追跡取材、テレワークにいどむ不動産会社のいま【前編】

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追跡取材、テレワークにいどむ不動産会社のいま【前編】

はじめに

全国に緊急事態宣言が発出されてから、一週間がたちました。コロナの感染拡大は予断を許さない状況です。自分の身を守りながら、社会の一員として私たちに何ができるのか。自分の飛まつなどでエッセンシャルワーカーを感染させないために、自分がマスクを着ける。メディアにたずさわる一人として、SUMAVEで何ができるか。不動産会社が、いま求めているテクノロジーや不動産テックを発信する。そうして、思いついたことから着手することにしました。今回のレポート記事も、その取り組みの1つです。リモートワークや在宅勤務に取り組む不動産会社の苦悩、実態を紹介します。

紹介するのは、リモートワークに挑む不動産会社です。300から9万戸弱を管理する8社が集まり、オンライン上での座談会が実施されました。主催は、自社でも物件管理をしているWealthPark株式会社です。同社で営業部長を務める、石村裕樹氏(画像下、撮影日は4月3日)が音頭をとりました。

石村氏が力を入れているのは2つ。“不動産会社のリモートワークについて考える”というコミュニティでの情報発信と、ウェビナーの開催です。とくに、ウェビナーへの注力が目立ちます。4月1日からの23日間に7回のオンラインイベントを主催し、参加者数は、のべ685名。もっとも参加が多かった回には、292名が参加しました。毎日、リモートワークについての相談を管理会社から受けていて、”不動産会社のテレワーク事情”に、いまもっとも精通している人物です。

ウェビナーで扱いにくい本音、悩みや現状を有志者と共有し、コロナの影響により苦しむ不動産会社をサポートしたい(石村氏)

そんな思いから、石村氏は座談会を実施しました。集まった8社による、リアルな声をご覧ください。座談会は、全国に緊急事態宣言が発令される、数時間前に開催されました。

序章/全国に緊急事態宣言が発令される数時間前

石村:セミナーと座談会をあわせて今日(4月16日)で5回目。不動産業界は、入居者を支える業界であり、それは国民を支える業界でもあると思っていて、個人的に危機感をしっかり持たないといけないなと思っています。本日は、この時間(16時30分)に集まれる有志の皆さんに、その危機感から得たリモートワークのノウハウを共有させてください。同時に、当社の話だけでなく、みなさんの現状、課題感、リモートワークへの温度感などを共有し、コミュニティ全体の英知にできれば幸いです。まずは、みなさんの現状を聞き取ったアンケート結果から共有します(未参加企業を含む)。


石村:「全従業員の90%以上がテレワークをしている」が2社、これは青色です。「ほぼ半分がテレワークで、一部の従業員がローテーション出社している」が2社、これは赤色です。「全従業員の10~40%がテレワークをしている」が1社、これはオレンジ色です。「現在、テレワークの開始に向けて準備・情報収集をしている」が6社、これは緑色です。このうち、3社が都合により、残念ながら今日は不参加です。参加者は、秋田、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、愛媛、佐賀を所在地としています。地域によるコロナの状況もあると思いますが、そのあたりの温度感もみなさんで共有できれば幸いです。目的の1つは、地域による情報格差を埋めること。オンラインで時間と場所を超えて集まれるメリットを生かし、離れた場所にいるみなさんの目線や意識をできるだけ1つにできればと考えています。秋田のKさん、自己紹介を兼ねて現状を教えてください。


秋田のK(30代):当社は現在、「テレワークの開始に向けて準備・情報収集をしている」状況です。もっか、テレワークを導入しようと思って準備を進めています。秋田でも感染者が出ていて、いまは、店内の消毒準備や来店客のコントロールをどうするかなどに追われています。当社は従業員が120名ほどいて、もともとITは不得意で、進めにくい状況です。危機感だけは募っているので、実践している会社さんの話をききながらテレワーク実現に向けて取り組みたいと考えています。よろしくお願いします。


石村:消毒の準備、ということですが、感染者が身近に?


