできます。
※シェアオフィスの首都圏所在地は、八重洲、霞が関、新宿、大崎、品川、渋谷、池袋、横浜、船橋、汐留、豊洲、立川、海浜幕張、町田、浜松町の15拠点
※その他の所在地は仙台、広島、博多、梅田、名古屋の5拠点
(2017年4月現在)
今年の8月には、『子どもと隣ではたらくプロジェクト』を開催するなど、新しい働き方を提案するイベントの開催にも積極的です。内容は、『WORKSTYLING』利用者が子どもと一緒に通勤できるもので、子どもの夏休み2日間の限定プログラムでした。
こうしたユニークな取り組みには、既存の働き方を改革するアイデアとして、今後も期待が寄せられます。
2017年度グッドデザイン賞受賞
「WORKSTYLINGプロジェクト/多拠点型シェアオフィスによる働き方変革」は、日本デザイン振興会が主催する、2017年度グッドデザイン賞の「産業向けの意識改革/マネジメント方法部門」にて、グッドデザイン賞を受賞しています。
『WORKSTYLING』の価値が第三者に認められたことで、サービスの質に太鼓判が押されました。お墨付きがついた今、サービスは今後どう発展していくのでしょうか。出原氏に展望をお聞きしました。
『WORKSTYLING』の展望。不動産業界が働き方改革を促す
出原氏「おかげさまで多くの企業様にご利用いただき、また、サービス内容に関心をお寄せいただいています。さらに企業様の利便性を高めるべく、現在20ある拠点の数を2017年度中に30拠点程度へ増やそうとしています。
コンシェルジュのいるシェアオフィスということもあってか、利用者様の声を直接耳で聞く機会に恵まれています。非常に多くの契約企業様からの意見をいただけているので、そうしたニーズから新しいサービスを展開していきたいですね。今後も、改善と強化に注力していきます。」
不動産会社が、国の働き方改革実行計画に合致したサービスを提供できることは、『WORKSTYLING』が証明してくれました。
みなさんも、不動産会社が提供できる新たな価値、サービスの糸口として、働き方改革に着目してみてはいかがでしょうか。
■参考:首相官邸 働き方改革実行計画(概要)より抜粋
※国は、「働き方改革助成金」や「職場意識改善助成金」などの各種助成金を用意しています。
■参考:三井不動産 「WORKSTYLINGプロジェクト/多拠点型シェアオフィスによる働き方変革」が「2017年度グッドデザイン賞」を受賞