「業務フローがテクノロジー導入以前に戻ってしまいそう」改めて考えたい不動産業界のDX

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「業務フローがテクノロジー導入以前に戻ってしまいそう」改めて考えたい不動産業界のDX

はじめに  

安倍首相が48都道府県の緊急事態措置を解除して、本日5月29日で4日目。日本経済は緩やかに動きはじめました。他方で、気になるのは再び感染者数が増えている福岡県北九州市です。5月28日の時点で、新たに21人の感染が判明しました。連続した6日間の感染者数は43人となり、その推移に注目が浴びせられています。世界を見渡すと南米が気がかりです。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、5月28日時点で死者が2万5,000人、感染者が40万人を突破したブラジルを中心に、南米大陸での感染拡大を懸念する声が聞こえてきました。世界的に“感染第2波”への警戒は続き、日本も同じ局面です。

感染防止を徹底しながら、同時に社会経済活動を回復させていく。この両立は極めて難しいチャレンジであり、次なる流行のおそれは常にあります(安倍首相/首相官邸より)

画像出典元:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0525kaiken.html

安倍首相は新しい生活様式であるNew Normal(ニューノーマル)を続けることの重要性を訴えています。具体的なガイドラインを示しているのは厚生労働省です。

画像出典元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

国交省は、今後の不動産業界のガイドラインをPDFにまとめ、インターネット上に公開しています。ガイドラインが呼びかけているのは、テレワークの導入やオンラインによる取り組みの継続です。消費者との不動産取引においても、非接触、非対面でのコミュニケーションが求められています。これは、コロナ禍(か)におけるニューノーマルの必要性を訴えるメッセージです。西村経済再生担当大臣は、緊急事態措置を解除したあとも積極的にテレワークを取り入れることを奨励しました(5月21日の記者会見)。私たちには“新たな生活様式”での振る舞いが求められ、それにあわせるような“新しい経済”が動き出しました。コロナは終息していません。ワクチンもまだ。それでも私たちの生活はつづき、社会や経済は進みます。この状況下で不動産業界の関係者から聞こえてきたのが、次のような声でした。

業務フローがテクノロジー導入以前に戻ってしまいそう。どうやって社内を説得すればよいでしょうか

この声への1つのアンサーを本日の記事で紹介します。※いますぐに回答を先に知りたい人はコチラ

取り上げるのは、5月22日にWealthPark株式会社(以下、ウェルスパーク)とダイヤモンドメディア株式会社がオンライン上で開催したセミナー、「不動産業界に訪れるニューノーマルとは?」より、ダイヤモンドメディアの岡村雅信社長のプレゼンと、ウェルスパークの石村裕樹営業部長の質疑応答です。

ダイヤモンドメディアの岡村氏は、以前より管理会社をサポートしてきました。代表的な事例は、いち早く不動産テックへ注力している不動産会社、東急住宅リースとの取り組みです。ほかに、三井不動産レジデンシャルリース、長谷工グループ、アパマンショップネットワーク、京王不動産など200社以上をダイヤモンドメディアは支援してきました。

画像出典元:https://www.sumave.com/20180507_4207/

管理会社向けにオーナーアプリを提供するスタートアップがウェルスパークです。同社は物件管理業務をしているだけでなく、コロナの影響に苦しむ管理会社のテレワークを支援するため、2020年の3月下旬からオンライン上でのセミナーをはじめています。その核となる人物が石村氏です。

画像出典元:https://www.sumave.com/20200403_16781/

両者によるウェビナー、「不動産業界に訪れるニューノーマルとは?」をハイライトでレポートします。

病院予約のペインポイントを解消して保険を売る。デジタルのなかのリアルという概念


岡村:不動産会社さまが、具体的にDX(デジタルトランスフォーメーション)をしていこうと考えたとき、必要な考えかたの1つにアフターデジタルがあります。最近、話題のキーワードです。これは、藤井さんというかたが提唱している考えかたで、本が出版されています。アフターデジタルの世界観のイメージは、デジタルのなかにリアルが包括されるというものです。興味のある人は、ぜひ、本を読んでみてください。詳しく書かれています。ポイントは、これから重要になるのは商品ではなく体験であるという指摘です。一般に、ユーザーがオンラインでの体験を積み重ねることでデータが蓄積され、そのデータを生かすことで、顧客に“さらなるよい体験”を提供することができます。アフターデジタルの世界では、“さらなるよい体験”そのものがサービス/製品になる、という考えかたが不動産業界でも重要になってくると思っています。


