<イベントレポート>【第8版】不動産テックカオスマップがリリース。各カテゴリーの最新動向を解説

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<イベントレポート>【第8版】不動産テックカオスマップがリリース。各カテゴリーの最新動向を解説

2022年8月8日、不動産テック協会で作成している「不動産テックカオスマップ」の最新版となる【第8版】の内容を解説するセミナーが開催されました。日本国内の430サービスを複数のカテゴリーに分類したカオスマップは、2016年の初版から毎年1回のペースでアップデートされています。

今回は、コロナ禍でのオンライン開催を経て、2年ぶりとなるリアルのイベント。会場には、不動産企業関係者をはじめ多くの方が集まりました。2時間のタイムテーブルのうち、こちらの記事では不動産テックカオスマップの解説パートと、初版から携わるメンバー3名を交えた作成秘話などのパネルディスカッションパートのハイライトをお届けします。

プロフィール

■不動産テックカオスマップの解説

巻口 成憲氏(リーウェイズ株式会社 代表取締役社長 CEO)
1971年生まれ。立教大学大学院修了、早稲田大学大学院修了。社会人キャリアを巣鴨の新聞販売店で専売としてスタート。2年の新聞配達生活のあと、国内不動産デベに入社し経理業務に従事しつつ、システム開発の責任者を兼任。その後グローバルコンサルティングファームのKPMGコンサルティング株式会社(現 PwCコンサルティング合同会社)に転職。ナレッジマネジメントと人事制度プロジェクトを数多く担当。MBA取得後、国内監査法人系トーマツコンサルティング(現 デロイトトーマツコンサルティング合同会社)に転職し、BSCや制度設計プロジェクトを担当。2005年リノベーション事業を展開するリズム株式会社設立に参画。2014年IT不動産を事業の柱とするリーウェイズ株式会社を設立。
https://www.leeways.co.jp/company

■パネルディスカッション登壇者

川戸 温志氏(NTTデータ経営研究所)
大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。不動産・物流・ホテル・小売・通信・TI・金融・エネルギーなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック(PropTech/RealEstateTech)や物流テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。
https://www.nttdata-strategy.com/consultant/ka.html

浅海 剛 氏(株式会社コラビット 代表取締役 CEO)
システムエンジニア出⾝。SaaS事業にて起業後、ITスタートアップ取締役CTO、Yahoo!Japanにて新規サービス責任者を経て、コラビット代表取締役に就任。
既存住宅流通の課題を解決するため、エンドユーザー向け不動産テックサービスHowMaを運営。AI査定により既存住宅流通への⼊り⼝を広げることで、流通の活性化を⽬指す。同社のAI査定エンジンは不動産事業者や⾦融機関にも利⽤され、その査定総額は100兆円を超える。不動産テック協会理事を兼任。
http://collab-it.net/companyinfo/

滝沢 潔氏(株式会社ライナフ 代表取締役)
1982年生まれ。神奈川県出身。三井住友信託銀行で資産運用相談、不動産投資セミナーの講師などに従事した後、不動産向けシステム開発会社の株式会社ライナフを設立。不動産投資を24歳から始め、4棟のビル・マンションのオーナーとなる。1級FP技能士、不動産証券化協会認定マスター、不動産テック協会代表理事。
https://linough.com/company/

テクノロジーのサイクルに照らして捉える、不動産テックの現在地

イベントは、リーウェイズ巻口氏による不動産テックカオスマップの解説からスタート。2021年にリリースした第7版から第8版への刷新にあたり、再編したカテゴリーについて巻口氏は次のように説明します。

リーウェイズ巻口氏

巻口氏「仲介業務支援と管理業務支援の2つだったカテゴリーを、集客・顧客対応・決済・管理などビジネスプロセスに細分化して整理しました。また、サービス内容の変化で不動産テックに該当しなくなったサービス、メディアのみのサイト、集客・送客サイト・自社物件サイトは削除しました」

さらに、カテゴリー全体における不動産テックサービスの変化について言及。第7版と第8版を比べると、サービスの合計は-3.59%と減少傾向でした。一方、サービス数が飛躍的に増加しているカテゴリーもあります。

不動産テックカオスマップ categoryの変遷

巻口氏「VRやAR、スペースシェアリングなど、コロナ禍でサービスのニーズが高まったカテゴリーは伸びています。また、法規制の緩和に伴って参入が容易になったクラウドファンディングは新しいサービスが台頭しています。ただ、それ以外のカテゴリーは、サービスの数が減少傾向にあり、いよいよ淘汰が始まったと考えられます」

