【レポート】不動産テックは革新を起こせるか。「ダイヤモンドメディア×東急住宅リース」をクローズアップ

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【レポート】不動産テックは革新を起こせるか。「ダイヤモンドメディア×東急住宅リース」をクローズアップ

2018年4月28日に、一般社団法人日本賃貸仲介協会が、東京都のヒルトンホテルにて1周年の祝賀会を開催しました。代表理事を務めるのは、誠不動産株式会社の鈴木誠氏(画像下)です。鈴木氏は、不動産賃貸仲介の領域で、新しい未来を作ろうとしています。

これまでは、他の会社は敵、という認識があったかと思いますが、今の時代はそうではありません。同じ業界のなかで、1つの目標に向かって手を取りあうことが重要です。業界の大きな流れの1つに、「所有から共有へ」があります。今後も、情報共有の場、仲介の新しい在り方を提案することを目指し、当協会を進めて参ります(鈴木氏)

当日は、パネルディスカッションがいくつも用意されていました。『クロサギ』や『正直不動産』の原案でも有名な、夏原武氏と鈴木氏の対談(画像上)や、株式会社S-FITの店舗事業本部長である、池田達矢氏(画像下の右)と、株式会社アンビション・ルームピアの取締役である大石徹氏(画像下の左)による、賃貸仲介業務の現場感についてのセッションなど、盛りだくさんでした。

ほかにも、不動産業界の人事戦略が語られた、LIFULLの羽田幸広氏(画像下)のテーマは、時代の流れと密接にかかわっていて、非常に興味深い内容でした。

本記事では、不動産業界とテクノロジーの結びつきについて意見交換が活発だったトークセッションに、焦点を当ててご紹介します。テーマは、「不動産業務に革新は起こるのか? 」です。ダイヤモンドメディア株式会社で取締役を務める岡村雅信氏がモデレーターを務め、東急住宅リース株式会社で執行役員を務める佐瀬篤史氏が不動産業務の最前線を解説してくれました。ハイライトでご紹介します(以下、敬称省略)。

佐瀬篤史/東急住宅リース株式会社執行役員

皆さん、こんばんは。東急住宅リース株式会社の佐瀬と申します。簡単に経歴をご紹介しますと、東急コミュニテイーに入社しまして、オフィス工事営業や、競売物件の業務などが、キャリアのスタートです。賃貸住宅PM部門へ異動し、2014年に東急3社の統合に携わりました。2015年には、東急住宅リース株式会社の戦略企画を担当し、2018年4月より、同社の執行役員、事業戦略本部長を務めております。よろしくお願いします。

岡村雅信/ダイヤモンドメディア株式会社 取締役

私は、ダイヤモンドメディアという、まだ創業して10年くらいの会社に所属しています。5、6年くらい前から、不動産会社さん向けの業務支援サービスや、不動産会社さんの集客を伸ばすサービスをやらせていただいてます。私自身は、自分が学生のころからダイヤモンドメディアという会社にかかわっていて、気がついたら現職というような状況です。佐瀬さんのような華やかな経歴はなく、当時から私自身は変わってないですが、でも10年前は髪の毛がありましたね。

(会場が笑いに包まれる)

トークテーマ】不動産業務に革新は起こるか?


岡村:では、司会役を任されたので、進めていきたいと思います。私は、不動産会社さん向けにサービスを提供する側の立場なので、ぜひ、佐瀬さんのご意見をお聞きしたいです。

今の不動産業界は、仕組み自体が非常に分業化されています。現時点で成り立っているこの仕組みに対して、IT化は、変化のニュアンスを与える側面がありますよね。変化に対する、現場のかたたちの温度感や雰囲気などを、佐瀬さんはどう感じていますか?

佐瀬:なかなかね、1つでも反対意見がでると、まったく前に進まないことはよくあります。当社では、仲介会社さんからいただいた資料にあるEメールアドレスをパソコンへ手入力する、という作業があるんですが、これが細かくて間違えやすいので苦労します。

当社の場合、FAXできた契約書をOCRで読み取るっていうのをやっているのですが、この読み取り精度が、99%くらいと非常に高いのです。「これは、Eメールアドレスの手入力に活用できる」という、手ごたえを感じました。年間、1万5,000件くらいの契約に生かせるなと。ところが、この話は立ち消えました。

手入力を担当していたのが2名で、そうすると、「その業務を削減したところで/そのシステムを導入したところで、どうなるんだ」という声が社内からあがってしまったんです。絶対にやったほうがいいと思うんですけどね。データ活用の視点で考えると、副次的な効果があるはずなんですけど、なかなか、簡単ではないですね笑。

岡村:ちょっと、会場の皆さんに聞きたいんですけど、「相手の会社さんがFAXを辞めるっていうなら、自分の会社もFAX辞めていいよ、辞めたい」って会社さんは、どのくらいいますか? 

(会場の1/2から1/3程度が挙手) 

分業化の進む不動産業界では、たとえば、ある管理会社さんが、「FAX辞めます」っていっても、「すべての管理会社さんが」という主語でなければ、仲介会社さんはFAXを辞められない現状があると思うんですよね。そうなると、仲介会社さんは、「FAXを辞める」って意思決定を自ら選びにくい。

現状の大多数は、分業化された領域ごとに、「やらないと仕事が滞るから、回るための仕組みを選んでいる」という状況のようにも感じますよね。不動産テックサービスを提供する立場の私たちが、「時代の流れうんぬん」をいっても、「目の前の仕事で主流になっているツールを扱わないリスクはとても大きい」ということを忘れてはならないでしょう。

佐瀬:私は、人口減が予見できる日本において、「人を雇えなくなるんじゃないか」という危機感を覚えます。ほんとに、まずいなと。現状、営業の粗利と、人件費の比率が非常に近く、人に頼った状態です。一方で、「業務のIT化を避けることは難しいだろうな」とも思ってます。

