リノベ不動産で業界を変える 株式会社WAKUWAKUの代表インタビュー

- 「リノベ不動産」を運営する株式会社WAKUWAKUの鎌田友和代表のインタビュー
- 日本が推進する中古物件市場活性化におけるボトルネックをサービスで解決
- 事業者側の収益拡大にもつながる新しい仕組みで市場を活性化させていく
物件探し、設計・施工、ローン、アフターサービスまでまとめてコーディネートする「リノベ不動産」を運営する株式会社WAKUWAKU。同社は「暮らしの民主化」を掲げ、中古物件の仲介とリノベーションをワンストップサービスとして提供しています。今回は株式会社WAKUWAKU代表取締役CEOの鎌田友和さんにお話を伺いました。聞き手はデジタルマーケティング・ビジネス支援の株式会社エヌプラス代表であり、DXやスマートシティなどのコラムも執筆、不動産テックに詳しい中村祐介。
10年で大きく変わった「中古物件」市場
中村祐介(以下、中村):新築物件、特に首都圏のマンション価格は値上がりしている一方で、SUMAVEでも何度も取り上げてきた空き家問題が叫ばれている矛盾を持つ日本の不動産業界。中古物件の仲介とリノベーションをワンストップで提供する鎌田代表は、どのようにお考えでしょうか。
株式会社WAKUWAKU 代表取締役CEO co-Founder 鎌田友和氏
鎌田友和(以下、鎌田氏):私は国内の住まい領域、特に住宅の開発、流通のキャリアを経て今の会社を設立しました。会社員時代に感じたことですが、日本の不動産業界は構造的に顧客に本気で向き合うことが難しいように思えます。
中村:それはどうしてですか?
鎌田氏:不動産は事業者が在庫リスクを抱えるビジネスですし、用地取得も熾烈な競争にさらされています。いわばレッドオーシャン。どれだけ住まいを効率よく作り、売るかが勝負になってきます。結果、お客様のニーズは年々多様化していくのに、商品自体は効率性重視の画一的なものになってしまう。例えば背の高い人が標準のキッチンで料理をする様子を思い浮かべてみてください。
中村:「住宅に暮らしをあわせる」感じですね。
鎌田氏:その通りです。私たちは「暮らしに住宅をあわせる」という逆転の発想を持ちながら、それをオーダーメードではなく大量生産していくことを目指しています。
中村:日本は以前から新築主義が強いお国柄です。
鎌田氏:10年前は「新築を買えない人が中古を買う」という意識が多かったかもしれませんが、この10年でそのマインドは大きく変わりました。サスティナブルの意識が根付いたこともあるでしょうし、何より「自分らしい暮らし方」にこだわる人が増えてきました。コロナ禍でその勢いは増しています。今や100人いれば、100通りの暮らし方やニーズがあるなかで、不動産会社の都合によるプロダクトアウトの物件だけで本当にいいのだろうか? そんな思いも創業のきっかけの1つです。
中村:中古物件を買って、自分好みにリノベーションをする人は以前からいましたが、少し尖った人のイメージでした。
鎌田氏:デザインリテラシーの高い方が多かったですね。しかし、今はオシャレに暮らしたいからリノベーションをしたい、ではなく、自分らしく暮らしたいからリノベーションをしたい、という声が圧倒的です。例えば、リモートワークが普及して仕事部屋を作りたいというお急ぎのご相談もあれば、夫婦で料理にこだわりたいからキッチンを変えたいなど、自分の暮らしにフィットする住まいづくりをしたいというニーズの高まりを感じます。
中村:これまでも自分の暮らしにフィットする住まいづくりをしたいニーズはあったと思います。しかし、不動産業界は縦社会。仲介会社で中古物件を探しつつ、銀行でローンを組み立てつつ、リフォーム/リノベーション会社と相談しつつといった「違うこと」を「同時に」進めないといけない。これは普通に働いている人にしたら、面倒でした。
鎌田氏:私たちリノベ不動産はこの面倒な部分を一手に請け負い、お客様が追求する「自分の暮らしにフィットする住まい」を提供しています。
リノベ不動産は複数窓口の煩雑な調整をなくす(株式会社WAKUWAKUより提供)
構造的な問題をテクノロジーで解決する
中村:リノベ不動産の特徴を教えてもらえますか?
鎌田氏:不動産における中古市場のニーズは高まる一方ですが、まず購入されるお客様にしてみると、これまでは先ほど申し上げた不動産会社や、銀行、設計事務所、施工会社などを自分で選び、調整していく必要がありました。もちろん、リノベーション済みの中古不動産を買う場合は不動産会社と銀行だけで済みますが、一気にできたほうが利便性は高いに決まっています。一方で、それをサービスとして不動産会社が提供しようとすると、これはまた非常に煩雑な作業が増えます。この構造上の課題を解決するのがリノベ不動産です。
リノベ不動産は事業者側の煩雑な業務も減らす(株式会社WAKUWAKUより提供)
中村:顧客側と事業者側の煩雑さをサービスで解消するわけですね。不動産テック系でいうと、業務改善のSaaSなどは多く登場していますが、リノベ不動産は中古物件の仲介+リノベーションの構造そのものを変えようとしているのでしょうか。
鎌田氏:はい、これまで別々で動いていたものを横串にして、ワンストップで提供することで新しい市場が生まれると考えています。前例のない取り組みなので、大変ではあります。その大変さをテクノロジーで補っている感じですね。サービスはエンジニアと事業担当者がスクラムを組んでアジャイルで開発をしています。
中村:デジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、文字通りDXですね。デジタルがあってこそできる横串による新しい価値。
鎌田氏:業務をデジタルで処理しなければ、私のこの描く仕組みは現実化できなかったと思います。
事業者には集客からアフターまでをシステムを提供(株式会社WAKUWAKUより提供)
鎌田氏:リノベ不動産のビジネスモデルは本部機能を私たちが持ち、集客も含めた業務支援を行い、ブランドパートナー(加盟店)がお客様にサービスを提供していくものです。この仕組みで、住宅購入者のニーズを満たしつつ、パートナーの収益向上にも貢献します。
リノベ不動産のビジネスモデル(株式会社WAKUWAKUより提供)
中村:パートナーの収益向上とはどのようなことでしょうか?
鎌田氏:新築と比べて中古物件は単価が安い傾向にあります。当然、その分、仲介をする不動産会社の手数料は減りますよね。今後、新築物件が減り、中古物件の流通が活発化した場合、1回あたりの手数料=利益は減少し、成長が難しくなります。そこで、リフォームやリノベーションなど仲介以上の領域を一気通貫で事業としてお客様に提供することで、1回あたりの取引における利益の最大化を目指せるようにしています。
利用前後の変化の一例(株式会社WAKUWAKUより提供)
中村:事業者としては、不動産の仲介手数料に加えて建築請負を手にすることで、収益の機会を拡大させるわけですね。
鎌田氏:はい。いま、私たちの年間の取引額は470億円程度です。しかし、既存住宅流通とリフォームの市場規模は平成30年時に12兆円、将来的には20兆円になるとあります(国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」(2021年3月19日)。この大きな市場で、プラットフォームによる事業拡大を目指しています。
中村:空き家・中古物件市場の活性化は国を挙げての課題ですが、購入する側、販売する側双方にボトルネックがあった。そのボトルネックを仕組みから変えて無くし、デジタルで効率化していくのは面白いですね。収益の増加が見込める点も強みでしょう。本日はありがとうございました。
取材・文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。
https://www.nplus-inc.co.jp/
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