こうした不動産テックの現状を理解するにあたり、米国ITコンサル大手のガートナー社が造り出した新技術の社会的な立ち位置(適用度)を示す指標「ハイプ・サイクル」と、新しい商品やサービスがどのように市場に普及していくのかを分析した「イノベーター理論とキャズム理論」をもとに、次のように説明します。

巻口氏「ハイプ・サイクルでは、新しいテクノロジーの立ち位置は5段階『黎明期→過度な期待のピーク期→幻滅期→啓発期→安定期』で構成されます。あらゆるテクノロジーは、このハイプ・サイクルの波を乗り越えていくと考えられています。では、不動産テックをこのハイプ・サイクルに重ねると、オックスフォード大学の分析では、『フィンテックやブロックチェーンは過度な期待のピーク期にあり、業務支援などビジネスプロセス系のサービスは幻滅期、先頭を走っている分析系サービスは啓発期』とカテゴリーごとに立ち位置は様々です」

また、もう一つの観点として、消費者を5グループに分類して新しいサービスがどのように浸透するのかを分析した「イノベーター理論」から、不動産テックの現在地を考察。

巻口氏「1つ目のグループ『イノベーター(革新者)』は、好奇心と情報感度の高いオタク系。2つ目のグループ『アーリーアダプター(初期採用者)』は、単に新しいものが好きなわけではなく、商品・サービスの価値、具体的なメリットを考えて判断します。そして、3つ目のグループである『アーリーマジョリティ(前期追随者)』は、新しいものを採用することに比較的慎重で斬新さではなく、安心感を重視します」

イノベーター理論とキャズム理論

ところが、イノベーター/アーリーアダプターと、アーリーマジョリティとの間にはサービスに対する期待値の違いというキャズム(深い溝)が存在するとのこと。

巻口氏「キャズムを乗り越えて、多くの人が採用していることを重視する4つ目の『レイトマジョリティ(後期追随者)』、最も保守的で定番を重視する5つ目の『ラガード(遅滞者)』とグループをまたいでマーケット全体に浸透する道をたどります。不動産テックにおいては、コロナ禍でVRや電子契約が勢いを増してアーリーマジョリティが使い始めている状況で、SUUMOやLIFULL HOME’Sはほとんどの業者が利用しており、ラガードの領域に到達していると考えられます」

不動産とキャズム理論

不動産テックは淘汰の時代へ。かたやビジネスチャンスも

不動産テックの理論的な考察を踏まえて、巻口氏は「不動産テックというキーワード自体が古臭くなっている」と総括。各カテゴリーにおいて、企業や消費者への浸透度合いが異なり、一部はコモディティ化、一部はキャズムを乗り越えられるかどうか、など置かれている状況は様々とのこと。続けて、具体的にいくつかのカテゴリーを挙げて詳しい説明がありました。

こちらのレポートでは、巻口氏の解説をもとに注目度の高い領域に絞ってご紹介します。

・VR、AR……コロナ禍によるオンライン対応を追い風に伸びを見せたカテゴリー。STUDIO55 Inc. が手掛ける「shapespark(Software as aメタバース)」のように、メタバースの住宅展示場をプロデュースできるサービス、モデルルームをVRで案内するサービスなど、各企業の新しいアイデアが目立ちました。

・IoT……削除11社、追加5社と最も入れ替わりが大きかったカテゴリー。なかでも、2021年1月、Akerunを開発するフォトシンスと建築用錠前の日本国内シェアNo.1の美和ロックの合弁会社「MIWA Akerun Technologies」の設立は注目。スマートロックを活用した利便性やセキュリティの向上、安全・安心な生活に貢献する製品やサービスを共同開発するとのこと。IoTは従来のビジネスの参入が著しく、かつ企業間の連携が加速している領域。使われないサービスは淘汰が進むと予想。

・スペースシェアリング……コロナ禍によりサービスの拡大が目立つカテゴリー。リモートワークの推奨にともなう課題「自宅で働くスペースがない」や、ニーズ「自由に好きな場所で働きたい」などへのソリューションが増えました。たとえば、スマホなどから会議室やフリーアドレスを予約できるソニーのスマートオフィスソリューション「Nimway」、全国のゲストハウスなどの宿に泊まり放題になる「HostelLife」も、時代の変化が追い風になり台頭したサービスです。

こうした最新動向を踏まえて、巻口氏は日本のサービストレンドは4つのキーワードに整理されると総括します。

巻口氏「まず、『サービスの淘汰』です。不動産テックが注目されるようになってから月日が経ち、先駆的にサービスを開発した企業の中から、事業撤退する企業が増え始めています。次に『サービスの連携』です。複数の企業が連携し、自社のテクノロジーを提供し合いながらサービスを開発する事例が出てきています。そして、米国で昨年頃から注目されている、不動産取引フローをテックツールで代替する『スマートエージェント』で、この流れは日本にも来ています。最後は『不動産事業者のテック』で、不動産事業者自らテクノロジーを活用したBtoCサービスに力を入れ始めています」

