【レポート】ReTechがもたらすイノベーション、テクノロジーで変わる不動産業界

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【レポート】ReTechがもたらすイノベーション、テクノロジーで変わる不動産業界

2018年1月25日に、東京都目黒区で、不動産テックに関するカンファレンスが開催されました。カンファレンスのタイトルは、『ReTech Conference〜ReTechがもたらすイノベーション、テクノロジーで変わる不動産業界〜』です。カンファレンスでは、テクノロジーがもらたらす可能性や、不動産業界の未来が語られました。

登壇者は7名、来場者は100名を超えました。カンファレンスの最後には登壇者によるトークセッションがあり、気づきの多い内容でした。盛りだくさんだった当日の内容より、今回ご紹介する講演テーマは以下の4つです。

  • テクノロジードリブンで変わる不動産業界
  • テクノロジーによる不動産業界革新
  • 新しい通信やデバイス、プラットフォームについて
  • 不動産マーケットにおけるAIの活用

カンファレンスは、主催者であるインベスターズクラウドの執行役員、松園勝喜氏の挨拶ではじまりました。松園氏と入れ替わりで、最初の登壇者として現れたのは、同社の研究開発課で課長を任される門木啓蔵氏です。

講演テーマ:テクノロジードリブンで変わる不動産業界

登壇者:門木啓蔵氏(インベスターズクラウド研究開発課・課長)

門木氏の講演からご紹介したいのは、インベーズクラウドがスマートスピーカーを使って実現させたいライフスタイルについてです。

ゲリラ豪雨の動きを予測して、入居者へ行動喚起したい

インベスターズクラウドは、新しい体験として、入居者さんへ次のようなことを提供したいと考えています。たとえば、ゲリラ豪雨の発生を検知し、進路を予測したら、「ゲリラ豪雨が向かってきています。5分から10分程度は、動かずに建物のなかにとどまったほうがよいです」とアナウンスするものです。

そんなアナウンスができないかと思い、研究開発を進めています。具体的には、物件周辺の環境データである、温度や湿度などのデータを取得して分析する作業です。

目指しているのは、入居者のライフスタイルにあったレコメンド

アナウンス手段については、スマートスピーカーの1つである『Amazon Echo』の使用を検討しています。

たとえば、入居者さんが「おやすみなさい」といったとき、『Amazon Echo』は「明日は燃えるゴミの日ですよ」と答えます。入居者さんの「いってきます」というセリフには、「今日の降水確率は80パーセントです。雨が降りそうなので傘をお忘れなく」のように答えるサービスです。

私たちは、入居者さんから投げかけられた会話に、スマートスピーカーがレコメンドしながら返答するようなシステムを開発しています。それらを生かすことで、入居者さんに新しいスマートライフを体験してもらいたい考えです。


 

講演テーマ:テクノロジーによる不動産業界革新

登壇者:長沢翼氏(株式会社LIFULL・CTO/同社技術開発部・部長)

株式会社LIFULL(以下、 LIFULL)の長沢氏は、社名の変更、それにともなう本社の移転、サービスの歴史などを語ってくれました。なかでも印象的だったのは、LIFULLのビジョンにまつわるエピソードです。LIFULLの講演内容からは、そのエピソードをご紹介します。

私たちは、「あらゆるLIFE(ライフ)を、HULL(フル)に。」というビジョンを掲げています。住まい領域だけではなく、人がかかわる生活(ライフ)の全体を満た(フルに)していこう、というような思いの表れです。その一環として、VRの技術に着目しています。

VRの技術を使ったサービスは、不動産業界のお客様と相性がよいです。相性がよいとは、人とテクノロジーの接点を設計しやすいという意味になります。その一例として、当社の『GRID VRICK』というサービスを紹介させてください。サービス内容を紹介した動画があるので、まずはこちらをご覧いただけますでしょうか。

