士業としてのプライドを持ち「不動産のプロフェッショナル」を目指す

京王井の頭線・永福町駅で2店舗を展開する有限会社アイホープハウスは創業から今年で16年。地域密着型のサービスで地元の方から愛されています。アイホープハウスでは、このコロナ禍においても前年以上の売上を達成しました。
今回は、代表の浦野氏にインタビューを行い、サービス内容やコロナ禍における変化などについて伺いました。
■会社概要及び事業内容
SUMAVE:御社の事業内容を教えていただけますか。
浦野氏:有限会社アイホープハウスの浦野と申します。弊社は、京王井の頭線・永福町駅と久我山駅の2店舗で不動産売買、仲介、賃貸、管理を行っています。不動産売買は金額が大きいので、基本的に一見さんはお断りしています。信頼関係が構築されていることを条件とし、オーナー様やその親戚、または賃貸などで取引があるお客様のみを対象としています。賃貸業務では、SUUMOさん又は紹介や自社ホームページを見て来店されたお客様に物件をご案内しております。SUUMOさんとそれ以外の紹介や自社ホームページは、5対5の割合です。
弊社は今年で16年目を迎えますが、地域に密着した営業が強みです。電車での来店しやすさや、内見時における車の動線、店舗間の距離などバランスを考慮した出店を心がけております。
■不動産事業におけるコロナ禍、コロナ前での業績の変化について
SUMAVE:御社の不動産仲介事業では、コロナ禍で売上や反響など何か変化はありましたか?
浦野氏 : 中長期的な影響としては特に無く、利益だけで見ると昨年より良かったです。昨年の4月、緊急事態宣言が出た頃は、確かに、一時的にお客様の来店が減りました。しかし、その後すぐに、ゴールデンウィーク明けには波がきて盛り返し、その後の売上は順調に推移しております。
SUMAVE:コロナ禍で悪戦苦闘される店舗さんもあるなかで、昨年以上というのは凄いですね。
浦野氏 : もともと学生さんの仲介が全体の1割程度と低かったのも要因の一つかもしれません。コロナ禍では授業がオンラインになり、企業の転勤も激減したので、学生さんや新社会人などをメインにされている店舗は厳しかったのではないでしょうか。弊社では、結婚で新居を探される方なども多く、引越し件数自体は全く変わっていません。
■アイホープハウスにおけるテクノロジー導入事例
浦野氏 : 弊社ではオンライン内見、IT重説、電話自動対応などを取り入れております。基本的に、内見はオンラインだけで完結しないで、オンライン併用という形で、最終的には来店頂いております。IT重説も対応しておりますが、鍵の受け渡しで来店された時に店舗で済ませたいというお客様が多いですね。
しかし、海外に生活拠点があり、日本での一時的な居場所を確保するために、契約まで全てオンラインで済まされるお客様もおられました。今後は、そのような方のオンライン契約が増えると思います。
SUMAVE:不動産テクノロジーで、ここは改善して欲しいということはありますか?
浦野氏 : 全般的に効率化を求めすぎると非効率になるのかなという懸念は抱いています。例えば、電話の自動応対はアナウンスが長すぎてうんざりしてしまうなど。お金を払ってもいいから、人間に対応して欲しいと感じるお客様も多いのではないでしょうか。
ただ、内見用の鍵は、スマートフォン認証で開くようにするとなどの対応を検討して欲しいです。管理会社に取りに行ったり、現地対応であっても、キーボックスの暗証番号を聞くためのFAXや電話のやり取りに時間が取られているのが現状です。特に、内見手配全般は、是非オンライン化して欲しいです。内見するためにFAXを流さなければいけないのは今時どうなのかなと思います。
SUMAVE:なぜ不動産業界はFAXを使い続けているのでしょうか。FAXにしかない良さがあるのでしょうか。
浦野氏:年配のオーナー様が多いのは大きな理由の一つだと思います。さらに、オーナー様が不動産業務を依頼するのは大手や老舗の企業で、年配の方が多いので仕方がない部分はあると思います。例えば、一通りお客様の内見が終了し、「入居申込書」をオーナー様に送りますが、複数の不動産会社に仲介を依頼している場合、原則は早い者勝ちです。ですから、一刻も早くFAXを流して「申し込んだ」という事実を勝ち取り、担当するお客様の契約を確かなものにする必要があります。先程の「内見申込み」は早いもの勝ちではないので、Webでも良いと思うのですが、入居申込書のように「FAXでなければ」という部分が多いのも事実です。この状況を根本的に変えていくには、オーナー様の世代交代などがないと難しいかもしれません。
■不動産業界とテクノロジーに関する今後の展望について
SUMAVE:5年後、10年後の仲介業について、完全に無人化されるのではないかという意見も聞きますが、どうお考えですか。
浦野氏: もちろん、会社は残って欲しいですし、店舗として存在していたいという想いはあります。確かに、テクノロジーの導入により、店舗数や不動産に従事する人間は減るかもしれません。でも、人間だからこそできる、気持ちや人情の部分までテクノロジーがカバーできるとは考えていません。
テクノロジーを導入することが正しくて、遅れていたら間違っているとかそういう話ではなく、テクノロジーと人間を上手に融合し、お客様の求めるサービスを提供することが大切だと思います。
■不動産業界で生き残るために必要なことは何か
SUMAVE:テクノロジーの導入により、宅建を取得する必要は無くなるのではないかという意見もありますが、どうお考えですか。
浦野氏 : 宅建は、平成26年の法改正によって「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」に名称が変更し、正式に弁護士や司法書士と並ぶ、いわゆる「士業」の仲間入りを果たしました。不動産業界全体として、宅建の価値をもっと高めていくべきだと考えています。そして将来的には、相談料を取れるようになるのが理想だと思います。
例えば、オーナー様がお部屋をリフォームする際には、一般的に銀行の利回りをもとにして建築士さんに「こういう部屋を作りたい」という内容の相談をします。でも、どれくらいの家賃を払っているお客様が、どのような職業に就いているのか、どんなお部屋がトレンドなのかを一番理解しているのは、日々お客様のお部屋を探している私達不動産業者です。ですから、オーナー様に対して最適な間取りを提案できるはずです。
また、建築士さんは建てた後の法的な問題には基本的に対処してくれません。さらに、弁護士さんに相談するにもコストが発生します。宅建を持ち、法的な知識がある不動産業者であれば、オーナー様がわざわざ弁護士さんを雇うまでもなく、小さなトラブルはボヤで消し止めてあげることができます。お客様に賃貸仲介すれば終わりではなく、オーナー様のリフォームの相談、法的なトラブルへの迅速な対応ができてこそ、価値と差別化ができると思います。そのためには宅建の資格があって、さらに、経験を積むことが重要です。
不動産テクノロジーの発達により、無人化でも良いと言われる時代だからこそ、お客様が喜んで相談料を支払ってくれるような「不動産のプロフェッショナル」になることが生き残る道だと思います。例え、資格を持っていなくても、宅建を勉強することで法律やリスクに対する意識が変わります。宅建は、業務における誠実さと間違いに対する抑止力になると信じています。
インタビュアー Rean Japan 夏目力