秋田のK(30代):会社の従業員にはおりません。ですが、市町村別に、けっこう出ていて、いま、小中高校が休校です。感染者の濃厚接触者が当社の店舗に来ていて、結果的に陰性でしたが、一瞬、社内を衝撃が走りました。そんなこともあって、ITに不慣れな会社ではありますが、一刻も早くリモートワークへという危機感は、かなりあるつもりです。


石村:ありがとうございます。では、兵庫のRさん、自己紹介をお願いします。


兵庫のR(20代):当社は仲介店舗がなくて、従業員は3名です。先々週のWealthParkさんのウェビナーを聞いて、緊急事態宣言をうけて、「リモートワークやろう」と決めました。原則、全員テレワークです。いまは、入出金の確認、郵送物の書類回収で、私が出社するくらい。自転車で出社する距離に事務所があるので、不幸中の幸いというか。いまの様子だと、週2くらいで私が出社することになりそうです。


石村:ありがとうございます。次は、愛知のSさん、お願いします。


愛知のS(30代):当社は、まだ、全社一斉のリモートワークには、なっておりません。愛知では、県独自の緊急事態宣言が発令されています。座談会がはじまる前の雑談で、少し話題になりましたが、今夜にも全国的に緊急事態宣言が発令されるとなると、会社のスタンスも変わると思います。いまは、社員に出社制限を出している状況です。4割の社員が休みに入っています。このまま長引いたり、全国に緊急事態宣言が発令されたりするなら、いつまでも休みにはできません。テレワークにしていかないと。なにより、お客様にご迷惑をかけるようなことは避けないと。当然ですが、雇用を守るという視点から、社員のためにもテレワークを取り入れていこうと。一緒に、どんどん共有しながらやっていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。


石村:愛知だと、他社様の店舗で感染者が出たとか。仲介店舗の感染者として報告された事例としては、タイミングとして早かったですよね。そのあたりの温度感なども教えてください。次は、神奈川のBさん、お願いします。


神奈川のB(30代):当社は社員数こそ数千名と多いですが、管理部門の規模は大きくありません。住戸やビルの管理をしているのが、私の部隊で3名。そのほかに、東京での3名をあわせて12名くらいが不動産関係の仕事にたずさわっています。アンケートでは、「ほぼ半分がテレワーク、一部の従業員がローテーション出社している」と回答しましたが、数千名の全員がローテンションでのテレワークを実施しているわけではありません。実践できているのは、本社の総合職です。週に1回の出勤を交代でやっています。コロナ前を10割として、だいたい、7から8割くらいの出社を本社は削減できています。当社は、以前から一人1台、ノートパソコンを貸与していたので自宅にパソコンを持ち帰ることができる環境にはありました。そこからVPN接続をして、会社のシステムにつなぐことができている状況です。


石村:では、愛媛のYさん、お願いします。


愛媛のY(20代):当社の従業員は20名弱です。テレワークについては、石村さんに教えていただきながら進めていて、ノートパソコンの発注が終わりました。発注ですが、タイミングが3日遅れただけで、値段があがって驚きました。メーカー曰く、「物が減っている」と。仕方なく、検討していたのとは違う国産メーカーへ発注、パソコンは確保できました。店舗が2店ありますが、いま、1店舗を閉めています。ただ、テレワークをすることに対して、一部のスタッフが抵抗を感じています。


石村:スタッフの側に、抵抗を感じる人がいらっしゃるんですね。


愛媛のY(20代):はい。いまは、ノートパソコンが届くのを待っている状況なので、閉めている店舗を自宅に見立てて、自宅勤務の想定でトライしています。私は、絶対にリモートワークをやると決めたので、とにかくできることから進めています。まだまだ問題があって、わからないことも多いですが、よろしくお願いいたします。


石村:パソコンの値段はどのくらいあがったんですか?


愛媛のY(20代):1台につき、2万円くらいです。


石村:3日で2万円ですが、けっこうな値上がりですね。では、次は佐賀のKさん。


佐賀のK(40代):当社は従業員が10名弱です。もともと、一昨年から、「紙をなくそう」という動きが社内にありました。でも、なかなか、一度に全部というわけにもいかず。少しずつ進めていました。賃貸が3名、売買が3名です。あとは、経理などのバックオフィス。少ない人数でやっているので、できるだけ生産性を高めたいとIT重説を検討したことも。そうこうしているうちに、こういう情勢になりました。リモートワークが全国的に推奨されて。私たちは部分的にやってきたわけですが、ほかの会社さんはもっと上手にやれているんじゃないかなと感じています。まだ、リモートワークをできてないんですが、今後に向けて動かしていきたいと思っています。