岡村:賃貸物件を探すエンドユーザーの流れにそって考えるとこのようなイメージです。エンドユーザーは、まず、アプリや電話を使って来店、内見をします。チャットで店舗スタッフとコミュニケーションして、また来店。VR内見、IT重説、電子契約をへて、入居にいたります。入居者アプリで管理会社のスタッフが“入居者”となったエンドユーザーとタッチポイントを持ち続ける世界観です。赤色の丸でかこっているのがリアルな接点、緑色の丸でかこっているのがデジタルな接点です。それぞれの接点はつながっていて、1つの体験として認識されます。詳しく説明すると長くなるので避けますが、接点の数はまだまだあって、続きます。重要なことは、エンドユーザーの評価が、一連の体験からなるということです。一つひとつの接点で素晴らしいサービスを提供できたとしても不十分で、すべては、つながっていることが重要。その総合評価によって企業は選ばれることになります。代表的な事例を紹介します。一連の体験の重要性を物語る有名なエピソードです。


岡村:本のなかにも書かれていることですが、中国平安(ピンアン)保険グループという保険会社の事例です。平安保険は、平安グッドドクターというアプリを開発しました。保険会社が運営しているサービスです。これは、病院を予約するときの問題を解決します。中国では、患者から高額な医療費をとろうとする町医者が多いという状況があったそうです。たとえば、診察するときに舌をおさえる医療器具。どうみても使いまわしているように見えて、「それ、交換してほしい」と提案すると、「お金くれたら新しいものと交換するよ」そんな返事が町医者からあることも。患者はしっかりした大病院に行くわけですが、そうなると患者で大病院があふれかえります。そこでは整理券が配られ、番号によっては、「7日後に来てほしい」と告げられることもあるんだとか。この状況を改善しようということで生まれたのが、平安グッドドクターというアプリです。

画像出典元:https://www.pingan.com/


岡村:患者に、「体調が悪くなったら、まず、平安グッドドクターで調べてほしい」と促します。病院に行くとなると、アプリで医者を選んで予約することまでできます。予約されたデータは、アプリをかいして平安保険が見ることができます。

この患者の家庭には子供がいる

岡村:そうなると、平安保険の営業パーソンが電話して、たとえば、「大丈夫ですか? 通院のときはお子さんの面倒をみましょうか」と提案します。もしくは、子守をしてくれるサービスなどを紹介するわけです。平安グッドドクターを利用することで得られる一つひとつの接点は、患者(エンドユーザー)から、一連の、1つの体験として認識されます。アプリの利用者は平安保険のファンになる。しかるべきタイミングで保険の話に入っていくわけです。顧客の立場になって“体験という製品”を考え、アプリを提供している点が素晴らしいと感じます。その過程に自社のマネタイズがある。最初から、「保険だけを売ろう」としていたら、そのビジネスモデルにはなりません。こうも思います。「自分が病院を予約して、保険の営業マンから電話がかかってきたら気持ち悪いな」と。ところが、多くの中国人にはそれがない。平気らしいんですね、知らない相手からかかってきても会話がはじまる。これは国民性によるところでしょう。日本で、平安保険の“製品”をまったく同じように提供しても、うまくかない背景でもあります。そうなれば、日本独自のDXがあるはず。日本独自のユーザー体験を提供していくことが重要なポイントになるわけです。

質疑応答Q1/IT化への抵抗を示す社員や上司をどう説得したらよいですか?