最後に巻口氏は、不動産テックの今後について、「フィンテックやリーガルテックなど、様々なテクノロジーの融合が進むはず。競争のマーケットになりつつありますが、複数のジャンルにまたがる部分にビジネスチャンスがあると見ています」と語り、解説のパートを締めくくりました。

デジタルネイティブの台頭が不動産テック浸透の追い風に

続いて、パネルディスカッションのパートの一部をレポート。不動産テック協会の理事であり、それぞれ異なる専門性を持つ3者によって、最新動向の考察はさらに深まっていきます。

NTTデータ経営研究所の川戸氏、コラビットの浅海氏、ライナフの滝沢氏左からNTTデータ経営研究所の川戸氏、コラビットの浅海氏、ライナフの滝沢氏

「不動産事業者の変化をすごく感じる」と話すのは、ライナフの滝沢氏。特に電子契約などペーパーレス化はコロナ禍で相当進んだと考察します。

滝沢氏「次のステップとして、これから1~2年程度で進むと考えられるのは、蓄積したデータの活用です。物件に住んでいる人の年齢や年収などのデータを集めているプラットフォーマーが、管理会社にそのデータの活用方法を伝授するケースが増えていくのではないでしょうか」

ライナフの滝沢氏

NTTデータ経営研究所の川戸氏は、不動産企業のIT投資額に注目し、次のように分析します。

川戸氏「賃貸分野からはじまった不動産DXは、コロナ禍や国交省のデジタル化支援サービスなどにより、各社で本格的な取り組みが走り出しているところです。この1年くらいで、DX推進の部門が不動産企業でも立ち上がり、これからIT投資額は上がっていくと思います」

NTTデータ経営研究所の川戸氏

また、コラビットの浅海氏は、2022年5月18日の宅地建物取引業法(以下、宅建業法)の改正により、不動産のビジネスモデルも大きく変わると予想します。

浅海氏「宅建業法改正で、不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになりました。すべての業務を電子化できるようになったので、今後はEコマースで不動産を売買するケースが、ここ数年で増えていくことは明らかです」

コラビットの浅海氏

3者の意見を踏まえ、巻口氏は「行政を巻き込んでいかないと、利便性の高いサービスは作れません」と行政のコミットメントの強化が必要だと力説。また、海外のマーケットの違いについても言及します。

巻口氏「現在、海外と日本のマーケットは、サイズに大きな違いがあります。アメリカではM&Aが盛んで、資金調達額も日本の1000倍近くあります。色々なビッグプレイヤーやユニコーン企業が出てきています」

日本における不動産テックの伸びしろは、まだまだあると川戸氏。ただ、不動産企業にITコンサルティングを行う中で、DX推進部と現場のギャップがあると指摘します。

川戸氏「DX推進部の皆さんはトレンドを押さえている一方、現場の方々は追いついていないというギャップがあります。DXという言葉だけ躍ってしまうと、意識の違いから結局は中途半端な取り組みに終始してしまいます」

また、浅海氏は、現在デジタルネイティブが消費者層の中心になっていることに着目。

浅海氏「不動産業界は、これまで顧客とのやり取りに電話を使うことが当たり前だったと思います。ただ、最近の若年層は、明らかに電話に対する心理的ハードルが高く、チャットでやり取りしたいというニーズが多いです。こうした状況を現場の担当者レベルで理解できていないと、DXは難しいと思います。楽天が社内公用語を英語にしたように、たとえば社内の連絡手段をチャットにしてみるとか、まずは顧客を理解するために自分たちで実践してみるのも良いかもしれませんね」

最後に……イベントを終えて

不動産テックカオスマップ【第8版】セミナー

コロナ禍を経て、あらゆる業種でアナログからデジタルに移行する今。カオスマップ再編の解説を通じて、不動産テックにも少なからぬ変化が生じていることが分かりました。かつて目新しかったサービスはコモディティ化や、後発サービスとの淘汰も進み、いよいよ定番化のフェーズへと進んでいる模様。さらに、法改正が追い風になり、電子取引や電子契約もスタンダード前夜といった状況です。

既存サービスの競争激化、新規サービスが登場しやすい環境などで、次なる発展に向かい始めている日本の不動産テック界隈。コロナ禍の終息もまだ見えない中、来年はカオスマップにどのような変化が起きるのか、今後の潮流に注目したいところです。

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