石村:さきほど、私は九州の管理会社さんと話をしたんですが、リモートワークへの取り組みに温度差がありますね。


​佐賀のK(40代):九州の人の危機感は薄いと思います。


石村:次は、東京のIさん、お願いします。


東京のI(60代):練馬区で、従業員3名の小さな不動産会社をしていまして、メインはリロケーションです。お客様は、海外や地方などの遠方にいらっしゃるかたがほとんどです。離れた場所にいるお客さんとコミュニケーションするので、以前より連絡はすべてメールを使っています。IT重説は社会実験のときから参加していることもあって、不動産テックには慣れていることもあり、リモートワークを強いられるいま、その経験が役に立っているところです。よろしくお願いいたします。


石村:では、最後にWealthParkの菅野を紹介させてください。当社は、不動産管理会社様向けにシステムを販売している会社ですが、それとは別で物件の管理業務もしています。今日は、そこの責任者に声をかけています。


菅野:はじめまして、WealthParkの菅野です。当社でも物件の管理をしていまして、管理部では30名ほどが働いています。現状は全員が在宅勤務をしている状況です。全社的には、3月のあたまくらいから取り組んでいます。エンジニアチームや石村たちのチームが、徐々にリモートワークを導入するなかで、物件管理を仕事にする部署がフルリモートを実現するのは、容易ではなかったのではと感じています。全社的にも、フルリモートを実現するまでに、一番、時間がかかった部署です。管理部は今週(4月13日)から完全なリモートに移行できました。実現するにあたって障壁だったのは、郵送、押印、電話の3つです。いろいろ苦しんで現在へとたどり着いたので、みなさんの悩みには共感できると思っています。


石村:ご自宅はどんな状況ですか?


菅野:書類が山積みです。フルリモートワークを実現するための苦肉の策ですね。


石村:菅野さん、今日は赤裸々にお願いします!


菅野:わかりました!

――つづきは【中編】へ。

おわりに

オンラインイベントのパネルディスカッションをBGMにして、この記事を書いています。時間は夜7時を迎えようとしているところです。登壇者は、在宅勤務のコツやノウハウを披露しています。「同じことをいっていた講師がいたな」そう感じながら、ウェビナー取材や情報収集をする毎日です。コロナによる情勢の変化は毎日あり、情報の鮮度が落ちるスピードは速い。「昨日の〇〇を記事にしたいが、今日になって▲▲という情報にアップデートされたので〇〇を記事から消す必要がある」そんな作業を繰り返するなかで、共通して入ってくるキーワードがあります。リモートワークやオンライン化への取り組みは一過性のものではない、という話です。ピーティックスは、「オンラインイベントは、オフラインイベントの代替ではない」というテーマのライブ配信をしました。緊急事態宣言が全国に発出される前の話です。日経新聞のインタビューに応えた、日本電産の会長兼CEOを務める永守重信さんの言葉も印象的です。

「コロナ終息後は全く違った景色になる。テレワークをどんどん取り入れる劇的な変化が起きる。東京都内の会社に勤める人が山梨県に仕事部屋のある広い家を建てるようなケースが増えるだろう。企業は通勤手当をなくす代わりに給与を上げるほか、サテライトオフィスを作るなど抜本的に環境を改善すべきだ」(日経新聞より抜粋)

出典元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58252910Q0A420C2SHA000/

現在、ピーティックスでは毎日、オンラインイベントが開催されています。無料参加のものも多く、Zoomを使ったウェビナーも盛んに開催されている状況です。これまで取材したオンラインイベントのなかで、もっとも人数が多かったのものには700名以上が参加していました。時代の変化を肌で感じます。

テレワークへの取り組みは、一時的な退避ではありません。次の世界へ向けた取り組みで、この流れを止めることも押し戻すこともできないのです。緊急事態宣言が解除され、外出を自粛する必要がなくなったとき、私たちの目の前には新しい生活、社会が広がっています。リアルで会うことの価値を再認識し、それとは別で、バーチャルでのコミュニケーションにリアルとは違った価値観が、はぐくまれる世界です。この影響は確実に不動産業界にも及びます。

次週の【中編】では、座談会のアンケート内容や議論を取り上げています。

 

 

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