796万もの物件を扱うLIFULLは、なぜ、レゴブロックにこだわったのか

『GRID VRICK』は、レゴブロックを並べることで、家を3Dモデリングできるサービスです。モデリングされた家のなかでは、ブロックで作った間取りや家具の配置が再現されるだけでなく、部屋をウォークスルーする体験も味わえます。家具の種類や大きさは、ブロックの色やサイズで、どういう家具なのかを判別する仕組みです。

※レゴブロックとは、プラスチック製のブロック玩具。

さきほど、人とテクノロジーの接点の話をしましたが、『GRID VRICK』には、そのこだわりが込められています。

不動産テックの分野では、「テクノロジーを活用する企業」「そうでない企業」の二極化が進んでいるとされますが、この二極化はお客様側にも起こりえると考えています。「テクノロジーを使える人」「使えない人」の二極化です。この差は今後、さらに広がっていくかもしれません。

広がっていくことで懸念されるのは、テクノロジーを使える人だけが満足度を高める状況です。この状況では、一方が不公平感や不満足感を募らせるでしょう。

もし、不公平感や不満足感を解消できないとしたら、LIFULLの目指す「あらゆるライフをフルに」というビジョンから、かけ離れた世界が築かれてしまいます。

参照:株式会社LIFULLウェブサイト

そうならないために、不動産テックサービスはどうあるべきか。あらゆる人が使えるインターフェースとは何か。1つの答えが、『GRID VRICK』なのです。

私たちの調査では、レゴブロックが4歳から99歳までを対象にしているおもちゃだとわかりました。あらゆる人が使えるインターフェースとして絶好です。

幼いお子さんから高齢者までが集まる三世代くらいの家族が、注文住宅を購入する場合を想像してみてください。家族全員が、レゴブロックを使って家造りに参加できるでしょう。そのシチュエーションは、すごく楽しそうですよね。レゴブロックを採用した『GRID VRICK』なら、不公平感や不満足感を解消し、あらゆる人の生活全体を満たせるのではないか、そんなふうに考えています」


 

講演テーマ:新しい通信やデバイス、プラットフォームについて

登壇者:竹之下航洋氏(株式会社ウフル・プロダクト開発本部・本部長)

株式会社ウフルの竹之下氏は、CES2018のイベント内容をリポートしてくれました。CESとは、Consumer Electronics Showの頭文字をとった略で、IoT家電の見本市のことです。今年はラスベガスで開催されました。毎年、世界中の企業が新製品を持ち寄って紹介するイベントです。

竹之下氏は、その会場で見つけた「スマートホームに生かせそうなIoT家電」を、このカンファレンスで紹介してくれました。下の画像もその1つです。

ディスプレイのついたロボットで、タッチスクリーンになっていたり、会話ができたりします。会場では、とても大々的に発表されていたそうです。トレンドからは、「今後の不動産テックに必要なこと」が予見できます。竹之下氏の講演からご紹介したいのは、「具体的にどんなことが予見できるのか」です。

通信規格のトレンドは5Gへ

これからの不動産テックを支える1つの要素が何かというと、無線通信です。CESの会場で、有線通信のIoT機器は見当たりませんでした。すべて無線通信なんですね。そこで今後、重要になってくるのが、5Gの通信規格です。

今、2020年のオリンピックへ向けて準備されている通信規格に5Gがあります。「5Gの通信規格に、今後のIoT製品がどう対応していくのか」「新しく発表されるIoT製品は、どんな無線規格に対応しているのか」などは、注目していきたいですね。

プラットフォーム化の流れについて

今後は、アグリゲーターという役割を担う企業やサービスの存在が注目を浴びるでしょう。アグリゲーターとは、いろいろなプラットフォームをまとめて、たとえば「当社のスマホなら、どのプラットフォームでもつなぐことができます、連動させることができます」という役割を担う存在です。CESでは、すでにそうしたサービスが発表されていました。

