請求書の発送業務を自宅から。緊急取材、不動産会社のリモートワーク

はじめに
日本郵政が提供しているサービス、Webレターなら、請求書などの“紙”の大量発送業務をオンラインで完結させることができます。価格は、1通99円(税込)より。このサービスを利用すれば、請求書の郵送業務に、リモートワークで対応できるかもしれません。
2020年4月上旬。新型コロナウィルスの猛威により、社員が出社できなくなる危険性がでてきました。3月下旬以降、東京都をはじめとした大都市を中心に、コロナによる影響の潮目は変わりました。今回の記事で紹介するWealthPark(以下、ウェルスパーク)株式会社の石村裕樹(画像下)も、同じように考える一人です。
ウェルスパークは、不動産オーナー向けのモバイルアプリや、そのデジタルプラットフォームを提供しているスタートアップです。“不動産管理からウェルスマネジメント”をキーワードに掲げています。同社にて、石村氏が担っているのはSaaS事業部の部長職です。とくに、管理会社とのかかわりを多く持っています。最近になって、「オンライン化やリモートワークに不慣れな不動産会社から、少しずつ相談を持ち掛けられることが増えました」といいます。これをきっかけに、コロナによる影響を想定し、「リモートワークに不慣れな不動産会社の力になりたい」という思いを石村氏は持つようになりました。
国が緊急事態宣言をしたら――。明日にでも、不動産会社がリモートワーク対応を迫られるかもしれない。いますぐに提供できるノウハウから、不動産会社の人たちに共有していきたい(石村氏)
この思いを抱いた数日後にあたる4月1日に、石村氏はウェルスパークの仲間とオンラインセミナーを実施。十分な告知期間がなかったにもかかわらず、参加者は最大61名となりました。
リモートワークの心得、在宅勤務における社員の管理ノウハウ、コミュニケーションのためのツール解説など、50分のセミナーは盛りだくさんでした。
残念ながらすべてを紹介することはできませんが、本記事では、石村氏が日本郵政のWebレターを取り上げた部分に焦点を当て、紹介します。コロナの影響による不動産会社のリモートワークをテーマにした、緊急取材記事です。
テーマ/請求書や送金明細の送付をリモートワークで対応できないか
石村:不動産管理会社さまや仲介会社さまのリモートワークを考えたとき、ネックになるのは紙が多いことです。契約書、重要事項説明書、請求書、送金明細などの郵送作業をどうするか。請求書を送るためには、「出社する必要がある」と思われがちですが、じつは、そうでもありません。一般に、郵送業務を細分化すると次のようなものがあります。
- 封筒や用紙を買う
- データを作る
- 印刷する
- 封入する
- 送る
石村:これを日本郵政さんが代わりに、Webレターというサービスで対応してくれます。メール対応がかなう関連企業さまには、PDF添付などで問題ないと思いますが、こうしたオンラインサービスを利用するのもアリです。実物はこんな感じです。
石村:封筒には、なかの書類がすけて見えない加工がほどこされています。この封筒で郵送するための、「用紙印刷」「宛名印刷」「封筒詰め」「郵送」を1通99円で対応してもらえるのです。一部の郵送業務をWebレターなどのオンラインサービスに切り替えることで、請求書の郵送業務を出社せずに対応することもできると考えています。
急きょ、オンラインセミナーを開催した背景について
石村:私は、明日、国から緊急事態宣言が出されて、「みなさん、これまで以上に外出を自粛してください」と要請される可能性があると思っています。「そうなった場合、みなさんはどうされるんだろう」ということを考えました。
もし、コロナの影響によって、社員のリモートワークに対応せざるをえなくなったら
お客さんが自宅にいる状態で部屋探しを続けるとなったとき、仲介会社さまはどう対応すればよいのだろうか
石村:そうしたことも考えます。もし、何の準備・対応もしていないという不動産会社さまがおられましたら、いまからでも、今日、紹介したツールを1つでも使ってみてもらえれば幸いです。使ってわからなければ、次回のオンラインセミナーで質問してください。まずは、慣れることが重要です。ぜひとも、1回、チャレンジしてみてください。そこでの不明点や疑問点をは、4月3日に開催する第2回セミナーで詳しく質問していただければと思います。
追加取材/コロナの影響により、関心が高まる不動産テックサービス
今回のセミナー会場は、ウェルスパークの本社会議室でした。エントランスにはアルコール消毒が置かれ、会議室内は“3密”を回避するために窓が開けられていました。
明日にでも、不動産会社がリモートワークを迫られるかもしれない(石村氏)
印象的だったのは、その危機感がウェルスパークの社内体制にも現れていたことです。たとえば、ノートパソコンの準備です。リモートワークの従業員が増えたり、緊急用の代替ノートパソコンが必要になったりすることを想定し、何台もの中古パソコンがセットアップを待っていました。
在宅での勤務フローが整わないスタッフ以外のリモートワーク化にも着手済みで、オフィスには数名がいるのみ、という状態です。
2015年8月からIT重説に取り組んでいる株式会社ユーミーネットの取締役も、コロナの現状に危機意識を高めていました。自社の仲介業務を詳しく調べ、洗い出した作業工程は263。ここから、オンライン化できない業務が何番目の工程であり、その影響から何番目以降の業務がとどこおるのかを把握していました。見えてきた課題の1つが、「在宅勤務では、送金明細の発送業務が難しい」というもの。石村氏がセミナーで取り上げた日本郵政のWebレターは、解決策の1つとなるか。ほかにも、現状で仲介会社が気にしている業務に、内見があります。東京都を中心に外出の自粛要請が出ている現状で、お客さんが自宅に留まっているいま、内見をどうするか。たとえば、ライブ配信型の内見システムである、株式会社Tryell(トライエル)の『オンライン内見』には、先週の3月23日から4月2日までの9営業日で、15社からの問い合わせがあったことがわかりました。そのうち2社は、「システム販売を代理させてほしい」というもの。
画像出典元:https://www.online-naiken.com/
「展示場やモデルルームが閉鎖になるので困る」という業界関係者からの問い合わせは、ナーブ株式会社の『VR内見』にも入っていました。問い合わせ件数は通常の2、3倍に。ナーブは、3月31日に『おうちでVR内見™』のサービスを6月末まで無償提供することを発表しています。
画像出典元:https://www.nurve.jp/news/vrathome/
「社員のリモートワークに対応したい」というニーズから、イタンジ株式会社の『Cloud Chint AI』への問い合わせや資料請求も増加中。追加取材で見えてきたのは、不動産業界の繁忙期が終わる3月下旬から、不動産テックベンチャーへの問い合わせ数が右肩上がりに増えている状況でした。
画像出典元:https://bukkakun.com/
コロナによる影響のすべてに対応できるわけではありませんが、その対策として力を発揮する不動産テックは確実に存在します。対策や準備を何もしていないという業界関係者は、すぐにでも上記のような不動産テックベンチャーに問い合わせをしてほしいです(※本記事で紹介した企業やサービスから、広告費や紹介フィーなどをSUMAVEは一切もらっていません)。同時に、不動産テックベンチャーやスタートアップの読者には、一丸となって不動産会社をサポートしてもらえればと願うばかりです。