国内スマートシティはデジタルツインとデジ田に注目

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国内スマートシティはデジタルツインとデジ田に注目

3年ぶり開催のスマートシティエキスポ2022

今年10月、京都でスマートシティエキスポ20223年ぶりに開催されました。3年前は都市OSを中心としたBI(ビジネスインテリジェンス)サービスが目立ちましたが、今年はさらに一歩進んだデジタルツインや、政府が推進するデジタル田園都市構想の動向に注目が集まりました。まずはデジタルツインから見ていきましょう。

都市OSは都市のあらゆる事象をデータとして取り込み、一覧でき、分析が可能なものでした。一方、デジタルツインは、SUMAVEでも「バーチャル空間に「不動産」? “デジタルツイン”の可能性」で取り上げた通り、これまでの「シミュレーション」と異なり、現実と仮想空間の同期や連携などが行えることです。リアルのデータを基にデジタル上で現状に加え、未来を予測し、管理する。それがデジタルツインの世界です。

デジタルツインの基板を支えるのは、IoTAI5Gといった先端技術。こうした技術の進化・普及が、膨大な量のデータの取得・送信を可能にし、現実の「双子(Twin)」ともいえるほどの精密なコピーによる動的、かつ現実的なシミュレーションを実現可能とします。

エキスポが開催された「けいはんな学研都市」エリアでもデジタルツインの取り組みは行われています。フランスのダッソー・システムズが国土交通省のスマートシティモデル事業「スマートけいはんなプロジェクト」の一環として、けいはんな学研都市の地形・建物の3Dデータを取り込み、デジタルツイン化。複数の実証事業を横断的に可視化する取り組みをしています。例えば、NTT西日本が実施するオンデマンド型乗り合いバス「ラストワンマイルモビリティ実証実験」の走行状況などをデジタルツイン上で把握したり、それにより最適な乗合スケジュールを提示する手助けをします。

スマートシティにおいて、デジタルツインを導入するメリットは多々あります。例えば、あらかじめ町のデータを取り込んでおけば、交通状況などをシミュレーションし、混雑している箇所を洗い出し、その混雑を減らすにはどのような道を作るべきかという検討が可能です。そして、実際にデジタル上で道を作ってみることで、どのくらい混雑を削減できるかをシミュレートできます。

マンションを建てる計画があれば、そのマンションの戸数に合わせて世帯数が見えてきます。ターゲットの世代をデジタルに入れることで、彼らがどのような行動をするのかをシミュレートできます。例えば、子供が増加した場合、現在のスクールゾーンは健全に稼働するか、学校運営は問題なく可能かどうかなどです。

デジタル上で実際の建築計画や公共事業のデータをインプットし、それが町にどのような影響を及ぼすかを計算することで、行政は無駄な投資を減らせますし、想定外の出来事を未然に防ぐことができるかもしれません。

ダッソー・システムズでは、すでにデジタルツインで製造業なども推進しており、部品の設計や組み込み、耐用年数などもデジタルでシミュレートし、ものづくりを行う支援をしています。以前は建築も製造もプロトタイプやモックアップを作り、そこで問題ないか検討することがほとんどでしたが、これが大きく変わったのです。 

行政もコロナ禍を経てデジタル化へは積極姿勢

今回エキスポで感じたのは、自治体関係者が多数やってきているという点。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、各自治体のデジタルやDXに対する姿勢は大きく変わったようです。中でもデジタル田園都市国家構想は、岸田政権が強く推進する取り組み。交付金も出ることもあり、注目を集めていました。

エキスポでは、各自治体の関係者がデジタル田園都市国家構想に対して行ってきた取り組みを紹介。席が埋まり、立ち見がでる程の盛況ぶりでした。先進的な取り組みをしている自治体としては、群馬県の前橋市が挙げられます。

前橋市はデジタル田園都市国家構想のTYPE3採択を受けています。デジタル田園都市国家構想には、TYPE1TYPE2TYPE3があります。TYPE1がエリア別取り組みとした場合、TYPE2/3はそこから一歩進め、広域連携や特定分野を核に対応分野を拡げるタイプや、技術を工夫し応用分野を広めるタイプ、一挙に包括的サービスの提供や総合的なスマートシティ構築に進むタイプなどが採択されます。

TYPE1
 デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上に向けて、他の地域などですでに確立されている優良なモデルなどを活用して迅速な横展開を行う地方公共団体の事業を国が交付金により支援する

TYPE2/3
 データ連携基盤を活用し、複数のサービス実装を伴う取り組みを行う地方公共団体の取り組みを支援する

前橋市では、デジタル×スローシティをコンセプトに、めぶくIDと呼ばれる統合IDをつくり本人同意に基づくオプトインによる個別最適化したサービスを官民一体で推進することを目指しています。

同市ではデジタル基盤の整備として、このめぶくID(デジタル基盤の統合ID)に加え、官民連携の会社めぶくグラウンドの立ち上げ、そしてデジタル&ファイナンス未来型政策協議会による自治体連携(自治体横展開)の3つを軸に官民共創のまちづくりを行っています。

めぶくIDはマイナンバーカードで本人確認を実施した上で、スマートフォン上に電子署名法の認定証明を発行して使用する仕組み。これにより、例えば公共交通機関などで年齢確認などをしなくても利用者の年齢や状況がIDに組み込まれ適切な料金の支払いがなされたりします。

TYPE2/3の支援はまだ数としてはまだ少ないのですがTYPE1で採択された自治体が2023年に向けてTYPE2/3を目指す可能性もあり、町におけるデジタル化、スマート化が加速しそうです。

文/中村祐介

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