AIが進化する方向性について

1つの方向性として、今後は、「スマートスピーカーを使って、どのようなユーザーエクスペリエンスを提供できるか」に、フォーカスが集まるでしょう。

CESには、スタートアップ企業の集まる展示ゾーンらしき一画がありました。私がそこで見てきたのは、「彼らがどんなIoTデバイスを作っているのか」です。たとえば、「デバイスを家の屋根に取り付けることで、その家の快適度がわかる」という製品を提案している企業などもいました。

「温度」「湿度」などの情報を可視化するサービスにとどまらず、センシングして集めた情報を掛け合わせて、「今、家は快適な状態かどうか」という感性的なことを評価する領域に、世界のスタートアップ企業は挑戦しています。今後はおそらく、手触り、不快指数、爽快感などの評価をフィードバックすることも可能になっていくでしょう。

収益の多角化について

CESで、収益の多角化へ踏み込んだIoTデバイスやプラットフォームを紹介していた企業は見当たりませんでした。個人的には、たとえば、「自宅のガスコンロの使用状況をセンシングすることで、火災保険のリスクを算出し、リスクの小さい入居者の掛け金を下げる」などのサービスも出てくることを予想しています。

不動産とは場所であり、データの宝庫です。宝庫とは、その場所に建つ建物を指しています。現在着目されているのは、建物の内側の情報を生かすことです。しかし、今後は以下のような、建物の外側の情報を生かすことに、価値を見出す企業や人たちが増えるかもしれません。

  • 日照量
  • PM2.5
  • 騒音
  • 降雨
  • 人や車の交通量

これらの環境情報は、マーケティングに使える情報ばかりです。プライバシーへの配慮は不可欠ですが、「家の前にセキュリティカメラを置き、人と車の情報を集め、それを地域全体で実施する」ことができれば、想像以上に大きな価値を生み出すでしょう。


 

講演テーマ:不動産マーケットにおけるAIの活用

登壇者:樋口龍(株式会社GA technologies・代表取締役社長)

樋口氏の講演からは、GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)が開発したシステムをご紹介します。

GA technologiesは、創業から5年目の企業です。不動産の売買や仲介を含めた前期の売上は、96億円に達しました。同社の仕入れ担当者は3名だそうです。樋口氏は、「この人数は、売上が3倍以上に伸びた300億円に達したとしても変わらないでしょう」と説明していました。なぜ、スタッフの数を増やさずに売上を増やせるのか。その秘訣はITにあります。

具体的には、自社開発したシステムに秘訣があるのだとか。カンファレンスでは、いくつか特徴をあげて解説してくれました。ここでご紹介するのは、そのうちの以下2つです。

  1. 画像認識によるマイソク自動読み取り
  2. AIによる優良物件のスクリーニング

1つずつご紹介していきます。

3名の仕入れチームで売上96億円を達成した秘訣

1つ目の「画像認識によるマイソク自動読み取り」とは、画像認識の技術により、マイソクをデータベースとして保有することです。当社には、マイソクが毎日、数百枚ほど届きます。これを以前は、1名の仕入れ担当者が整理していました。ここには2つの問題があって、「その担当者が辞めたら会社にデータが残らない問題」「すべての物件データを人間が記憶することはできないので、交渉や提案時に漏れや見逃しがある問題」です。この問題を当社では、画像認識の技術によって解決しました。すべてのマイソクをデータ化し、物件情報を保有することに成功したのです。

AIによる優良物件のスクリーニング

2つ目の「AIによる優良物件のスクリーニング」とは、仕入れ担当者の経験と勘に頼った作業からの脱却です。

当社では、毎日、大量に届くマイソクをAIにスクリーニング(選別)させています。ここでいうスクリーニングとは、「過去の取引事例から1か月で売れる物件」「2か月で売れる物件」「1週間で売れる物件」などの機械学習を積んだAIが、マイソクの物件情報を「A」「B」「C」などにランク付けする作業のことです。

