スマート家具(スマートファニチャー)に動きあり、ネットと繋がり無限の可能性

- スマート家具(スマートファニチャー)の新製品が増えている
- 言葉で命令すると荷物をもってきてくれるロボット「カチャカ」や、人気のスマートベッドの商品などを紹介
- スマートホームの中に組み込まれ、ネットともつながればこれまでにない付加価値を生み出せる
「仕事道具持ってきて」「おつまみ持ってきて」とSiriやAlexaように言葉で命令をすると別の部屋にある棚が手元までやってくる。自律移動ロボットの研究開発を行うPreferred Robotics(プリファード・ロボティクス)は、家庭用自律移動ロボット「カチャカ」の販売を開始した。
ルンバなどの掃除ロボットのような平たい自走ロボットが専用の棚「カチャカシェルフ」を運搬してくる。カチャカは屋内をマッピングし、LiDARやセンサーを使って障害物を避けながら走行する。東京ビッグサイトで9月1日〜3日に行われた、SDGsに根ざした心地よい豊かな暮らし(グッドライフ)”のヒントがみつかる体験型イベント「GOOD LIFE フェア 2023」でも展示され、多くの人が足を止めていた。
家庭用自立移動ロボット「カチャカ」【出典】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000115855.html
このような家具とテクノロジーが融合されたものをスマート家具(スマートファニチャー)と呼ぶ。スマート家具の市場規模は、2020年に1億4,360万米ドルに達し、2021年から2028年にかけてCAGR12.4%で成長すると予測されている(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002539.000071640.html)。
スマート家具は、機能と利便性を向上させるために最新のテクノロジーやデザインを統合している。例えば、IKEAの「NORDMÄRKE」や「RIGGAD」など、テーブルやデスクランプにワイヤレス充電機能を組み込んでスマートフォンやタブレットを充電できる家具や、スマートフォンと連動するライト機能を備えたベッドなどがある。これにより、生活空間が洗練され、日常の活動がより簡単かつ快適になる。
スマート家具で最大のセグメントはスマートテーブル、急成長のスマートベッド
調査会社のスカイクエストによると、スマート家具市場最大のセグメントはスマートテーブルだという。スマートテーブルは現代の家庭やオフィスで利用されている。株式会社オリバーのスマファシリーズの昇降デスクは電動昇降機能で天板下にモニターを収納できるテーブルで、通常時はモニターを出して個々の執務スペースとして使用し、オフタイムはフラットにしてミーティングなどに使える。電動昇降機能はスマートフォンで操作可能。
株式会社オリバーのスマファシリーズ【出典】https://www.oliverinc.co.jp/sustainability/projects/project-02.html
スマート家具の中で急速に成長しているのが、スマートベッドだ。前出のスカイクエストもこれからの急成長株になると予想。スマートベッドは、睡眠追跡や硬さの調節などの機能を備え、健康やウェルネスに対する消費者のニーズに応えられる新しいプロダクトといえる。昨今、睡眠の質の重要性が叫ばれているが、その求められるところにマッチしている。
睡眠の興味関心の高さは、スマート家具ではないが睡眠ゲームアプリ『Pokémon Sleep』が7月に公開され、約1カ月で1000万DLを達成したことからも分かるだろう。
テンピュール・シーリー・ジャパンが7月に発売した電動ベッド「テンピュール エルゴ スマート」はいびきを感知すると自動的にリクライニング角度を変えて安眠を促す機能などを備える。角度を変えることで気道の確保を促し、いびきが続けばバイブレーションが作動し、寝返りをさせようとする。
睡眠トラッキング機能も備え、浅い眠り、深い眠り、レム睡眠、覚醒時間を記録。心拍数や呼吸数の変化などもスマートフォンから確認でき、それに合った睡眠アドバイスを提供するという。
いびきを感知して自動でベッドが作動する「テンピュール® エルゴ スマート」【出典】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000015047.html
コネクテッドホームの一部として考えると可能性は無限大
スマート家具は、スマートホームエコシステムの一部として機能する場合がある。これにより、家具が家庭内の他のデバイスと連動し、より連携した生活環境を作り出すことができる。例えば、ネットとつながる鏡「スマートミラー」では、その特性を活用したフィットネスサービスも始まっている。
「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」は、トレーナーが鏡に映し出され、いつでも本格的なトレーニングができる。鏡の前にヨガマットなどを敷き、鏡に映る動画コンテンツを見ながら体を動かすのが基本的な使い方となる。鏡の上部にはカメラが付いており、姿勢の正しさをAIによりスコア化するコンテンツもある。
YouTubeなどを見てヨガなどのトレーニングをしている人も多いかと思うが、こうした自宅の余暇時間を使うユーザーがターゲットになりそうだ。
スマート家具は単品として考えずに、ホームネットワークと連携し、インターネットとも繋がることでこれまでにない付加価値を生み出すことができる。賃貸住宅などで、すでに無料のWi-Fiなどがついていることが入居時人気になっていることは知られているが、今後はこのようなスマート家具が置かれる(置ける、置きやすい)ことが選択の条件になってくるかもしれない。
文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。建築×デジタルでイノベーションを起こす株式会社ブレンアーキテクトの取締役でもある。
https://www.nplus-inc.co.jp/
https://twitter.com/nkmr