本題です。「緊急事態宣言が解除されると、もとの業務体制にもどりそう。どうしたらよいか」「テレワークやIT化に反対する社員・上司にデジタルトランスフォーメーションをどう伝えたらよいか」この質問への解を1つ、紹介します。ピックアップするのは、ウェビナーの質疑応答より、ウェルスパークの石村氏のコメントです。


石村:前提としてあるのは、緊急事態宣言にあわせてやっていたテレワークが、緊急事態措置の解除によって通常の勤務体制に戻ろうとしているという話だと思います。ここには、いろんな考えかたがあると思いますが、私がオススメしたいのはデータマネジメントの視点です。上の表をご覧いただけますか。とある管理会社さまを想定した、部署ごと、対応ごとの前月の労働時間やその難易度をまとめたものです。「通常の勤務体制に戻すよ」って話は、“上席のかたからの指示”ということだと思います。ここで重要なのは、何を判断軸にして戻すのか。軸として私がオススメしたいのは、その取り組みは会社の業績に寄与するかどうかという軸です。


​石村:会社にとってプラスな施策なのかどうか。緊急事態宣言のまえとあと、たとえば、テレワーク導入以前と以後の生産性を測ることが大事です。総労働時間以外の視点として、退去、現状回復の見積もり、承諾、発注、次の入居の準備などの業務プロセスにおいて、一つひとつにどのくらいの時間を費やしているか。これがリモートワークによって、どれだけの時間になったのか。短縮できたのか。そうではないなら、何が問題で短縮できなかったのか。原因を解消できそうか。できたら時間は短縮されそうか。ここをご提案していただきたい。業務が通常に戻るという話になったとき、なぜ戻るのかという理由を明確にしてみていただきたいのです。もしですね、「生産性に変化はないかもしれない」という理由なのだとしたら、かもしれないの部分を数値化して上席のかたへ提示することに挑戦していただきたいです。定性的な部分を定量に置き換えてください。「緊急事態宣言でテレワークをしました。そうしたら生産性が●●%上がりました。効率的に働けているので緊急事態措置が解除されてもテレワークを続けましょう」と伝えるために、です。大事なことは生産性が高まったかどうか。高まっているのなら、「テレワークを続けましょう」です。これを提案して断ることができる経営者は、いないはずです。

質疑応答Q2/DXするための予算、費用をどう見積もればいいか見当をつけられません。どんな数字をもとに予算を作ればよいですか?

石村:個人的には、ポイントが2つあるかなと思っています。1つ目は、ゼロ円チャレンジです。たとえば、今日のウェビナーで使っているZoomは、一定範囲内の機能が使える無料版があります。ゼロ円なので効果しかありません。「ちょっと使いにくいな」「こういう機能を追加で使いたいな」となったとき、はじめて予算の話になり、有料版を試すステップです。有料版を使ってはじめて、効果を検証することができます。つまり、DX=まずはゼロ円チャレンジというマインドを不動産会社のかたにはご提案したいです。電子申込、電子契約、オンライン接客、VR内見、IT重説などの不動産テックを使うなら、いまは絶好のタイミングです。「ある一定期間は無料開放します」というキャンペーンをしている会社が多いので、それはもう、絶対に使ってみたほうがいい。2つ目のポイントは、助成金ありきの視点で予算を組まないことです。「助成金を使える範囲でITツールを導入しよう」と考えてしまうと、導入効果に目が向きません。予算を確保することが目的になってしまって、もっとも重要な、「なぜ、DXするのか」「自社にとってのニューノーマルな業態とか何か」という視点が失われてしまいます。デジタルトランスフォーメーションは、いまある課題を解決するための施策です。業績を改善するための全社的な取り組みなので、課題の認識がない状態で取り組むべきではないように感じています。課題を社内で共有し、それを改善してニューノーマルな不動産会社になるためにテクノロジーを使うのです。IT化は課題解決のための手段の1つにすぎません。課題解決の視点をぜひ、心がけていただければと思います。ファーストステップは、効果の検証をするためのゼロ円チャレンジから、ぜひ。

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