仕入れ担当者は、ランク付けされた物件情報から確認や交渉をすればよいので、業務を大幅に効率化できます。

6か月かかっていた作業が1日に

当社では、前述のような数えきれないほどの業務効率化の施策を実践してきました。ポイントは、「セールス担当者と、エンジニアの間のコミュニケーションを円滑にすること」です。ここでいうエンジニアとは、プログラマーなどのIT関連の技術者のことです。この取り組みを続けてきたおかげで、業務を効率化させるためのアイデアを半年で10しか思いつかなかったセールス担当者が、いまでは1日に10のアイデアを発信できるようになりました。一朝一夕には達成できません。積み重ねによる賜物です。
 
当社では、こうした取り組みにより、前期に96億円の売上を達成しました。重複しますが、仕入れ担当者の人数は3名です。人数は、売上が32億円だった2期前から変わっていません。この経験から、売上が今の3倍である300億になったとしても、変わらずに3名の仕入れ担当者で対応できると考えています。

今後は、「B to B」向けに、社内で取り組んできた業務効率化のノウハウを積極的に発信していきたいですね。ひいては、業界全体の生産性を向上させたい考えです。


 

まとめ

不動産テック関連のセミナーやカンファレンスに参加すると、業界のトレンドに触れられる点がメリットの1つです。「Industry4.0(インダストリー4.0)」「Bluetooth Mesh(ブルートゥース メッシュ)」「5G」「LPWA」「AWS」「RPA」などなど。ほとんどは、プログラマーなどのIT関連のエンジニアでなければ、耳慣れないキーワードだと思います。

大事なことは、キーワードを耳にする機会を増やすことです。機会が増えると、情報を収集するアンテナの感度が鋭くなります。それは、新しいサービスのアイデアを思いついたり、協業したいと思いえる企業と出会ったりする可能性を広げるでしょう。

みなさんには、そんなふうにして、少しずつ不動産テックの情報に触れていってほしいです。リテラシーに自信のある人は、ぜひ、情報を発信する側へまわってもらえればと思っています。


 

【主催】株式会社インベスターズクラウド

公式ウェブサイト:https://www.e-inv.co.jp/

※以下の情報は、公式ウェブサイトより引用

設立:2006年1月23日
代表者:代表取締役 古木大咲
事業概要:アプリではじめるアパート経営『TATERU』の開発・運営/ネットで賢くリノベーション『スマリノ』の開発・運営/不動産投資型クラウドファンディング『TATERU Funding』の企画・運営/『TATERU Buy-Sell』の企画・運営


 

【共催】アマゾンウェブサービスジャパン株式会社

公式ウェブサイト:https://aws.amazon.com/jp/


 

【登壇企業情報※記事内での紹介順】

株式会社LIFULL(ライフル)

公式ウェブサイト:https://lifull.com/

※以下、公式ウェブサイトより引用

設立:1997年3月12日
代表者:代表取締役社長 井上高志
事業概要:不動産情報サービス事業/総掲載物件数No.1※の不動産・住宅情報サイトの運営※産経メディックス調査(2018.1.30)/花の定期便サービス「LIFULL FLOWER」の運営など

 

株式会社ウフル

公式ウェブサイト:https://uhuru.co.jp/

※以下、公式ウェブサイトより引用

設立:2006年2月
代表者:代表取締役社長CEO 園田崇
事業概要:IoTサービス事業/IoTコンサルティング事業/IoTソリューション事業/マーケティングクラウド事業/パブリッククラウド事業/データアナリティクス開発事業/クリエイティブ事業

 

株式会社GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)

公式ウェブサイト:https://www.ga-tech.co.jp/

※以下、公式ウェブサイトより引用

設立:2013年3月12日
代表者:代表取締役社長 樋口龍
事業概要:AIを活用した中古不動産の総合的なプラットホーム「Renosy®」の開発・運営/AIを活用した不動産業務支援ツールTechシリーズの開発・運営/不動産オーナー向けアプリ「Renosy Insight®」の開発・運営
 

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