たとえば、電子契約です。電子契約の何がいいかというと、郵送のリードタイムがなくなることですよね。これはもう圧倒的に。「いつ届く?」「送った?」といったやり取り、手間、煩雑さが、まるごと解消されます。

当社の場合は、オーナーさんの契約にも取り入れているんですよ。年間1,000件くらいをやるんですが、そのなかで、海外のオーナーさんはとくに、すごく喜んでくれています。こうした電子契約は、拡大のスピードがもっと速くなるだろうなという印象です。

あとは、最近聞いたんですが、コンサルティング会社の担当者が、「日本は、バリューチェーンがしっかりしているので、関係者の調和がうまくとれている。アメリカとはそこが違う」という話をしていました。裏を返すと、変化への難しさがある、ともいえそうですが、不動産業界に限った話ではなさそうです。それなら、同じような事例が他業界にあるかもしれません。打開策を求め、私は他業界の成功事例を調べたんですが、おもしろいことがわかりました。

※佐瀬氏が披露してくれたのは、ゴルフのオンライン予約が拡大した事例や、物流コンテナが浸透したエピソードです。共通点は、既存の業界で、売上が伸びずに悩む人たちを巻き込み、新しいバリューチェーンを作ったということ。バリューチェーンの輪が拡大していくことで、業界全体へサービスや新しい価値観が根付いた、という事例として紹介されました。

岡村:コンテナの話を例に挙げると、コンテナを導入する以前は、船から積み荷をおろす作業を人がやっていたのだと思うんですよね。となると、「コンテナは作業員の仕事を奪う」という見方もできると思いますが、その当時、不満や抵抗みたいな声は存在しなかったんでしょうか。

佐瀬:おさめる役割を担ったものが、あったようです。

岡村:具体的に、どんな対処だったんですか。

佐瀬:詳細となると、そこまでは私にも。

岡村:不動産業界に置き換えてみましょうか。よくある話ですが、「不動産テックが浸透すると、仲介会社の人は仕事がなくなります」みたいなこという人がいますが、本当にそうなんでしょうか。佐瀬さんはどう思います?

佐瀬:結論からいうと、なくならないと思っています。皆さんが思い描くような未来では、仲介会社さんも管理会社さんも、どちらも近い仕事をしていて、もっと生産性の高い、新しいステージに上がっていくんじゃないかなと。AIが仕事を奪うって話も盛んにされますが、そうではなくて、私は「業務を処理するスピードが速くなる」というのが本質なのかなと考えています。

岡村:本当にそうですよね、私もなくならないと思います。すごい便利になったからといって、全員がネットから申し込むわけではないと思いますし。不動産テックサービスを提供している私たちが感じているのは、「周りがやりはじめたから、うちもはじめます」という意見の不動産会社のかたが多いなということです。

トークテーマの結論としては、革新は起きる、といえます。「すでに起きている」という見方もできますが、不動産テックを提供する側の課題としては、テクノロジーの導入に踏み切るかたをどうやって増やすか、でもありますよね。

まとめ

多くの不動産関係者は、既存の仕組みに固執しているわけではなく、必要に迫られて既存の仕組みを踏襲しているだけなのではないか。好きこのんで、レガシーな産業を継承しているわけではないはずだ、というのが、岡村氏の指摘だったと感じました。

佐瀬氏が話していた「OCR」とは、「Optical Character Recognition/Reader」の略で、手書きや印刷の文字を読み取る技術のこと。スキャナやデジタルカメラによって読み取った画像から、文字を、パソコンで利用できる文字コードに書き換えることができます。

このほかにも、当日は、業界の生々しい話を聞くことができ、とても有意義に過ごせました。たとえば、LIFULLの羽田氏の採用戦略の話もそうです。

社員のやる気に焦点を当て、組織診断をしている企業に、リンクアンドモチベーションという経営コンサルティング企業があります。年間、数千社の企業変革をサポートする企業です。

リンクアンドモチベーションは、社員の働き甲斐を数値化し、レポートにすることで、その企業の社員満足度を表すような取り組みをしています。この取り組みは、「ベストモチベーションカンパニー」というランキングで発表されています。

このランキングで、2017年に、日本一の称号を獲得したのは、株式会社LIFULLでした(受賞時はネクストの社名)。

そんなLIFULLにおいて、新卒の採用戦略を指揮しているのが、羽田氏です。羽田氏のトークセッションには、レンターズの代表でもあるLIFULLの加藤氏も登壇していました。このセッションでは、「LIFULLが新卒獲得のために大手の就活サイトを使わない理由」「レンターズは、昨年、いかにして4名の新卒に愛されたのか」などが本音で語られました。※いずれの答えも、キーワードは情熱です。

13年くらい、この仕事をしていますが、過去に、1社だけ、私たちのような採用戦略に食い込んできた不動産会社さんがありました――。この会社さんは、ダメになっちゃったんですが、採用はムチャクチャ強かったんです笑(羽田氏)

祝賀会の当日には、そのダメになった企業で働いていた人物が来場していました。その人物は、当時の自分の苦労を交え、採用や働き甲斐についての質問を投げかけていました。その質問に羽田氏と加藤氏の2人が答える一幕も。3者の苦労、経験が交錯し、ライブ感があって印象に残りました。

印象に残っている理由はもう一つあって、それは、3者のやり取りを見たときに、SUMAVEの新しい企画を思いついたのです。こうしたイベントへの参加が、「情報交換」「アイデアの着想」につながる、貴重な機会であることを再認識しました。

イベントをレポート記事にすることで、読者の皆さんにも、そうした機会、瞬間をわずかでも提供できれば幸いです。

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